ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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恋愛相談

 ここはロキ本拠地近く、とある喫茶店。ここの喫茶店はコーヒーが実においしい。非常に香り高くて苦味が程よく後を引く。俺は今日ここの店で一人でこっそり自由な時間を満喫していた。たまには一人で贅沢したっていいだろう?

 

 「カロン、久しぶりね。」

 

 知り合いが向かいに座り込んで来てしまった。見つかってしまった。ふむ、贅沢タイムは終了か。大変遺憾である。

 

 「どうかしたのか?怒蛇?」

 

 そう、彼女はティオネ・ヒリュテ。ロキの高レベル冒険者でティオナの確か姉だったな。ちょくちょくロキにお邪魔するうちに顔見知りになってしまった。彼女の特徴としては胸部の装甲はワールドクラスと言えるだろう。

 

 「いや、たまたま見かけたからね。せっかくだしちょっと相談に乗ってくれない?」

 

 相談………。まあ誰もが知ってるアレ以外はありえんよな。しかし勇者の気が向いている様子もないし有効な手立てがあるとも思いづらいんだよなぁ。どうしたもんかね?

 

 「相談?何の話だ?」

 

 俺は取り敢えずすっとぼけてみる。

 

 「わかってんでしょ?団長のことよ!」

 

 まあこれはごまかしきらんな。

 

 「なぜ俺に聞くんだ?俺はオラリオの変人だぞ?もっと恋愛に明るい人間に相談するべきだろ?」

 

 「アンタお堅いリューとしょっちゅう一緒にいるじゃない。どうやって口説き落としたの?」

 

 「そもそも口説いてないぞ?俺は凶狼のストーカー行為は思う存分に認めるがリューに関しては事実無根だな。」

 

 「ふ~ん、そうやってごまかすんだ。私悩んでるのに。」

 

 そういって何かを考える怒蛇。

 

 「ごまかしてはいないぞ?勇者とはそれなりに親交があるが恋愛相談をどうこうできるとも思えんのだが?」

 

 「じゃあアンタんところのリューに私も変人にしつこくストーカーされて勧誘されてるって言ってみたらどうなるのかな?セクハラされてる噂も加えてさ?」

 

 「おい、それは卑怯だろう?そんなん言ったら俺も勇者にあることないこと吹き込むぞ?」

 

 睨み合う俺と怒蛇。俺は一つ溜息を吐く。

 

 「わかったよ。協力するだけしてみるから。ただどうなっても責任はもてんぞ?」

 

 ◇◇◇

 

 場所は変わらず喫茶店。優雅な俺と優雅でない怒蛇。

 

 「それでどういう手を使えばいいのかな?」

 

 「今までどういう手段をとってきたんだ?」

 

 「押せ押せね。猛烈アピールをしてたわ。」

 

 なんか彼女が猪に見えてきたな。

 

 「ふむ………。特に近道があるとも思えんのだよなぁ。今までのやり方以外の。もういっそ下着とかを盗んでそれで満足してしまえばいいんじゃないか?」

 

 「ちょっと!真面目に考えてよ!」

 

 テーブルを叩く怒蛇、飛び散るコーヒー。勿体ないな。ミアハの買収金で俺は貧乏なのに。

 

 「そんなこと言われても考えれば考えるほど地道に一歩ずつ近づくという結論しかでらんぞ?しかもお前堪え性なさそうだし。せめて我慢ができるならなぁ。」

 

 「我慢ができたらどうだって言うの?」

 

 「もうすでに手遅れかもしらんが外堀を埋めていくのが一つの手段だったかもな………。具体的には偽りの清楚キャラを演じる。口が堅そうなリヴェリア辺りを味方につける。後は上手く策を練って勇者が責任をとらざるを得なくなるような状況に追い込むとかな。」

 

 「どんな方法?」

 

 「いや、もうお前はキャラがばれてしまっているから無理だな。」

 

 「でも教えなさいよ。」

 

 「一番確実なのは飲み会で勇者が泥酔したときとかに起きたら一緒に寝てればいいんじゃないか?」

 

 「団長は泥酔とかする人間でもないわよ!」

 

 「だからリヴェリア辺りを上手く味方につけるんだ。勇者もあいつは尊重しとるだろ?まあでもやはり無理だろうな。」

 

 「なんでよ!」

 

 「だってお前飲み会でアルコールを我慢できる人間か?それに勇者にキャラがばれているということは、たとえそのシチュエーションでも嵌められたと多分ばれるぞ?挙げ句の果てに今更だがこの方法は全くオススメできない。道義的にも疑問が大だ。」

 

 「そんな、じゃあ一体私はどうすればいいの!?」

 

 「うーんやはり今まで通りの方法以外にないだろう。後は他の男を見つけるか下着を盗んで満足するか………。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ここはロキ本拠地応接室。向かい合うは俺と勇者。

 

 「で、なんで俺はいきなり呼び出されたんだ?」

 

 「最近僕の下着が減ってたんだよ。それでおかしいなと思って見張ってたんだ。そしたらさ。」

 

 ああ、これは落ちが読めたやつだな。椿の時と同じ感じだ。

 

 「ティオネが僕の下着を盗んでたんだよ。それでどうしてそんなことをしてるんだって聞いたらさ。」

 

 ふむ、雷が落ちる準備をしとこうか。

 

 「なんかカロンが僕のパンツを欲しがってたってティオネが言ってたんだよ。まあティオネの妄言だとは思うんだけど一応確認のためにさ。」

 

 予想進路を少し外れてしまったな。これはどうなるんだろう?

 

 「それでどうなんだい?まさかとは思うけどカロンが盗んだのかい?君の行動は読めないんだよね。」

 

 俺は少し考える。怒蛇に責任をなすりつけるのはどうなのか?そうしたら彼女が勇者とくっつく可能性が低くなるのか?今更ではないのか?俺は彼女を護るべきなのか?そもそも俺に責任はあるのか?怒蛇に貸しを作れたら後々なんらかの得になるのではないか?勇者の怒りを買う可能性はーーー

 

 「スマン、勇者。俺が盗ませた。」

 

 「カロン、どういうことなんだい?」

 

 勇者は呆れて俺を見る。

 

 「スマン、どうしても金がなくてな。お前のファンに売り捌いてしまった。金は必ず返す。だから今回はどうにか許してはもらえないだろうか?」

 

 「ハァー。不思議と君はなんかあまり怒る気になれないんだよね。アイズの人間的な成長は君のおかげな気がするし………。いいよ。ちゃんとお金は返してね。」

 

 「恩に着る。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ロキ本拠地近くの喫茶店。再び出会う俺と怒蛇。今日のコーヒーは彼女の奢りだ。他人の金で飲むコーヒーは普段より甘美なものだった。さらにデザートまでつけてくれた。実にシルブプレだ。シルブプレの意味わからんけど。なんか間違えて使っている気がするな。

 

 「怒蛇、今回は貸し一だな。」

 

 「うっ、悪かったわよ。」

 

 「恋愛に近道なんぞないだろ。今のままで頑張るんだな。」

 

 「そうね。私もどうかしていたわ。」

 

 「貸しはちゃんといつか返せよ。」

 

 「キチンと利息をつけて返してやるわ。ハァ、しかしどうやったらフィンと親密になれるのかしら。」

 

 「俺は持久戦専門だが恋愛も似たようなもんじゃないか?しぶとく戦って最後に勝てばいいんじゃないか?それ以外に方法はないだろう?」




ストーカー、ダメ!絶対!
下着とか盗んだらダメ!絶対!  
シルブプレはお願いします、という意味のフランス語だそうです。[知恵袋調べ]

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