ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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エイナの友人に迫る不気味な影(前編)

 日中短くなり寒々しい空。今のオラリオは冬になっていた。

 道行く人々は厚着して寒そうに鼻の頭を赤くしている。オラリオではところどころに雪がつもり物寂しい。

 そんなある日のことーーー

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ここはオラリオ市立図書館。

 

 ーーよしっがんばれあたし。試験はもう目前。今年こそは何としてもギルドの職員試験に合格してギルドの受付になるんだから!

 

 彼女の名前はミーシェ。ギルドの受付を夢見て勉強する努力家。黒髪のボブカットで右側の髪の毛を編み込んでおりとてもかわいらしい。彼女はオラリオ市立図書館でギルドの試験勉強を行っていた。

 

 そんな彼女を本棚の影から覗く怪しい二人組………。

 

 そう、彼らはカロンとリュー。

 

 そしてその二人をさらに見つめる影がいた!?

 すわ闇派閥!?また戦闘描写か!?

 誰かが戦慄する!

 

 

 

 ーーミーシェを紹介してもよかったのかしら?

 

 友人を心配して密かにつけてきた皆のアイドル、エイナさんだった。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 「対象(ターゲット)を確認した。容姿からみてエイナさんから伝え聞いた人物で間違いないでしょう。」

 

 「ああ、だろうな。作戦はどうする?」

 

 「パターンBでいきましょう。」

 

 もともと変人のカロンと毒されつつあるリュー。彼らはサバゲーのようなノリでミーシェに接近する。

 

 ーーパターンB、確か俺が単体で突撃するパターンか!?

 

 カロンに交渉を丸投げするリュー。しかしカロンもそれを許さない。

 

 「上官としてパターンCを提案する!相手は女性だ。」

 

 そう、彼らは二人で行くパターンと、どちらかが行くパターンを用意していた。遊んでないでさっさと行け。

 

 「隊長、それは命令ですか?」

 

 「ああ、そうだお前には戦闘力(コミュ力)が少々足りん!」

 

 「そんな、だからこそ上官が先導すべきでは?」

 

 「あの、何やってるんですか?」

 

 茶番に焦れるエイナ。

 

 「ああなに、リューに対人経験を積ませようとしたんだが駄々をこねてな。このままでは老後は一人になりかねないからな。」

 

 どこまでも失礼なカロン節。黒い鎖に関係なくカロンの言葉はリューをえぐる。

 

 「………カロンさん、ちょっと失礼過ぎでは?」

 

 思わずエイナも突っ込む失礼さ。

 

 「しかし現実を理解しないと後からでは遅いだろう。」

 

 反撃しようとするほどえぐくなる毒舌。

 

 「カ、カロン。わかりました。私が行ってきます。」

 

 心の中で血を吐きながらもついに覚悟を決めるリュー。しかし彼女には普通に話すことができても初対面の人物の懐に入るスキルはない!

 しかしここで戦局は新たな局面へと向かう。

 

 「あの、だったら私が付いていきますよ。」

 

 まさかの援軍。たった独りのエルフに差しのべられた救いの希望(ひかり)ーー

 ハーフエルフという人とエルフを繋ぐ希望の掛橋ーー

 

 「ありがとうございます。是非お願いします。」

 

 疾風は勝機を得るーーー

 

 

 

 ◇◇◇

 

 図書館で向かい合う三人。ミーシェの対面にリューとエイナが座っている。

 

 「私はリュー・リオンと申します。アストレアファミリアの副団長を勤めております。」

 

 「あ、はい。あたしはミーシェといいます。」

 

 戸惑うミーシェ。疾風はオラリオでは結構な知名度を誇る。

 

 ーー何故私に?

 

 当然の疑問である。ミーシェはちらちらと友人のエイナに目をやる。エイナはしばらくはリューに任せて様子見を行う。

 

 リューは癪だがカロンの真似事をすることに決めた。彼女は他に方法を知らない。

 

 「我々はアストレアファミリアです。専属の冒険者のアドバイザーを探していましてあなたの適性が高いのでは?とエイナさんに紹介されました。」

 

 ーーカロンと何かが違う。

 

 悩むリュー。柱の影からリューを応援するカロン。どう介入するか迷うエイナ。目を点にするミーシェ。

 思惑が交錯する!

 

 「あ、あの専属とはどういうことですか?」

 

 これまた当然の疑問。

 

 「私達であなたを欲しくて育てあげ有能なアドバイザーに育てあげたいと考えていました。」

 

 日本語が怪しくなるリュー。

 

 「あの、あたしもうすぐ試験があるんですけど?」

 

 当然の切り返し。援軍を得たはずのリューは早くも撤退を考える。

 

 「あの、取り合えず雇用条件だけでも聞いてみたらどうかしら?」

 

 割り込みフォローを入れるエイナ。

 

 ーー有能っ!私より!私は………不甲斐ない………。

 

 味方の有能さにむしろへこむリュー。黙り込んだリューに戸惑う二人。

 

 「話は聞かせてもらった!!」

 

 出てくるカロン。当たり前である。茶番ここに極まれり。

 

 「少し場所を変えようか。」

 

 図書館で大声を出したカロンは白い目で見られていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ここは豊穣の女主人。

 

 「先ほどの話を続けよう。我々の雇用条件はギルドと同じく冒険者をアドバイスすること。目標ハードルはエイナの仕事と同等だ。賃金はギルドの公開された基準と君の働きをみて話し合って決めたい。君がやめるのは可能だができることならファミリアに入ってほしいとも考えている。もしアドバイサーの適性が無くとも我々のファミリアでなんらかの仕事に就くこともできる。もちろんその場合は雇用条件は再度の話し合いになる。」

 

 「は、はぁ。」

 

 考えを纏めるミーシェ。ここが勝負所とカロンは畳みかける。

 

 「君が少しでも考える余地があるというならファミリアで明日までに書類をまとめて来る。我々は一度全滅しかけたファミリアだ。もちろん無理は言わないし不安があるという言い分であれば理解できる。取り合えず今日は貴重な時間を感謝する。後日また伺っても構わないだろうか?」

                                                    後編へと続く


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