ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
唐突に人物紹介
カロン・・・拙作のオリ主。誰かがなんとなく勢いだけで先行き不透明のタグをつけてこの世に送り出してしまった。書きつづけるうちになんとなく誰かは彼に愛着が湧いてしまった。連合の大団長にしてNo.1。性格はマイペースで毒舌。胸フェチ疑惑がある。しかし内心ではつねに必死になんらかの有効な手立てを考えている。最初からの全ての目的は最後に残ったただ一人の同胞、リュー・リオンに凄惨な復讐をさせないこととその命を護ること。目標はある程度リューを落ち着かせた時点でほぼ達成していたと言える。そしてそのまま勢い余ってオラリオを統一してしまう。実は連合の会議に出ないのは会議に出てしまうと自身の発言力が強すぎてそれだけで意見が決まってしまうのを理解しており、それを嫌ったため。彼がオラリオで好き放題した結果、盛大な原作崩壊を招いてしまった。
ベル・クラネル・・・原作様の主人公。拙作においては最終回が近くなってようやく登場した。やはり原作様と同じヘスティアファミリアの団長。カロンとはそこそこ長い付き合いがあり、連合の次代を任せうる逸材だと見込まれている。
ヘスティア・・・カロンが必死に動いている時期に何となく拾った神。原作様においては主人公ベルの主神。拙作でも原作様同様なんかダメな感じのある神様だが誰かがおかしなイベントを思いついたせいでトイレ掃除に関しては一家言のある存在となってしまった。
◆◆◆
ここはオラリオデメテルファミリア、立入禁止区画。僕は今日大団長のカロンさんにここに呼ばれて来ていた。
「ベル、お前もついに連合ヘスティアファミリアの団長だ。お前には連合内での信頼できる幹部のみが知らされる機密事項を今日は伝える。」
「機密事項ですか!?」
立入禁止区画に入るのは僕も初めてだ。いったい何があるんだろうか?
「ああ、幹部でも温和かつ秘密を厳守できると判断したもののみに伝えられるものだ。俺はいずれお前はファミリアの柱となると考えているし連合内のファミリア団長なら資格も十分だ。」
そういって彼は奥へと進んでいく。
◇◇◇
「リリリリザードマン!?なんでこんなところに?」
「ベル、彼はリザードマンに似ているだけの普通の人間だ。名前はリドという。ここの取り纏め役だ。」
僕はびっくりして辺りを見渡す。アルミラージやヘルハウンド、ハーピー等他にもたくさん魔物がいる。なんで??
「ああ、オレッチリドっていうんだ。よろしくな。カロンさんから今日あんたが来る話は聞いてるぜ?」
そういって笑うリドさん。混乱する僕。
「似てるだけって………どう見てもリザードマンですよね!?」
「ベル、失礼なことをいうな。」
笑うカロンさん。
「カロンさん、あまり意地悪なことをいうもんじゃないですぜ。ベルさんとやら、オレッチ達は魔物だが穏やかに暮らすことを望んでいるんだ。カロンさんはオレッチ達が農業作物を作る代わりに場所を提供してくれている。カロンさんは連合を仕切っていると聞いたぜ?オレッチ達は魔物だが同盟参入者として扱ってくれてるぜ?だからさ、オレッチのことはリドって呼んでくれよ。あんたのことはベルッチと呼ぶからさ。」
「カロンさん?」
恐る恐るカロンさんを見上げる僕。
「同盟参加条件には人間に限るという項目はないなぁ。彼らはモンスターファミリアという名称の新興のファミリアだ。」
すっとぼけるカロンさん。
「まあそういうわけでさ、あんたも是非仲良くしてくれないか?」
明るく笑うリドさん。
「とまあそういうわけだ。知らされているのは本部幹部連中と一部のファミリアだな。お前の大好きなヘスティアも知っているぞ。デメテルを説得するのは難航したがまあ闇の連中の方がよほどタチが悪いしなぁ………。しばらくは護衛にリューをつけることで納得してくれたよ。今はデメテル達も仲良くやってるよ。いざって時の用心棒とも考えられるしな。」
「そ、そうなんですか。」
「ああ、だからさ仲良くしてやってくれよ。さっきのは冗談じゃないんだ。人間として扱ってくれよ。」
◇◇◇
「彼らはどういう存在なのですか?」
カロンさんに聞く僕。ここはデメテルファミリア応接室。
「なんか異端児と呼ばれているらしいな。ウラノス曰く前世を持っているんだと。」
僕は考える。カロンさんのことは信じている。彼の事を信じて彼らのことも信じるべきだろうか?カロンさんは天井を見上げる。
「今はガネーシャの気持ちがわかるよ。」
「ガネーシャ様の気持ちですか?」
「誰かに話を聞いてもらいたいという気持ちさ。なあ、ベル、聞いてくれないか?」
「どんな話ですか?」
「俺はさ、一度仲間をほぼ全員失っているんだよ。今連合に残っているのは副団長のリューだけだ。お前も聞いた事あるだろ?アストレアの悪夢さ。事件自体は辛かったしそのあともオラリオで辛い思いもしたさ。」
「それは………。」
聞いたことがある。
いつも明るく笑うカロンさんが時々寂しそうに見える時があるらしい。一年の決まった時期だという話だ。僕も一度だけ見たときは驚いたんだ。明るいカロンさんがあんなに寂しそうな目をすることがあるなんて。
「タケミカヅチは命は廻ると言ってたんだよ。それでさ、廻る命がダンジョンで生まれ変わるのならばいつかは死んだあいつらも俺達のところに帰ってきてくれるんじゃないか、ってさ。」
寂しそうな表情のカロンさん。カロンさんは続ける。
「だからさ、あいつらもきっとそういうやつなんじゃないかって。皆帰るべき家族の下へ帰れずダンジョンで寂しく死んだ行った奴ら何じゃないかって、さ。」
僕はカロンさんを見上げる。彼は大男だ。しかし今日はいつもより小さく見える。
「だからさ、あいつらが平穏を望んでいるなら協力したいんだよ。他にも良い形がないか模索してるしこれから数が増えるかも知れないし。どうやらあいつらみたいなヤツラを狙ってるんじゃあないかって噂のファミリアもあるし。俺達の同盟が仲間に手出しを許すつもりはないのは知ってるだろ?ベルもあいつらを護るのを是非協力してくれないか?」
僕はその言葉に考える。僕なんかに何かができるんだろうか?
「カロンさん、僕なんかに何かができるんでしょうか?」
「馬鹿なことを言うな。今やお前は連合冒険者部門の団長だ。お前の前団長のバランは俺に長く付いてきた子飼いだ。お前の話はいろいろ聞いてるよ。俺がいなくなったらお前が冒険者を引っ張っていかなければならんのだぞ?」
「そんな!カロンさんはまだ御健在です。いなくなるわけなんて………。」
「ベル、俺も以前はそう思っていたよ。でも俺の周りの人間は皆いなくなった。リューだけになったんだ。ダンジョンはいつだって危険だ。お前は強くなれ。俺を超えるほどに強くなって仲間を護ってやってくれ。もちろん今日会った奴らも含めて護ってほしい。頼むよ、ベル団長。」
僕にできるのだろうか?僕なんかに?
「何、心配する必要はない。馬鹿みたいに有能なリリルカがいる。あいつは誰かがまるで意図して仕組んだかのように優秀だ。特に人を育てることに関してはな。お前はそこまで心配はいらんよ。」
アストレア連合でカロンさんが去る日、それは連合の落日なのではないのか?たとえ日が落ちても僕にオラリオを照らす新しい光になれとカロンさんはそういうのか?
カロンさんの暖かな青い目を見る僕は迷う。
「大丈夫だよベル。俺だって一人じゃ何もできないさ。リューがいてリリルカがいてアストレアがいてヘスティアもミーシェもいた。お前にだってたくさん仲間がいるだろ?困ったら有能な仲間に丸投げてしまえばいいさ。」