回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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新版四話です
伏線伏線……(露骨)


四話「小学三年生(+2)の日常」(リメイク)

 五月に入り、春らしい陽気が肌を包む。

 新春新学期と騒がしかった商店街も治まりを見せ、時折吹く涼しい風が冬の残滓を感じさせる。

 

……何処ぞの脳内花畑(フラワーヘッド)も、この風みたいに冷静なところがあればなぁ……

 

 脳裏にぷりぷりと怒る茶色いツインテールが浮かんだが、それも些細なことだろう。

 しかし、春には変なものが沸くと言うのが通説。

 変質者だったりなんだったり、

 

「ドッグフードって……高いんだね」

「うう……ゴメンよぅフェイト……アタシの腹がうるさいばかりに……」

「平気だよアルフ……あれ、川の向こうに私に似た子が――」

「ふぇ、フェイトォォォッ!!?」

「(アカン)」

 

 行き倒れと出会う奇運だったりだとか。

 

 

 

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 ちょうど八神家に遊びに来ていた巡とまりに金髪少女の容体を見せる。

 快く巡は引き受けてくれたが、

 

「というわけでまり様、診察よろ」

「まり様言うなし。あと私は錬金術師……一応科学者であって医者じゃ――」

「翠屋のシュークリームで」

「患者は何処だー!」

「お主と言う奴は……」

 

 チョロい。錬金術師がチョロいのか、単純にまりがチョロいのかはさて置き、診察は始まった。

 そんなこんなで診察された“フェイト”という金髪の少女の結果は、栄養失調。

 五日もほっとけば疲労骨折できるレベルとまりは言い、骨折の言葉に金髪の少女と、“アルフ”と呼ばれた茜色の髪の女性は表情を青くしていた。

 

「多少基礎が出来てるからいいものを……適度な休憩と栄養補給は馬鹿にできないんだぞ? 実際、研究に没頭しすぎて四日飲まず食わずでぶっ倒れた私が言うんだ間違いない」

「つまらん胸を張るな阿呆。……しかし事実だ。今お人好し共が昼食を作っている。馳走になるといい」

 

 そんな迷惑は掛けられないと言いたげな少女に対し、無駄じゃ無駄じゃ、と巡は一蹴する。

 巡は、何せ……と続けた頃にひなたとはやて、二人を手伝った聖刃と八留夫が料理を運んでくる。

 

「――彼奴ら、“お人好し過激派”であるからのう」

「料理作ってきたのに過激派と言われた。訴訟」

「ほう、“お節介強硬派”の方が良かったか」

「変わんねーじゃねーかこのスッタコ」

 

 事実じゃろう、と口を三日月に笑う巡に対し、くそう! くそう! と顔を覆うポーズをするひなた。

 異議なし、というまり、八留夫、聖刃三人の追撃の止め(とどめ)に、ひなたは、

 

「はっちゃんはっちゃん! 乙女系錬金術師と女顔剣士と饅頭お化けがいじめる!」

「誰がタコやフォルァ」

「なんという四面楚歌。日野ひなたの明日はどっちだ」

「こっちだぜ」

 

 この後無茶苦茶くすぐられた。

 

 

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 夢を見た。

 嬉しくて、悲しくて、複雑な、そんな夢。

 

 私とあなたは友人同士で最後の最後まで戦い抜いた戦友。

 喧嘩して、笑い合って、騒いで……朱色の髪の、綺麗な女の人と結ばれて。

 

 泣き別れにはなったけど、なんでか悲しくなくて。

 次に出会ったのが金髪で、頭の良さそうな、凛としたカッコいい女の人。

 

 それから、子どもが生まれて……

 鏡を前にした“私”が言う。

 

――■■■■、母さんをよろしくな。

 

 もしかしたら、この人は……――

 

 

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 時刻は夕方。

 日が落ち始めた夕暮れ時に少女……フェイト・テスタロッサは目を覚ました。

 最後の記憶にあるのは、今までとは違う、のんびりとした時間。

 腹を出して(いびき)をかく自分の使い魔に苦笑し、反対側を見ると、目の前に自分たちを拾ってくれた男の子の顔がすぐ近くにあった。

 

 思わず声を上げそうになるのを何とか抑え、自分の頭の下に敷いている棒状の枕が、彼の腕だと理解した。

 その反対側には同じように車椅子だった女の子が、同じく少年の腕枕ですやすやと寝ている。

 その向こう。ソファーで寝座っている色白で大柄な少年と、波打つ金髪の少女の、また向こう。

 

 テーブルで水を飲む、女の子みたいに綺麗な顔をした男の子がこちらに気付く。

 しかし、フェイトは警戒した。

 全員が全員、そこそこ以上の魔力を持つ中で、明確に魔力を持っていたのが、“セイバ”と呼ばれていた女顔の少年だけ……つまりは、

 

 

……彼は、魔導師だ。

 

 

 顔に出ていたのだろう。苦笑のまま念話が飛んでくる。

 

『(そう警戒すんなよ。なんもしねぇし、する気もねぇ)』

 

 ここで何かあったら、他の皆に迷惑がかかる。

 出来るはずが無く、人質なんて恩を仇で返すようなもの。

 彼らに、迷惑を掛けられる訳がなかった。

 

『(こちとら無所属の見習い魔導師。親が元魔導師ってだけだ。そう警戒すんなっての)』

『(……一応は信じる)』

『(そいつは重畳)』

 

 肩を竦める少年を余所に、フェイトは帰る準備をする。

 その際に、セイバから釘を刺すように念話が届く。

 

『(コイツらを、哀しますマネすんじゃねぇぞ)』

『(……心配しないで――)』

 

――今日楽しかった(感じた)時間(刹那)は、絶対に忘れないから。

 

 そう言った時に、見開いた顔の彼は、なかなか見ものだった。

 

 未だに(いびき)をかく使い魔を揺すり起こし、拠点へとフェイトは戻っていった。

 

 

 そして――

 

 

「……鎌繋がりで、ってか? マジかよ……勝てる気しねぇ……」

 

 彼の目に映ったフェイトの姿は、どこか蒼く、青く、碧く。

 自身の知る限り、別世界で最強枠に入る存在を写し見た気がしたのだった。




・びんぼうフェイトソン
※大体アルフのせい

・ブラック・マリッ○によろ(ry
外科:まり
内科:巡
※研究ついでの知識

・お人好し過激派orお節介強硬派
類義語:平和主義過激派、妖怪世話されてけ

・夢
ひなたの両親(番外小説参照)と関わると言ったら類似点の多い彼女に。
戦闘スタイル的に白騎士さんっぽいけどこっち。

・みんなでお昼寝
あのあと目茶苦茶お昼食べ(ry → そのあと目茶苦茶スマブラ(ry
→クソネミ(‐ω‐)スヤァ






 さぁ、物語が動く時が来た。
 無機質な超常の世界へと踏み入る時が来た。
 万全な気持ちで、心して挑め。

次回、回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)
第五話「奔走の二人」

 この日、この時より。
 彼らは魔導の道を歩む。

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