人形、ヒト、機械   作:屍原

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※彼女が散歩に出た時と、同時進行してる2B側の話です※

森の最深部には古びた城があった、とても旧世界の文明とは思えないほど古いお城。
人形は城に侵入し、機械らの王を殺めるだろう。

たとえそれが、思いもよらぬ出会いに繋がるとしても。



……長らく前書きを書いてなくてなにを書けばいいのか分からなくなってきた。


人形は主要任務を遂行する

- 再確認(変化)

 

  時間を遡り、丁度彼女(アカネ)が散歩に出かける僅か前に、任務(メインストーリー)を遂行中の2Bと9Sはすでに森の国に侵入した。遠くに見えるあの城を目指す道中、案の定森の機械生命体(兵士)たちに道を阻まれ続けた。常に行く先に現れるソイツらは、どいつもこいつも「国のため」と、彼女達にとって意味を成さない類の言葉を口に、無謀に襲ってくる。2Bたちはそれを目にすると、うんざりするのだ。

 

「なんで飽きもせずに襲ってくるんですかね…」

  恐れを知らなず、わらわらと寄ってくる兵士との戦闘中、サポートを勤めてる9Sはハッキング間際に頭を傾げ、疑問を口にした。前方で接近戦を繰り広げ、彼の言葉を耳にした2Bは武器を振るい、最後の一機を破壊した頃に「私たちが知る必要のない情報だ」と述べ、宙に止まった刀を背中に納めた。彼女たちは闘うことだけに専念すればいい、闘って、闘って、地上にいる機械生命体を一機残らず殲滅する。だから余計なことを考えない、任務を遂行することのみ頭に置けばいい。

 

  なぜなら私たちはアンドロイド(闘う兵器)、地球を奪還する(かなめ)だから。

 

  敵の残党がいないかと辺りを見回しながら、9Sは苦笑いを浮かべて彼女の側まで戻り、困った口調で話し出す。

 

「もう…そうな事言ってると、アカネさんが悲しんじゃいますよ?」

  アカネの名前を出され、重苦しい思考から抜け出した2Bは今度こそハッと気を戻した。私たちはもう、ただの兵器じゃない。闘うためだけに作られたとしても、今は新たな意味を与えられた者だ。それを与えてくれたのは間違いなく、地上で唯一の生き残り、私たちの創造主、アカネ。彼女を守るための、アンドロイド(守る者)として存在してる。

 

  きっと9Sは、こう言いたかった。彼に視線を向けると、心なしか、とても穏やかな笑みを浮かべてるように見えた。気楽な彼はいつも笑顔を絶やさないというのに、なぜこんな風に見えたのだろうか。

 

「…そうだな、気をつける」

「本当、2Bは真面目すぎです」

「そうデザインされてるから」

「それ言い訳になってませんから!」

  闘いのあとに残るのは、常に虚しさと静寂だった。こうして二人で談笑できるなんて、昔の彼女たちなら考えられないことだったろう。一人で行動を続けた2B、スキャナータイプ故に同伴を持たない9Sと、突如姿を現したたった一人の人類。それは彼らに大きな変化をもたらした。

 

「それじゃ、さっさとあの城を調べて戻りましょうか!」

「うん、アカネを待たせるのは良くない」

 

  脳内に彼女の姿を思い浮かべて、B型(バトラータイプ)の彼女とS型(スキャナータイプ)の彼は再び足を動かし、森の奥に聳え立つ城へと向かった。

 

「アカネに、栄光あれ」

「アカネさんに、栄光あれ」

  いつの間にか決められた言葉(誓い)を、口ずさみながら。

 

 

 

- 襲撃(殲滅)

 

  あっという間に、彼らは大きな広場に到達した。やや遠くに見えるあの固く閉じた大きな扉はおそらく、パスカルたちの村と繋がってる道なのだろう。もう一方は、城と繋がる大きな橋が建てられてる。扉を一瞥すると、二人は大橋を渡ろうと足を動かしたが、騒つく木々の音を耳にした彼らは、音が鳴った方向に顔を向く。

 

「警告:機械生命体群、および大型機械生命体一体の接近を検知」

「いよいよお出ましですか…!」

  ポッドの警告に身構える二人は、機械生命体が襲ってくるであろう方向に体を向き、距離を保つためにゆっくりと後ろへ下がっていく。木々の揺れは接近し、音も大きく鳴り響く。その時、奥の木々から鳥の大群が一斉に飛び上がり、まるで嵐の前兆を知らせているようだった。次の瞬間、小型の機械生命体が次々と姿を現し、槍をこちらに向けながら特攻してくる様は、まさしく中世の兵士のようだった。

 

「この先を行かせる訳にはいかぬ!死ねい!アンドロイド!」

  6体の機械生命体によって構成された隊列で突進し、どれもが殺意を身につけ、真っ赤に染めた目で2Bたちに襲い掛かった。遅れて後方から『ズドンッ!』という地響きと共に、大型二足の機械生命体が装甲をつけた両足に電気を流し、兵士群と共に迫ってきた。

 

  命知らずの機械を見つめ、目にも留まらぬ速さで刀の柄を握り、一切の戸惑いもなくそれを振り下ろす。飛ばされた衝撃波は先頭に立った機械生命体に命中したと同時に、2Bは地面を強く蹴った。深い切り口が刻まれた機械生命体がよろめいた時、そのイノチはすでに虚無へと返された。上下に分断され、虚しく地面に倒れる機械生命体を見ることなく、高貴な黒を身に纏ったアンドロイドは次々と機械たちを撃破し、慈悲も情けもなくただひたすら斬るのみだった。

 

「怯むな!王国の侵入者を許すな!」

「国のため!王のため!」

「うおおおおおおおッ!」

 

  まだ標的となってない兵士は、仲間をコロシタ(2B)に向かって一斉に槍をつけ、怯むことなく猛進していく。槍が当たると思われた瞬間、黒い姿は残像となり、姿を消した。キョロキョロと辺りを見回すが、どこにも2Bの姿がない。彼らが気づくよりも先に、上空へ移動した2Bに叩き潰され、大きな断片と破片と化していった。風圧を感じ取り、回避行動を取った直後、ギリギリではあるが大型機械生命体の足払いを避けた。

 

「2B、耐電薬を投与してください!」

「分かった!」

  サポートしてくれる9Sの言葉に従い、さっそくポッド042に耐電薬を投与してもらい、戦闘を継続した。ずっと小型剣を使用していた2Bは、大型機械生命体を一瞥し、すぐさまポッドに次の命令を渡す。

 

「ポッド」

「了解:大型剣『百獣の剣王』を摘出。該当武器:レベル4、最大の威力を誇り、大型機械生命体の殲滅に最適と判断する」

  白の契約を収め、己よりも長く、重量のある大型剣の柄を両手で握り締めて、両足を広げる。すると彼女は百獣の剣王を後方に浮かせ、ぐるりと体を回してからまたもやその柄を握り、姿勢を低くして大きな一撃を撃つつもりだった。彼女の行動を察した9Sは、攻撃が撃ち出せるまでの時間を稼ぎ、すぐさま援護射撃を始めた。2Bから注意を逸らした大型機械生命体は、走り出した9Sを目掛けてまた移動を始めた。

 

「アンドロイド!死ねぇ!」

  ズドン、と一歩踏み出し、電気を纏った衝撃波を避け、攻撃を溜め終えた2Bを視界の隅に映す。後ろへ大きく跳ねて、大きな声で「今です、2Bッ!」と叫ぶ声に、大型機械生命体は後ろへと振り返った。回避行動を取ろうと体を傾けるが、2Bの速度に敵わず、目前まで迫った彼女に回転切りで両足の電気装甲を外され、いくつかのダメージをまともに喰らった。さらに追撃の回転切りを喰らい、重心が傾けた大型機械生命体は地面に倒れた。起き上がろうと一本の足で大地を踏みしめたところ、いつの間にか上空に現れた9Sが目に入った。

 

「これで、最後だッ!!!」

  機械が切断された音がその場で響き渡り、最早大きなガラクタと化した大型機械生命体の上に着地した9Sは後退した。機械生命体と距離を保ち、かつ2Bと再び合流した時には、ガラクタはすでに大きな爆発によって、跡形なく消え去った。

 

  辛うじて残された部品の数々(お金と素材)を拾い、今後役に立つかもしれないモノをポッドに収納してもらった。アイテム等を拾い終えた2Bは後ろに振り返り、笑顔の9Sに声をかけられた。

 

「ナイスです2B!」

「9Sこそ、いいとどめだった」

 

  互いを褒める二人の顔に、緩やかな微笑みがあった。それは果たして機械生命体を撃破した喜びか、はたまた一仕事終えたものか。他の者こそ分からないが、きっと二人は『ある者』を思って、笑顔を咲いたに違いないだろう。

 

 

- (味方)

 

  大橋を渡り、城壁にたどり着いた二人はそこに設置してあったアクセスポイントに自身のデータをアップロードし、城の内部へ突撃する前に予めバックアップデータも用意し、いざという時があっても『今の自分』を無くさないように処置を施した。いつも通りの手順ではあるが、今の二人にとっては、また別の意味が加えられた行動でもある。今の自分が消えてしまえば、きっと彼女は悲しむだろう。アンドロイドは義体と自我データさえあれば、不死身に近い存在だ。

 

  だけど人類の世界において、義体(替わり)なんて存在せず、一度壊されたら(死んでしまったら)、二度と舞い戻ってくることはない。だから、これは一種の保険でもあり、咎めでもある。己の命を容易く捨てないための、彼女のための咎め(誓い)

 

「じゃ、早速中に入りましょうか」

  これからの行動を確認するように、二人の目的を口にする9Sの言葉に頷き、片手に白の契約を握りしめて、広い城門を潜った。

 

 

 

  ──戦闘継続、及び城内での探索を省略──

 

 

 

「2B、ここで一旦所持品を整理しましょう」

「…分かった」

  城の最深部に到達し、王の間直前でアクセスポイントを発見し、ずっと探索と戦闘を繰り返していた二人はようやく一休みできるらしい。両手を高く上げ、体を解すように背伸びをする9Sを見て、2Bも手足を確認するように伸ばす。準備運動にも似た動作と、所持品を確認するのは、彼らがこれから向かう場所がそれほど危険だと示してるのだ。

 

  森の国、このエリアの機械生命体を取り締まる唯一の存在、森の王。幾度も機械生命体たちの口から出てきた「王様」という言葉は、間違いなく二人が向かう先にいる者のことだろう。万が一なにかあっては遅い、そのために身体チェックと、所持品確認である。

 

「それにしても、やけに静かですね…」

「気をつけて行こう」

「賛成です」

  一通りもチェックを終えたのか、先程から周囲を観察していた9Sは感想を告げ、辺りを見回す。それに対して、ずっと階段の先を見つめていた2Bも頷きながら、一歩を踏み出す。きっと階段を登った先で、自分たちの望む景色が広がっているだろう、このエリアの総大将が視界に映るだろうと。

 

  しかし、城の最奥へ進んだ二人が目の当たりにするのは、機械生命体の幼児だった。

 

「これが…王様?」

  きっとなにかの間違いだろう、出なければ、こんな小さな機械生命体が森の王なわけがない。軽く混乱状態になった9Sは、ぐるぐると脳を回転させ、ありとあらゆる状況を想定するも、どこにもこの現状に当てはまる物を見つからず、ただただ立ち尽くしていた。その時、不穏な気配を感じ取った2Bは反応が鈍くなった9Sを引っ張り、森の王から距離を取った。

 

「2Bッ…!?」

 

  ザシュ、ドーン!という音が連続に響き、ようやく我に帰った9Sと、警戒態勢を取った2Bの視界に映ったのは、四〇式斬機刀で森の王を貫いた、長い銀髪のアンドロイドだった。

 

「あれは、アンドロイド…?しかもヨルハタイプ!?」

「ヨルハ特殊指定機体を確認。破壊を推奨」

  突如の出会いと、連絡を渡してきた司令官曰く、目の前に佇んでるヨルハタイプのアンドロイド、部隊から脱走した者、さらには追撃部隊を撃退し、仲間殺しをしてきた者だと告げられた。

 

  すなわち、目の前に姿を現したのは、紛れもなくアンドロイド(自分たち)の敵だと。

 

  同じく警戒態勢を取った9Sは『A2』の名を与えられたアンドロイドを睨み、なぜ裏切ったのかと叫ぶ。

 

「裏切った…?それは、司令部の方だろ」

  A2はゆっくりと剣を上げ、剣先を2Bと9Sに向けて、この世を呪わんとする声色で伝える。

 

 

 

 

 

「アイツを…姫を見殺しにした司令部が、裏切ったんだろ!」

 




ようやく登場できたA2、そして意味深な発言…
ところで、姫って誰?
A2「お前に聞かれる筋合いはない」

アクシデントによるハードディスクデータ吹っ飛び事件最中なので、次回のお話を上げるのは、また大分先になるかもしれません…
本当に、申し訳ありません…

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