現在のことは知らない。
未来のことは知らない。
ならば、私はなにを知ればいいんだろう?
連続投稿楽しい(アカン)
-
「取り乱して、ごめん…」
「一度、メンテナンスする必要があるみたいです…」
しばらく
そんな一変した心境になった彼らは、ようやく
そして、橋を渡ってる間、
「推測:心配性」
「…私が?」
「肯定」
商業施設内に辿りついた頃、突然投げられたポッド042の推測に、思わず頭を傾げて疑問に思う2Bであった。ただ、彼女が足を滑らせて、落ちてしまわないか気になっただけ。単に彼女が怪我しないように、確認しただけ。これが、心配性だというのか?ぐるぐると考えが頭の中で処理され、結論を出せないまま目的地についてしまうのがオチだった。だが、もしかしたら、ポッドの推測は間違っていないかもしれない。
アカネに関わると、なにもかも気になって仕方がないのだから。短髪のアンドロイドは、静かに結論を下し、依頼に専念する事にした。
-
商業施設跡を越えた先に、アネモネが言っていた、キャンプを設置したいという地点に到着。アカネの安全のためにも、一度ポッドたちに敵の位置をスキャンしてもらったが…予想通り、近くに多数の機械生命体が身を潜めていた。
アカネが目を覚ますまで、パスカルが言っていた、ネットワークから切り離された別の
身を隠してる機械生命体も、きっと森のヤツらだろう。前に交戦した時、国を守るとか、国王を守るとか、遥か昔の人類の真似事をしてるとしか聞こえない発言ばかり。人類の文明や歴史を破壊した、エイリアンの手下でしかない機械のくせに、なにをふざけた事を。考えれば考えるほど、怒りがこみ上げてくる。
「2B、気持ちは分かりますけど…ちょっと、抑えたほうが…」
「…!悪い、気がつかなかった」
控えめに2Bの袖を引っ張り、アカネに気づかれない程度の音量で呟く9Sの話を聞き、一瞬で正気に戻り、慌てて謝った。この気配を、彼女に気づかれるわけにはいかない。どこまでも純真で、一点の曇りもない彼女を、怯えさせたくない。ヨルハ機体でも、比較的に感情豊かな9Sもそれを考慮して、持ち前の気軽さを有効利用し、出来る限り、アカネを
ヨルハ部隊の規則、感情を禁ずる規則は、もしかしたら、本当に正しいのかもしれない。
前者が正しいのか、それとも後者こそ正解か、2Bには分からなかった。今は、考えても仕方ない。まずは、目の前にいる問題を解決しよう。それが、当初の目的を果たそうとしてる2Bの考えだった。
「今から戦闘に入る…アカネは、ここで待機して」
自分や9Sと一緒にしゃがみ、偵察に付き合ってくれた彼女の両手を、包み込むように、祈るような形で握った。壊さないように、割れ物を扱うような、極めて軽い力で握る。今の2Bにとっての、一種の安全装置に等しい。以前ならば難なくこなせる任務や依頼でも、アカネと短い同行を経て以来、彼女の安全を確保せねば、胸のざわめきが収まらない。
特に、彼女と再会するまでの間なんて、嫌な想像ばかり演算され、
徐々に変化を見せる2Bを目の当たりに、隣で見ていた9Sは安心したように、笑みを零す。アカネのおかげで、今まで思いつめていた2Bもようやく、生きる目的を得たようだ。長期に渡る地上での活動で、二人は様々な体験をしてきた。エイリアンを滅ぼし、機械生命体を壊し、人類に栄光をもたらすアンドロイド。それは間違いなく、自分たちのことを示してる。
人類、人間、ヒトのために奔走してる僕らは、
そしてもっとも奇妙な出来事は、
だから、あなたの命は、僕らで…僕と2Bが、守ってみせる。
「うん、分かった」
「アカネさん、役に立つかは分かりませんけど…これを」
返事を返したアカネに頷き、2Bは握り締めた手を戻した直後、横にいた9Sはポッド153に目を配り、とあるものを彼女に渡してもらった。長く硬いそれは、アカネにとって非常に見慣れた物体だった。人間ならば、誰しも見た事ある物、しかし実際に手に取るのは少数のみで、
「鉄パイプって、やっぱり重いな…」
「僕たちが片付けに専念してる間、あなたの身に危険が訪れるかもしれませんので、いざという時は役に立つはずです」
そう言って、9Sは自分の手を彼女に重ね、彼女がしっかりと鉄パイプを握れるように、導く。やや分厚い手袋越しに、少しだけ冷えてしまい、しかし暖かさが残った手に触れる。そう、これが、
ちゃんと鉄パイプを手にしたのを確認し、彼女に微笑みを向けたあと、2Bと共に立ち上がり、胸の前に手を置き、ヨルハ部隊の言葉を口にする。
「人類に栄光あれ!」
本当は、あなたのための栄光と、言いたかった。けど、自分達を奮い立たせるために、この言葉を口にするほうが、より効果的だ。自分達は、ヨルハ部隊なのだから。
ああ、アカネは、なにを言い返すだろう。戸惑う?頭を傾げる?それとも、いつものように……
「いってらっしゃい、2B、9S」
穏やかな口調で囁き、微笑みかける。二人の想像通り、彼女は、自分達を奮い立たせる
体に染みる信頼、体の奥に
- 依頼遂行
「んー……丸いね」
破壊され、地面に散らばる機械生命体のパーツの一つ、丸い頭部を見つめ、アカネはしゃがんでそれを指で突いた。ちょん、ちょん、と数回軽く突く。やけに冷たくて丸い頭部を食い入るように弄り、面白そうに小さく笑っていた。持ち上げようと、鉄パイプを隣に置き、両手を差し込んではみたものの、自分では到底持ち上げれない重さだったらしい。拗ねたように唇を尖らせ、頬を膨らます姿を、2Bと9Sに見られたら、また
ならば、なぜアカネは機械生命体の残骸を調べてるのか?理由は至って簡単、彼女は退屈していたからだ。果たすべき使命を持ってる二人と違い、彼女には明確な目的を持っておらず、ただ、外の景色を見るためについてきただけなのだ。崩壊した地上、荒れ果てた世界の一部、かつての自分も暮らしていた居場所。どれだけの月日が過ぎたのも知らない、世界の事情も知らない、これからの行く末さえも知らない。
果たしてそれは自分の行く末か、世界の行く末か、はたまた
「……キミも、そう思うでしょ?」
静かに転がる頭部に触れ、小さく、呟く。
しゃがみ続けるヒトは、
- 依頼完了
そっと遠くにいる2Bと9Sに視線を向けると、すでに周囲を確認する彼らの姿が目に入った。どうやら身を潜んでいた機械生命体の破壊を終え、依頼の大部分を完了させたようだった。それに気づいたアカネは立ち上がり、パシパシと自分の服に付いたであろう埃を叩き落し、置いていた鉄パイプを拾い上げる。それを杖代わりにして、地面に刺し、残ったほうの手を上げて左右に振る。
「アカネさーん、終わりましたー!」
彼女の動きを見た9Sは応えるように、晴々とした笑顔で両手を頭の上にかざして振りながら、大きな声で彼女に話しかける。丁度周囲の確認を終えた2Bは、はしゃいでる9Sを見て、やれやれという風に笑みを零した。そこで、2Bはなにかを話し、9Sはハッとしたように、その後すぐに頷き、一緒にアカネの元へ帰った。
はて、一体なにを話していただろうか?と不思議に思ったアカネは腕を下げて、人差し指を唇に当て、頭を傾げた。聞き出そうか?黙っていようか?帰ってから聞こうか?やはり聞かずにいようか?
……よし、聞こう。
「なにを話していたの?」
唇に当てた指を維持し、口角を上げて、いつもの調子で聞いてみた。また新しい動作を確認できた二人は、少しだけ驚いたように数秒の沈黙に陥ってしまう。だがそれもすぐに回復し、大した事ないですよ、と9Sがさきに答える。ここでアカネは、困ったように眉尻を落す。彼女の変化に気付き、孤立させたのかと誤解されると思い、慌てて訂正する言葉を考える。だが、2Bはさきを越して答えた。
「早くあなたのところに帰ろうって、話しただけ」
「そう!だから、大した事じゃないですよ!ね、2B?」
「うん、そうだ」
なんだ、そうだったのか!と再び笑顔に戻った彼女を見て、胸を撫で下ろす。なぜ慌てていたのかは、よく分からない。ただ、彼女に誤解でもされて、悲しませるようなことになるのが嫌だった。知りたがりの彼女は、本当に、自分たちを慌てさせる天才だ。
それよりも、長い移動をしてきた彼女に、一刻も早く休ませてあげようと思い、早急にレジスタンスキャンプへ戻ろうと考えた。
アカネは自分達と違い、生身の人間で、体力にも限界がある。人間には、個人によってそれぞれの限界を持ってると
「依頼もこなしたから、レジスタンスキャンプに戻って報告しましょう!」
「了解。アカネ、行こう」
「うん!あ、この鉄パイプはどうする?」
「レジスタンスキャンプに戻るまで、持っていたほうがいい、せめてもの保険だ」
「そうですね、ヤツらがまた襲ってくるかもしれませんから」
「二人がそう言うなら、持ったほうがいいね!」
会話を交わす三人はゆっくりとした足取りで、来た道に戻り、森林地帯の入り口から離れた。初めて人類と共にこなした依頼、2Bと9Sはこの
あの人たちと違って、あなたはここにいる。
手放せ、と命令されても、従える自信がない。
だって、僕はもう、あなたと2Bなしで生きていく自信さえ……
アンドロイドにも恐らく、個体差があるだろう。
2Bと9Sが、もっとも分かりやすい例。ある意味、特別個体とも言える存在。
彼女の心境的な文章も出せて、ほっとしてます。
ますます謎を増やしていく姿勢は…アカンやつ…
しかも話の続きが詰んでるェ…(ペッタリと地面に倒れた)
今回は『虜』に変化なし、よってデータは非表示。