ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
今日は暖かな春。穏やかに降り注ぐ日差しと心地好い陽気さ。悼ましい事件は時間とともに色あせつつある、そんなある日。
俺は戦慄した。我が目を疑った。
ーー馬鹿な………。これは何なんだ?クソッ、まさか闇派閥の残党の仕業か!?俺は何者かの精神攻撃でも受けてんのか?
~カロン饅頭 1個30ヴァリス~
◇◇◇
「リリルカああぁぁぁぁッッ!!どこだああぁぁぁぁ!!!」
俺はアストレア連合大団長カロン。最近までは多数ファミリアの連合参入のため目が回る忙しさだった。
最近少しずつ暇を取れるようになって今日は初めての休みで外を歩いたらこのザマだ。
カロン饅頭?カロン人形?カロン人参?クソッ!!
こんなことが可能なのはリリルカだ。万能者と手を組みやがった!!デメテルも多分向こう側だクソッ!!
俺は走って本拠地に戻ってきた。そして絶句して目を疑った。
なんか本拠地の屋上に像が建てられてる。まさか俺か?目を何度もこすった。見れば見るほど俺に似てる気がする。最近書類業務で外に出ないから気付かなかった。しかもポーズがめっちゃ偉そう。左手を腰に当て右手は明後日を指している。ああいうのはガネーシャかアポロンの専売特許のはずだろ!?どういうこった??
「リリルカああぁぁぁぁ!!」
◇◇◇
「どうしましたカロン様。少し静かにしていただけませんか?」
「どうしたもこうしたも屋上のアレは一体何なんだ!?どうしてあんなことしたんだ?」
俺は連合内の廊下を書類を持って歩いているリリルカを捕まえた。
「屋上のアレはヘスティア様の発案ですよ。以前の仕返しだと。リリは知りません。」
うそぶくリリルカ。
「じゃあ町を出回っていたカロン印とやらは一体何なんだ!!何だ、カロンシリーズって!!」
「ああ、あれは連合の売れ行きをあげるためにやりました。」
「やめろおぉぉ!!」
「売れてますよ?お金は大切です。」
取り付く島のないリリルカ。
「あの屋上に立つ銅像は何だ!」
「ああ、あれはゴブニュファミリアの特注品です。」
「アレを外せ!!」
「しかしアレは副団長から何が何でも外すなと厳命を受けています。本部の総意でもありますよ?アストレアファミリアここにあり、と。」
「外すにはリューと交渉しろということか?」
「ファミリア幹部の過半数の賛成が必要です。」
「クソオオォォォ!!」
俺は走った。
◇◇◇
「リュー、アレはどういうことだ!?」
「アレとは何のことですか?」
俺はリューを捜し回った。平の団員に聞いたところによるとタケミカヅチ道場で見かけたものがいるらしい。タケミカヅチ道場は連合の冒険者を門下生として受け入れたことで、大幅な改築を行っていた。
ってそうじゃない!
「屋上の銅像のことだ!!なんであんなものを置いたんだ!?」
「入団希望者にわかりやすくするためです。アストレアファミリアの象徴としてちょうどいいでしょう?」
「なぜ俺があんなアホのアポロンみたいなことをさせられてるんだ!?」
アポロンファミリア。連合に最近加入した。なんか美がどーとか言ってた。どうやらリューに惚れたらしい。面倒だからリリルカに任せてみたら10分くらいで口説き落としてた。この間見たらリューの写真がプリントされたウチワを持って鉢巻きしていた。今はファミリア丸ごとリューのファンクラブになったらしい。何なんだアイツは!?
って今はそんな話ではない!
「あら、カロンはああいうのが好きだと思っていましたが?カロンは十分にアホですよ?」
「はずせええぇぇぇ!!」
「幹部会の過半数の賛成が必要ですよ?」
「はあぁぁ、地道に説得していくしかないか?」
「実質的に不可能です。それに無意味ですよ。」
「なぜだ?」
「カロン銅像はゴブニュファミリアと結託してすでに大量生産のラインに乗っています。」
「何だと!?誰が欲しがるんだ?」
「幹部は皆だいたい持っていますよ?本部連中は特に。リリルカさんの部屋にも三体あります。何でも保存用、鑑賞用、布教用だとか。私は金の像を持っています。」
薄い胸をはるリュー。いや、薄くも無いか?
だからそうでない!俺はこんな時に何を考えているんだ!?
「自慢にならんだろ!どうにかならんのか!?」
「どうにもなりませんね。手遅れです。」
「マジかよ………。」
「何なら私の部屋に見に来ますか?カロン饅頭をお茶請けに出しますよ?」
「いかん!!」
◇◇◇
「アストレア、大変だ。俺の銅像を勝手に本拠地の屋上に建てられている!!」
「あら、知ってるわよ?それに同盟ファミリアの本拠地の屋上にも置いてあるわ。」
「マジかよ………。なぜだ?なぜお前はそんなに平然としてるんだ?」
「私にもきちんと話が来たわよ。かわいらしくていいじゃない。」
「ちくしょおぉぉぉぉ!!」
◇◇◇
「久々だな勇者。調子はどうだ?」
「こんなところでどうしたんだい?」
オラリオのとあるカフェ。たまたまみかけた勇者を相談相手にする俺。
「悩みがあってな。なんか俺の銅像が勝手に作られているらしい。」
「今頃知ったの?ウチのアイズの部屋にも飾ってあるみたいだよ。今は結構あちこちにあるよ?」
「何だと!?」
「あと確かベートもこっそり隠し持ってたらしいし、噂ではバベルの屋上にも飾ってあるみたいだよ。何でもアストレア副団長が連合と懇ろになる方法としてオラリオ中に噂を流したって………。」
「リューっっ!!!」
俺は席を立って走ってまた本拠地に戻った。
◇◇◇
「リュー、銅像はお前が全面的に打ち出したときいたぞ?」
ここはリューの部屋。俺の前にはお茶とともにだされるカロン饅頭。食ってみると案外美味しいなコレ。
「ええ、私がガネーシャ様と結託して闇派閥から身を護るお守りとしてオラリオに売り出しました。」
「なぜだ?なぜそんな馬鹿げたことを?」
「あら、私を闇から助けてくれたのはカロン、あなただったでしょう。闇派閥のお守りでおかしなことはないでしょう?」
「おかしなことだらけだよ。勘弁してくれよ?」
「でも古い幹部連の意見は一致してましたよ?」
「マジかよ。ってゆうかガネーシャと結託したっていつの間にそんな高度な交渉能力を得たんだ?」
ぼやくカロン。
「そんなのわかりきったことじゃないですか。私はいつだって側であなたを見ていましたよ。」
白と黒のスキルはカロンが強く願うことで特に大きな効果を発揮します。
具体的には敵と戦うときと最初期の復讐に囚われるリューを護りたいと思ったとき。
因みに銅像の搬入はリリルカのアーデルアシストが今がチャンスとばかりに力を発揮しました。