回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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長らくお待たせしました。
後編でございます。
文章が迷走してるかもですのでご注意。


二十三話「ドッグファイト」(Part:C)

 今の戦況と勝敗は、言うなれば50:50(ウィンウィン)のこの状況。

 互いに息を整えて、体内の(大合奏)を徐々に落ち着かせる。

 

……射撃戦は本当にすごかった。

 

 既に過去の物とも思える「経験の差」という自分の発言を、改めて噛み締める。

 射撃の命中精度は恐ろしいものだった。反撃した時の航空軌道も速くて綺麗で、雲の上でのエアブレーキも凄かった。

 そして、さっきのクロスレンジの一撃一撃が、とても……速くて重かった。

 

……ただでさえ経験の差があるのに加えて、フェイトちゃん速攻寄りの万能型だもんなぁ。

 

 それに比べ、なのはの飛行魔法の速度はそこそこ。その分防御が硬く、砲撃限定だがフェイト以上の一撃を出す自信があった。

 しかし狙いを定める分には、なのはとフェイトの相性はあまり良くなかった。

 でも、そうであっても。

 今は、相手(フェイト)に勝ちたい一心だけは負けられない。負けていられない。負けたくないから。

 

……足りない分は頑張りで補って、超えるしかないよね。

 

 思った一言に、友人(ひなた)とのやり取りを思い出した。

 翌日に漢字テストがあると聞いて、必死で勉強して……直前になったら忘れるんだろうなと言った時に彼は、

『覚えられるだけ覚えろ。わからなくなっても僅かな欠片を思い出せ』

と言ったが、なのははそんなの無理だと言った瞬間、

『俺が知るかいな。まぁ、あとは勇気で補え。思い切って書いてみろ』

 

 そう言われた翌日のテストの結果は、いつもより、ほんの少しだけ点数が上がっていた。

 彼は、

『お前の、変なところで発揮する思い切りの良さを、いつでも出せるようにしとけよ。何もかも振り切ったお前はスゲェんだからなー』

と、後日そう言っていた。

 

……そのあと、うっかり『ひなたくんのおかげだよ』、なんて言っちゃったからジュース奢らされたっけ。今でも納得いかないよ、もう。

 

『無償で手を貸すわけないだろ常考。さぁ対価を払え! ハリー、ハリーハリー! ハリーハリーハリィィィッ!』

 その時の友人達の逃げ足の速さをなのはは今でも鮮明に覚えている。

 意趣返しの方法は今は思いつかないがいつかしよう。絶対。

 

 少しばかり脱線した思考を戻して、なのはは考える。

 狙えないのであれば、その動きを止めればいい。

 その為には、

 

「――さて、レイジングハート」

【はい】

「ちょっとだけ、無茶しよっか」

【……ええ。リスクの先の勝利を掴みましょう、マスター】

 

 

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 自身の気持ちを、思う存分心の中で叫ぼう。

 

……すっっっっっっごく怖いッ!

 

 なにあれ防御硬い(かったい)

 行く先々を誘導弾で制御されて向こうの思う壺。

 それを可能にしてるのは恐ろしいほどの空間把握能力と優秀なまでの誘導弾制御。

 先程は何とかクロスレンジにもって行けたのは良いけど、隙なさ過ぎあの子マジこわい。

 

 もう結論からしてあの子マジ要塞。

 せめてもの経験の無さが、フェイトを僅かな優勢に(とど)めている。

 そして、目の前の相手の何が怖いと言ったら、

 

……あの砲撃魔法の威力。

 

 さっきのブラインドショットも、そう長くはないチャージであるはずが、あの弾速と威力だ。天然砲撃チートとかマジ笑えない。

 でも、逆に言えば当たらなければ問題ないということ。

 もし相手の立場なら、

 

……動きを止めた時に――否、動きを止めてフルチャージのバスターかな。

 

 上等にしてシンプル。

 絵にしてみたら少しエグいが、最も有効的ともいえる。

 さらに受けるのが自分だと思ったら、気分的に鬱っぽくなったのは秘密である。

 

 ならば自分はどう対応すべきか。

 近付いても硬くてなかなか効かない。

 離れても誘導弾と砲撃のコンビネーション。

 一見積んだようにも思えるが、フェイトの考えは違った。

 

……知覚できない速さで、薄い所を突くしかない。

 

 フェイトの持つ、最も強い武器は『速さ』。

 あちらが基本スペックの攻撃力と防御力で攻めるのなら、こちらは速度と戦闘経験の一点特化型で攻める他ない。

 徐に、相棒を握る手に力が込められる。

 そして深呼吸をして、(なのは)を見据えながら自らの相棒に問いかける。

「――バルディッシュ」

 無言。言葉は返って来ない。

 しかしそれはいつものこと。フェイトはそのまま言葉を続ける。

「この戦いが終われば、ずっと、きっと、もっと――母さんが笑顔になってくれる。もうこんなにも、辛い戦いをしなくて済む。だから……ッ!」

【Grave Form】

 了解と言わんばかりに、黒金の愛機は形を変える。

 現状に最適な形と、一人と一機の信念の表れとした形に、姿を変える。

「往こう。バルディッシュッ!」

【Yes.ser Get set】

 

 

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 互いが互いを見据え合い、一瞬。

 部わりと風が吹いた瞬間に、二人は同時に動き始めた。

 

 なのはは飛行魔法を切り、地を背にして落ち始める。

 その落ちた瞬間、なのはのいた場所をグレイブフォームを構えたフェイトが通り過ぎる。

 

 フェイトは前方の離れた位置にシールドを展開し、グレイブフォームを突き立てる。

 シールドに突き立てた場所を支点に、棒高跳びの様に全身を使ってグレイブフォームの穂先を落下するなのはに合わせ、再び加速。シールドに『噛む』特性を生かした方向転換だった。

 

 しかし、方向転換した先に待ち構えていたのは、デバイスモードのレイジングハートの先に三つ魔力弾を構えたなのはの姿。

 

……砲撃なら紙一重でシールド逸らし。誘導弾なら避けて再加速……ッ

 

 今までの戦いぶりから、なのはの攻撃手段は魔力弾と砲撃、デバイスモードでの打撃のみと察したフェイトは次に繋げる行動を想像する。

 が、しかし。その考えが少し甘いこと、フェイトは思い知らされる。

 

 

――ディバインシューター・スプレッドシフト

 

 

 放たれた魔力弾は、一瞬の間を置いて炸裂。

 最初の魔力弾よりも弾速の早い、小さめの魔力弾が視界を覆うように放たれる。

 

 多重弾殻射撃(ヴェリアブルシュート)

 AAランク魔導師の「射撃型最初の奥義」と言える技術であり、並の射撃型もこのランクに達するのは多くないとされるが、それをなのはが知るはずもなく。スプレッドシフトは、強いて言うならば以前、ひなたとの模擬戦で使った拡散型射撃魔法の完成版として考えた魔法だ。

 そして奇しくも、今から十年後の教え子が使うであろう魔法でもあった。

 

 まさかの面攻撃に、足を止めて防御してしまうフェイト。

 そこでまずいと思いつつも魔力弾の雨が切れるのを待つ他なかった。

 しかし、追い打ちを掛けるように愛機からアラートが鳴る。

【ser! 六時の方向から高魔力反応、砲撃です!】

 右手にグレイブフォームのバルディッシュで前方のシールドを維持しつつ、空いた左手で後方にシールドを張る。

 展開して一瞬の間、桜色の砲撃が着弾する。

 右下の魔力の雨と左からの魔力の濁流がフェイトを襲う。

 

 

――ディバインシューター・アクティブシフト

 

 

 両手を伸ばして精一杯防ぐフェイト、の背後から強い衝撃。

 まるで背中を蹴られているような――否、蹴られていた。

 一瞬だけ目線を背後にやれば、レイジングハートを背中に背負い、足の裏に魔力弾をセットして蹴り抜いた姿の高町なのはの姿があった。

 

 

 

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 一方、アースラ側と言うと……

「九歳とは一体なんだったのか」

「フェイトマジ健気」

「「そしてなのははマジD4C」」

 

 そういう双子の言葉に(カガミを除いた)アースラクルーと使い魔組を除く全員が苦笑いになる。

 訳がわからなそうなアースラクルーにひなたと聖刃が説明した。

「『Dirty Deeds Done Dirt Cheap』、『いともたやすく行われるえげつない行為』ってことっすな。まぁ、なのはの砲撃の威力、防御の硬さ、その発想力と魔法の才能……そんなえげつないものを全力利用した結果がこれだよ! な状態なわけでして」

 

 俺らの幼馴染マジえげつないと呟くひなたを余所に聖刃が話を続ける。

 

「例を挙げるなら開幕『千の隕鉄(ミッレ・メテオリーテース)』か『黄金一閃(エクスカリバー)』のぶっぱ。日野なら「開幕ソニックムーブからのギガブレイク余裕でした」……らしい」

 

 そんな光景を想像したのか、少し肩を落とす聖刃に、まりはじゃあと続ける。

 

「ある程度避けられない位置まで近づいたフェイトへの拡散魔法、フェイトの下を潜って逆方向からショートバスターで両手を封じてからの蹴りが該当するわけか」

「そうなるな」

「50m走ってぜぇぜぇ言ってた、あのなのはは何処へ行ったのかしらねー」

「なのはちゃん、何処に向かっておるんやろか……」

「『一に射撃、二に拘束。三四に溜めて、五でズドン。魔砲少女リリカルなのは、悪い子全員砲撃ズドンだよ☆』というのを想像した、とカガミは妄想します」

「ミッドで放送されそうだなー……」

 

 エイミィの呟いた一言に転生者達の心は一つになった。

『ああ、管理局ならやりかねない』と。

 

 

 

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 なのはは思わず、ある漫画の台詞で心境を当てはめた。

 

……ばれないように戦う。全力全開で戦う。両方やらなきゃいけないのが、今の私の大変なところ、って感じかな。

 

 レイジングハートや、他の友人達と考えた『知恵』と『戦術』。

 それが、なのはの唯一にして最大の武器だ。

 

『(レイジングハート、あれを使ってから散布状況はどうなるかな)』

【(今ならば、使って最低限、と言ったところでしょう。その量でも十分ですので、こちらはいつでも往けますよ。マスター)】

 

 二つの意味を含んでなのはは頷く。

 隠し種のその一(スプレッド)その二(アクティブ)は出した。後は切り札()()を出すだけ。

 

『(正念場だね。レイジングハート!)』

【(ええ、マスター。全力全開の決着の時です)】

 

 

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 何もかもが無茶苦茶。

 それが、彼女(なのは)に対して抱いた感想だ。

 会う度に明確なまでの進化を遂げ、フェイトを驚かし、それでもフェイトは勝ってきた。

 

――それが、今この状況はなんだ。

 まるで大きな箱に複数入ったビックリ箱を彷彿とさせる、彼女の戦いは!

 君のような素人がいるか! と大声で叫びたいと思ったフェイトだった。

 

 でも。少し、ほんの少しだけ……

 

……楽しい、って思うのは……おかしいかな。

 

 そうも言ってられないのも分かるし、そもそもその思考は、今は烏滸(おこ)がましいだろう。

 だから、今は戦いに集中する。

 今は見なくなってしまった、母の笑顔を――

 

『ありがとう。()()()()

 

――え?

 違う、私はアリシア、じゃないよ。

 フェイトだよ? 母さん、何を言って――

 

『アリシア』『アリシア』『アリシア』

 

 違う。違う。違うのに。

 不思議と心にストンと落ちるような。

 納得したくないものを、心の底で納得してしまったような、この感覚。

 

 

――ア リ シ ア

 

「ッ――ァァァアアアアアッ!!」

 

 何かが、ブツリと音を立てて切れた。

 

 

 迷いか、または別の何かを振り払うように左腕を振るう。

 その深紅の瞳に、硝子の涙を浮かべて。

 

 

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「ッ――ァァァアアアアアッ!!」

「ッ!?」

 

 泣き叫ぶような、まるで自分を見失いかけているような雄叫びになのはは、ほんの一瞬だけ畏縮してしまう。

 その一瞬は、相手(フェイト)にとって最大の好機。

 なのはの周囲を、金色の魔法陣が取り囲む。

 

 まずいと直感したなのははその場から離脱しようと動くも、動きが止まる。

 両手足首に、金色で半透明な立方体が動きを止めている。

 フェイトのライトニングバインドだった。

 

――大気が震える。

 その場にいたなのはは、即座に理解した。

 ユーノが例に出していた、儀式系大魔法。

 

「アルタス・クルタス・エイギアス。響け万雷。轟け轟雷。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

 

 フェイトを中心に、扇の様にスフィアが展開する。

 合計57基のフォトンスフィアが今か今かと胎動しているのが目に見えている。

 

 

 一方。なのは達のいる位置から遠く離れた海浜公園の欄干。

 見届け役のアルフとユーノは、二人の戦いを直に見守っていた。

 

「あの魔法はッ――フェイト!」

 空中モニターの向こう。

 アースラにいる他の者達の声も聞こえてくる。

 その中から、ひなたのあちゃー……という声が聞こえてくる。

『半分ヤケだな、ありゃ。何かがプッツンしてますわ』

 そのくせ術式がしっかりしてるとかフェイトマジこええというひなたに対し、その隣で悩んでいたまりが、ひなたに質問を投げかける。

『なーひなた。ファランクスって?』

『んーっと……確か古代ギリシャに、端を発した攻防一体の密集陣形戦法であるファランクスが由来だろうかねー』

 一息。

『転じて、バルカンファランクスっつー圧倒的な連射速度を持つ機関砲があるんだが……まぁ、機関砲でフェイトの魔法はお察しですわな』

『速報、フェイトもD4C』

『カガミちゃん。それしーっや』

「こっちに対してアースラ微妙に緊張感無いなー……」

 言いたい放題なアースラ側に、流石のユーノも苦笑い。

 しかし、そんなユーノ自身も、このままなのはが負けるとは思っていなかった。

 

……『あの方法』は高い魔力資質と技術力が要求される。でも、なのはとレイジングハートなら、きっと――否、絶対できるはずだ。

 

 なのはの資質。レイジングハート。魔法の素人。他数個のピースの、どれが欠けてもできなかっただろう、規格外の方法。

 それを使うには、むしろこの時こそ最適だとユーノは思った。

 

 

――フォトンランサー・ファランクスシフト

 

 

【Fire】

「撃ち、砕けぇぇぇッ!!」

 

 57基のフォトンスフィアによる毎秒七発の一斉射撃。

 計1,596発のフォトンランサーがなのはへと向かう。

 そして、撃ち終えたスフィアがフェイトの掲げた腕に集まっていく。

 それはまるで杭のような形になり、

 

「スパァァァクッ! エンドッ!」

 

 フェイトの手によって、放たれた。

 

 

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 視界が鮮明になってくる。

 頭に血が上ったと言っていいのか、先程までは何かを振り払うように視界がぼやけていた気がする。

 でも、相手に対して、スパークエンドをぶつけたのは確かに覚えている。

 

……現に、威力の余波で一帯がさっきよりもボロボロだ。

 

 愛機から使い終わった魔力素が排熱と共に噴かれる。

 排熱を終えた愛機がいつものアックスフォームに戻るのを確認したフェイトは、あの子のいた場所を見やる。

 

……これで決まった。これで終わったんだ。――終わってる、はずだ。

 

 これでもう決着のはず。

 そのはずなのに、言い様もない違和感――否、勘と言っていいだろう。すごく嫌な予感がする。

 

 ファランクスシフトの余波で海が蒸発し、水煙が立つ。

 そして、その光景にフェイトはデジャヴを感じた。

――しかし、古来よりこういう時の『嫌な予感』とは当たるもの。

 

 

 水煙の向こうに彼女は立っていた。

――ただ、その姿は少しだけ違っていた。

 バリアジャケットのハードシェル部分を増やし、髪型も後ろで一本に纏めている。

 そして何より変わっているのは肩の部分。

 盾とも翼とも見て取れる棺桶のような形の変則六角型ハードシェルが、両肩に備わっている。

 

……バリアジャケットを変えた!? それも戦闘中に――!

 

 それに加えての無傷と言う光景に、フェイトは驚きを隠せなかった。

 

【バリアジャケット・モードガンナー。気分は如何ですか。マスター】

「思った以上に良好。フェイトちゃんの魔法のおかげで最大限に『あれ』を引き出せそうだよ」

【ええ。私もそう思います】

 

 不敵な笑みを浮かべるなのは。しかし、次の瞬間には真剣な眼差しへと変わった。

 未だに動揺を隠せないフェイト。しかし、そうも言ってられない。

 未だ魔力が回復しきっていないまま、フェイトは雄叫びを上げて追撃に動こうとするも、動けない。

 集束型の上位魔法。『レストリクトロック』がフェイトの右手と両足首を拘束していた。

 

「ッ、バインド……!」

 

 仕掛けたとすれば、ファランクスシフトの時。

 フェイト自身もそうしたであろうことだ。

 そして、フェイト自身の記憶にある砲戦魔導師の次の行動は――砲撃。

 言わずもがな、目の前には完全砲撃体制で引き金に手を添えるなのはの姿。

 

 

――ディバインバスター・チャージショット

 

 

「ディバインッ、バスタァァァッ!」

 

 今まで以上に感じる魔力の濁流がフェイトへ向かう。

 フェイトは咄嗟にディフェンサーを展開する。

 

――着弾。

 

 今まで以上の威力と重さをディフェンサーが防ぐものの、濁流は尚もフェイトのディフェンサーを襲う。

 

……あの子だって、もう限界のはず。これを、耐え切れば……ッ!

 

 放射砲撃が続く。フェイトは恐ろしく長い間、砲撃を防いでいるようにも感じた。

 グローブは指先から破れていき、羽織っていたマントも吹き飛ばされた。

 

 そして遂に、放射砲撃は終わりを迎える。

 防いでいただけなのに、大分体力を持っていかれた。口で息をする視界の外で、破れたマントが光の粒を散らしながら海に落ちていくのが見えた。

 安堵の為か、フェイトは一息つく。

 

 しかし、一息ついたのも束の間。

 フェイトの周囲――否、ここ海上一帯から、極小さな光の粒が舞い上がっている。

 その光の粒は、先程見た破れたマントからも出ていたのをフェイトは思い出す。

 

 そしてその光たちは、次々と空へと昇っていく。

 まるで何かに吸い寄せられるかのように。

 まるで何かに集められているかのように。

 フェイトはそのまま空を見上げた。

 

『ねー双子。この方がえげつないと思うんだけど私は』

 アースラにいるなのはの友人たちも、その光景に口元が引き攣る。

『なのはさんマジパネェ』

『正直すまんかった』

『『魔法関係でふざけられないわこれ』』

『誰かあれ防げると思う奴挙手』

『フルドライブならあるいは……いや無理だわこれ』

『……この状況下でなら誰も無理』

『……おい。誰だ彼女に魔法教えたの』

『ユーノですしおすし』

「ひなた、逃がさないよ」

『おーのー……』

「(フェイトの方がまずかったかー……ごめんよフェイト)」

 

 

――巨星

 

 その言葉が相応しい事この上ない、天上の光。

 なのはの両肩の変則六角型ハードシェルは中央から左右のスライドして開き、巨星と共に光を吸い込んでいる。

 

【Starlight Breaker】

「(扱い切れずに集め切れなかった魔力は、両肩のタンクディフェンダーに吸わせて、自分自身に負担を掛けないようにする安全策。それが切り札その一)」

 

 フェイトの知る限りで、この光景を目にすることはただ一つ。

「集束……砲撃……ッ!?」

 そこそこベテラン魔導師であれば『集める事』は可能だ。

 しかし、即座に使い終えた魔力を再び利用可能レベルまで集めるのは『Sクラス以上』の技術とされている。

 

「使い切れずにばら撒いた魔力を、もう一度自分のところに集める」

 

 巨星の周囲を一筋の円環魔法陣が覆っていく。

 やがて円環魔法陣は回り、なのはがレイジングハートを振るうと、連動するかのように巨星の周囲を衛星のようにくるくると円環魔法陣は回り出す。

 

「レイジングハートとみんなとで考えた、『知恵』と『戦術』――最後の切り札ッ!」

 

 レイジングハートを振り上げる。

 なのはには『知恵』と『戦術』だけではない。

 これが。これこそが。今ここにある全てこそ――『高町なのは』そのものであるということを。

 全てを出し切り、フェイトに勝つために。教えるために。

 『本当の自分』を、始める為に!

 

「受けてみて! これが私の――全力、全開ッ!」

 

 フェイトは思った。

 負けられない。負けたくない。私はもう一度、母さんの笑顔を見たい。母さんの笑顔を取り戻したい。

 

……だからッ!

 

「ッゥゥゥァァァアアアアア!!」

「スタァァァライトッ! ブレイカァァァァァッ!」

 

 

――マルチディフェンサー

――スターライトブレイカー

 

 

 フェイトは最後の気力と魔力を振り絞り、五層の盾を展開する。

 対しなのはは、己が魔力さえも尽くさんとばかりの大集束砲撃を放つ。

 

 周囲を破壊し尽くさんばかりに海上の廃ビル群にもスターライトブレイカーの余波がぶつかり、倒壊する。

 フェイトの盾が、次々と割れていく。

 耐える間もなく。桜色の光は次々と盾を突き破り――

 

 フェイトを呑み込んだ。




・ずっと、きっと、もっと
金子節最高ッ!

・フェイトの詠唱「響け~」
原作よりパワーアップの証。
結果TV版よりも15基追加。

・スプレッドシフト&アクティブシフト
新しい魔法でgdるなら派生でいいじゃない。
応用が利くっていいよね。
アクティブのイメージはゲシュペンストキックかアトランティスストライク。

・一に射撃~
相方は謎の弓ズドン少女アサマチ。
マスコットはムッツリオコジョのユールくん
土曜夜17時、テレビミッドにて放送予定! (嘘)

・モードガンナー
設定段階では布部分が無い全身装甲バージョンのフォートレスモードだったり。
ありきたり過ぎて没。
ガンダムビルドファイターズで面白い武装があったのでイメージ拝借。
誰か書いてくれないかしら(チラッチラッ


 これで安心して終われる。
 辛い事実はないはずだったのに。
 最悪の状況は、いつも想像の斜め上を行くとは誰の言葉か。

――二十四話「総力戦」

 あの子が全力を出して、自分たちが全力を出さないなんて
 誰が言うものか。

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