ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
「教えてくれ、俺はどうすればいいんだ!!」
「………俺にはできるのはあなたの道を作り出すことだけだ。」
◇◇◇
イシュタルの連合参入が決まってから、俺は頻繁に歓楽街を訪れた。イシュタルが暴発する確率を懸念しての視察だ。それとイシュタルファミリアとの相互理解を重ねる目的もある。キチンとした目的があるにも関わらず女性陣にはやっぱりゴミを見る目で見られた。甚だ遺憾である。
「なあ、お前はなぜ毎日のように話に来るんだ?」
「愛しのイシュタルの顔を見に来ただけさ。」
相変わらず適当さがとどまるところを知らないカロン節。
「お前なあ、嘘がわからんわけないの知っておろうが。」
呆れるイシュタル。
「しかし愛は時間をかけて育んだものの方が強いぞ?愛の神なら知ってるだろ?今はまだ互いの愛を育む時期さ。」
「つくづく何なんだお前は!?何か騙されている気がして来たのだが………。」
「しかしお前ら神は子供達の嘘を見抜くだろ?」
いけしゃあしゃあとカロン。困惑顔のイシュタル。
「大丈夫だよイシュタル。愛のない結婚でも、長く時間を共にして苦でないならどうにかなるものさ。」
◇◇◇
「春姫はサンジョウノ・春姫と申します。」
「ふーん、そうか。」
狐人との対面。イシュタルを歓楽街を連れ回して案内させていたら見かけた。彼女の年齢の若さが気になりカロンは話しかけてみた。
「なあ、イシュタル。こいつも娼婦にするのか?」
「ああ、その通りだよ。」
「しかしそれにしては少し若すぎないか?」
「お前には関係ない。」
「そうでもないぞ。俺達は連合内での改宗に融通を効かせるつもりだ。俺達のところからお前のところに行く人間が出るかも知れんし逆も有りうる。」
「………初耳だぞ?」
「適材適所は連合の利点だろう?こないだの説明会でリリルカが説明したはずだが?規約として書類も渡したはずだろ?」
そっぽを向くイシュタル。ちょっとかわいい。
「イシュタル、書類はちゃんと確認しておけよ!それにしてもふむ、サンジョウノ・春姫か。あまり聞かない名前だな。タケミカヅチのところの眷属のような名前だな。何か関係あるのか?」
その言葉に衝撃を受ける春姫。
「タケミカヅチ様をご存知なのですか?」
「俺の武門の師だな。お前知ってるのか?」
「………昔の知り合いです。」
俯く春姫。
「なあ、イシュタル。こいつ俺にくれたりはーーー
「するか!!私たちのメシのタネだ!そうぽんぽんやれるわけがなかろう!?」
「まあ、だよなぁ。代わりに渡せるものもないしなぁ。」
ぼやくカロンに困惑の春姫。
「まあ今日のところはもう帰るよ。来月のお披露目会のことは忘れんなよ!」
「言われなくともわかっとるわ!」
◇◇◇
ここはタケミカヅチ道場。組み合って向かい合うはカロンとタケミカヅチ。
「なあ、タケミカヅチ師。」
「どうした?」
「この間イシュタルのところで春姫という名の眷属に出会ったんだが。」
動揺するタケミカヅチ。隙をみたカロンはタケミカヅチを投げ飛ばす。カロンがタケミカヅチ道場に通いはじめてから初めて取った技有り一本だった。
「ゴホッゴホッ、カロンお前その話は本当か?姓も教えてくれるか?」
動揺留まらぬタケミカヅチ。
「神は嘘がわかるだろ。確か名はサンショウウオ・春姫だったか?狐人だったぞ。」
「そ、それは本当か!?頼む、なんとか会わせてくれないか?」
「イシュタルのところにいるぞ。面会したければ正当なアポイントメントをとって土産物を持っていくべきだと思うが?」
「み、土産物か………。」
どこまでも貧乏神タケミカヅチ。
「ああ。俺のツテで面会はどうにかなるかもしらんが………。」
「ど、どうか頼んでも構わんか?」
「あなたは師匠だからな。仕方あるまい。」
◇◇◇
「よう、イシュタル。」
「お前、また来てしまったのか。」
呆れるイシュタル。やはりここは女主の神娼殿。
「今日は連合加入を検討しているタケミカヅチも見学のために連れてきたが構わんか?」
「あまり他神に内情を知られるのは困る。」
「そういうなよ。俺とお前の仲だろ?」
「どういう仲だ!」
「愛人関係?」
適当カロンに展開についていけないタケミカヅチ。
「いつお前は愛人になった!?」
「心が繋がってればいつだって愛人さ。」
「繋がっていない!!」
「じゃあ体がーー
「繋がっていない!!!!」
軽口を叩くカロン。扱いづらさに手をやくイシュタル。
「まあそういうわけで頼むよ。借りはいずれきちんと返すからさ。それにタケミカヅチ師は東の出身でろくに知り合いもいないぼっちだから内情を多少知ってもどうこうできないぜ?」
「お前は………何という強引さだ。お前ベートのストーカーもそんな感じでしていたのか?」
「否定はしない。」
「はあ、ろくでもない奴と関係を持ってしまった。」
「関係を持つってお前がいうとなんかエロいな。」
「さっさとどっか行け!!」
◇◇◇
「タケミカヅチ様!!」
「春姫!!」
感動の再会。イシュタル?カロンに疲れ果ててどっか行った。今だけはイシュタルの適当さに感謝を捧げるカロン。
「タケミカヅチ師、さほど時間はとれんぞ。イシュタルにばれたら眷属の引き抜き目的と見抜かれる。俺の顔を潰してしまえばあなたたちはもう二度と会えなくなるぞ。」
「あ、ああ。」
「ほら顔見せもすんだしとりあえずもう帰るぞ。」
「も、もう少しーーー
「逢い引きはばれないようにやるもんだ。イシュタルに不信感を持たれるのは俺としては非常に困る。あなたらの流儀は恩を仇で返すものなのか?」
「………やむなしか。」
春姫も黙り込む。
「まあそう暗くなるなよ。生きてるんだし。相談だけなら乗れんこともないぞ?」
◇◇◇
「俺は、どうすべきだろうか?」
ここはタケミカヅチ本拠地、道場。正座をして向かい合うカロンとタケミカヅチ。
「イシュタルから抜くのは大金がかかるぞ?売り物だとも限らんし。」
「………そうなんだろうな。なあ、カロン。何かいい案ないか?」
「辛抱強く交渉するしかないだろう。」
「しかし………お前ら以前に言っていた連合に入れば交渉は可能なのか!?」
「間を取り持つために奔走することはできるが………。しかしあなた眷属に言わずに勝手なことはできんだろ?」
「ああ、そうだ。眷属に相談してみるよ。お前はまた相談に乗ってくれるか?」
愛のない結婚………実はカロンは、互いに利益や目的を共有していない同盟でもいずれどうにでもするとそう言っています。それの暗示です。
先ほど確認したら二名の方々が評価を付けてくださってました。一名の方は以前から付けていただいていましたがもう一名の方はおそらく昨日付けていただいています。高評価がとても嬉しいのですが、満足行くクオリティーに仕上がっているのかと恐々としております。
そう、作者は強メンタルのカロンと違ってビビりなのです!感想をいただいた方と合わせて感謝致します。ありがとうございます。