ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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試してみるものだ

 「サポーターの教育は結局どういう風に行うのですか?」

 

 「リリルカの最初から持っていた強みはサポートにおいて効率的な動きができていることだ。まずこれに関しては専門のリリルカに理論を詰めてもらう以外にない。そしてその他の必要と思われる技能は戦闘の遠距離サポート、有事の際の指示及び逃走、初心者の教育指導等も考えている。これらに関してはリリルカと相談しながら詰めている。」

 

 「………なるほど。問題点はどのようなものが?」

 

 「山ほどだな。まず生徒がいないのが最大の問題だ。他には有事の指示を冒険者が受け付けるか?我々が育てたサポーター自体の損耗率はどの程度か?逃走手段をどのように身につけさせるかなどだ。」

 

 「なるほど。先は長いですね。」

 

 「最近はリューもだいぶ落ち着いたな。」

 

 「腹立たしい事ですがあなたのアホっぽさに影響されている自信があります。」

 

 「ひどいな。団長に対する敬意はないのか?」

 

 「どうでしょうね。あなたが最初からそのような性格だったのなら、あなたはアストレアファミリアに入団できたとは思えません。あの地獄があなたを変えたのかも知れないと思うとあまりあなたの性格に口を出す気になれない。私はあなたの救いになりたい。」

 

 「俺は前からこんな感じだったはずだぞ?」

 

 「………聞かなかったことにしてください。」

 

 ◇◇◇

 

 「それで勧誘の方はどんな感じだ?」

 

 「私の方は以前預けていただいた三名の教育が完了しました。彼らは必要なら脱退金さえ積めば呼べます。」

 

 「せんの………ごうも………教育は完了したか。ソーマの脱退金は結構な額だから取り合えず見送りだな。」

 

 「あなたの方はどんな感じですか?」

 

 「凶狼が欲しい。すでに3回ほど接触した。このまま力ずくでも奪いたい。」

 

 「過激ですね。何故彼にこだわるんですか?」

 

 「タケミカヅチとの合わせ技を考えている。後々連合ファミリアを作ることができたならタケミカヅチの道場を改装して凶狼を師範代に据えたい。タケミカヅチを呼び込む餌になる可能性も考えている。タケミカヅチが基本を、凶狼が実際に実戦で使える技術を教え込む。あいつは長物を使わないから体術が得意だ。性格的に指導に向いているのではとも考えている。単純な奴は案外面倒見がよかったりするもんだ。」

 

 「仮に理屈が通っていたとしてもうまくいっても当分先の話でしょう?それに彼は引き抜くのが難しいのでは?」

 

 「価値があるものが高価なのは当たり前だ。」

 

 「他はどうですか?」

 

 「簡単に引き抜けそうなのはイシュタルのところだが脱退金がソーマの所以上に高いしお前が気に入らんだろう。ミアハのところも高額過ぎて割に合わない。ナァーザ自体はかなり有能そうだから金に余裕があるならだな。そう考えると三馬鹿の選択肢は悪くないのかもしれない………。あいつらどの程度のものだ?」

 

 「私のいうことはしっかり聞きます。しかしリリルカさんのいうことを聞くとは思えないのでまずはリリルカさんとの上下関係をしっかり理解させることからになります。」

 

 「どうしたものかな。どこかに………。待てよ、もしかして………。」

 

 「どうしましたか?」

 

 「ふむ、いっそフレイヤに相談してみるかと思ってな。普通ならありえんがあいつは普通じゃない。なんか知恵をだしてくれるかもしれん。」

 

 「それはあまりよろしくないのでは?フレイヤ様が信用に足るとは思いづらい。」

 

 「思い立ったが吉日だ。ものは試しで行ってくる。」

 

 「普通はあってくれるとは思いませんが………。」

 

 ◇◇◇

 

 「ウフフ、良くきたわね。同盟ファミリアのあなたが私に何のようかしら?」

 

 「面倒なのはやめにしましょう。俺が今日きたのは悩みがあったからだ。フレイヤ様、あなたは木っ端と会ったりはしない。俺を通したという事は俺になんらかの興味があるってことだ。俺達は人材を探している。今現在明確な目的がない人材を俺達は欲している。あなたは俺がどうした方がいいと考えているか可能なら教えてほしい。」

 

 「あなたが私のファミリアに来ればいいんじゃないかしら?そうすればアストレアファミリアに融通を効かせてあげてもいいわよ?」

 

 「それは残念だが聞けないな。………済みませんね。俺の用はこれだけなんだ。今日はもう帰りますよ。」

 

 「あら、もう帰るの?それにしてもあなた本当に変な子ね。魅了が全く効いてない。」

 

 「あなたはそんなことをしてたのか。まあいいや。邪魔をしました。」

 

 「ほんと変な子ね。いきなり菓子折りを持ってきたかと思うと面会して30秒で帰ると言い出して魅了も一切効かない………ちょっと待ちなさい。」

 

 「どうしました?」

 

 「アレン、団員を五人程見繕ってちょうだい。人選は任せるわ。彼らには一年間の出向を命じます。帰ってきたら私から特別手当を出すと伝えて。」

 

 「フレイヤ様、感謝します。」

 

 「後でアストレアの本拠地に届けるわ。」

 

 ◇◇◇

 

 「というわけでフレイヤから五人程借りることに成功した。言ってみるもんだな。」

 

 「一年間の改宗ですか。しかし借りるだけでは意味がないのでは?」

 

 「無意味なことはないよ。リリルカの新人指導の練習台になるかもしれないし彼らをうまく育てればフレイヤが俺達により便宜を計ってくれるかもしれない。一年間でも五人増えれば入団者も現れるかもしれない。使い道は俺達で作り出すのさ。」


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