ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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ボヤボヤしてたら首

 アストレア本拠地団長室。俺は今ここで悩んでいた。連合お披露目まで後一ヶ月をきった。しかしぶっちゃけお披露目宴を豪華なものにするほどの金がない。お披露目宴は可能な限り大々的に執り行いたい。しかし予算が潤沢でなく、これは盟主である俺達が金を出すべきだと俺は考えていた。

 

 ーー盟友に出させてイシュタルが万一ごねでもしたら大きなケチをつけかねない。イシュタルがぬけたりでもしたらタケミカヅチも連合にいる意味がなくなってしまう。イシュタルに金を出させないのにソーマやミアハにカンパしろというのもおかしな話だ。いきなり連合に亀裂が入りかねないことを行うべきではない。どうするか?借りるか?どこから?フレイヤやガネーシャ?俺はあいつらにどこまで世話になるつもりだ?うーんしかしあと一ヶ月。無理をして仲間に怪我をさせたくもないしどうしたもんかねぇ?公的な金融機関ならギルドか?ファミリア内の資産はそこそこ、特にソーマの酒とミアハの技能には価値がある。貸してくれるかもしれんが………。しかし本拠地改装のために既にそれなりの借金もある。その辺りはリリルカに一任している………やはりリリルカにも聞いてみるとするか。

 

 「オーイ、ミーシェ。リリルカを呼んでくれるか?」

 

 「ハーイ、ちょっと待っててください。」

 

 ◇◇◇

 

 アストレア本拠地団長室、向き合う俺とリリルカ。リリルカの隣にはミーシェも座っていた。彼女は会計補佐もこなしているからだ。

 

 「リリルカ、スマンな。ちと悩み事があってな。」

 

 「悩み事はすでに解決していますよ?」

 

 悩み事の詳細を告げる前から解決宣言をされてしまった。何だかよくわからないが彼女がそういうからには解決しているのかも知れない。

 ………俺はどんだけ化け物を見出だしてしまったんだろうか?

 

 「ち、ちょっと待て!まだ相談すらしていないが?」

 

 「内容は丸わかりです。リリはこのファミリアに入団してそれなりに経ちます。脳天気なカロン様の悩みは9割がお金関係です。カロン様は披露宴の予算のことを悩んでらっしゃったのでしょう。」

 

 「マジか………ばれてたのか。」

 

 「バレバレです。大々的な物にしたいのでしょう。そのための予算はすでに集まっています。」

 

 「どうやって?どこから借りたんだ?」

 

 「どこからも借りてません。実はリリ達がひそかにカンパ活動を行いました。」

 

 「な、いつの間に?」

 

 「連合成立が決定してすぐです。」

 

 俺は今度こそ戦慄した。確かにリリルカは会計で予算には明るい。しかし様々な費用見積もりが出たのは今日の朝のことである。連合成立決定は一週間ほど前………。その時にはすでにカンパが必要だと判断して動いていたということなのか!?

 リリルカはどれだけ有能なのだ!?俺は震えがとまらなかった。ミーシェが物凄いどや顔だ。

 

 「リ、リリルカそれでカンパとは誰にしてもらったんだ?」

 

 「そうですね。後々カロン様がお礼を言いに行かなくてはならないでしょうから………まずはファミリア内は全員出してます。」

 

 「そ、そうか。ありがとう。あとで皆にお礼を言わないとな。」

 

 「次に、同盟フレイヤファミリアからフレイヤ様、アイン様、イース様、ウルド様、エルザ様、オーウェン様。連合ファミリアからソーマ様、ナァーザ様、タケミカヅチ様、桜花様、千草様、命様。カロン様の個人的なご友人としてロキファミリアのフィン様、リヴェリア様、アイズ様、ベート様、ロキ様、ティオナ様、ティオネ様、門番一同様。ガネーシャファミリアからガネーシャ様。ヘルメスファミリアからヘルメス様。ギルドからエイナ様。ヘファイストスファミリアからヘファイストス様、椿様、ヴェルフ様。他にもーーー

 

 「ちょっと待ってくれ!?」

 

 結構な名前が出てしまった。

 

 「どうなさいましたか?こちらにお名前と金額を記した紙がありますがそちらを差し上げましょうか?」

 

 「あ、ああ、それはもらうよ。それでつまりもう予算はカンパ金で賄えるということか?」

 

 「うーん何と言いますか………。それは少しリリも困っています。」

 

 「困っている?どういうことだ?」

 

 「いや、それがですね。当初の予定よりもカンパ金が大幅に増えてしまって………リリはどうしたものかと少し困っています。」

 

 「なぜそんなことに!?」

 

 「まあ主にフレイヤ様とガネーシャ様とロキ様、あとは金にさほどとんちゃくのないアイズ様とツンデレのベート様と借りを返すとおっしゃるティオネ様ですね。ガネーシャ様は親友の晴れ舞台だということです。フレイヤ様はオラリオでの地位を考えると端金でごまかすわけにはいかないと笑いながら………。ロキ様はそれに対抗しないわけにはいかなかったみたいですね。」

 

 「マジかよ!?どうすんだ?そんなに金を余らせてしまったならどうするべきなんだ?」

 

 「そうですね。多少おみやをよいものにして………あとは連合が日頃から彼らにしっかり還元できるように努力していく他はありませんね。」

 

 「しかし俺はフレイヤやガネーシャにはもう返しきれないほどいろいろな事をしてもらっているぞ?」

 

 リリルカとミーシェは笑った。

 

 「それではミーシェ様、御説明をお願いします。」

 

 「お任せ下さい、お姉様。団長、これを見てください。」

 

 「これは………?」

 

 何かの表だ。価格表やその他もろもろ。何だろう?

 

 「これは連合成立後の見通しです。例えば、ソーマ様とミアハ様が今までより密接に協力なされば未だない薬酒を作り上げる事が可能になります。他にも、アストレア様とミアハ様が協力すれば医療知識や薬師知識を持つサポーターが生み出せます。タケミカヅチ様の薫陶を受ければ冒険者やサポーターの損耗率低下にも効果が見込めます。あとこれは女性としては複雑ですが………娼館を割引で使えるようでしたら男性のモチベーションにもつながります。他にも参入者が表れたら連合はいくらでも可能性を生み出せます。」

 

 「………確かにその通りだ。」

 

 「つまり、団長が考えている以上に皆楽しみにしてるんですよ。特にカンパいただいた方々は。神の方へのお礼は楽しませることで返せばいいし、他の方々はこの先生活を豊かにして返せばいいのです。リリお姉様みたいにしっかり働かないと、ボヤボヤしてたら団長といえどもクビになりますよ?」


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