ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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思うままに

 アストレア団長室。カロンは瞑目して一人で思索する。

 

 ーー行動をキャンセルする理由はいつだってシンプルだ。より上位の必要性を持つ行動を起こすとき。つまり俺に付き纏うより大切な行動がありその行動のために俺と戦うのが不都合だったということか?不自然な理由ではない。

 

 ーー他に可能性は?シンプルにロキを恐れた可能性………。低いな。フリュネは衝動的な人間だと聞いている。衝動的な人間は気にしないだろう。あいつが行動を起こさなかったのは上位の存在………イシュタルに厳命されていたからという可能性が高い。しかしイシュタルの厳命だけでは止められないとも聞いている。あらゆる要素で抑止があったということか?あらゆる要素で抑止があったなら今のイシュタルファミリアは火薬庫だという事なのか?イシュタルファミリアの内情が止める要素となった可能性は確定事項として取り扱う。次はならばイシュタルが止めていた理由………フリュネが怪我すると困るということか?あるいは敵を増やすのが不都合ということか?

 

 カロンの灰色の脳細胞は加速している。ギャグを書けない誰かは虫の息である。

 

 ーーイシュタルはいつでも敵が多い。しかし今である理由は?なんらかのアクションを?遠征前?時期をずらせばいいんじゃないか?フリュネは団長でイシュタルファミリアの遠征に関しては権限を持っている。まさか戦争遊戯か?しかしそれであっていたとして今である理由は?待て、時期の理由は置いておこう。俺が知らない情報がある可能性がある。ならば戦争遊戯だとしたらどこを相手取る?奴らの目の敵はフレイヤだ。しかしまず勝てないだろう。時期の理由もここいらにあるのか?そもそも戦争遊戯でなくて強襲か?フレイヤに聞くのが一番手っ取り早そうだな。取り敢えずその方針にするか。明日面会を行おう。

 

 「ミーシェ、いるか?」

 

 「ハイハイ、どうしました団長?」

 

 部屋に入るミーシェ。

 

 「明日フレイヤと面会を行いたい。先方へのアポイントメントを頼む。」

 

 「了解しました。」

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 バベル最上階。向かい合う俺とフレイヤ。

 

 「いらっしゃい。今日はどうしたの?久しぶりにあの子達の様子を見に来たの?元気にしているわ。」

 

 「スマン、今日の用事はそれじゃない。イシュタルの様子がどうにも気になってな。」

 

 目を細めるフレイヤ。

 

 「どこでそのことを聞いたの?」

 

 「当たってたのか?歓楽街でフリュネに出くわしてな。様子に違和感を感じただけだ。」

 

 「………それだけで?まあいいわ。正直にいうと私たちもイシュタルが何かの行動を起こすと考えているわ。具体的には襲撃の可能性。」

 

 「あなたらをか。この時期なのは?」

 

 「それは私にもわからないわ。」

 

 「具体的な日付は?」

 

 「そこまでは正確にはわかってないわ。次の満月辺りが怪しいと踏んでいるのだけど。」

 

 「そうか、情報を感謝する。助勢は?」

 

 フレイヤは妖艶に笑う。

 

 「いらないわ。あなた私が誰だか知っているでしょ。」

 

 「まあそうだろうな。しかしそれでも言わせてくれ。俺はあなたに感謝しているし恩を感じている。不敬な言い方になるかもしれないが死人には恩が返せないだろ?」

 

 「あなたねぇ、万一にも私が敗れると思ってるの?」

 

 フレイヤのジト目。さすがのフレイヤは何をしてもサマになる。

 

 「ダンジョンでは油断した奴から命を落としていく。」

 

 「私は油断するつもりはないしここはオラリオよ。まったく。」

 

 「まあそうだな。ところであなたは俺達にとってほしい行動とかはないのか?おかしな命令でなければだいたいは聞けるぞ?」

 

 「ならばあなたがフレイヤファミリアにーーー

 

 「ないな。それは有り得ん。」

 

 「ならなにもないわよ。」

 

 すねた表情のフレイヤ。

 

 「わかった。情報と面会に感謝する。」

 

 俺はそう伝え席を立つ。彼女はその背中に声をかける。

 

 「あなたはあなたの思うままになさい。あなたは自由なのが一番美しいわ。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ここはアストレア本拠地応接間。夕飯が終わって俺は全部で11人のファミリア関係者(アストレア、ヘスティア、リュー、リリルカ、俺、ミーシェ、新人5人)を呼び出していた。

 

 「個人のツテでおかしな情報が入った。イシュタルの動きがきな臭いとのことだ。十分に注意してくれ。特に満月の日は要注意だ。歓楽街からしばらくの間距離をとれ。」

 

 俺はそれを新人とミーシェに伝えて帰した。戦闘力の低い奴らは関わるべきではないという判断だ。超絶チートな脳を持つリリルカは意見を聞くためにこの場に残した。

 

 「さて、ここからが本題だ。俺達の採るべき行動を決める会議を行う。」

 

 俺が切り出す。

 

 「アストレアの正義に則り民間の被害を抑えるべきです。」

 

 リューの意見。

 

 「そうだな。その前に戦争前になんらかの手を打つかの検討をしよう。そもそも止めるべきだと思うか?」

 

 「私としては………そうね。正義を考えるならまずオラリオ住民の安全確保から確実にさせるべきではない?そのためには住民に対する警告が必要だわ。」

 

 アストレアの意見。

 

 「情報の共有か。可能な限り拡散させるべきだろうな。」

 

 「そうだね。ボク達の仲間を傷つけたくはないしね。」

 

 珍しくまともなことをいうヘスティア。

 

 「イシュタル様ということはフレイヤ様が標的ということでしょうか?」

 

 リリルカはさすがの鋭い指摘。

 

 「そのようだ。実行予想日まであと一週間。情報の拡散はガネーシャに依頼するとしてあとは付近の住民の避難か。」

 

 カロンのスキルにリリルカと神酒が続いてついにガネーシャにもチート疑惑がかかる。何でも任せ過ぎである。

 

 「止めるべきだと思いますか?」

 

 リューは全体意思の確認を行う。

 

 「まあ戦争がしょっちゅう起こるようじゃ住みよいオラリオとはいえんだろうからなぁ。」

 

 「フレイヤは何て言ってたのかしら?」

 

 アストレアの疑問。

 

 「望むままにしろと言われたよ。まったくあいついい女ぶりやがって。」

 

 笑うカロンに白い目を向ける女性陣。もうハーレムのタグつけようかな。

 

 「あなたの思うままに、ですか。そうですね。最初から私たちはずっとそうだった。どうしますか、団長?」

 

 これはリューだ。

 

 「お前は普段俺のことを団長とは呼ばん癖に。………そうだな。それだったら取り敢えず思いきってイシュタルのところに乗り込んでみるか?」


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