ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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恋愛相談の続き

 「ズルい!ズールーいー!私の手伝いもしろー!」

 

 「またか………。」

 

 ◇◇◇

 

 ここはオラリオロキファミリア前のカフェ。俺の名前はカロン。俺は今日もここで幹部会議をサボってコーヒーを飲んでいた。

 

 ーーふーむ、なかなか芳醇で香ばしい。やはり時代はコーヒーに限る。なんで皆はあんなにお酒をうまそうに飲めるんだ?絶対コーヒーの方がうまいと思うのだが………俺の味覚がおかしいのかな?それにしても幹部会議にもコーヒーを出してくれればいいのに………。

 

 「お久。あんた聞いたわよ。リヴェリアに男を紹介したんだってね?なんか嬉しそうに話してたわよ。だったら私の手伝いもしなさいよ!」

 

 知り合いが向かいにまた座って来てしまった。彼女は皆ご存知ティオネ・ヒリュテ。ロキファミリア所属のフィンにお熱のアマゾネスだ。

 はぁ。また例の面倒事か。

 

 「お前前回(恋愛相談参照)おかしなことになったの忘れたのか?俺が手伝えることなどないと思うぞ?九魔姫(リヴェリア)にはガネーシャ(おとこ)を紹介しただけだぞ?お前も勇者(フィン)をあきらめるから新しい男を紹介しろというのか?」

 

 「うっ………そういうわけじゃないけど………。」

 

 「じゃあ俺に何を望むんだ?」

 

 「そうね………フィンがあんたんとこのサポーターに熱を上げてるじゃない!どうにかしなさいよ!」

 

 「んなこといわれても自由恋愛だろうが。いや、恋愛ではないか。まあいずれにしろ俺にはどうにもできんぞ。」

 

 「はー。まあそうよね。わかってはいるのよ。いってみただけ。どうすればいいのかしら。」

 

 「やはり新しい男を探すか?」

 

 「探さないわよ!でも………ちなみに参考のために聞くけどあんたに頼んだ場合誰を紹介してくれるのかしら?」

 

 「カヌゥかヒュアキントス辺りかな。」

 

 「いやよ!弱いじゃない!」

 

 怒る怒蛇。叩かれるテーブル。飛び散るコーヒー。もったいない。

 

 「そんなこといってもお前より強い男なぞほとんどおらんだろーが。」

 

 「そうよね………やはりフィン以外はありえないわね。」

 

 目の前の皿に置かれたケーキを食べる怒蛇。それ俺のなんだが?楽しみにしていたのだが………。

 

 「じゃあどうする?お前は俺に何をしてほしいんだ?」

 

 「まずは敵情視察ね。相手がどんな奴なのか見せなさい!」

 

 非常に面倒だ。しかしごねられる予感しかしない………まあいいか。連れていくか。

 

 「しょうがないな。連合本部に行くか。」

 

 ◇◇◇

 

 町並みを歩き連合本部へと向かう俺達。俺はふとあることを思い出す。

 ふむ、すっかり忘れていたが今本部は会議中だった。だから俺はコーヒーを飲んでたんだった。さすがにこんな用事で会議に割り込めるわけないな。

 

 「スマン、怒蛇。本部は会議中だった。まだかかると思うがどうする?」

 

 「どれくらいかかるの?」

 

 「あと1時間以上はかかると思う。リリルカは会議に欠かすことができんからな。」

 

 その言葉に怒蛇は少し考え口を開く。

 

 「そうね………じゃあそのリリルカってのの話を聞かせなさい。フィンはどうしてあんなにも熱中してるのかしら?」

 

 「そうだな。リリルカは育成面や事務面、実務面等でこの上ない価値を持った人材だ。」

 

 「?フィンは高レベル冒険者よ?なんでそんなに強くもなさそうな奴に興味があるわけ?」

 

 「周りに強い奴ばかりだからだろう。確かにリリルカは戦闘に関してはロキファミリアの足元にも及ばないだろうが、ある一面では勇者すら夢中になるほどの価値をもっているということだ。」

 

 「それは何なの?」

 

 「無類の教育者の知見と交渉の上手さだ。例えば勇者は強いが、勇者は未だ自分より強い奴を教育して生み出せていない。」

 

 「それは………」

 

 「リリルカは違う。あいつは自身より強い奴をいくらでも生み出して、いくらでも使える人材に仕立て上げられる。まあ元々の勇者の強さの問題もあるが。」

 

 「フィンが言ってたわ。アイズが成長してるって。そいつのおかげじゃないかって言ってたけど………」

 

 「そうかもな。あいつらやたら仲がいいからな。アイズがリリルカから人心掌握の術を学んだのかも知れないな。」

 

 「それが何の役に立つの?」

 

 「そうだな………例えばお前らがフレイヤファミリアと敵対することになってしまったら、お前らは力ずくで相手を倒そうとするだろ?勇者以外に交渉で事をおさめられそうなのがあとは九魔姫しかいない。違うか?」

 

 「そうね。」

 

 「勇者と九魔姫にしてもせいぜい締結できて不干渉くらいだろ?リリルカならば平気で味方にしかねない。俺が言うのもなんだがあいつは凄まじく価値があるぞ?」

 

 その言葉に考え込む怒蛇。続けて語る俺。

 

 「人心を高度に掌握するということは人を自在に操り味方につけることだ。人心を自在に操ることは戦場で思うままに人を動かすことにもつながる。お前だって勇者以外の人間に指示されたくないだろ?勇者とそれ以外の人間の指示ではやる気が段違いのはずだ。まあつまりそういうことだ。」

 

 「………難しいのね。私はフィンにとって価値がないのかしら?」

 

 少し落ち込んだ様子の怒蛇。

 

 「なんだ?珍しくネガティブだな?そんなことはない。リリルカに価値があるようにお前にもお前の価値がある。お前と違ってリリルカは最前線には立てない。適材適所だ。」

 

 「私はどうすればいいのかしら?」

 

 「やはりしつこく戦う他にはないだろう。リリルカは知恵で相手を打ち倒すが、お前は最前線に立って力で勇者を倒すほかにないだろう?相手は強大だがお前はいつだってそうしてきただろう?」

 

 「………そうね。それしかないのよね。あーあ、でもリヴェリアいいなぁ。ガネーシャ様のあのウザさが堪らないとかのろけられたんだけど。」

 

 アンニュイな怒蛇。

 

 「他人を羨んでもしょうがないぞ?お前は勇者が手強いのは百も承知で挑んでるのだろ?そうでないなら他の人間でもよかったはずだ。俺にはお前の手伝いはできない。勇者は知恵が回るから俺が策を凝らしてもすぐにばれてしまうだろうからな。俺はお前の相談に乗って話を聞くことくらいしかできない。まあリリルカだったらまた話が変わって来るかもしれないが………でもそれはお前にとって複雑だろう?」

 

 「………わかったわ。私はもう今日は帰るわ。また今度話を聞いてちょうだい。」

 

 「構わん、いつでもこい。ところでリリルカには会っていかなくていいのか?」

 

 「いいわ。別に相手が誰だろうと同じよ。真正面から打ち倒してやるわ。」

 

 俺はその言葉にギョッとする。誰だろうが打ち倒す?

 

 「まあお前らしいが………リリルカを真正面から拳で倒そうとはしないでくれよ?」

 

 「いくら私でもそんなにアホじゃないわ!言葉のあやに決まってるじゃない!」

 


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