ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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英雄の娘

特に意味なく唐突人物紹介

 ソーマ・・・原作様においてソーマファミリア主神。拙作でも同じ。拙作では世を拗ねていたが、カロンに出会い正義の味方に憧れてしまう。こっそり鏡の前で決めポーズを決めるところをリリルカに見られて赤面してしまう。連合内に於いては対外交渉の手土産として神酒が猛威を振るっており、地味に重要神物。

 

 デメテル・・・原作様でも拙作でもデメテルファミリア主神。農作物を作ることを生業としたファミリア。おおらかな性格をしており、眷属を大切に思っている。連合に入りヘルメスファミリアと協力したことで、農作物の品質が上がった。

 

 ナァーザ・・・原作様でも拙作でもミアハファミリア眷属。拙作では連合薬学部門部長。日々薬学を研究しており、彼女達の作る薬は遠征に、売上に、多大なる貢献をもたらしている。ちなみに拙作ではミアハ様はものすごく影が薄い。

 

 アポロン・・・原作様では主人公の噛ませ犬で拙作ではリリルカの噛ませ犬。

 

 ◆◆◆

 

 「今日からは久々のお休みですね。アイズ様もダンジョンにお潜りですしどう過ごしましょうか?」

 

 オラリオの町並みを行く彼女はみんなご存知のリリルカ・アーデ。リリルカは久しぶりに連休をとってお休みを満喫しようとしていた。

 そんな彼女を柱の影から覗く怪しい人影………。

 

 そう、彼らはカロンとリュー………ではなくロキファミリアの勇者、フィン・ディムナだった。

 

 「リリさん、こんにちわ。今日はお休みだってカロン大団長から聞いたよ。」

 

 「フィン様、またいらっしゃったのですか。」

 

 フィンはたびたびリリルカに接触を行っていた。ロキファミリアの隆盛の為に彼女の力を借りたいと考えていたからだ。

 

 「何度いらっしゃってもリリは改宗しませんよ?」

 

 「リリさん。そういわずに少し時間をくれないか?」

 

 「しょうがありませんね。せっかくのお休みなんですしすこしだけですよ?」

 

 ◇◇◇

 

 ここはロキファミリア近くの喫茶店。ここは以前カロンがこっそりコーヒーを楽しみに来ていたのだが、すでにリューとリリルカにはばれてしまっていた。連合の会議をサボるときはカロンはいつもここにいるのだ。カロンが会議をサボることに対してリリルカは思うところがあったが、しかし諸々の貢献度を考えれば彼女はカロンに何も言えなかった。

 今このお店でフィンとリリルカは向かい合っていた。

 

 「フィン様、また改宗のお誘いですか?」

 

 「ああ、やはりどうしてもロキファミリアの為に君が欲しいんだ。」

 

 真剣な表情のフィン。

 

 今や連合を実務で取り仕切るリリルカにはとてつもない価値がついており、彼女が改宗するとなればとても一桁の億などではきかない金が動くとオラリオでは見なされていた。しかも年々天井知らずにさらに上がっていく狂いっぷり。フィンは間違いなく連合にとって彼女がそれだけの価値が十分にあると認識して、最悪三桁の億でも本当に金庫を空にしてでも払うつもりの不退転の覚悟で幾度も交渉に臨んでいた。

 

 「わかっていらっしゃるでしょう?リリの忠誠心はカンストしてますよ?連合を離れるなどありえません。」

 

 「君は今日はかなり久々の休みのはずだ。君はどうしてそんなに連合につくすんだい?」

 

 「………リリはカロン様に拾ってもらった恩があります。」

 

 「それだけかい?」

 

 「他に理由があるとフィン様はおっしゃるのですか?」

 

 「それも大きな理由だと思うよ。でも恩義だけなら君はもう十分にカロン大団長に返せているんじゃないかい?」

 

 見つめ合うフィンとリリルカ。リリルカはその真剣な表情に根負けする。

 

 「………あまりなんでもペラペラしゃべるのはリリは好きではないのですが………誰か(作者)もしゃべれと言ってますし仕方ありませんね。リリが連合に従うのは単純にカロン様のお役に立つのがリリの喜びだからです。」

 

 「それはカロン大団長に好意を抱いているということかい?」

 

 「まあそうなるんですかね。………フィン様、カロン様は嘘つきなんですよ。」

 

 「嘘つきなのかい?」

 

 「ええ。カロン様はイシュタル様を連合に引き抜くときにも嘘をつかれました。リリのときにもカロン様はリリをサポーターの見本とする為に引き抜くとおっしゃっていましたが、それは大きな理由ではありません。結局は物事を上手く運ぶことができてしまいましたが………。」

 

 「じゃあ他に大きな理由があるというのかい?」

 

 「ええ。………フィン様、カロン様はどうしようもなくお人よしなのですよ。」

 

 リリルカはそういってコーヒーを啜る。なかなか苦味の効いた美味だとリリルカは感じる。

 

 「それは確かに否定できないかも知れないね。」

 

 「当初はリリをサポーターの見本とする為にレベル2に上がったら引き抜くとおっしゃっていましたが、今になって考えるとアレはおそらく詭弁です。」

 

 「詭弁かい?」

 

 「ええ。本当は一刻も早く引き抜こうとしていたと思います。カロン様は状況が良くないリリと心が痛んで落ち着かないリュー様を落ち着かせる為にリリを引き抜きました。リリが今カロン様のお役に立てているのはどちらかというと結果論です。カロン様は以前に言ってたんですよ。リュー様を復讐から遠ざけるためにリリを引き抜きたいと。」

 

 「それが真実だろうね。」

 

 「ええ。その時のリリには他人のために大金を出すなんて信じられませんでしたが、その言葉がどうしようもなくリリの心に引っ掛かったのも事実でした。」

 

 「なるほどね。」

 

 「カロン様はリュー様とリリの両方にとってプラスになると判断してリリを大金を出して引き抜きました。リリの存在がリュー様を癒してリリには安寧をもたらそうという目論みで。別にレベル2に関してはどうでもよかったんですよ。ただ、リリを見たカロン様がそれらしい理由をでっちあげないとすれてるリリに疑われて引き抜きが失敗してしまうと判断したのでしょうね。それでリリが魔法を持っていることに気付いたカロン様が、これ幸いとばかりに魔法を持っている価値のある人間だからすぐにでも引き抜きたい、というそれらしい理由をでっちあげたわけです。」

 

 「なるほど。カロン大団長らしいね。」

 

 「まったくその通りです。でも仕方がありません。当時のリリは確かに初見の人間を信用できる状況ではありませんでしたから。それだったら明確にリリを引き抜く目的を話せばそれが納得できるものであればリリも多少は信用ができます。その納得できる理由は結局そこまで大きな理由ではなかったわけですが。少なくとも他人を救いたいためだけに大枚を叩くなんていう荒唐無稽な理由に比べれば信用できます。」

 

 「そうだろうね。」

 

 「それで何かの為に動いていないとリュー様とカロン様は心が痛んでやるせないから、とりあえずの目標としてサポーター育成と連合成立をでっち上げました。それは必死に動いているうちに結局上手くいきそうになってしまったわけですが、ここでカロン様に少し欲がでました。」

 

 「欲が、かい?」

 

 「ええ。当初は偽りの目的でしたが、冒険者の損耗を防ぎたいというカロン様の気持ち自体に嘘はありませんでした。それで物事が上手く行って実際にサポーター育成ができてしまったわけです。そこでカロン様とリリには欲が出てしまったのです。」

 

 「なるほど。」

 

 「リリはカロン様に見出だされたわけですが、ではカロン様に見出だされなかったリリのような方々はどうなるんでしょうか?誰にも手を差し述べられないままなのでしょうか?」

 

 「それは………君に課せられる義務じゃないだろ?」

 

 「もちろんです。リリに彼らを救う義務はありませんね。しかしリリが彼らを助けたいと願う権利はあるでしょう?例えそれが傲慢だとしても偽善者だと罵られたとしてもリリは喜んでその謗りを受けますよ?リリはリリのやりたいようにやるだけだと。リリはいつだってここにいるリリなんです。」

 

 「………………。」

 

 「欲が出てしまったんですよ。フィン様。リリにも何かたくさんのことができるんじゃないか、って。そしてたまたま誰かのせいでリリにその能力があって連合にはその力がありカロン様はリリに好きに生きることを望んでいらっしゃいます。カロン様の優しさに報えることはリリにとって何よりの喜びです。リリはカロン様の優しさがどうしようもなく好きなんですよ。………少し話しすぎてしまいましたね。」

 

 リリルカは笑いながらそういって伝票を掴んで席を立ち去る。

 後に一人残されたフィンは苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。

 

 「………また負けた。つくづく敵わないな。カロン大団長は娘をどれだけタフに育てたんだい?僕が払うべき伝票まで持って行かれてしまったよ。」

 




会議に対するスタンス
カロン
「俺が顔を出してしまうとみんな俺の意見を求めるだろ?みんなで話し合うべきだ。」
リリルカ
「それでも決定した結論だけは確認しておくべきです。」
リュー
「そんなことより鍛練です!」
カロン
「………お前のその脳筋はもうどうやってもなおらんのか?」

そして前回の話の補足です。
フィンがカロンの腹黒さを気に入った理由は、カロンが擦り寄ってきた理由がリューを護るためだと気付いていたからです。
それでしばらく様子を見てみたところ、アイズがリリルカと関わって他者を扱う能力に成長を見せたため、これはアリだなと。
リリルカは無意識にアイズを他者の教育の練習台にし、アイズは自分にない能力を持つリリルカを尊敬します。
カロン達がアイズの成長を促し、ロキファミリアが暗黙にカロン達に守護を与える。
つまりここでも互いに利益のある関係が出来上がるのです。
そしてフィンはリリルカを見たときに初めてアイズの成長の理由を理解しました。

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