ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
唐突人物紹介
アイズ・ヴァレンシュタイン・・・原作様においては主人公であるベル君の憧れ。拙作においては、変人が仲立ちしてリリルカと親友になることによってより人間味が増している。リリルカの他人に指示を出したり他人の成長を助けたりする弱者の戦い方を理解することにより、劇的に他人を扱う術が上手くなる。副産物として指揮能力が向上している。
ベート・ローガ・・・原作様においては、ロキファミリア団員で主人公の当て馬臭がする狼人。人気が結構高い。拙作においては、アイズが人間味が増しているため搦め手でデートに誘うことが可能になっていて、それによるバタフライエフェクトでベートはリリルカにより根回しの大切さを教えられる。アイズの親友であり、いつもベートに協力しようとしてくれるリリルカに頭が上がらない。
◆◆◆
この日、私アイズ・ヴァレンシュタインは焦っていた。
ーー皆を守らないと!!
ここはオラリオ、今日は怪物祭。今年もベートさんが土下座とかいう情けない体勢で私に一緒に怪物祭に行ってほしいと詰め寄って来たから、嫌だったけど仕方なしに二人で祭を回っていた。そのさなかのことだった。
ーーここに一体。おそらくこれで最後。周りに人影はなし!住民は避難済みか。
そう、街中で突如同時に何カ所も
ーーテンペスト・リル・ラファーガ!!
私は風の魔法を纏い敵に突進する!!これは勝利の風!これで終わりだ!
敵の魔石を突き破る。倒れて灰になって行く敵。私は邪悪な魔物なんかに決して負けはしない!
「ふぁああ。うん、よく寝た。」
!?中からなんかでてきた?カロン?そんなところで何やってるの!?
「カロン、何やってるの?」
私の当然の疑問。
「ああ、アイズか。助かったみたいだな。ここはオラリオか。」
「何で中から?」
首を傾げる私。
「アイズは相変わらずぶりっ子だな。まあ似合ってるが。俺はアレだ。ダンジョンで何かそれに捕まって食われてしまってな。たまたま一人で助けてくれる奴もいないし脱出方法もないし敵の酸は俺にきかんしでどうにもこうにもならんで困っていたんだ。助かったよ。」
そういって笑うカロン。何か鎧がドロドロになってるけど本当に大丈夫なの?盾も持ってないみたいだけど溶けちゃったんじゃないの?
「カロン、どれくらい魔物の中にいたの?」
「うん?今日は何日だ?」
「怪物祭。」
「じゃあ4日程だな。どうりで腹が減っとるわけだ。せっかくだし祭で何か食ってから帰ることにするか。美味そうな屋台も出とるだろ。」
のんびりしているなぁ。どこまでも我が道を行くカロン。体は酸でベトベトみたいだけどそれはいいの?鎧もほとんど原型がなくてストリーキング一歩手前だよ?
「飲み物は、どうしてたの?」
4日もいたなら喉が当然渇いてるハズだけど?
「ん?ああ、この植物の出す酸を飲んでたよ。酸っぱかったけど。そろそろ腹が減ってきて食えないか試そうかと考えてたところだったんだ。」
ええ~??これ飲めるの!?私は絶対飲みたくない。
「じゃあ屋台でなんか食べる?」
「ああ。」
「それだったらせっかくだし一緒に回る?ベートさんもいる。」
誘う私。
「おお、凶狼もいるのか。アイズ、悪くないアイデアだ。せっかくだし一緒に回ろう。」
◇◇◇
「これで、ラストだああぁぁっ!」
俺、ベートは最後の一匹に正面から蹴りを放つ。いつもよりも強力な俺の蹴りは巨大花を突き破る。
俺は今日はいつもより気合いが入っていた。
ーーなんせ以前に変人に台なしにされた怪物祭のリベンジだ!せっかくアイズを誘うのに成功してこれからって時に………。しかし今日はあの変人ヤローはダンジョンに潜ってていねぇ!今日こそはアイズと近づくんだ!!そしてあわよくば………グフフフフフ。
そう、今年の俺はかつての俺とは一味違う。言うなればニューベート。何か白いヒゲの海賊と似た名前になってしまったな!?まあいい。取り敢えず以前の俺は人間関係とか根回しとかの必要性を理解していなかった。俺は変人と関わるうちに、癪な話だが奴から根回しの大切さを教えられたんだ。奴から習った方法によってテメエが今日ダンジョンにいることは確認済みだ!!全てはリリルカ様のおかげとも言えるだろう。どうだ、マイッタカ!!変人敗れたり!!
今年の俺はアイズと二人で出かけることになり、より一層気合いを入れていた。しっぽは入念にブラッシングしたし、紳士のマナー、のみ取り首輪も今日はきちっとつけている。ファブ〇ーズだってしっかり持参している。万一のプレイのためのブラシやリードやスコップだって持参済みだ!なんのプレイだって?いわせんじゃねぇよ恥ずかしい。まったくもう。取り敢えず今日の俺に死角はない。最強ベート、ここに爆誕!なんつってな。
ーーベートさん、その首輪とてもステキ。除菌した臭いもする。しっぽもふわふわだし。そのしっぽで私を優しく包んで………なんつってなグフフフフフ。
俺はそんな楽しげな想像を浮かべる。もしかしたらもうすでにもらったも同然なんじゃねェか?
「ベートさん、こっちも終わった。」
おお、俺の女神アイズか。敵は片付いたか。よし、これで心置きなくーーー
「凶狼、久々だな。お前も一緒に祭を回るのか!」
!?
俺は二度見をする。壁に頭をぶつけてみる。頭から血が出る。壁もへこむ。三度見をする。頬っぺたを全力でつねる。痛い。やっぱりいる。
なぜだ?なぜだ?なぜなんだ?何故お前はそこにいる!?どれだけ俺の邪魔をすれば気が済むんだ!?下心か?下心のせいか?待てよ、謝るから。下心がいけねぇってんならきちんと反省するから。頼む、頼むよ。勘弁してくれよ。せっかくのアイズと二人のお祭りなんだよ!俺がどれだけのーーー
「よし、せっかくだから今年も人数をたくさん集めて楽しむか!」
待てえええぇぇぇぇぇ!!!
◇◇◇
豊穣の女主人。祭の後は後の祭り。やさぐれた俺はこの店に聖女様に癒されにきていた。
「ヒクッ、ウェッ、何で、何であいつがいやがるんだ!?リリルカ様、一体どうしたってんだ!せっかく数年越しに勇気を出してアイズをデートに誘ったってのに……。土下座までして必死になって頼み込んだのに………。俺は、俺は、一体どうすればいいんだああぁぁぁぁ!」
「ベートさん、お久しぶりです。やさぐれてらっしゃるみたいですが今日はどうなされたんですか?」
「聖女様、俺ァ、俺ァ、どうしたらいいかわからねえんだ。教えてくれよ。せっかく勇気を出して誘ったデートをまた変人に台なしにされちまった!俺はどうすればいいんだ!?俺はあいつにどうやったら勝てるんだ!?」
「ベートさん、もし豊穣の女主人を頻繁に利用してくださるのでしたら不肖、このシルめがベートさんの恋路のお手伝いをいたしますよ?」
「………オイ聖女様、そりゃ本当か?」
「私にしっかりお任せください!」
………こうして俺の貢ぎ物ライフは始まるのだった。
実はカロンは別に嫌がらせをしているわけではありません。ベートとアイズは二人っきりではどうせうまくいかんだろうという老婆心です。
ベートさんと二人きりでつまらなかったと思わせるよりもベートさんもいて楽しかったと思わせた方がいいだろういう判断です。いわゆる余計なお世話です。