ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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次元移動魔法

 俺の名前はカロン、ただの一般人だ。ここは少し前に設立された連合魔法研究部門。

 この作品は完結しているはずなのだが、誰かが何となく書きたいというパッションに導かれてまた書いてしまったらしい。

 ………開き直り過ぎではないのだろうか?

 

 俺達は以前に俺達を陥れた奴らの黒幕に対する対抗策として次元昇華魔法を研究していた。俺が大団長を務めていた頃に始めた研究だ。

 俺達の研究はなかなか進まなかった………のだが。

 

 「うーん、なんとも案外いろいろなことが出来るものですね………。」

 

 彼女は大魔王リリルカ。研究の責任者も兼ねていた。そろそろ過労で倒れないか俺は心配している。

 俺は今日ここで彼女から研究の成果の報告をされていた。

 

 「面白いものだな。」

 

 俺達は次元昇華魔法は使えるようになっていない。しかし代わりといえるのだろうか?

 次元移動魔法という謎の魔法が使えるようになってしまったのだ。

 

 「軽々と使ってしまっては何が起こるかわかりませんね。誰かの意見も聞いてみましょうか。」

 

 魔法が使えるようになったのはベルだ。

 次元移動魔法、一体何が出来るのだろうか?

 

 ◇◇◇

 

 「次元移動魔法か。おそらくそれは他の次元に移動出来る魔法だな。」

 

 「どういうことでしょうか?」

 

 俺達は誰かを呼んできた。誰かはリリルカによると案外変な知識を持っているらしい。

 

 「この世界(二次元)にはいくつもの世界(作品)がある。それはおそらく他の世界に渡り歩くことが可能な魔法だな。」

 

 「具体的には?」

 

 「具体的に言うわけにはいかない。まあ実際に使ってみればわかるとしか。他の国に移動する魔法とでもイメージすればわかりやすいかな。」

 

 ふむ、ということは以前に俺がハッタリで言っていた転移魔法のようなものか。

 俺達には一体何が出来るのだろうか?

 

 「俺達には何が出来るのだろうか?」

 

 「うーん、お前の役に立つ使い道となると………私の知る限りではステータスの復元なんかに使えるかも知れないな。」

 

 「なんだと!?どういうことだ!?」

 

 「お前は最近リュー様から逃げる為にステータスを欲しがっていたな?私の知っている奴でそれが可能かも知れない相手が一人だけいる。異世界であらゆる問題を解決し続けてきた英雄だ。」

 

 「教えてくれ!」

 

 「うんいいよ。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 俺はあのあと誰かに魔法の使い方について詳しく聞き出した。

 そしてステータスの復元が可能な相手の座標位置を詳しく聞いて移動して来たところだ。

 

 今ここには俺とベルと誰かの三人がいる。

 今は薄暗い夕暮れ時、黄昏れる逢魔が時。不気味に伸びる三人の影。

 舗装された道に俺達はいる。

 

 「変なところですね。僕たちの知っている世界とはまるで違うみたいです。」

 

 ベルがそう話す。ベルの言う通りだ。

 緊張する俺とベルは辺りを注意深く観察する。誰かだけはゆるい雰囲気を醸している。

 

 「何が起きるかわからんな。」

 

 「ええ。」

 

 「そこまで警戒する必要はないよ?」

 

 ゆるい誰か。

 

 「俺達の世界に何の用だ?」

 

 「「何者だ!?」」

 

 突然俺達の後ろに何物かが現れる。くそ、逆光で顔が見えない。ただその目だけが不気味に黒ずんでいる。

 馬鹿な!?高レベルのベルがここまで近づかれるまで気付かなかっただと!?

 俺達は相手の戦力を見誤ったのか!?誰かだけは相変わらずぼんやりしている。

 続けて語る突如現れた何者か。

 

 「俺はこの世界の人間だ。今感じた次元の断層のズレからあんたらが異なる世界から来たということはわかっている。あんたらはこの世界に何しに来た?」

 

 その言葉に誰かが一歩前に出る。

 

 「私達は連合という組織の人間だ。私は誰かでこちらがカロンでこっちはベルだ。私達はお前に用があって会いに来たんだよ。暴れたりはしないから警戒しないでほしい。」

 

 俺達は相手を油断なく見る。ベルは俺の横で万一のための臨戦体制をとっている。

 相手は移動してその容貌があらわとなる。

 腐った目に頭に立つ一本のアホ毛、見た目は強そうに見えないが油断するわけにはいかない。

 

 「何の用だ?」

 

 彼は俺達にそう聞く。俺は彼に答える。

 

 「その前に一つ教えてほしい。お前はどうやって俺達の後ろをとったんだ?ベルは強者のはずだ。」

 

 「あれは忍法、ステルスヒッキーだ。」

 

 「忍法、ステルスヒッキー?」

 

 忍法、俺の記憶が正しければタケミカヅチの地元の秘技だったはずだ………。確か忍者と呼ばれる特殊な職種の人間のみが使える技のはずだ。

 

 「ああ。」

 

 「お前はすると忍者なのか?」

 

 「いや?違うでござるよ?ニンニン。」

 

 「何!?どういうことだ?なぜお前は忍者でないのに忍法を使えるのだ!?そしてその喋り方は一体何なんだ!?」

 

 その言葉に不敵にニヤリと笑う相手。

 

 「忍法くらい朝飯前だ。なにしろ俺のレベルは15。ソードスキルのユニークスキルもすべて使えるし英霊の座にも登録されている。ブラックトリガーも百個所持しているしなんならあと8回変身を残しているまである。」

 

 「なんだと!?」

 

 本当なのか?レベル15!?リューの倍以上ではないか?インフレにもほどがあるだろう!ユニークスキルとか英霊の座とかブラックトリガーとか変身とかは意味わからんが。

 隣を見るとベルが震えている。くそ!どうすればいいんだ!?

 俺は思考する。レベル15が真実ならば俺達に勝ち目は存在しない。交渉は可能なのか?

 

 「まあそれはいいとして何の用だ?」

 

 やはり彼は聞いてくる。交渉してみるしかないか。

 

 「俺達の用は消された俺のステータスの復元が可能なのかどうかということだ。お前はあらゆる問題を解決してきた英雄だと聞いている。」

 

 俺は油断なく相手を見る。

 

 「お安いご用だ。その程度の問題ならばぱっと思い付くだけで解決する方法は250通りほどある。」

 

 「なんだと!?」

 

 250通りだと!?奴は化け物か?レベル15は伊達ではないということか!?

 

 「まあそのうち249通りは外道の業だから実質は一通りだな。」

 

 「どうやるんだ?」

 

 「なに、簡単だ。地球の自転を逆回転させて時間を巻き戻せばいい。」

 

 「馬鹿な!?」

 

 自転を逆回転させるだと!?そんなことをしたら環境が激変して世界が滅んでしまうではないか!?

 それに自転を逆回転させるのはどこかのアメコミヒーローの技ではなかったのか?あれ?違ったか?ちょっとよくわからないな。

 挙げ句の果てに簡単なことだとか言っている。どれだけ化け物なのだ!?

 

 「俺に不可能はない。あんたの懸念事項もなんら問題ない。」

 

 本当なのか?

 俺は誰かを見やる。頷く誰か。どうやら本当らしい。

 

 「………頼めるのか?」

 

 その言葉にやはりニヤリと笑う相手。

 

 「物事を頼むには対価が必要だ。」

 

 「その通りだな。お前は何を望むのだ?」

 

 「なに、簡単だ。あんたらは連合の人間だと言っていたな?俺もその連合とやらに入れてほしい。」

 

 「………何の目的だ!?」

 

 意味がわからない。レベル15の強者が他者に属する意味があるとは思えない。

 ………というよりレベル15って本当にどういうことだ?強すぎないか?

 

 「なに、簡単なことだよ。亢龍に悔いありとな。あるいは過ぎたるはなお及ばざるがごとしか?俺は強くなりすぎたんだ。」

 

 相手は遠い目をして続けて語る。

 やはり目は腐っている。しかし少し寂しそうにも見える。

 

 「俺は強くなりすぎてなにもかもを一人で出来るようになってしまった。結果として俺の世界は一人で完結してしまったんだ。みんな俺を恐れてるんだ。どれだけ強くても意味がないんだよ。俺にとって強さとは手段であって目的ではない。俺は目的を見失ってしまったんだ。絶対的な力と引き換えに努力することも成長することもなくなってしまった。どうでもいいんだ。そんなことより本当は俺も仲間が欲しいんだ。あんたらは仲間を護る組織なんだってな。うらやましいよ。俺だっていつまでもぼっちは寂しいんだ。」

 

 ◇◇◇

 

 俺達はあのあと再びベルの次元移動魔法を使用して俺達の世界に戻ってきた。

 今回は彼も一緒だ。名はHACHIMANというらしい。名前はローマ字なのがみそだそうだ。

 

 ………クロスオーバータグが必要なのではないか?しかしここまでやってしまうともはや名前を借りただけの別キャラのような気もする。

 どうなのだろう?イマイチ判別が着かない。

 

 帰り道俺達は話す。

 彼は落ち着いた話の通じる人間だった。彼は俺に話しかける。

 

 「あんたは何のためにステータスを復元するんだ?戦いとか別に好きそうには見えないが?」

 

 「………最近リューというエルフから逃げる必要があってな。リューは後で紹介するよ。」

 

 「エルフのリューとは女性か?」

 

 「ああ。」

 

 その言葉にHACHIMANの腐った目はさらにドロドロと濁りを増す。怒りを湛えた漆黒のその目に俺は気圧される。

 HACHIMANは心の底から叫ぶ。

 

 「爆発しろクソリア充が!」

 

 「………リューの料理を食べると本当にお腹が爆発しそうになるんだぞ?なんだったら俺の代わりに食ってみるか?」


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