人形は闘う、人類の栄光のために、地球奪還のために闘う。
ネタ切れになりそうな作者は、錯乱した言葉を残した。
ヨコオさんお誕生日おめでとうございます、いつも
- 散歩逃避行
2Bと9Sが離れていったのは、どのくらい前の事だろう。
「案外丈夫だね、触れただけでも崩れそうなのに」
浮いてるポッド042のあとに続いて、壁に触れながら進む彼女はそっと呟く。なにかと物に触れたがり、まるで子供のように物に触れないと気が済まないとも言える癖を持ってる彼女だからこそ、非常事態でも平然とこんな真似ができるかもしれない。呑気な呟きをしてはいるが、隙間と建物内での移動速度を落とさないところを見て、常人の危機感は持ち合わせてるらしい。
外で流れる水の音を聞き、そちらの方向に顔を向けながら、前へ進む。不意に、瓦礫に足をぶつけ、躓き倒れそうなところ、ポッド042は彼女の腕を引っ張った。
「警告:散らばる瓦礫に注意」
「ありがとう。ごめんね、ヨニ」
引き続き移動に移るが、浮遊してるポッド042は未だアカネの腕を掴んで離さない。一体どうしたのだろうか?と不思議に思った彼女は、眉尻を下げ、戸惑ってるように見えた。
「…一人で歩けるよ?」
「否定:アカネの注意力は低下している、一人ではまた転ぶ」
「……子供扱いしてる?」
「不明:アカネは立派な成人女性、子供扱いの定義が不明。要求:2Bおよび9Sと合流するまで、身の安全を確保する」
腕を掴んだ手を離し、代わりに浮かぶ高度を下げ、彼女の手の近くまでくれば、そっと、非常にやんわりという風に手を握り、エスコートするかのようにゆっくりと前へ進む。過保護になりずつあるポッド042の行動に、何も言わず、さきほどの悔しさも忘れ、彼女は微笑みを浮かべて頷くだけだった。
危機が未だ訪れない、平穏な逃避行を続く最中でも、ポッド042は速すぎず、遅すぎず、彼女の歩幅に合わせて移動している。どんな
大事な
-
建物、瓦礫、残骸、機械のパーツ。コンクリートに囲まれ、広場となってる一箇所は草むらと、破壊し尽くされた機械の部品が辺りに散落していた。ガラクタに囲まれ、中央に佇んでいるのは黒いアンドロイドが二機、片手は武器を握り、胸は上下に動き、息切れしていた。
「はぁ、はぁ……っ敵の殲滅を、確認」
「…ええ、終わった…みたいですねっ…」
互いの背中を合わさって、残った機械生命体がないかを確認し、辺りを見回す。再度安全を確認した二人は胸を撫で下ろし、随行システムを使い、背中あたりに浮く光る輪の中に武器を収納させた。
殲滅が完了し、2Bはすぐポッド153に彼女との連絡を入れさせた。どれだけの時間が経過したのか、戦闘に集中していた二人には覚えがなかった。ゆえに、保護対象である彼女の安否がいかなるものかも、まったく分からない。張りつめられた空気の中、ようやくポッド042との通信が繋がり、映し出された画面には、頭を傾げているアカネの姿が見えた。
ああ、よかった…彼女は無事だ。ゴーグルをつけていてよかった。二人は同時に安心し、同時に提供された装備に感謝を捧げた。感情の所有を禁じられてるアンドロイドは、いついかなる時でも冷静さを求められている。たとえ対象が
だが、いざ彼女の姿を目に映すと……
自分でも信じられないほど、笑みに満ちた顔になるからだ。彼女に見せたくなかったのも、恥じらいという感情のせいだ。
「わっ…すごいハイテク!音声届いてる?2Bさーん、9Sさーん?アカネだよー?」
画面にいるアカネの頭は左へ、右へとゆらゆらと動き、好奇心豊富な子供のような動きを見せていた。動きに連動し、さらりとした長い髪も揺れ、視線をやや遮る前髪を指でそっと、耳にかける。普通でならない、アンドロイドもよくある行動パターンの一種。だが、二人にとって、とてつもなく特別らしい。
「…っもう、あなたって人は…」
「本当、仕方ない人ですよ……」
「警告:本機の視覚センサーに異常あり。2B、および9S両名の心拍数上昇を確認。原因:アカネの不明な破壊力。解決:通信映像の保存、ループによる耐性の習得」
不明の原因で
ああ、アカネ、もしかしてほかの人類がまだ存在していたら、あなたのような人間は何人もいただろうか?思考回路に支障が出現したらしい二人に、考えつくものなど、それしかなかった。もしかすれば故障や支障などではなく、禁じられた、
ここで、ハッと意識を引き戻す二人であった。
「そうだ、アカネさん怪我は?今どこにいるんですか?」
「怪我一つないよ、安心して。場所は…近くに鉄塔があって、大きな谷と、向こうにショッピングモールみたいな建物が見えるところ」
「分かった。アカネ、そこで待ってて。今すぐ、
まずは彼女の状態を聞く9Sに続き、現在位置も確認した。アカネの描写が間違っていなければ、おそらく彼女はいま、商業施設へ向かう唯一の通過点、鉄塔付近の橋、その近くにいる。通信越しに届いた音声の中に、彼女の声以外にも、滝の音が僅かに聞こえるのだ。アカネのところへ向かう、と言い放つ2Bの声を聞き、画面に映し出されたアカネは目蓋を閉じて、期待の笑みを浮かべる。
「うん、待ってる」
あまりにも、幸せそうに見える笑顔は、まるで、愛しい者の到来を待ち望んでる
「必ず迎えにいく、だから、もう少しだけ待ってて」
- アダムとイヴ②
「なぁ、にぃちゃん。なんでずっとあの人間を見てるんだ?」
「人間は興味深い生き物だ、なんでもその中には他者を
「そうなのか?でも、あの人間となにか関係あるの?」
「あの『アカネ』という人間は、私が言った『他者を魅了する者』に当てはまる人類だ。彼女の動き、言葉一つで、アンドロイドさえ容易く魅了したのは想定外だが……ああ、実に、興味深い!」
「にぃちゃんがそう言うなら、俺も会いたくなった」
「近々『アカネ』と会う予定だ、そう焦らなくていい」
「うん、にぃちゃんがそう言うなら、大人しく待つよ」
「いい子だ」
その頃、
アンドロイドの背中に出る、あの光る輪っか、武器を浮かせるシステムは、本当に随行システムかは未だ分かってません。
※まだ設定資料集を手に入れてないため、暫定、独自設定/解釈とします※
虜にされた者、統計:
虜の予兆、統計:
不明: