ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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さらなる壁を越えろ

 ここはアストレア本拠地鍛練場。ここで今私は壁を越える決意をしていた。

 

 ーーカロンは連合成立のために精力的に動いています。それこそ休みなしに………。対して私はダンジョンでの鍛練専門………。私は副団長にも関わらずリリルカさんやミーシェさんに比べて交渉面で著しく劣っています。私は今、壁を越えるべきです。リリルカさんは壁を越えました!私も壁を乗り越えて私の価値を取り戻すのです。明日やるでは永遠に始まりません。今日です!今日私は壁を乗り越えるんです!

 

 私は決意するーーーーーー

 

 ◇◇◇

 

 団長室。向かい合うは私とカロン。

 

 「なるほど。つまり他人とより親しく接することでコミュニティー能力をあげて交渉能力の底上げを図りたいと。それでリベンジのためにロキファミリアに俺に連れていけというわけだな。お前その時点でダメだろ?一人で行ってこいよ?」

 

 「カロン、ダンジョンは油断が死を招きます。私も油断してはいけない。最初はきちんと誰かの助けとともに潜るべきです!」

 

 「いや、お前ロキファミリアに行くんだろ?何で急にダンジョンの話とかするんだよ!?なんでそんなに危機迫る表情をしてるんだよ!?」

 

 「カロン、私もいきなり多人数の元へ行ってしまえば何をしていいか分からなくなる可能性があります。私の壁を乗り越える付き添いをお願いします。」

 

 「なんか悲しいほど情けないことを言ってるな。保護者同伴かよ。リリルカではダメなのか?」

 

 「リリルカさんは私の数少ない友人です。友人に無様を晒したくはありません。」

 

 「じゃあ俺は?」

 

 「カロンはまあ長い付き合いですし………。」

 

 「俺だって暇じゃないんだが?」

 

 「………………。」

 

 「わかったよ。行くよ。行くからそんな涙目で睨むのはやめてくれよ。」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ロキファミリア本拠地、門前。

 

 「というわけでやって参りましたロキファミリア。」

 

 「アンタらまた来たっすか?」

 

 呆れ果てる門番。

 

 「というわけで済まないな。お邪魔するぞ。」

 

 ◇◇◇

 

 「どこに行ってみるか?鍛練場か?食堂か?応接間か?リューはどこがいいと思う?」

 

 「そうですね………。とりあえずヴァレンシュタインさんの私室を訪問して尋ねてみては如何ですか?」

 

 「アイズ狙いか。悪い狙い目ではないが今いるかわからんぞ?」

 

 「あ、ヤッホー、カロンとリューじゃん。」

 

 向こうから歩いて来る褐色の肌の健康的な女性。彼女の名前はティオナ・ヒリュテ。ロキファミリアのレベル5のアマゾネスの冒険者だ。

 

 「ああ、大切断か。遊びに来たぞ。今日はリューの友達作りに付き合わされてるんだ。正直に言うと非常に面倒だ。お前リューの友達になってやってくれんか?」

 

 「んー?私はもうリューとはお友達だと思ってたよ。」

 

 「ふむ。目的達成だな。じゃあ俺はもう帰るからリューは友達の大切断と仲良く遊んで帰ればいい。」

 

 「ま、待って下さい。いきなり置いていかれても私にはどうしたらいいかーーー」

 

 「せっかくだから鍛練場で戦えばいいんじゃない?私達同じレベルだしさ。戦えば仲良くなれるんじゃない?」

 

 人懐こく笑う大切断。

 

 「一理あるな。というわけでほら、リュー行ってこい。」

 

 「あなたも残るべきだ!あなたが帰るのは断じて認められない!!」

 

 「お前はいつまでそんななんだ?大概どうにかしてくれんと面倒でかなわんのだが………。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 鍛練場で向かい合うリューとティオナ。今日の晩御飯の事を考える俺。確か当番はミーシェで献立はトンカツだったな。非常に楽しみだ。

 鍛練場には他には誰もいなかった。

 

 「じゃあ行くよ!」

 

 「ええ、かかって来て下さい!」

 

 武器無しの戦い。大切断がいきなり打撃技で突っ掛かる。それを速さでいなすリュー。俺はトンカツの事を考える。

 連打を捌いたリューは下段の蹴りを出す。足を上げてすねで受けるティオナ。俺はトンカツソースがもうなかった事を思い出す。危なかった。

 ティオナはリューを掴んでひざげりをリューに入れる。リューはひざげりを腕で受けてそのまま体全体の筋肉でティオナを床にたたき付ける。一本。俺はトンカツソースを買いに行くために席を立つ。

 そんな感じで戦いは続いていく。

 

 ◇◇◇

 

 「ハァ、ハァ、疲れたぁ………。」

 

 「………ええ、疲れましたね。」

 

 床に寝転ぶ私とヒリュテさん。結局戦いは武器無しだからかタケミカヅチ道場に通う私が少しだけ優勢だった。

 

 「それにしてもカロンはいつの間にかいなくなってますね………。全く。」

 

 「まあ気にすることはないんじゃない?別に。」

 

 そうですね。私はここに友人を作りに来ました。当初の目標は達成されたと考えてもいいでしょう。

 

 「じゃあ私もそろそろ帰りますね。」

 

 「あっ、待って。せっかくだからここの食堂で夕飯食べていったら?」

 

 「いえ、さすがに突然おしかけたファミリアで食事をご馳走になるほど私は図々しくなれません。」

 

 「でもウチのファミリアの人いっぱい来るよ?せっかくの友達を作るチャンスなのに………。カロンもしょっちゅうご飯食べて帰ってるよ?」

 

 「なっ………。」

 

 私に衝撃が走った。

 私の夕食当番の時カロンはいつも外回りだと言って食事を遠慮していたハズだ。他にファミリアの食事をしなかったことはない。私は怪しみながらも彼が忙しいのは理解していた。

 

 しかしそれは理解していたつもりだけだったということなのか?まさか私はずっと裏切られつづけていたというのか?私は自分がいい女だと思い込んでいる道化だったということなのか、ロキファミリアだけに?カロンは私の晩御飯を食べずにロキファミリアの晩御飯を食べ続けていたということなのかーーー?

 

 「………ヒリュテさん。あなたの食事の誘いは嬉しいがそれは受けられない。私には急遽やることができた。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 アストレア本拠地鍛練場。俺は木刀を携えた修羅(リュー)に簀巻きにされて転がされていた。

 

 「なあ、リュー。謝ってるだろ?もう許してくれよ。今日の晩御飯俺の大好きなトンカツなんだよ。早く戻らないとみんなに食べられてなくなっちまうだろ?」

 

 「カロン、あなたは晩御飯がなくともロキファミリアにお邪魔すればいいではないですか?」

 

 うん、キレてらっしゃる。どうしよう?

 

 「リュー、待ってくれよ。確かにお前の晩御飯を食べなかったのは悪かったけど………。」

 

 「けど………?」

 

 ………何も思いつかないな。ふむ、木刀でタコ殴りにされるよりはましか。

 

 「こんなに簀巻きにされてしまったらタケミカヅチ直伝の土下座ができないだろう?」


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