人形、ヒト、機械   作:屍原

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ヒトは駆ける、危機に満ちた大地(地球)を駆ける。
人形は闘う、人類の栄光のために、地球奪還のために闘う。

ネタ切れになりそうな作者は、錯乱した言葉を残した。
人類(機械生命体)に、栄光(滅び)あれ!





ヨコオさんお誕生日おめでとうございます、いつも素敵(残酷)なゲームをありがとうございます。シノアリスめっちゃ楽しみにしてます。


人形と人類は廃墟都市を駆ける

- 散歩逃避行

 

 2Bと9Sが離れていったのは、どのくらい前の事だろう。ポッド042(ヨニ)の指示に従って、建物の中で身を潜め、幾度か場所を移し変えても、二人と合流できてない。不安…を感じてるわけでは無いが、ほんの少しだけ、心不足のほうが正しいかもしれない。不確定な表現をしてるのは、アカネ自身でもよくわからないからだ。

 

「案外丈夫だね、触れただけでも崩れそうなのに」

 

 浮いてるポッド042のあとに続いて、壁に触れながら進む彼女はそっと呟く。なにかと物に触れたがり、まるで子供のように物に触れないと気が済まないとも言える癖を持ってる彼女だからこそ、非常事態でも平然とこんな真似ができるかもしれない。呑気な呟きをしてはいるが、隙間と建物内での移動速度を落とさないところを見て、常人の危機感は持ち合わせてるらしい。

 

 外で流れる水の音を聞き、そちらの方向に顔を向けながら、前へ進む。不意に、瓦礫に足をぶつけ、躓き倒れそうなところ、ポッド042は彼女の腕を引っ張った。

 

「警告:散らばる瓦礫に注意」

「ありがとう。ごめんね、ヨニ」

 

 持ち主(2Bと9S)不在の今、彼女を守れるのはポッド042、己のみだと承知してるゆえに、彼女が怪我せぬようにと気を配らなければならない。幸い今に至って、当該する敵である機械生命体は一機とも遭遇しておらず、まだ安全は確保されており、彼女ら一行の動向はまだ掴まれてないらしい。

 

 引き続き移動に移るが、浮遊してるポッド042は未だアカネの腕を掴んで離さない。一体どうしたのだろうか?と不思議に思った彼女は、眉尻を下げ、戸惑ってるように見えた。

 

「…一人で歩けるよ?」

「否定:アカネの注意力は低下している、一人ではまた転ぶ」

「……子供扱いしてる?」

「不明:アカネは立派な成人女性、子供扱いの定義が不明。要求:2Bおよび9Sと合流するまで、身の安全を確保する」

 

 腕を掴んだ手を離し、代わりに浮かぶ高度を下げ、彼女の手の近くまでくれば、そっと、非常にやんわりという風に手を握り、エスコートするかのようにゆっくりと前へ進む。過保護になりずつあるポッド042の行動に、何も言わず、さきほどの悔しさも忘れ、彼女は微笑みを浮かべて頷くだけだった。

 

 危機が未だ訪れない、平穏な逃避行を続く最中でも、ポッド042は速すぎず、遅すぎず、彼女の歩幅に合わせて移動している。どんな思い(システム)で決めたのか、そんなものはどうでもよかった。

 

 大事な保護対象(彼女)が無傷でいられるのなら、システムとプログラムにない行動をしたって、構わなかった。

 

 一機(ポッド)一人(彼女)の逃避行は、まだまだ続く。

 

 

 

- 依頼殺戮行(感情発見行)

 

 建物、瓦礫、残骸、機械のパーツ。コンクリートに囲まれ、広場となってる一箇所は草むらと、破壊し尽くされた機械の部品が辺りに散落していた。ガラクタに囲まれ、中央に佇んでいるのは黒いアンドロイドが二機、片手は武器を握り、胸は上下に動き、息切れしていた。

 

「はぁ、はぁ……っ敵の殲滅を、確認」

「…ええ、終わった…みたいですねっ…」

 

 互いの背中を合わさって、残った機械生命体がないかを確認し、辺りを見回す。再度安全を確認した二人は胸を撫で下ろし、随行システムを使い、背中あたりに浮く光る輪の中に武器を収納させた。

 

 殲滅が完了し、2Bはすぐポッド153に彼女との連絡を入れさせた。どれだけの時間が経過したのか、戦闘に集中していた二人には覚えがなかった。ゆえに、保護対象である彼女の安否がいかなるものかも、まったく分からない。張りつめられた空気の中、ようやくポッド042との通信が繋がり、映し出された画面には、頭を傾げているアカネの姿が見えた。

 

 ああ、よかった…彼女は無事だ。ゴーグルをつけていてよかった。二人は同時に安心し、同時に提供された装備に感謝を捧げた。感情の所有を禁じられてるアンドロイドは、いついかなる時でも冷静さを求められている。たとえ対象が仲間(アンドロイド)でも、創造主(人類)であっても。

 

 だが、いざ彼女の姿を目に映すと……

 

 自分でも信じられないほど、笑みに満ちた顔になるからだ。彼女に見せたくなかったのも、恥じらいという感情のせいだ。

 

「わっ…すごいハイテク!音声届いてる?2Bさーん、9Sさーん?アカネだよー?」

 

 画面にいるアカネの頭は左へ、右へとゆらゆらと動き、好奇心豊富な子供のような動きを見せていた。動きに連動し、さらりとした長い髪も揺れ、視線をやや遮る前髪を指でそっと、耳にかける。普通でならない、アンドロイドもよくある行動パターンの一種。だが、二人にとって、とてつもなく特別らしい。

 

「…っもう、あなたって人は…」

「本当、仕方ない人ですよ……」

「警告:本機の視覚センサーに異常あり。2B、および9S両名の心拍数上昇を確認。原因:アカネの不明な破壊力。解決:通信映像の保存、ループによる耐性の習得」

 

 不明の原因で胸が疼き出す(ときめく)アンドロイドは下唇を噛み締める。直後に、2Bは両手で顔を覆い尽くし、9Sは両手を背後に合わさり、仕方ないという風に恥じらいの苦笑いを浮かべる。そして、通信の画面を映し出してるポッド153も、故障でもしたのかと疑われるほど、おかしな発言を述べていた。最大の原因であるアカネは意味が分からないように、またもや頭を傾げ、ニコッと口角を上げて、二人の反応を窺う。

 

 ああ、アカネ、もしかしてほかの人類がまだ存在していたら、あなたのような人間は何人もいただろうか?思考回路に支障が出現したらしい二人に、考えつくものなど、それしかなかった。もしかすれば故障や支障などではなく、禁じられた、かのもの(感情)が現れ始めてる症状なのかもしれない。

 

 ここで、ハッと意識を引き戻す二人であった。

 

「そうだ、アカネさん怪我は?今どこにいるんですか?」

「怪我一つないよ、安心して。場所は…近くに鉄塔があって、大きな谷と、向こうにショッピングモールみたいな建物が見えるところ」

「分かった。アカネ、そこで待ってて。今すぐ、そちらに向かう(迎えにいく)から」

 

 まずは彼女の状態を聞く9Sに続き、現在位置も確認した。アカネの描写が間違っていなければ、おそらく彼女はいま、商業施設へ向かう唯一の通過点、鉄塔付近の橋、その近くにいる。通信越しに届いた音声の中に、彼女の声以外にも、滝の音が僅かに聞こえるのだ。アカネのところへ向かう、と言い放つ2Bの声を聞き、画面に映し出されたアカネは目蓋を閉じて、期待の笑みを浮かべる。

 

「うん、待ってる」

 

 あまりにも、幸せそうに見える笑顔は、まるで、愛しい者の到来を待ち望んでるヒト()のようだった。ドキリと、心臓の鼓動にも似た音が響き、アンドロイドの動きは一瞬のみ、止まった。そして、揃って言う。

 

「必ず迎えにいく、だから、もう少しだけ待ってて」

 

 

 

- アダムとイヴ②

 

「なぁ、にぃちゃん。なんでずっとあの人間を見てるんだ?」

「人間は興味深い生き物だ、なんでもその中には他者を魅了(虜に)する者がいたらしい」

「そうなのか?でも、あの人間となにか関係あるの?」

「あの『アカネ』という人間は、私が言った『他者を魅了する者』に当てはまる人類だ。彼女の動き、言葉一つで、アンドロイドさえ容易く魅了したのは想定外だが……ああ、実に、興味深い!」

「にぃちゃんがそう言うなら、俺も会いたくなった」

「近々『アカネ』と会う予定だ、そう焦らなくていい」

「うん、にぃちゃんがそう言うなら、大人しく待つよ」

「いい子だ」

 

 その頃、機械生命体達(アダムとイヴ)はどこかでアンドロイドと同行してる人類を観察していた。




アンドロイドの背中に出る、あの光る輪っか、武器を浮かせるシステムは、本当に随行システムかは未だ分かってません。
※まだ設定資料集を手に入れてないため、暫定、独自設定/解釈とします※

虜にされた者、統計:アンドロイド3名(2B、9S、司令官)ポッド1名(ポッド042)
虜の予兆、統計:ポッド1名(ポッド153)
不明:機械生命体2名(アダム、イヴ)

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