回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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筆が進みにくい今日この頃。

WAのTRPGが今年のコミケで出ていたそうで。
サプリメントでシンフォギアが出たとか……ホスィ……


A's3「おれン家(オン・ステージ)」

 過ちだと言うのは解っている。

 

 それでも、一緒にいなくてはいけないんだ。

 

 そうしなくちゃ、僕/私は壊れてしまうから。

 

――配点(共依存)

 

 

 

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 運命の『六月四日』から一月半。

 それなりに馴染んできた雲の騎士(ヴォルケンリッター)の四人は、と言うと――

 

「私が一番働いて無くないか……?」

「そ、そんなことねーって! だ、だろ!?」

「そ、そうねー力強い保護者的な面が……あれ? そこだけ……」

「うわあああ! シグナムの影が更に濃く!?」

『(シャマル、お前の思ったことが口に出る癖を直した方が良い。……こうなる)』

 

 将を慰めていた。

 

 

 事の発端は、とある夏の日の事。

 はやてとひなた(家主二人)が犬耳付けた偉丈夫……の狼姿。獣モードの『ザフィーラ』と共に翠屋へと足を運び、優しげな女性……『シャマル』が買い物がてら近所の奥様方と井戸端会議。朱色三つ編みの少女……『ヴィータ』が公園で開催されるゲートボール大会に出場している間。

 

――ここで、シグナムはと言うと、扇風機と開けた窓で涼み、氷入り麦茶を片手に新聞を読んでいた。

 

 そう言えば、今日の夕餉(ゆうげ=夕飯)はなんだろうか、と思い立ったところで、将としての自分が苦笑いで、そんな自分でいいのか、と目を逸らしながら言ってきた。

 向こう側もこの体たらくに甘んじている部分があると自覚しているのだろう。それを見た自分の厳格な部分が責め立てるように絶望感とか失望感だとかの諸々が手を繋いで襲いかかってきた気分になり、合流して帰宅してきたシャマルとヴィータに驚かれ、状況をザフィーラに伝え、今に至ると言うことらしい。

 

「シャマルは料理以外はそつなく熟し、ヴィータはやろうと思えば大体できる。ザフィーラでさえ家事能力はそこそこだ。――なのに、私ときたら……!」

(シグナムは戦闘極振りだもんなー……スパロボみたいな強化方法しかねーもん)

(はやてちゃんたちが言ってたスキル制なら……あ、結局極振りになるかも)

(主達から習えばいいだろう、と思うのは俺だけか?)

((あっ))

 

 

――後日。リビングにて料理を教えてくれと土下座する将の姿に困惑する家主二人の姿があったらしい。

 

 

 

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「――ふむ、ふむ。共依存か」

 

 暗がり。

 大機関(メガエンジン)に“回路”を描くように組み上げ、連結された機関(エンジン)の壁が轟々と音を鳴らし脈動する。

 その中心で一人。白衣の男は(おもむろ)に口を開く。

 

 男の声は淡々と物語る。

 自らの考察を確かめるように。自分の思考を確認するように。

 男は声に出して語り掛ける。

 

「そう難しいことはない。事実上、その大半は自然回復や自立確立によって治癒される精神病の一種だ」

 

 例えるならば、『“魔導師”と“デバイス”』の関係性。

 優秀な魔導師はデバイスが無くとも魔法は発動できるが、それでも負担は大きい。――故に補助器であるデバイスで負担を軽減するのだ。

 デバイスの中でも“インテリジェント”や“ユニゾン”は多少なりとも単体での魔法行使ができる。……もっとも、前者はマスターありきでの話になるが。

 しかし本領を発揮するならば『人機一体』でなければならないのだ。

 つまり、“デバイスあってこそ本領を発揮する魔導師”と“魔導師がいてこそ本懐を遂げるデバイス”と言う状態となる。

 

「――あくまでも、極論だが」

 

 本題の“共依存”ともなると少しばかり話が変わってくる。

 

 我が子を支配したい親/愛が欲しい子供

 愛したいと願う男/愛されたいと乞う女

 

 失いたくない、男/女

 

「言うなれば――そう。『二人で一つ』、と言うのが正しいだろう」

 

 日向がなければ影はできず、夜がなければ昼と言う概念も生まれなかっただろう。

 太陽に照らされてこそ“影”がある。昼/夜があるからこそ夜/昼の名前ができた。

 

 人が言うならば、それは『表裏一体だろう』と嘲笑う(あざわらう)

 しかし、白衣の男は語る。

――本当に、そう思うかい? と。

 

 そこで男は、しかし、と自ら話を遮る。

 

「“今”に語るには時間が足りない。――また次回。話すとしよう」

 

 暗がり。

 大機関(メガエンジン)に“回路”を描くように組み上げ、連結された機関(エンジン)の壁が轟々と音を鳴らし脈動する。

 その中心で一人。白衣の男は(おもむろ)に口を閉じる。

 

 男の声は淡々と消えていく。

 自らの考察を確かめたように。自分の思考を再確認したように。

 男は声を、静かに潜めていく。

 

 

 

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 なのはたちの通う聖祥大附属小も夏休みに突入し早二日。セミの声で賑やかになる街中に夏を感じながら太陽の熱視線に気を付けながら外出する時期でもあるこの季節に――

 

「我ながら作り過ぎたな」

 

 八神家はインスタント付け麺を食べていた。

 それと言うのも、作った本人(ひなた)曰く「食べたくなった」の一言。通常の熱い(つゆ)の他、冷製も作っている辺り無駄に凝っている。

 

「一人前の付け麺二十は流石になー」

 

――尚、通常と冷製で10:10である。

 

「食わずとも後で食えるし、後から来る皆も食べるやろ」

「せやろか」

「知らへんけど」

「さよか」

「ひなた、悪いが塩コショウ取ってくれ」

「ほいシグナム」

 

 いつもと変わらぬ昼食、ひなたは「晩飯は鶏肉にしようか」と呑気に考えていると、玄関のチャイムが鳴る。

 

「あ、来た」

 

 更に騒がしくなるなー、と考えながら玄関に向かうひなたを目で追いつつ麺を啜る(すする)はやてであった。

 

 

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「まさか昼食ご馳走になってから翠屋に行くとは思ってなかったお」

 

……今度レシピ教えてもらうお。

 

 八神家全員と共に翠屋へと向かう飯島純一(いいじまじゅんいち)間宮佐吉(まみやさきち)磯田八留夫(いそだはるお)の三人。

 その中で八留夫は、まさか遊びに行った友人の家で昼ご飯をご馳走になるとは思っても見なかったらしく、更にそのまま「イ○ノー、野球しよーぜー」みたいなノリで翠屋に向かうとも思ってなかった。

 そんな八留夫の言葉に返答するようにひなたは、

 

「丁度、翠屋の割引券が余ってたから“ついで”でな」

(ひなたさんマジかっけぇ……!)

 

 思わず目頭を抑える八留夫を首を傾げて不思議そうに見るひなた。……の、その後ろ。

 純一が唸りながら前方の二人を見ているところに佐吉が、どうした、と声を掛ける。

 

「……いや、やるっちと一緒にいると運が良い気がするし、ひなっちもひなっちで気配り上手でお得だし……どっちを拝んでおこうかと」

「この際だ――両方拝んでおけ。多分損はない」

「流石はさきっち! じゃあ早速――」

「「拝むな拝むな」」

 

 

 その光景をさらに後方、ヴォルケンズの四人は眺めていた。

 

『(――我らが召喚されてから一月半(ひとつきはん)……よもや、今のように穏やかに過ごせるとは、過去の我らが見れば目を剥くだろうな)』

『(どうしたの急に。――まぁ、否定はしないわ。召喚される度に悪の片棒担いでばっかりだったから)』

 

 闇の書の騎士たる彼女たちは、所謂“魔力生命体”だ。

 召喚され、役目を終える度にその体の構成魔力を崩す。その際に彼女たちのコアから余剰分の魔力が闇の書へ移行する。

 しかし、移譲されるのは魔力だけではなく、現界中の記憶も含まれている。だが時折、記憶の残滓がコアに残っていることがある。シャマルはその光景がなんであるかを理解しており、他の三人もまた同様である。

 その中でもヴィータは持ち前の気質故か、召喚当時はかなり棘の付いた言動ではあったものの、この一月半で元来の素直な性格に戻った。

 ヴィータ以外の三人も良かったと思い、同時に新しい家族である二人にも返し切れないほどの感謝の念がある。例え闇の書の騎士でなくても、ヴォルケンリッターでなくても、ただ家族として守りたいと思うほどには。

 

『(だからこそ、つくづく“主”がはやてで、その家族がひなたでよかったって。すっげー思ってる)』

『(なればこそだろう。騎士としても、家族としても……あの二人を守っていきたいものだ)』

『(……そうだな。さて、行先には主達の御仲間がいるそうだ。失礼の無いようにな。時にヴィータ)』

『(我らが剣将サマがアタシをどう思ってるかよく解ったぜおい)』

『(……ふっ。冗談だ)』

『(今の間は何だよ今の間は)』

 

 

 この後、言った矢先でなのは達の戦い方を聞いて、主達の御仲間マジこわい、となるのは――恐らく余談だろう。

 

 

 

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 熱を、感じた。

 まるで噴き上がる溶岩。躍動する核熱。湧き出でる灼熱の泥。

 胸を中心に広がる熱に疑問を感じる。

 

 何故。一体何故?

 湧き上がる汗に、体が鉛のように感じる倦怠感。

――動けない。

 まるで何かが嘲笑う。闇のどこかで嘆いている。

 相反する感情がこちらを見ている。奥で眠る何がが静かに鼓動する。

 

「――ッ!」

 

 小さな咳。けれど確かな、逃れられない異変。

 咄嗟に口元を抑えた(てのひら)の中央が赤い。

 赤。紅。赫。

 反比例するように血の気が引いたのを感じる。

 赤くなった手を隠すように握り締め、洗面所へ走り、赤色を流す。

 

「――さて、参ったね。これは」

 

 口元に僅かに残る赤色を手首で拭い、苦笑すらできない鏡の自分を嘲笑う。

 

 こんなこと以外は、普通の日常だ。

 後はいつも通り伝えようじゃないか。みんなに、おはよう、と。




(おっぱい)侍シグナムさん!
彼女だって悩んでるんです。

・白衣の男
白衣の男……一体何エッティなんだ……!(迫真)

・騎士たちの記憶
独自設定。
何かやってたぐらいはおぼろげ。
管理人格さんは全部知ってる。ツラァ……

・異変
(アカン)

※2015/03/27:やる夫の名とルビ修正



 剣の烈火。
 剣将。烈火の将。
 剣王の記憶は書の奥底に。
 鮮烈ながらも気高き記憶と共に。

回転割砕の魔導右腕A's(ライトアーム・エィス)
第四話「烈火の剣王」

 気高き記憶を眠らせる闇。
 奥底にて鼓動する。


待て、而して希望せよ。

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