ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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新しい恋、迷探偵レフィーヤの覚醒

 「スマン、イシュタル。待たせたか?」

 

 「遅いぞ!タケミカヅチ!」

 

 「おいおい、まだ30分も前だろ?」

 

 「………フン。」

 

 ーーオラリオで一体何が起こっているというのでしょうか?

 

 私の名前はレフィーヤ・ウィリディス、花も恥じらうロキファミリア所属のエルフの乙女です。私は今日、春の麗らかな陽射しの中、オラリオの散策を行っていました。

 

 ーータケミカヅチ様とイシュタル様が仲良く手を繋いで歩いている!!?

 

 謎です。とても仲良さそうに見えます。まさかあの二人は付き合っているとでもいうのでしょうか!?

 最近のオラリオは少し不思議なことが起こっています。謎のカップルが誕生しているのです。

 ベートさんはアイズさんと付き合っているし、ガネーシャ様とリヴェリア様も付き合っています。ベートさん達はまあ納得はしがたいですが同じファミリアだからまだわかります。リヴェリア様は意味がわかりません。

 しかし私はガネーシャ様とリヴェリア様が変人を交えて三人で会っていたところを目撃しています。さらにタケミカヅチ様とイシュタル様は共に変人が頭の連合の一員です。

 

 ………まさか変人が何か事を起こしているとでもいうのでしょうか?まさか………オラリオの住民が知らないうちに着々と悪の計画を!?

 名探偵レフィーヤの出番です。連合は変人が頭を務めていることから悪の巣窟であることは容易に判別がつきます。

 

 覚悟なさい、変人!この名探偵レフィーヤが奴の悪しきたくらみを暴いて見せましょう!

 

 ◇◇◇

 

 ここが連合の本部です。連合はイシュタルファミリア以外の人員が皆詰めています。連合に勤めている人間はオラリオには今やたくさんいます。私一人くらい混じってもばれないでしょう。

 

 「?レフィーヤさん、何してらっしゃるのですか?」

 

 「いいいいいいえ、特に何もしてません。」

 

 「しかしロキファミリアのあなたが何故ここにいらっしゃるのですか?何か用でも?」

 

 すぐに見つかってしまいました。連合副団長のリューさんです。彼女はオラリオでも有数のアイドルです。まあアイズさんほどじゃありませんが。

 

 それにしてもいきなりばれてしまいました。彼女は私と同じエルフですが変人の手下のはずです。彼女は何故変人なんかに付き従っているのでしょうか?なんか弱みでも握られているのでしょうか?私はどうするべきなのでしょう?

 

 「いいいいや、ただ遊びに来ただけです。ホラ、アストレアファミリアとロキファミリアは仲いいですし………。折角だからもっと親交を深めようかな………なんて。」

 

 「そうなんですか?それでしたら私が内部の御案内をさせていただきましょうか?」

 

 「リューさんはお忙しくないのですか?」

 

 「私は………。」

 

 そういって切なさそうに俯くリューさん。一体どうしたというのでしょうか?

 

 「どうしたんですか?」

 

 「いえ、大したことではありません。皆忙しそうで羨ましいだけです。」

 

 「そ、それは………。」

 

 せ、切ない、切なさ過ぎる。副団長にも関わらずリューさんには仕事がないと?

 

 「あ、あの………もしお手すきだったら是非案内してもらいたいなぁ、なんて………。」

 

 「は、はい!是非案内します。」

 

 目をキラキラさせて嬉しそうなリューさん。くそう、これが連合のアイドルの実力か!かわいいじゃないか!しかし私にはアイズさんが………邪念退散邪念退散。私は浮気はしません!アイズさん一筋です。でもすこしだけなら………。

 

 「それでは是非連合を一緒に回りましょう。」

 

 ◇◇◇

 

 「こちらがヘルメスもの作り部門です。あっちの扉から先は機密ですので入れませんが、ここでは簡単なもの作り体験講座等も行っています。レフィーヤさんも体験してみますか?」

 

 私は今リューさんと一緒に連合の様々な部門を回っています。

 ここは今説明があった通りヘルメスもの作り部門です。難しいことはわかりませんが皆一生懸命働いています。しかしこのレフィーヤ決して騙されません!ここは悪の巣窟であるからに、きっと今作っているのはなんかホラ、アノ悪い感じの何かに決まっています!見た目はどう見てもただのテレビにしか見えませんが………きっと洗脳する毒電波を発するテレビか何かのはずです!くそう、さすがは悪の巣窟!

 

 「どうしたんですか、レフィーヤさん?テレビをそんなに睨んで?テレビを作ってみたいんですか?」

 

 「い、いえ、なんでもありません。」

 

 「別に時間はありますし構いませんよ?」

 

 「いえ、結構です。次に向かいましょう。」

 

 あのテレビに近づいて私まで洗脳されてしまったら正義が潰えてしまいます。ここは撤退あるのみです。

 

 ◇◇◇

 

 「ここが連合鍛練部門、タケミカヅチ道場です。」

 

 そういってリューさんは案内してくれました。

 ここまでいくつもの部門を説明してくれました。ここで最後です。

 

 タケミカヅチ道場、皆一生懸命鍛練に励んでいます。

 ………皆真面目です。必死に鍛練しています。彼らも生き残るために必死だということでしょうか?

 思えばここまでの他の部門の人間も皆真面目に働いているように見えました。ソーマファミリアでは皆真面目にお酒を作っていましたし、デメテルファミリアでは真面目に農作業を行っていました。もちろん他の数多い様々なファミリアも同じです。皆さん生き生きとしていました。

 もしかして連合は悪の巣窟なんかではなかったのかも知れませんね。連合は皆で助け合うための組織だったのかも知れません。

 

 ふと気になり横を見るとリューさんが切なさを込めた目で道場を眺めています。

 ………これは新しい謎の予感がします。彼女のこの視線の謎を解くことが名探偵レフィーヤの使命だったのかも知れません。

 

 「リューさん、どうかしましたか?」

 

 「いえ、なんでもありません。」

 

 「何でもないわけありませんよ!そんなに悲しそうな目をして!同族の仲間でしょう!私に悩み事とかあるんだったら是非相談してください!」

 

 ◇◇◇

 

 ここはリューさんの部屋です。悩み事を相談しようにも人目のあるところでは相談しにくいとリューさんは言ってました。それで私たちはここへと来たわけです。

 

 「それで………悩み事の話なんですが………。」

 

 「どうしたんですか?私になんでも言ってください!」

 

 「悩み事というか………実は私もタケミカヅチ道場の師範代を勤めたくて連合に申し出たんですが………断られてしまいまして………。」

 

 「リューさんは高レベルですよね?なんで断られたのでしょうか?」

 

 「それが………。」

 

 「言いにくいのですね。さてはあの悪しき変人のイジメですね!さてはエルフ差別か!!おのれ………私の同胞によくも………リューさん、一緒に変人に直談判しに行きましょう!」

 

 私はリューさんの手を引いて立ち上がります!レフィーヤハートは今義憤に燃え上がっています!同胞に苦しみを味わわせるにっくき変人!今こそ我らの怒りを思い知るときです!

 

 ◇◇◇

 

 「いや、それは無理だ。」

 

 「なぜですか!彼女は高レベルのはずです!」

 

 「確かに高レベルだが………とにかく幹部会議でそう決まっているんだ。」

 

 「なぜですか!不当です!」

 

 おのれ!ここは変人の団長室です。私たちエルフ連合は変人を打ち倒すべく向かい合っています。

 

 「そんなこといってもな………リューに道場の師範代は向かないんだよ。」

 

 「そんなはずありません!私が証明して見せます!リューさん、道場に行きましょう!」

 

 変人は話になりません!私は断固戦います!立ち上がってリューさんを引いて道場へと向かいます。

 

 「お、おい待て………行ってしまったか。もう他のものの鍛練は終わっている時間帯だが………。あいつどうするべきだろう?いうこと聞きそうにないんだよな。まだ書類仕事も残ってるし………。」

 

 ◇◇◇

 

 道場に到着すると他の方々の鍛練は終わっていました。仕方ありません。私だけでもリューさんが師範代を勤められると証明して見せましょう。

 

 「リューさん、私たちだけですが是非鍛練を行いましょう。」

 

 その言葉にリューさんが嬉しそうに微笑みます。その笑顔を見た私は寒気がして背筋がなぜか凍ります。動悸も止まりません。

 アレ?これは………???何でしょうか?新しい恋でしょうか?

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ここは連合団長室、向かい合う俺と勇者。

 

 「というわけで話を聞きに来たんだよ。」

 

 話を切り出す勇者。ことの発端は一週間前に道場でリューと鍛練する千の妖精(レフィーヤ)を見かけたリリルカが大急ぎで俺に通報してくれたことだ。

 明らかなやり過ぎが見て取れたため俺達は慌てて止めに入るも、千の妖精は相当な長時間かなりきつい鍛練を行っていたらしく、一週間も経ったにも関わらず未だに足腰がまともに立たないらしい。ロキファミリアの自室の布団でうなされていたらしい。当日に関しては付き合いのある九魔姫に連絡して引きずって連れて帰ってもらった。

 あいつ後衛だしな。でもそれにしても一週間は長すぎる。あいつ大丈夫なのか?

 

 「それはアレだ。うちの副団長が鍛練を行ったらしい。俺は止めたのだが千の妖精が言うことを聞かなくてな。」

 

 「リューさんがかい?そうなのか………それは何とも言いづらいね。」

 

 「俺達も困ってるんだよ。あいつは加減が苦手過ぎるんだ。恐ろしい話、リューはやる気を出せば出すほど連合にとってマイナスなんだ。何ともなあ。」

 

 俺は窓の外を見る。やる気があるのはいいのだがあいつはありすぎだ。ヘスティアと性格が逆ならちょうどいいのかもな。いや、それもそれでまずい気もするな。

 

 「うーんそうか………まあ話は分かったしもう用事は終わりかな。ところでリリルカさんの話だけど………是非ロキファミリアに来てほしいんだ。」

 

 あっという間に話が変わってしまった。同じファミリアのはずの千の妖精が哀れだ。まあ人の言うことを聞かない自業自得だしそもそもなんで連合内にいたのかも謎だしまあいいか。

 

 「リリルカが欲しいならお前が自分で口説き落とすしかないぞ?」

 

 「いいのかい?」

 

 「リリルカの人生を縛るつもりはないさ。まあ連合側の人間の必死の抵抗には会うだろうが。俺はあいつが幸せなら別にとやかくいうつもりはない。考えもしっかりしとるしな。しかしあいつがどれだけの価値を持つかお前は分かっていっとるんだろうな?」

 

 「もちろんわかってるさ。君みたいにしぶとく戦って口説き落としてやるよ。金が必要なら金庫を空にする覚悟だってできてるよ。」

 

 「ロキファミリアのか?それは剛毅だな。」

 

 俺達は笑った。

 

 ◇◇◇

 

 ところ変わってここはロキファミリア、レフィーヤの自室。

 筋肉痛で横になり布団に顔を埋め赤らめるレフィーヤ。

 

 「うーん………うーん………リュー様ぁ………エヘヘ………。」

 

 




リュー様は無双のどM製造機なのです。
リュー様の鍛練はナイトメアコースです。あまりにナイトメアすぎるため連合ではNGを出されてしまいました。

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