ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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フラグクラッシャー

 ーーこれから先の戦いをどうすればいいのか?

 

 俺は今それを考えていた。俺は今まで三人もの闇の高レベル冒険者を討ち取った。しかしそのどれもが共闘であり、俺自身の攻撃は相手にほとんど通らない。相手を倒したのは俺達のファミリアのリューとこれも同じファミリア(予定)の凶狼だ。これから先俺に強力な攻撃手段がないと戦いが苦しくなるのではないだろうか?俺はそう考えていた。

 

 ◇◇◇

 

 「カロンの必殺技ですか?」

 

 「ああ、この間の戦いで思い知った。敵は強大で俺に切り札があれば戦術幅が広がる。」

 

 俺は応接間でまずリューに相談をしていた。脳筋ではあるが戦闘の専門家だ。古株だし信頼できるはずだ。

 

 「しかし、いきなり強くなんてことありえないでしょう。あなたもそう考えているのでは?」

 

 「うん、まあそうなんだが。しかし何もしないよりも努力の方向性だけでも決めたいとな。」

 

 「おや、キミ達は何の話をしているんだい?」

 

 彼女はヘスティア。ただの居候だ。相談ごとに頼りになるとは思いづらい。その信頼感足るや高レベル冒険者並だ。あまり割り込まないで欲しかったのだが………。

 

 「カロンが戦闘の手段を模索しているんです。」

 

 「カロン君がかい?」

 

 「ああ、その通りだ。」

 

 「魔導書を読んで魔法を覚えればいいんじゃないかい?」

 

 やはりというかさすがの金の価値を理解しない穀潰神っぷり。

 

 「あのな、ヘスティア。魔導書が一体いくらするのかわかっているのか?」

 

 「でもキミ達は高レベル冒険者だし最近懸賞金がはいったんじゃないかい?」

 

 「まあそうだがファミリアの金は人材の補強及びに育成に使うことにしたくてな、そんなにでかい無駄金は捻出できんよ。」

 

 「ボクは君達の安全のためなら多少の出費は仕方ないと思うけど………。」

 

 「ふむ、たまにはまともなことをいうではないか。」

 

 雨でも降るのか?

 

 「ええ、洗濯物を取り込んできます。」

 

 ふむ。リューと考えがシンクロしてしまったか。さすがの穀潰しっぷりだ。

 

 「まっておくれよ!君達はボクに対する敬意を少しくらい持ってもいいんじゃないかい!?」

 

 「いつも同じことを言いたくないんだがなぁ。ヘスティア、お前いつになったら俺達の役に立ってくれるんだ?」

 

 「今役に立ったはずだよ!」

 

 「………今後もっと厳しく当たることにするか。お前は普段トイレ掃除以外に何もしとらんだろう。」

 

 ◇◇◇

 

 カロンはたまにはいいかと町をノンビリ散策することにした。町を歩けばいいアイデアが浮かぶかもしれない。

 

 「あら、カロン。こんなところでどうしたの?」

 

 「それはこっちの台詞だ。フレイヤ様こそどうしたんだ?」

 

 彼女は神フレイヤ。フードで顔を隠して町を歩いていた。

 

 「もう呼び捨てでいいわ。あなたも面倒でしょう。それよりこないだ帰ってきた時の眷属の子達の評判は上々よ。」

 

 「そうか、それは何よりだ。あいつらの育成は主にリリルカに任していたが。」

 

 「ふーん、その子はどんな子なの?」

 

 リリルカに興味を持ったようだ。

 

 「リリルカはソーマのところから引き抜いた人間だ。サポーター育成を任せている。どうしても欲しいくらいに有能だったんでな。」

 

 「ウフフ、そうなの?」

 

 「ああ。なんだったら細かく聞くか?」

 

 「えぇ?」

 

 目をキラキラさせてフレイヤに詰め寄るカロン。一歩後ずさるフレイヤ。

 

 「そこまでだ。」

 

 そこに猪人が現れる。

 

 「ああ、あんたは猛者だな。以前は助けていただいたようで感謝する。」

 

 「ただの気まぐれだ。気にすることはない。」

 

 そういいながらカロンとフレイヤの間に立つ猛者。

 

 「俺が感謝すること自体は勝手だろ?よかったら今度ファミリアに来ないか?恩人として歓迎会を開かせてくれないか?」

 

 「遠慮する。」

 

 「それよりカロン、あなた何か考えている風だったけどどうしたの?」

 

 「いや、戦い方のアイデアの模索中だったんだ。なんか効果的な攻撃手段はないかってな。」

 

 「………ふーん。ねぇカロン、もしあなたが私たちのファミリアに来てくれるのだったらーーー

 

 「ないな。」

 

 「即答ね。」

 

 「残念ながらホームでは寂しがり屋のエルフが待ってるんでな。」

 

 「ウフフ、付き合ってるの?」

 

 「まさか。触るとひっぱたいて来るんだぜ?ハリネズミを飼っている気分さ。」

 

 「ふーん。」

 

 そう言ってカロンを何かを考えるように覗き見るフレイヤ。

 

 「まあいいわ。それでは私はもう行くわね。」

 

 ◇◇◇

 

 オラリオ街路。

 

 「冒険者さん。」

 

 「………………。」

 

 「あの、冒険者さん。」

 

 「………………。」

 

 「あの、冒険者さん。」

 

 「うん、もしかして俺のことか?」

 

 「はい、冒険者さんのことです。」

 

 「お前は確かウチの女性の友人のーーー

 

 「はい、シルです。冒険者さん、今魔石を落としましたよ。」

 

 そう言って彼女は魔石を渡そうとして来る。新手の詐欺師か?

 

 「いいや、勘違いだ。」

 

 「え、今でも確かに冒険者さんのポケットから………。」

 

 「勘違いだ。」

 

 「え、でもーーー

 

 「見間違いだ。」

 

 睨み合うシルとカロン。高まる緊張感。飛び散る火花。

 

 「で、でもひょっとしたら冒険者さんの間違いの可能性もーーー

 

 「お前の間違いの可能性もある。」

 

 「………………。」

 

 「………………。」

 

 なんだかよくわからんがここは引いてはいけない気がする。

 

 「はぁ、わかりました。私はこの近くの豊穣の女主人というお店の店員です。冒険者さんがお店に来ていただけないかというまあ、客引きです。」

 

 「最初からそういえばいい。」

 

 「それで来てくれるのでしょうか?」

 

 「前々から誘われていたから行くこと自体は構わん。しかしあいつらを連れていくとおごらされてしまうからな。行くならば一人だな。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 店に入るカロン。日替わり定食を注文する。頼んでもいないのになぜかエールがでてきてしまう。カロンはゲンナリする。

 ふと店内に目をやるカロン、我はここにありとばかりに主張する古い本。いかにもなフラグをカロンは華麗にスルーする。

 

 「あ、あの、カロンさん。お待ちの時間退屈でしたらよければこの本でもーーー

 

 「店の本なのか?」

 

 「いえ、お客さんの忘れたものですがーーー

 

 「なら勝手に読むわけにはいかんだろ。」

 

 「しかし私はあなたに読んでーーー

 

 「お前のじゃないだろ。」

 

 「………………。」

 

 「………………。」

 

 取り付く島のないカロン。睨み合う二人。先程までの焼き増しである。進退窮まったシルはやけくそになる。

 

 「カロンさん、あなたはフレイヤファミリアに借りがありますね。ありますよね!あるんだったら読んでください!フレイヤファミリアの意向です!借りを返せとのご神託です!」

 

 「お、おう………。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ここはアストレアの自室、ここにはカロン、リュー、アストレアがいた。

 

 「なるほど、そういう理由で魔法が発現したのね。」

 

 「ああ、フレイヤへの借りのでかさを考えると気が重いよ。」

 

 「それにしても発現したのがこの魔法ねぇ………。」

 

 「どのようなものですか?」  

 

 【スク〇ト】

 

 ・高速詠唱魔法

 

 ・味方全体の守備力をあげる

 

 「………あなたはつくづく一芸特化なんですね。フレイヤ様も高い金を払った甲斐があったと言いがたいでしょう。」


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