ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
ーーうーん、どうするべきか?
ここは団長室、俺はアストレア連合大団長のカロンだ。俺は今モンスターファミリアの先々の展望を考えていた。
ーー使い道はいくつか思いつくんだが………。今のままの秘匿した状態となるとなぁ。オラリオ市民への安全性の保証にしてもな。どう持って行くべきかね。
あのあと、リド達モンスターファミリアは未だにデメテルファミリアで農業を営んでいた。
あれから少し変わった点は、性格のいいリド達にデメテルがどんどんほだされていることと、タケミカヅチファミリアから彼らの自衛の手段としてタケミカヅチが武術の鍛練の為にデメテルファミリアに出向していることだ。余談だがそのためにタケミカヅチの給料は上がった。
ーーしかしいきなり大々的にオラリオに知らしめるわけには行かないんだよなぁ。オラリオがパニックになりかねないんだよな。でも隠していて流出したりしたら連合の不信感にも繋がるし。どうしたもんかねぇ?やはり困ったときのリリルカだな。あいつに相談してみる他はないだろう。
「オーイ、ミーシェ、リリルカを呼んでくれるか?」
◇◇◇
連合大団長室、ソファーにて向かい合うカロンとリリルカ。
「お呼びですか?カロン様?」
「ああ、今忙しかったか?」
「いえ、大丈夫です。それで今日はどのようなご用件でしょうか?」
「おお、リリルカに用件を読まれなかったのは珍しいな!?」
少し嬉しそうなカロン。
「リリも暇を持て余しているわけではありません。」
冷たい対応のリリルカ。
「ああ、すまない。リド達のことだよ。何か上手く持って行く方法はないかとな。」
「すでに上手く持って行く為の試みはなされていますよ?」
ーー!?リ、リ、リ、リリルカ?こいつは………。やはり俺は最強のチートを手に入れてしまったのか!?
「………リリルカ。その試みとは?」
「主に三つですね。すでにご存知のウラノス様、ガネーシャ様に引き続き同盟者でありオラリオに地位を持つロキ様、フレイヤ様に認めていただく。あとアポロンファミリアのマスメディアから世論を操作しつつ少しずつ情報を流出させていく。あとはファミリア内で忠誠は高くても口は堅くない者達に知らせていく。まあつまり公然の秘密にしていく計画です。」
公然の秘密、それは誰もが知っているが秘密ということにしていこうということだ。わかりやすいものならコ〇ミコマンドとかか?連合内でいえばバランとベロニカが付き合っているのも公然の秘密と言えるだろう。
「リリルカ、それはうまくいきそうか?」
「反対は出ますし多少の不信感は拭えないでしょうね。」
その言葉に俺は考える。
ーー不信感が出ると言うことは連合の地位が失墜するということ。しかし連合の何よりの目的は仲間内を護ることだ。それを考えると多少地位が失墜しても先々のことを考えればやはりリリルカの言うやり方がベストになるのか?ひた隠しにした結果、あいつらがオラリオから非難されてしまっては本末転倒だ。ある程度明かしてしまえば後々あいつらにより広い仕事を頼むことが出来るかもしれない。しかし………まあリリルカの言うとおり少しずつオラリオに浸透させていくのがベストか?
「リリルカはそのやり方がベストだと考えているのか?」
「実はリド様達の存在を知っている者達で内々に会議を行いました。リド様達にも通達済みです。しばらくは身の回りが騒がしくなる可能性があると。カロン様にも通達したはずですよ?今回の議題は重要事項だと?」
マジか………。これは本気で申し訳ない。
「それでその会議の結果が先述の通りです。オラリオで最高の地位を持つ四柱+カロン様でがっちり護っていこう作戦です。何か問題点はございますか?」
「あいつらを狙っている噂のあるファミリアはどうするんだ?」
「その点もすでに話し合いがもたれています。まず第一に、リド様達にはタケミカヅチ様の薫陶を受けていただいています。ある程度彼らに武術を理解していただけばこの時点で敵は戦力を見誤る確率が高いです。その次に、流出後しばらくはヘスティアファミリアの団長のベル様に有事の際の護衛をお願いしてあります。ベル様はご存知の通り今や連合ファミリア内でのほとんど最高戦力です。最後に、すでに狙って来る可能性の高いファミリアの情報をアポロン様ヅテに得ています。アポロン様の情報に間違いがなければベル様さえ置いておけば敵の戦力は問題ありません。それでも狙って来るようなら捕まえてリュー様に差し上げてしまえば問題ないでしょう。」
「お、おい!そしたらまたアポロンの人員が増えるんじゃないのか!?ただでさえ膨れ上がってるのに!?」
「まあ………。現時点ではその通りですがそれに関しては先にいたアポロン様の人員をまた別のところに回せばよいかと。疑問点は他にございますか?」
「あいつらがオラリオに受け入れられる勝算はあるのか?」
「なんとも判別つけがたいですね。なにぶん前例がありません。しかしマスメディアをおさえているのでまったく勝算がないわけではありません。連合の強みはやはりアポロン様の存在もあるでしょうね。彼らのマスメディアの力は今や脅威といえます。大して意味もなく参入を奨めましたがここまで役に立つ存在になるとはリリでも予想しませんでした。」
「
「連合が出来るまではいつもカロン様の思い付きでやってきたじゃないですか。そのカロン様の直感みたいなものはどうなんですか?」
「うんまあそうだな。やってみるか。」
◇◇◇
「それでこいつらが夜中に忍び込んできた賊共か。」
今は夜中。デメテル立入禁止区画。異端児をさらおうと狙ってきた賊を捕らえたところだ。
狙ってきたのはアポロン情報のイケロスファミリア。縛り上げて俺の前に突き出される団長のディックス。確かこいつは暴蛮者とか呼ばれていたな。アポロン情報で最も注意が必要だと書かれていたレベル5だ。俺達はデメテルからの夜間の通報を受けて急いで駆けつけた。立入禁止区画ではベルとリド達の連合とこいつらが戦っていた。時間を稼いだベル達に後から駆けつけた俺達はみんなでこいつらを袋だたきにした。数の暴力ってすごい。
「それで暴蛮者、お前どうするんだ?俺達を敵に回して。まあだいたいどの辺りの奴らに売りさばこうとしているのかは予想が付くがそいつらも俺達を敵に回したがらないんじゃないのか?」
暴蛮者は黙りこんでいる。
「リリルカ、どうするこいつら?ガネーシャに誘拐犯だって引き渡すか?」
「まあそれがいいですかね?もしくはリュー様か。どうしましょうか?」
考え込む俺達、なんかいい方法ないかな?
「私にお任せください。」
リューはすでになんかうずうずしている。お前なんかやたら楽しそうだな。
「うーんやっぱりリュー行きかなぁ?でもこいつレベル5らしいぞ?大丈夫か?」
「?私はもうレベル6ですよ?」
「いつの間に!?」
ジト目を向けるリューとリリルカ。
「幹部会議に出ないから知らないんですよ。あなたまさか自分がレベル5だと言うことも知らないとか?」
「………初耳だぞ?」
「連合結成直前の闇派閥討伐でカロン様はレベル5に上がってましたよ?もうあれからどれだけ経ったとお思いですか?カロン様は一体どれだけ人の話を聞いてないんでしょうか?」
これはいかんな。俺のミスだ。道理でなんか強くなった気がしていたわけだ。
「ま、まあ待て。それよりこいつの処遇を決めねばいかん。どうするべきだろうか?」
「是非私にお任せください。」
ものすごいニコニコ笑顔のリュー。それを見て何やら嫌な予感を感じるディックス。
「ま、待て!そいつに引き渡すのは待ってくれ!」
おお、なんか初めて口を開いたが………。
「なんでそんなにいやがるんだ?」
「なんか嫌な予感しかしない。そいつに引き渡されることを思うと………なんか下腹部がキュッとするんだ………。」
「じゃあお前達どうするんだ?」
「………どうか真面目に働かせて下さい。お願いします。」
「前科持ちで監視付きになるぞ?」
「構いません………。」
◇◇◇
あれからイケロスファミリアも連合に吸収されることになった。結局彼らは当面の間ベルかリューの監視下での行動となった。まあいわゆる保護観察処分というやつになるのかな?イケロスも取っ捕まえて連合に強制的に加入させた。これが思わぬ副産物を連合にもたらした。蛇の道は蛇。いろいろなきな臭い噂が連合に伝わるようになったのだ。これにより連合は犯罪を前もって察知することが上手くなった。イケロスファミリアの半分はアポロンに吸収され、残り半分は独自の思うファミリアへと吸収されていった。イケロスは会議で使い道を考えるようだ。で、肝心の暴蛮者はというと………。
「リュー様あぁっ!!」
結局辛抱堪らないリューの調教を受けてしまったらしい。あれだけ勘弁してくれと言ってたのにかわいそうな奴だ。アポロンの下っ端に成り果ててしまった。レベル5の無駄遣いと言えるだろう。まあでも本人が幸せなら構わんのか?
「久しぶりだな暴蛮者。元気そうで何よりだな。」
「カロン大団長、久しぶりです!今現在リュー様はどちらにいらっしゃいますか?」
「リューは嫌がって逃げたぞ?あいつもどうなんだ?他人を調教しときながら放置とか………。」
「その冷たさも堪らないんです!」
すごいな。リューファンはこういう奴らばかりなのか?こんな奴らがあと千人もいるのか?リューは俺以上の強メンタルを量産していないか?
そうです、リュー様は他人をどMに導いてしまう恐怖の聖女様なのです!
???
ーーレベル5、カロンと同じレベルということは同じくらいしぶといということですね。これは楽しみです。