読み難かったらごめんね
※2013/08/23:色々追記、封鎖結界→封時結界 接敵→交戦
――既に策はあります。
そう言ったデバイスと言う存在。
おいそれ嫌なフラグじゃないよな、爆発フラグじゃないよな、と内心少しびびっていたひなたも、この策に乗るしかなかった。
作戦内容は、デバイスが幻を見せて怪物の隙を作る。
その隙に、はやてとひなたが茂みに隠れ、『盾』を展開。
しかし幻は短時間、広くない範囲でしか発動しないため、発動している間にデバイスとひなたの契約を完了させる。
デバイス曰く、『計算上は間に合う』と言うことらしい。
【幻術魔法:オプティックハイドの範囲圏内からジュエルシード融合体が離れるまで約300秒。それまでに契約を実行してください】
「契約っつったって……どうすれば」
「魔法的に契約の言葉とかかな?」
「んなことが【肯定。契約には音声入力、若しくは最初から設定されている形となります】……あー、うん。音声入力ね」
……一瞬魔法っぽいかと思ったら、それ以上の超科学でござったの巻。
この時代の音声入力と言えば、電子端末や声紋認識ぐらいなもの。
ひなた達が話しているデバイスと言う存在は、それよりも遥かに凌駕した科学技術で作られたものだと容易に想像できた。
【そう言えば、お名前を聞いていませんでした】
「言われてみれば……俺は日野ひなた」
「私は八神はやて言うんよ」
【検索該当。日野ひなたは既に私のマスター登録がなされています】
「……はい?」
【私のマイスター……製作者は、アカシ・ヒノ、日野ひなたの姉君です】
「……わーお、超展開パート2ですかそうですか」
「ひなのお姉さん、凄い人やったんやなぁ」
眉を顰めず、目頭を押さえるひなたと感心するはやてを、それよりも、とデバイスは会話を遮る。
【それそろ許容限界です。あと56秒後には融合体がオプティックハイド効果範囲外に出ます。急ぎ契約を】
「一分切ってるじゃねぇか……で、どうすればいい」
【時間がありませんので最短契約いたします。少し失礼を】
デバイスの言葉にひなたは、何を言って、と言いかけるがそれは叶わなかった。
ちょうど心臓辺りから、とても温かいものを感じた。
何か覚えがある。そう、例えば――
……ああ、そうだ。母さんの腕の中のような……そんな温かさだ。
少しばかり薄まった記憶の向こう。
その温かさを、この身体は憶えていた。
抱いてくれた母の温もりを、背負ってくれた父の背の温かさを、頭を撫でてくれた姉の手の温かさを。
そんな家族の温もりを、この身体は
【リンカーコア、リンクシステム、オールグリーン。MCエンジン、SCサブエンジン共に正常稼働。では、貴方の心に浮かんだ契約の言葉を】
促すデバイスの、言葉の行先。
ひなたの脳裏には、ただ一言。
「――
――ああ、ヒトの子よ回せ、
時刻をサカシマに、
死滅を
世界を
回せ、回せ、回せ回せ回せ……ッ!
ただ一言に込められた【逆転】の詠唱。
循環の始まり、流転、輪転。
『日野ひなた』の身体中を魔力の本流が円環のように、
通りの良い水路のように巡りまわる。
【契約完了。『おはようございます』、戦闘行動を開始いたします】
無機質なデバイスの電子音声がそう告げると同時に、ひなたの姿が変わる。
白基調のインナースーツに赤紫のラインの入り、黒の赤ライン付き長ズボンと同色のショートジャケットを身に纏い、黒に亀裂のような赤い枝のラインが入ったフロントオープンスカートが腰から広がっている。
胸には前方に尖ったスモールプレートアーマー、背中には二本のアンテナのようなフィンユニットが折り畳まれており、頭には後頭部を経由した耳を覆うヘッドホンのような機械と、顎の輪郭を保護する牙のような装甲が装着されている。
最もたるは四肢。
機械の手のようなアーマーグローブの手首には大きな黄金の円環が二重づつ。
同様に足のアーマーブーツの足首にも黄金の円環が二重づつ。
計八つの円環は、時折ホイールのように回転している。
【八神はやて嬢の周囲にサークルプロテクション+の使用を提案】
「ああ、なるべく堅くな」
【申請了解。サークルプロテクション+展開】
ひなたが片足で地面を踏み鳴らす。
その瞬間、踏み鳴らした足の円環が回りだす。
はやての足下に赤紫色の『三角形の頂点を円で覆った魔法陣』が現れ、そこを起点に半球型で半透明の壁が現れる。
……いや、矛盾しすぎやデバイスさん! 科学と魔法って別もんとちゃうんか!?
どこの人口超能力学園都市のラノベや、と我ながら場違いな言葉が出てきそうになったはやてだが、通常なら混乱している場面で、はやての頭は冷静そのものであった。
……さて、これがデバイスさんのゆーとった『盾』やな。魔法を前提とすれば、この『盾』は範囲系防御魔法やろな。
暇な日々で培ったゲーム知識や漫画知識が思わぬところで役立ったと、はやては思った。
知ってて何ができるわけでもないが、無ければ本当に彼の足手まといとなってしまう。
咄嗟の状況に強くなったのもついさっきの話なんやけど、と思わず苦笑する。
【注意。
「応。カウンター系の魔法は付けられるか?」
【魔力攻撃に対してのみ使用可能。頑張って避けてください】
「しれっと見捨ててるだろお前」
【何のことですか?】
デバイスとひなたのやり取りに、仲良しだとはやては思った。
いや、これはひなたの方がデバイスに合わせているのかもしれない。
そう感じていたはやてだが、ひなたの後方から大きなモノが迫ってくるのを感じた。
――ヤツが来た、と。
「六……いや、七時方向」
「うむ、頼む」
【了解。『シャープ・エンハンスト』】
ひなたの体の表面に赤紫のオーラが薄く纏わり付く。
その脳内では、既に周囲の音、自身やはやての筋肉の動き、前方から迫る大きな気配が手に取るように解る。
【忘れていました。『封時結界』発動】
「んく……ッ!」
デバイスの相変わらず無機質な声と共に、鋭敏化したひなたの感覚が自身から抜けるのを明確に感じ取る。
すると、ひなたを中心に大きく『何か』が広がっていく。
『何か』が広がりきると同時に融合体――
ひなたは急いで避けようとするが、その先にはやての姿があり、いくら堅めの防御魔法を張ったとはいえ壊されないとは限らない。
ひなたの選択肢は、
――跳ね返す? 否、三つ足とはいえ戦車並みの大きさの突進力には抵抗できない。
――逸らす? 以下同文。
――ならば。
「合気だァァァゥラァァァッ!!」
【申請確認。物質操作魔法:アースポール、強化魔法:ブーステッド・パワー、限定結界魔法:フローターフィールド、加速魔法:ブリッツラッシュ承認】
玉頭骨の足下に、罠のように仕掛けられた三角形の魔法陣から土の柱が突出する。
走った勢いと、斜めに突出した土の柱によって前のめりに
その下を潜り、行先に壁のように設置された魔法陣の足場を三角跳びの要領で上へと『跳ね返る』。
玉頭骨の後方直上まで跳ね上がったひなたは玉頭骨の尾を掴み、その勢いのまま玉頭骨を地面へと叩き付けた。
『GULLLAAAAAAAAA!』
頭頂部らしき部分を地面へと叩き付けられた玉頭骨は、この世の者とは思えない叫び声をあげる。
その声量に、思わずはやてとひなたは耳を抑える。
しかしひなたはそのまま後上へ、下から腕を上げる。
下から
それに呼応するかのように、振り上げた右腕の円環が火花を散らすように対に回りだす。
【
「お客様、お休みになる際はァッ!」
【お静かにお願いします】
――ギガブレイク
全身を引き絞るように打ち出された拳打は魔力を背負い、そのまま威力へと転換させる。
巨大な金属が大きな岩を叩き壊すような音の後、玉頭骨は何かを吐きだし、殴られた方向へと砕けながらその姿を霧散させていった。
霧散した場所には自分たちを襲ってきた男が倒れており、その傍には青い菱形の宝石の姿があった。
【ロストロギア:ジュエルシードと確認。限定封印します】
その言葉と共に、青い宝石は檻のように囲い回る円環魔法陣に包まれる。
円環の檻に囲まれた青い宝石は右腕のアーマーグローブへと入り込む。
その直後にホイールが緩く回り、その隙間から排熱するように煙が噴き出す。
【ジュエルシードNo.12封印完了】
デバイスの言葉が、先程までの異常事態が終わったことを、明確に記していた。
『回せ回せ~』
みんな大好きワラキアさんのセリフから引用改変
『SLG:~』
スピナー・リンク・ギア:~
スピナーの回転率を操作するキーコード
1から順に、軽・重・臨
3である臨界突破はFD仕様のため限定封印中
『物質操作魔法:アースポール』
スターダストフォール的な魔法。
土の柱が飛び出る。
『ギガブレイク』
拳打型の近距離強化砲撃。
未来の後輩スピナーナックルさんの十八番をさらに近距離した感じ。
SLG:1でAランクぐらいの防御なら壊せる。