ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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節目の夜に

 ここはアストレア本拠地団長室。俺はここで椅子に座り来るべき日を待つ。俺達はいよいよ連合ファミリア結成お披露目を目前に控えていた。

 

 ーーーーーーコン、コン、コン

 

 「どうした?」

 

 「失礼します。」

 

 入室するミーシェ。

 

 「団長、面会を希望するお客様がいらっしゃいます。本日は二名様です。」

 

 「了解した。」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「デメテル様、久しいな。用件とは一体?」

 

 「呼び捨てて構わないわ。あなたほとんどの神を呼び捨てているじゃない。」

 

 「まあ、そうだな。ところで用件とは?」

 

 「それはーーー

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「万能者、どうした?俺のことが忘れられないのか?」

 

 「ふざけないで下さい!!それより今日の用件はあなた方に擦りよりに来ました。英雄を信じに来たと言い換えましょうか?」

 

 「なんだ。やっぱり忘れられないんじゃないか。」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 今日はアストレア連合成立日。結成記念パーティーを行う。パーティー開催前、俺はいつものようにリリルカに怒られて正座していた。

 

 「何ですか八柱合体超絶アストレアファミリアって!!おかしな垂れ幕を承諾も無しに勝手に垂らさないで下さい!!!」

 

 アストレア、ヘスティア、ソーマ、ミアハ、イシュタル、タケミカヅチ、デメテル、ヘルメス。八柱だ。サポーター育成、冒険者育成、薬師、酒、娼館、武門、食物、もの作りの総合ファミリアだ。風紀面で問題が出そうでかつ移動に手間がかかりすぎるイシュタルファミリアを除いて本拠地を同じくしている。連合では主に酒、薬、食物等のもの作りの部門とサポーター及びに冒険者を育成するタケミカヅチ道場に別れていた。

 

 「そうはいってもリリルカ、インパクトは重要だろう?」

 

 「そうですね、確かに重要です。」

 

 「リュー様!?甘やかさないで下さい!!どこまであさってに進むかわかったものじゃありません!」

 

 「リリルカはケチだな。そうでないと財政をしきれんのだろうな。ナァーザやイシュタルとも気が合うだろうな。」

 

 「カロン様は馬鹿なんですか?馬鹿なんですね?はあ、知ってました。」

 

 ◇◇◇

 

 パーティーは始まる。原作主人公以外の主要人物はだいたい揃っていた。アポロン?何のことだ?

 

 「おお、凶狼、良く来たな。お前には前々からタケミカヅチ道場の師範代を任せられないかと考えていたんだ。考えてくれるか?ほら、ここの貧乏神もそういっているぞ。」

 

 「お前は相変わらずだな。まあ悔しいのは貧乏神を否定できないところだな。」

 

 「テメエ、どこでもそんな感じなのかよ………。」

 

 

 

 「フレイヤ、良く来てくれた。待っていたぞ。」

 

 「まああなただしね。その礼服なかなか似合っててステキよ。本当はイシュタルがいるから来るべきではなかったのだけれど………。」

 

 「おいおい、俺を恩神を蔑ろにするような人で無しにしないでくれ。」

 

 

 

 

 「カロン大団長、おめでとう。」

 

 「おお、勇者か。アイズもいるな。ロキファミリアか。元気そうだな。」

 

 「ああ。それとサポーター貸出についてーーー

 

 「カロン、せっかくの祝いの席だしあっちにいこ。」

 

 「ああ、そうするかアイズ。」

 

 

 

 「カロン大団長、おめでとう。さすが俺のズッ友だ。」

 

 「そりゃ、な。わざわざ来てくれてありがとう。ガネーシャは今の時期は忙しくないのか?」

 

 「友のためならいつでも駆けつけるさ。」

 

 

 

 「カロン、おめでとう。これで俺も路頭に迷わずに済むな。」

 

 「ヴェルフ、お前には期待しているよ。おかしなネーミングだけはいただけないが………。しっかり働かんとお前の仕事が他の人間にとられてしまうぞ?」

 

 「まかせときな!期待にゃしっかり応えてやるよ!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 アストレア団長室。今日はもうすぐ明日になる時間だ。パーティーも終わり私達は一つの節目を迎えていた。

 ここで私たちは二人きり、ソファーに座って向かい合う。今日は彼も珍しく自分からお酒を飲んでいた。

 

 「今日はお疲れ様でした。だいぶ目標に近づきましたね。」

 

 「ああ、そうだな。一重にリリルカのおかげだ。リリルカが有能過ぎる。」

 

 私は苦笑する。やはりリリルカタグは絶対に必要だ。

 

 「リリルカさんは反則過ぎる。なにゆえあそこまで有能なのか。」

 

 「必要だったんだろ。生きる上で。本人にいうと落ち込むかも知れんぞ?」

 

 「なるほど。」

 

 私は苦笑した。思い至る節はある。リリルカさんはきっと大変な思いをしたのだろう。

 

 「お前はポケーッと生きてるからそんなに腹芸が下手なんだ。リリルカを見習うべきだな。」

 

 カロンは私にジト目を向ける。

 

 「相変わらずひどい言い草だ。しかしあなたのそれはベートさんのツンデレのような感じではないのですか?」

 

 思いきって私は揺さぶってみる。私にはカロンに対する一つの切り札があった。

 

 「………何だと?」

 

 「小学生が好きな子にちょっかいかけたくなるアレですよ。」

 

 「………俺は誰にでもこんな感じだろ?………それにお前はアストレア最後に残った同胞だったろう。」

 

 思ったとおり。彼は動揺しています。ここが切り札の切り所だ。私は長く彼とともにいて彼のことをある程度以上に理解していました。

 

 「あなたが言葉に詰まるのは珍しい。あなたは口が回る。少しでも言葉を詰まらせるのは急所を突かれた時くらいです。たとえお酒が入ってて油断してたとしても。」

 

 「………………。」

 

 「あなたが隙を見せるのは珍しいですからね。」

 

 私は笑う。彼はそっぽを向くが私はそれを許さない。私は立ち上がって回り込んで彼の目を見る。

 彼の目は青い色。私の空色にたいして海の色。包容力のある無限に広がる優しい海。私はその色にせつなさを覚えた。いえ間違いなく気のせいですね。

 

 「ちょろちょろと何してるんだ。」

 

 「いえ別に何も。」

 

 ニヤニヤ笑う私に膨れっつらなカロン。不機嫌そうな顔は意外とレアです。いじれそうなときにいじらないと普段の仕返しを損ねてしまいます。

 

 「お前キャラ変わっとるだろう。そんなにおかしなキャラだったか?もう俺は寝るぞ。明日からは忙しいしな。」

 

 そう言って逃げるように退出する彼。さすがの戦術眼です。三十六計なんとやらですね。

 

 「勝ち目がないから逃げるのは当然です。あなたは逃げ出すのはつまりはそういうことですね?」

 

 挑発する私。舌を出して逃げ去るカロン。今日の私は珍しく勝利の余韻とともに眠りにつけそうだった。




アストレア本拠地はリューのために以前植えた木が大樹となることになり遠い未来に【世界樹の館】と呼ばれ、エルフからも多大な敬意を集めることになります。

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