ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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理由

唐突人物紹介

 アスフィ・アル・アンドロメダ・・・原作様も拙作もヘルメスファミリア団長。万能者の二つ名を持つ。原作様では苦労人だったが拙作でもやはり苦労人。しかも原作様以上に苦労している気配がする。なにげに不幸の星の元に生まれたのではなかろうか?

 

 ヘルメス・・・原作様でも拙作でもアスフィのヒモ。

 

 ◆◆◆

 

 ここはアストレア連合内、もの作り部門、ヘルメスファミリア。

 今ここで、アスフィとヘルメスは向かい合っていた。

 

 「それにしてもカロン大団長は瞬く間に連合をつくりオラリオをまとめあげてしまいましたね。異例の速度だと思うんですが………。ヘルメス様はいかが思われますか?」

 

 「いかがとはどういう意味だい?」

 

 「こんなに早くオラリオをまとめることが可能だった理由です。」

 

 美しいアスフィの眉間にしわが寄り思い悩む。娯楽が好きな神々をまとめあげるのは容易ではないと彼女は以前考えていた。

 

 「ふむ、俺が思う大きな理由はいくつかの複合的な理由だな。」

 

 「複合的な理由、ですか?」

 

 「ああ、せっかくだしアスフィも考えてごらん。」

 

 それを受けてアスフィも考える。

 

 ーー複合的、大きな理由として思いつくのはまず神々を楽しませたということ。娯楽好きな彼らを楽しいと思わせたということなのか?つまりカロン大団長のその手腕が見事だったということなのか?それを見て神々が楽しませてもらったと?或いはリリルカ統括役の腕前か?彼女を見込んだカロン大団長の………やはり腕前ということになるのか。リュー副団長も大きな求心力となっている。彼女がオラリオのアイドルと化していることが連合の一枚岩の理由の一つ。ロキファミリアのフィン団長、リヴェリア副団長、ティオネさん、ベートさんといった様々な種族の有力者が表だって支援していることも強力な理由だ。しかしやはり最も大きな理由はカロン大団長の腕前か?

 

 ーーファミリアをまとめあげるというアイデアがよかったという可能性はどうだ?結果として連合はオラリオに多大な貢献をしている。人々の役に立てることを初期で示した事が連合が大きくなった理由か?

 

 「アスフィ、考えついたかい?」

 

 ヘルメスは笑ってアスフィに問い掛ける。

 

 「いくつかは考えついてます。」

 

 「じゃあ話し合ってみようか。アスフィはどう思う?」

 

 「そうですね。私はカロン大団長の腕前だと思います。彼の腕前から派生した複数の事象が連合を大きくした最大の理由だと考えています。」

 

 「なるほど。ソレは俺も非常に大きな理由だと思うよ。」

 

 「非常に大きな?それではもっと大きな理由があるとお考えになられているのですか?」

 

 「そうだね。ヒントをあげようか。俺達神々は娯楽主義者だが感情がないわけではないのさ。」

 

 「それがヒントですか?」

 

 ーー神々の感情、つまり神々は感情的にカロン大団長に好意を抱いているということなのか?あの不敬なカロン大団長に?………連合が全面に押し出しているスタンスは仲間内を護るというもの。つまり神々はファミリアを護るカロン大団長に感情的に好意を抱いているということか。………確かにそれに関しては一般の市民の方々も好意的だ。

 

 「連合のスタンスに神々が好意を抱いているということでしょうか?」

 

 「うん、俺もソレが最大の理由だと思うよ。………なぁアスフィ、俺達神々はそれなりの数がいるんだ。」

 

 「そうですね、ここオラリオでは特にその通りです。」

 

 「神々にも力関係がある。その最も大きな原因は人々の信仰にある。」

 

 「信仰、ですか?」

 

 「ああ、俺は旅の神でフレイヤやイシュタルは美の神だ。へファイストスは鍛冶の神でヘスティアはトイレ掃除の神だ。」

 

 「ええ、その通りです。」

 

 「タケミカヅチの弁では世界には八百萬(やおよろず)の神々がいるらしい。ではその八百万の神々の中でも特に強い信仰を受ける神って何だろう?」

 

 「特に強い信仰を受ける神………オラリオではウラノス様やガネーシャ様でしょうか?」

 

 「まあここではそうなるな。でも地方の土着の神々ではどうなのか?例えばタケミカヅチの出身の地方では守護霊という考え方があるらしい。」

 

 「守護霊ですか?」

 

 「ああ、言い方を変えると守護神ということかな?」

 

 その言葉にアスフィはさらに考え込む。

 

 ーー守護神、連合の仲間内を護るというスタンスを指しているのか?つまりヘルメス様はカロン大団長が守護神としてオラリオから敬意を受けているということが言いたいのか?

 

 「つまりヘルメス様はカロン大団長がオラリオの守護神と見なされているからだとおっしゃいたいのですね?」

 

 「まあ俺の結論はそうなるのかな?カロン君は特に家族(ファミリア)を守護することに特化した守護者だ。冒険者を護る優秀なサポーター部隊だってそこから派生したアイデアだと俺は考えている。アスフィ、俺達だって眷属はかわいいんだよ。」

 

 ヘルメスはそういって優しい眼差しでアスフィを見やる。

 

 「俺達だって感情があるんだ。眷属がかわいいし信頼できる守護神がいるのならすがってでも眷属を守護して欲しいと考える神々はたくさんいるさ。人々だって本当に苦しいときにその経験を乗り越えたら、旅の神や美の神ではなく見守ってくれた守護神に感謝するだろ?その感情はとても強いものだ。カロン君は仮に数多くなかったとしてもとても強い敬意を受けている。おそらくはその筆頭がリュー君とリリルカ君だ。俺はそれが彼がオラリオをまとめあげる事が可能だった最大の理由だと思うよ。」

 

 「なるほど………。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ところ変わってここは連合会議室、向かい合うカロンとアスフィ。

 

 「万能者、この間合同で開発してくれた薬酒はイシュタルも大いに喜んでくれている。さすが俺の部下だ。」

 

 いやに偉そうなカロン。アスフィは頭痛がして頭を抑える。

 

 ーーこの人が守護神?この人がオラリオを護っていると?はあ、思い当たる節があるとはいえ頭が痛い。

 

 「どうした?我が万能な手先よ。頭が痛いならミアハ特製の頭痛薬を飲むか?お前も作るの手伝っていたやつだ。」

 

 「いえ、大丈夫です。薬酒が役に立ったのであれば何よりです。」

 

 「そうか。イシュタルも喜んでくれているぞ?本当なら酒ではなくキチンと医者にかかるべきなのだが……。しかしお前達のファミリアはつくづく連合に大きな利益をもたらしてくれる。何かねぎらえるものがあればいいのだが。」

 

 「いえ、結構です。私達もオラリオに貢献できているのならそれが何よりのねぎらいです。」

 

 「そうか………。」

 

 アスフィは少し考える。この男を調子にのせるべきだろうか?少しくらいなら構わないか?

 

 「………ヘルメス様が連合のスタンスが守護神のようだとおっしゃってました。感謝していると。」

 

 「おいおい、俺達は神じゃないぜ?」

 

 「それでもです。」

 

 「俺達は神じゃない、人だよ。連合は人が集まってできてるんだ。人が人を護りたいと思ってできているんだ。まあもちろん神もたくさんいるが………。万能者、お前らのヘルメスファミリアが作り上げた物だってたくさんの人々を助けてるんだぜ。」

 

 カロンがその時アスフィに向ける眼差しは、奇しくもヘルメスと同じでとても優しいものであった。




ヘスティア様が炉の神だということは忘れ去られています。
というよりヘスティア様は家族の守り神ですよね?存在意義を乗っ取られてます。

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