回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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誰お前がいろいろ


十一話「月下の機械騎士」(Part:A)

 アリサとはやてが超次元サッカーならぬ超次元卓球ではやてが勝利を決し、聖刃が漢の大砲勝負で最下位(ユーノ不参加)となった日の夜中。

 

ひなた、なのは、ユーノ、はやて、聖刃は旅館の庭へと来ていた。

その目の前には、黒衣の少女――バリアジャケット姿のフェイトと、人間の姿のアルフ。

 そして、2m半はあろう巨大な機械の騎士鎧。

月が近く大きい、そんな夜の中で白銀の騎士と黒衣の少女の逆光姿は、何とも言えない神秘さを醸し出していた。

 

「この前振りだね、フェイト嬢。それとアルフも」

「――うん、ひなたも」

 

ひなたの挨拶言葉に、フェイトは薄く微笑む。

その顔は、少し悲しんでいるようにも見える。

 その隣のアルフの顔も、少しばかり歪んでいる。

 

「ひなた……アンタ、魔導師だったんだね」

「半月も経ってないド素人だけどね。――ああ、はやては見学さね」

「よかった。少し、安心したかも……」

「おいおいはやてさん恐れられてますがな」

「早急に説明願いたいんやけど。主に誤解の方」

 

 おどけた表情と、少し悲しみを含んだ顔が会話し合う。

その光景を見る聖刃は、僅かな苦しみを感じた。

 

……あそこでも、楽しそうにしてたからな。あいつら……

 

 思い出すのは、自分とひなたが出会った、原作上重要人物の一人、フェイト・テスタロッサと使い魔アルフ。

ひなたが自宅に連れ込み、同級生と共に大騒ぎしたあのパーティー……聖刃自身も忘れるはずがなかった。

 フェイトの遠慮がちな笑顔に、アルフの心底楽しそうな笑顔。

そして、『この先起こりうる先の展開も』。

それがずっと頭から離れず、戦うと決めていた決意が僅かに揺るんでしまっていることを『自覚してしまった』。

あの笑顔を、楽しそうな顔を知らなければ、こういうことにはならなかったのだろうかと言う『if(もしも)』が頭にこびりついて離れない。

 そんな自分を置いて、少し前まで魔法の『ま』の字さえ知らなかった同級生は、いつもと変わらぬ調子で、今は敵の少女と話している。

 

……ああ、もう。色んな意味で羨ましいな畜生が。

 

その姿勢が、その心構えが。

聖刃には何よりも輝かしく思えた。

 

 

 

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「そっちのキミも、久しぶりだ」

「……うん、この前ぶりだね」

「私の答えは、今も変わらない。ジュエルシードは諦めて欲しい。……正直言えば、ひなたの知り合いであるキミを、できれば傷付けたくは――」

 

 互いこわばった表情のフェイトとなのは。

フェイトは最終勧告をしようとするが遮られてしまう。

遮ったのはユーノ―ではなく、ひなたでもなく――

 

「ちょい待ちや、フェイトちゃん」

 

――はやてであった。

覚えたての浮遊魔法で車椅子から立ち上がり、腕を組んだ姿は不思議と威圧感を感じる。

無論、そのはやての表情も真剣そのものだ。

 

「私はなのはちゃんの決意も聞いとるし、フェイトちゃんが並々ならん決意があることも感じ取れた。――でもな、誰々の知り合いやから、誰々の云々やからは、決意を持つ人に対しては失礼千万……要は譲れんモンがあるなら勝負せぇって話や!」

 

それはアニメや漫画では常識中の常識や! と真剣な顔から一変。にこやかに笑うはやて。

周囲の、一瞬の沈黙。

 確かに、人は昔から譲れないものを胸に戦ってきた。

それは今も変わらない。

ならばこそ、この場でやることは――

 

 

「――うん、ごめん。謝るよ、はやてと、白いキミに。私も譲れないものがあるから――戦おう。互いに譲れないものを賭けて」

 

「……うん。

――聖祥大学付属小学校三年生、魔導師……高町なのはッ!」

 

「――無所属、魔導師……フェイト・テスタロッサと使い魔アルフ、機械騎士ギアナイト」

 

「聖祥大学付属小学校三年、魔導師……日野ひなた」

「同じく、騎士……古城聖刃!」

「無所属、魔導師……ユーノ・スクライア!」

 

「――審判役、八神はやて」

 

 

――己が力を以って、証明するのみ。

大きく白銀に輝く月下、はやての声が響き渡る。

 

『戦闘準備――始めぇッ!!』

 

 

 

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 戦闘開始と同時に飛び出したのは白騎士こと『ギアナイト』

足、腰、背中のバーニアを吹かしながら、鍔と同一化している大剣を振りかぶり吶喊してくる。

同様に飛び出し、ギアナイトとぶつかり合ったのは聖刃だった。

 

「本邦初公開にしてぶっつけ実戦だッ! 気合入れろよセイバーズ!」

【問題ありません。我が主】

【オレも問題なしだ、マスター】

【余はいつでもいいぞ、奏者よ!】

 

 青い服装に銀紅の鎧、赤い腰マント。

手には『青い装飾の黄金の剣』、腰の後ろには『幅広の黄金の鞘』、背中には『黄金の剣と似通った大剣』と『芸術品のような赤黒く歪な大剣』。

荘厳を思わせるその姿は、聖刃の小さな背を大きく見せるほどの『何か』が見えた。

 それと対するギアナイトの大剣は黄金の剣とかち合い、鍔迫り合いが始まる。

 

「な、なんて馬鹿力だいッ!?」

 

 2mの機械巨人と小三男児。

体格的に一目瞭然の勝負は――真逆を指していた。

その光景に、飛び出そうとしたアルフが驚愕の声を上げる。

 

「ハッ! 俺よか、そこの無表情の方が力強いんだがなぁ!」

「流れ弾に乗じてギガブレイク放っちゃろうかあいつ」

「お前どっちの味方だよ!?」

 

軽口を叩きあう聖刃とひなた。

その間にも鍔迫り合いは続いてるものの、以前として均衡を保っている。

しかし、その近郊も崩れつつある。

――聖刃の黄金の剣が、押し返し始めたのだ。

 

「そろそろ一撃(アイサツと)いこうぜ、ナイト・セイバー!」

【ええ、わかりました。心無き白銀の騎士よ、覚悟しろ】

 

 均衡を崩し始めた鍔迫り合いの中で、聖刃の黄金の剣――ナイト・セイバーの刀身が黄金に輝き出し、聖刃の足下に三角形のオレンジ寄りの黄金の魔法陣――橙金(ダンディライアン)のベルカ式魔法陣が展開される。

 

 

「ちょいと力技だが――」

【それもまた戦いだ!】

 

――極 光 一 閃(ライトニングカリバー)

 

 

鍔迫り合いから振り抜かれた力の奔流がギアナイトを飲み込む。

その後方にいたフェイトは既になのはと空で対立しており、アルフは極光を避けつつもユーノとひなたに迫る。

 ギアナイトは極光の中を、腕を交差、防御しつつ極光を突き抜ける。

しかし、極光を突き抜けた先には木々の空間が広がるのみ。

――聖刃の姿は無かった。

 しかし、ギアナイトは聖刃の魔力反応を追う。

それはすぐに見つかった。――肥大化する魔力と共に。

 

「星間飛行ならぬ()()()()だ!」

【墜ちよ星々ッ! 天地を華々しく飾るが()い!】

 

――千 の 隕 鉄(ミッレ・メテオリーテース)

 

 

華々しくも歪んだ赤黒い大剣――クラウディウス・セイバーが突き立てた魔法陣を中心に魔力で構成された長剣が無数に展開され、ギアナイトへと降り注いだ。

 

【厳格ながら流麗なその身形(みなり)、月下に映える白銀の鎧と黄金の装飾……実に好みだ! しかし、しかしだ! 大きさが惜しい、実に惜しい! もう少し低ければ持ち帰っておったのだが……】

「一般家庭の一軒家に西洋鎧なんか置けるかっての……」

 

ギアナイトのいた位置が土煙に包まれる中、

クラウディウス・セイバーの賞賛に納得しつつも、聖刃は苦労の溜息を吐いたのであった。




聖刃君は色々メタ担当
扱いやすいのは彼なのは秘密

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