回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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後編です
色々無茶苦茶かも……
そろそろクロスオーバータグを付けようかな……?
てか4000文字以上って……


十二話「月下の機械騎士」(Part:B)

 一方その頃。

なのは対フェイトの方と言うと――

 

 

 

「――ッ!」

「てぇぇぇぇえぇぇいッ!!」

 

レイジングハートを前に突き出す形でフェイトへと吶喊するなのは。

フェイトは『紙一重』で避け、追い打ちをかけようとなのはへと攻撃移動を仕掛ける。

なのはは身体を無理やり上空へと翻し、フェイトへと手を突き出す。

防護魔法と考えたフェイトはサイスフォームのバルディッシュを用いてアークセイバーを放とうとする。

 

「――」

 

 しかし、そこで背筋が凍った。

勘を頼りに自らの後ろ――上空へとラウンドシールドを展開する。

数発、射撃魔法の衝撃がラウンドにぶつかる。

更にフェイトはなのはの方へと、もう一枚ラウンドシールドを張る。

今度は長く重たい衝撃――なのはの砲撃魔法が二枚目のラウンドシールドに突き刺さる。

 

 

 フェイトは驚いていた。

あの森の上で出会った少女が、魔導師というには拙い戦闘をしていた少女が、自分が瞬殺したあの少女が、今度は自分を追いつめている。

 ただ飛行魔法で『飛んでいただけ』の子が、自分のような瞬発力のある飛行をしている。

魔法そのものも短調ではなく、全ての動作が次へ次へと続いて、連鎖している。

 それにしては独学特有の『隙』もある。

しかしそれを、デバイス自身が威力の低い射撃魔法で援護し、隙を突き返す。

 

……正直言うと、不気味だ。

 

 デバイスとの、文字通りの共闘状態。

デバイスは、マスターがいなければ何もできない。

未熟なマスターでも、デバイスがそれを埋めればいい。

一つのパズルのように組み合わさったその連携は、確かに尊敬に値する。

 

――しかし、だがしかしだ。

 

魔法に触れて、高々半年もしない未熟な魔導師が、年単位で魔導師の勉強をしてきた自分を圧倒するという事実。

――ああ、そうだ。認めよう、君は魔導師の天才だ。世にも珍しい、砲戦特化の魔導師だ。

でも、それでも。

勝敗に関しては、それとこれとは別の話。

 

……私だって、負けられないんだ。

 

母の為にも。頑張ってくれている自分の使い魔にも。

この感謝の気持ちと共に、報いなければならない。

 

 

 フェイトがラウンドシールドを消した、その背後。

カノンモードでトリガーを構えるなのはの姿が確認できた。

なのはがトリガーを引こうとする一瞬、フェイトの方は既にこちらへと『振り抜いていた』――サイスフォームのバルディッシュを。

 後ろを向く勢いでアークセイバーを放ったフェイト。それから逃れようと、防御しようとするが時すでに遅し。既に指は砲撃発射のトリガーを引いていた。

 

 なのはのディバインバスターとアークセイバーがぶつかり合い、爆発が起きる。

爆発の煙幕から、回転する金の三日月が飛び出る。

――煙幕の向こう。フェイトは振り抜いた勢いから、更にもう一度、体をひねり、アークセイバーを再び放ったのだった。

 

 なのはの防御は追い付かず、アークセイバーはなのはとの接触と同時にセイバーエクスプロードが発動し、爆発した。

なのははそのまま墜落し、その途中をユーノがホールディングネットをクッションにさせ、地面への激突を防いだ。

 

 

――なのは対フェイトの二戦目は、再びフェイトが白星を取る形で、奇しくも同じ魔法で終了したのだった。

 

 

 

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 時間は少し戻って、アルフ対ユーノ&ひなた。

機械騎士とフェイトの介入、若しくはその逆を防ぐためにユーノは自分を含む三人を、少し離れた小高い丘へと転移する。

転移の光が治まると同時に、アルフがユーノとひなたへと攻撃を仕掛ける。

 

「でぇぇぇぇえぇぇいッ!!」

【強化魔法:シャープエンハンスト承認】

「――ッ!」

 

アルフの拳を突き出した突撃を正面に、ひなたはシャープエンハンストで強化した感覚を使い、アルフの拳を掌で包んで掴み、下から掬い上げるようにひっくり返す。

 拳掴みである為ひなたは手を放すが、アルフは獣の身体能力を生かして地面に当たる前に体を返し、オレンジの毛並みのオオカミへと変化する。

 

 オオカミ形態のアルフはジグザグに動き回り、時折爪による攻撃を織り交ぜてくる。

ひなたはフェレットであるユーノを肩に乗せてアルフの爪を逸らしたり避けたりするが、徐々に魔法の効果が切れていく。

 それを勝機と見たアルフが今まで以上に強力で鋭い爪の突進を仕掛ける。

 

「これで終いだッ!」

 

「――その言葉、

そのまま返すよ」

 

――チェーンバインド・フォーメーション

 

 

小さくもはっきりとしたユーノの冷静な声の直後。

アルフの前後左右上下に、若草色のミッドチルダ式魔法陣が展開される。

対から対へ、若草色の鎖が繋がっていく。

その中心に挟まれたアルフは、ピンと張られた若草色の鎖で身動きが取れなくなっている。

 

「ひなたもいろいろ無茶だよね。確かに温泉で互いの特性を話し合ったけど、近距離の設置でしたやったことのない僕に『トラップを仕掛けろー』だなんて。それも自分が囮になるからって言葉付きで」

「あ、アンタたち……いつの間に……ッ!?」

「今後の戦いで、個人だけでなく複数人になることを考えてのコンビネーションを(あらかじ)め考えてたんだ。誰々との共闘ならこういう戦い方って」

 

 例を挙げるならば、なのはと聖刃。

万能型であると同時にそれなりに戦闘経験のある聖刃を中心に、なのはの援護射撃――前衛である聖刃の死角補助と言う形となり、近中距離全方位陣となる。

 更に例を挙げるならば、この二人(ひなたとユーノ)

発展途上でありながら、なのは同様必殺の一撃を持つひなたが構え、補助特化型のユーノが他を賄う。

寄らばユーノが捕まえてひなたが殴る。寄らなくてもひなたに寄られ、ユーノが捕縛し、再びひなたが殴る。

攻撃と補助がはっきりした戦闘スタイルとなっている。

この戦闘スタイルにクラウディウス・セイバーからは【まるでセラフの聖杯戦争、のマスターとサーヴァントのようだな!】とお墨付き(?)を貰った。

 

※数分後に聖刃から「日野がサーヴァント……ユーノの胃が死にそうだな」と言うコメントの後、彼にギガブレイク(と言う名の腹パン)が放たれた。

 

 

「女を殴るのは、俺ってば苦手なんだけど」

「ま、まさかこのまま放置じゃないだろうね!?」

「ギガブレイクぶっぱですが?」

「矛盾してないかい!?」

 

アルフのツッコミに、ひなたは「ニッカリ」と少し歪んだ笑顔……の幻覚をアルフは見た。

ただ解る。 この男は少し『愉しんで』いると。

 

「ノンノンノン」

「あ、もしかして敵だから容赦しない、みたいなこと?」

「イエスイエスイエス!」

「もしかして、このままぶっぱなすわけじゃ――ッ!?」

「イエスッ! イエスッ! イエスッ!」

 

無表情の奥の笑み(愉悦)と、無情とも思える灰寄りの黒い瞳が狙いを定め、

全身を引き絞り、右腕のナックルスピナーが金切り声を上げて回り出す。

 

【せめてもの情です。 SLG(スピナーリンクギア):1】

「なに、直接は殴らないさ――魔力を叩き込むだけ」

 

――ギガブレイク

 

 

ユーノの魔法ごと、ひなたの魔法の奔流はアルフを飲み込んだ。

一幕の間の後、ヨロヨロになったアルフが倒れていた。

 

「意識がなきゃ帰れないだろ?」

「――ッ! 感謝なんてしないよ」

「これで感謝したら変態確定だろ常識的に考えて」

 

 

怒る気力もないアルフは、人間態になってフェイトの言う方向へと向かい、

ひなた達も同様になのはの方へと向かい、そのしばらく後に墜落するなのはをユーノが助けたのであった。

 

 

 

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「どういうことだこれは……ッ!」

 

 勝敗は決した。

内訳は

 

・なのはvsフェイト

勝者:フェイト

 

・アルフvsユーノ&ひなた

勝者:Y&H

 

・聖刃vsギアナイト

勝者:

 

 

 

 

 

ギアナイト

 

 

 

はやての説明によると、聖刃の『千の隕鉄(ミッセ・メテオリーテース)』を防ぎきったギアナイトは、拳大の黒い球を聖刃に叩き込んだ。

それから何度も、何度も同様に叩き込んだ。

 聖刃のバリアジャケットのアーマー部分は特別硬く、大怪我には至らなかったものの見ていて気分の良いものではなかったと、はやては語る。

聖刃が戦闘不可と判断したギアナイトは――はやてを狙った。

それを間一髪で聖刃がギアナイトの攻撃は弾き、今度は戻ってきたひなた達を襲いだした。

ギアナイトの攻撃を避け、互いの陣営で分かれる位置となった。

仲間であるはずのフェイトやアルフは、非戦闘員であるはやてを狙ったことに驚きを隠せないようで、かなり動揺している。

ひなた達も、その真意を測りかねている所であった。

 それが、今のひなた達の現状だ。

 

「……ギアナイトは、あくまで『私の護衛』と言うことで母さんが連れて行くように言った。無論、ギアナイトは護衛として優秀で――」

「『護衛としては』、か」

 

フェイトの言葉の一部に、ひなたは反応する。

その言葉は、まるで護衛以外のことに問題があるような言い方であったことを、ひなたは感じた。

 

「――結界張る前から攻撃するんだよ。護衛対象であるアタシ達と、敵以外どうでもいいって感じでさ」

【傍迷惑もイイとこだなオイ……】

 

ギアナイトの戦闘時の様子を話すアルフに、聖刃の三本目のデバイス――クレラント・セイバーが心底嫌そうな声色で口を漏らす。

 

 

 

【テキ……ホロブベシ】

 

 

 

 デバイスのように流暢ではない電子音声が耳に触れる。

その方向には、未だ戦闘態勢を崩さないギアナイトの姿。

 

敵、滅ブベシ(てき、ろほぶべし)滅スベシ(めっすべし)散滅スベシ(さんめつすべし)

「こら、『殺戮機能付き護衛人形』ではなく、『護衛機能(不完全)付き殺戮人形』ですわ」

我ガ法故ニ、我ガ正義故ニ(われがほうゆえに、われがせいぎゆえに)我ガ悪、我ガ敵ハ滅ブベシ。(わがあく、わがてきはほろぶべし)消エルベシ(きえるべし)――殺スベシ(ころすべし)

「……ッ、性質悪(タチわり)ィ。独善かよ」

 

ひなたの呆れた声と、聖刃の苦虫を噛み潰したような声に欠片の反応を示さないギアナイト。

――が、しかし。

 

【シカシ、今ハ時ニ非ズ(いまはときにあらず)。撤退ヲ開始スル】

「――え?」

「んなッ!?」

 

間髪入れず、白線のみの透明なミッド式魔法陣がギアナイト、フェイト、アルフの足下に展開される。

 

「――ッ、フェイトちゃんッ!!」

「――、なの――」

 

なのはが手を伸ばすも、転移の光は無情にフェイト達を連れて消えた。

――ようやく近付いたはずの状況は、予想だにしない結果を以って、なのは達は静寂を迎えたのだった。




昔から何もできない自分が悔しくて、
ようやく念願の叶った――そう思っていた。

いまでもそれは、何も変わらなくて、
変えられない自分に憤りを感じる。


十三話「All/zero」


今でも忘れてはいけないことだから。
始まりを思い出して、全てを始まりから(zeroへ)

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