回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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長らくお待たせいたしました。
SAOの二次創作見てたらマビノギしたく――げふんげふん。
今までに比べて少し短いかもしれません。


二十話「ジュエルシード」

――???

 

 耳に残るような痛みの悲鳴と、(つんざ)くような(しな)る音が扉を隔てたこちらへと聞こえてくる。

――あの子が。

 あの子が一体何をした。

 あの子はただ、ただ親のために動いていただけじゃないか。ただただ親の言葉に従って、最低限目的果たしているじゃないか。

 それなのに――それなのにッ!

 

――また一つの破裂音と、押し込めた悲鳴。

 

 ただでさえ戦って傷ついて、ただでさえ心身ボロボロなのに目的果たそうとして――

 何が使い魔だ、何が「一緒にいる」だ。

 主であるあの子を救えなかったら、使い魔(あたし)の意味がないじゃないか!

 

「おやおやァ〜?憤っているようですねェ?」

 

――最悪の時に、最悪な奴が来た。

 異様なまでにニヤついた細顔に長年日の当たっていないような白い髪。さらに白衣の上からも解る筋肉も欠片もないと錯覚させるような細い体。

 その背後にはギアナイトの姿がある。

――当然だ。

 彼が開発者であり、あたし達の協力者……

 

林育怪(しげなりあやし)……ッ!」

「随分と嫌われてますねェ?まぁ良いでしょう。貴女は手伝っているだけで関係無いんですし」

「あんたらが何を考えてようが確かにあたしにはどうでもいい。でもあの子が傷つくのだけは許せない」

甘い(あァンまい)ですねェ! ……ま、精々頑張ってくださいよっと」

 

 手をひらつかせ、怪は去っていく。

 私は『あいつ』止めようと中に踏み込もうとすると、『中へは入れなかった』。

 

「な……に……?!」

『家族であり主人(あるじ)を守る思想……惜しい! 実に惜しいッ! 狼でなければ我が仕手として迎え入れたかったが、致し方あるまい』

 

 鋼鉄に包まれた縄のような物があたしを縛り、縛られた私の体はピクリとも動かない。

 確かデータに在った技……

 

――割腹(かっぷく)投擲腸管(とうてきちょうかん)

 

……ってこれ腸かい!? い、いや、あいつ人間じゃないし。何かしらのコードだ。うん。

 

 そして今度は後ろに引っ張られる感覚……

 ちらりと見たその先は、一方通行型の携帯転送ポータルの光。

 

(じっつ)っに不本意だがッ! 白い小娘たちに助けを求めよ。

我が『正義』、貴様に託した!』

 

 解るはずのない、ギアナイトの悔しそうな顔を、

 転移に光の向こうに見た気がした。

 

 

 

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――私立聖祥大付属小学校3年1組

 

「はーい、っつーわけで……『第もう幾つかめんどいから数えなくていい回、八神嬢と日野少年をどのように盛大に歓迎しようか決めようぜ会議』始めるぞー」

 

 ここは私立聖祥大付属小学校の3年1組が教室。

 なのははもちろん、聖刃や巡……メタ的な発言をすれば、主要人物のほとんどがこのクラスに所属しており、そのクラス児童のキャラの濃さから『平成の綺麗な梅組』とも。

 別に射殺巫女や犬臭い忍者、全裸バカにセメント自動人形も、担任がリアルアマゾネスでもないので御安心。似たようなのはいるが。

 

 さて、『第(中略)会議』とは、一年の時にひなたと同級生であった者達と、その考えに賛同した現同級生が休学中のはやてとひなたをどの様に歓迎しようかという会議である。

 ちなみに数えていた回数は二十云々回辺りで数え間違えており、『もう面倒だから数えなくていいか別に』ということが決定したとか。

 正確には三桁に達していることに、解っていても誰も気にしていなかったりもする。

 

『短縮授業の土曜、放課後にお帰りパーティーを!』

『お前まだ諦めてなかったのか……』

『まだ諦めてなかったんだおねー』

『基本は抑えてくべきでしょ! 常識的に考えて』

「提案するのはいいが小心メンタルの先生のことも考えろなー」

 

 聖刃の言う小心メンタルの担任こと『御衣杏子(みごろもきょうこ)』。

愛称『あんこ先生』とは授業時は凛とした姿に惚れる生徒が多いものの、授業外での姿は小心者の小市民精神の塊で、出世云々よりも子供のための教育に全力になれる教師の鑑のような女性なのだが……上司に何かを申告する際は『全身全霊、命を賭す覚悟』と豪語するほど小心者なのかよく解らない覚悟するのだとか。

 

「まぁ、候補としては上々だな。むしろ今までこれをベースにしなかったことに古城さんは驚きなんですが」

『上条乙だお』

『古城がフラグメイカーか……もげろ』

「何もしてないのに罵倒が来るとは思ってなかったんですがそれは」

 

……むしろ昔のネットじゃお前ら二人が体現者なんだがなぁ……俺ん中じゃ。

 

 どこかのネット絵にそっくりな同級生との会話の裏。

聖刃の思考は『昔』――『転生前』の世界へと移っていた。

 聖刃の過去……かつて『――』だった男の人生は、最期を除いて、実に普通極まりない日々であったと断言できるほど普通の日々であった。

 生まれ、育ち、戸惑い、挫折し、立ち上がり、進み……止まり、死んだ。

 今でこそ、その死の瞬間しか記憶にない聖刃だが、その『最期』は確かに脳裏に刻まれていた。

 

……負けたくなかった。

……仕返してやりたいと思っていた。

……諦めたくないと、思っていた。

 

 負けないための『最優』と、反逆の『刃』……そして未練の『傲慢』を、聖刃は手に入れた。

 三つの刃を以って、『この世界の悲劇をなくす』なんて高尚な望みは持たず、ただ只管(ひたすら)に『満足のいく人生』を目指す。

 

……ま、なまじか力持ったもんだから目的すり替わってたけど。

 

 だからこそ、師である新谷巡には頭が上がらないし、この返しきれない恩を返し続ける。

――それでも少しずつ恩が重なっていってしまうわけだが。

 

(……それにしても)

 

 聖刃の脳内にはこの先の確定していない未来。

しかし起こりうるであろう未来の出来事に目を向ける。

 中心人物になるだろう親友と、その幼馴染達はどう対処していくのだろう。

――始まる前から解決、ということが無いだろうかと、思わず想像してしまったのは秘密である。

 

 

 

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 払う足が鈍く風を切る。

 足腰全体を回し、遠心力の力を得て勢いを上げる。

 そして少しずつ足を集め、全身をバネのように軽く畳み、ハンドスプリングで跳び上がる。

 猫の様に空中で一回後転し、ほっ、と息を軽く吐きながら着地。

少しずつ力を抜いて一息つく。

 

【結果。回転速度0.2%上昇、しかし総合疲労度5%上昇。改善を提案】

「うぇ、燃費悪ぅ……やっぱいつも通りが一番か」

【応答。特定言語「急がば回れ」を提唱。即時休養を提案】

 

 タオルを肩にかけ、スポーツドリンク片手に芝生の上に座るひなたの一連の行動。

 それは戦闘時の定点回避行動や、リバースセイバーに必要な動きの訓練であると同時に、ひなた自身の体力運動と技術向上を図ったことだった。

 しかし、無理に回転速度を上げればレオブロウの言うように溜まる疲労度の方が上回ってしまうのだ。

 それでは積み重なった疲労が緊急時の戦闘の時に最悪の結果を招くことを……実体験ではないが、レオブロウの観測結果や本の世界が教えてくれていた。

 

【観測。雨雲を感知。即時帰宅を提案】

「あー……もうそんな時間か。傘持って来といてよかったな」

【同意。事前情報は大事】

Jud.(ジャッジ) 情報は大事にしますので……ってか」

【忠告。類似点皆無。即時発言の撤回を】

「ネタにマジレスかっこわるい!」




2013/11/30:本文修正

>割腹~
知ってる人は知ってる、最強だけど使いたくない人。
ええ、コードデスヨ?

>平成の~
名付けたのは絶対カ○カミン。
いつからこんなカオスな連中がこの一クラスだけだと思っていた……?

>ネット絵に~
いつからモブが普通のモブだと思っていた……?

>始まる前から~
はいはい、フラグフラグ。

>忠告~
憧れらしい。
他にもA○Aとかセメント自動人形ズとか。
一位は角付きの人と“武○”さんらしい。




――二十一話「ドッグファイト」
造られた虚像の上で二人の少女はぶつかり合う。
鎌と槍。
速さと硬さ。
想いと願い。
互いに思うからこそ、譲れないものがある。
不屈と閃光。
ここに、決着。

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