ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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ヴェルフとの出会い

 俺の名前はヴェルフ・クロッゾ。魔剣を鍛造して国に献上することで貴族の地位を得た一族だ。しかしそれは昔の事。俺は一族のありようが気に入らず地位を捨て姓も隠してここオラリオに流れ着いていた。今はここの鍛冶ファミリア、ヘファイストスファミリアに拾ってもらい鍛冶を生業として生計を立てていた。そんな俺にはここ最近悩み事があった。

 

 ーー納得行く剣が作れねぇ。魔剣を作る気はねぇし。やはり発展技能の鍛冶は必須なのか?クソッ、どうすりゃいいんだ?剣が売れなくて金もねぇ。八方塞がりに近いな。

 

 俺はそんな悩みを抱えながら町を歩いていた。

 

 ーーーーーードンッ!?

 

 「あ、すいません。」

 

 「ああ、すまんな。大丈夫か。」

 

 考え事をしながら歩いていたら大男にぶつかってしまった。エルフと二人組だ。………確か聞いたことがある。多分アストレアファミリアの強力ペアだ。確か不死身と疾風。大男は確か変人とも呼ばれていたハズだ。男は思わず尻餅を着いた俺に手を差し出してくれた。

 

 「怪我はないか?すまんな。」

 

 「ああ、大丈夫です。それでは。」

 

 俺はこの日そう言って彼らと別れた。

 

 ◇◇◇

 

 数日後、俺はバベルでショーウインドウに張り付く大男を見かけた。先日見かけた不死身だ。俺は仕事の途中だったが何となく気になってその様子を見ていた。彼がずっと見ているのは椿製作の重厚な鎧だ。金額もバカみたいに高い。しかし彼は飽きることなく飾ってあるいくつかの鎧を見つづけている。彼は大男だがその様子は目をキラキラさせてまるで少年の様だ。

 

 ーー鎧を探しているのか?

 

 彼は大男だ。全身を纏う鎧を着れば仲間を護る盾になれるだろうし、その様子をイメージするとなかなかサマになっているようにも思える。そんな風に考えていたら彼に誰かが話しかけた。

 

 ーー椿!?

 

 椿は俺達ヘファイストスファミリアの団長だ。レベル5でありオラリオに名を轟かせる鍛冶師。何やら不死身と話していやがる!?知り合いなのか?疑問に思うも他人を覗き見るのは本来あまりいい趣味ではない。誰かと会っているのなら尚更だ。俺は仕事の続きを行うことにした。

 

 ◇◇◇

 

 次の日、ファミリアにおかしな噂が流れた。何でも椿が家出をしたらしい。家出?意味がわからん。しかし椿は周知の鍛冶バカだ。すると家出が鍛冶に必要だと言うことだろうか?ますます意味わからん。混乱した俺に眷属の仲間がヘファイストス様が椿を探しているから心当たりのある奴は教えてほしいと言っていたと伝えに来た。心当たり?まさか変人との会合か?あの謎の会合の次の日に椿はいなくなった。関係がある可能性はある。俺はヘファイストス様に伝えるべきなのだろうか?

 俺は悩んだ。

 

 ◇◇◇

 

 その二日後の朝、なかなか帰ってこない椿に意を決した俺はヘファイストス様に椿の会合を伝えることにした。ヘファイストス様が心を痛める様子はあまり見たくない。俺はヘファイストス様の心痛と密告の罪悪感の板挟みにあっていた。せめて後で不死身に謝罪をしようと思いながらヘファイストス様に椿の事を伝えた。

 

 ◇◇◇

 

 不死身がヘファイストス様の私室に入って行った。どうやらヘファイストス様が呼び出したらしい。うん、明らかに俺のせいだな。しばらくして何か怒鳴り声みたいなのが聞こえてきた。心が痛い。っていうかヘファイストス様あんなに怒るんだ。一体あの人は何をやったんだ?これはもう椿の家出の原因だという事は確定事項と見ていいだろう。どういった事情かは想像もつかんが。まあヘファイストス様は椿を可愛がっていたからな。さて、いつまでかかることやら。

 

 ◇◇◇

 

 やっと静かになった。ヘファイストス様脳の血管とか切れてないといいけど。

 

 ーーーーーーガチャッ、

 

 不死身が出てきた。俺は彼に話しかけた。

 

 「おい、あんた。ちょっと話をいいか?」

 

 「ん?お前は確か………この間見たな。」

 

 「ああ、俺はヴェルフってんだ。あんたに謝りたいことがあってさ。よければ俺の部屋に来てくれるか?」

 

 ◇◇◇

 

 ヴェルフ私室、向き合う不死身と俺。俺は切り出した。

 

 「なあ、あんたが怒られたのは俺のせいなんだ。知ってるかもしれねぇが椿が家出してさ、直前にあんたと話しているのを見たってヘファイストス様に伝えちまったんだ。済まなかった。」

 

 「なるほど。謎は解けたか。」

 

 謎?ああ、理由がわからずヘファイストス様に呼び出されたのか。

 

 「謝っといて何だが椿が何故出て行ったのかあんた心当たりがあるのか?ヘファイストス様に怒られていたみたいだけど。」

 

 「うん、何というか………。扱いが面倒になって適当に出したアドバイスを真に受けてしまったらしくてな。なんでもインスピレーションが欲しいとか………。それでしらん奴にそんな悩みを聞かされても面倒なだけだったからつい適当なアドバイスをしてしまった。」

 

 「はぁ、つまり………。それはどっちかというと椿が悪くないか?」

 

 俺はつい呆れてしまった。見知らぬ初対面の人間のアドバイスを受けて椿は家出したのか!?

 

 「しかしヘファイストスにとっては椿が可愛いんだろう。それであまりに鬱陶しいからつい俺も煽ってしまった。するとますます怒るしますます俺も煽ってしまうしでまあヘファイストスを散々に怒らせてしまった。」

 

 マジかよ!?この人何を言ったんだ?逆に気になるぞ!?あと椿に何を言って家出させたんだ?ヘファイストス様の脳の血管は大丈夫なのか!?

 俺は不死身に興味を持ってしまった。

 

 「なぁ、アンタ。聞きたいことがあるんだ。初対面でこんな事をいうのも何なんだが………。聞いてくれないか?」

 

 「何だ?猥談か?スケベな奴だな。」

 

 「違ぇよ!何で初対面の人間に猥談なんかせにゃならんのだ!?俺がスランプだって話だ。鍛冶の発展技能が欲しいんだけど仲間がいなくてどうすればいいか迷ってんだよ!適当で構わないから俺にアイデアをくれないか?」

 

 「暇なときなら俺でよければダンジョンに一緒についていってもいいぞ。他にもあと二人団員がいるぞ?」

 

 「マジかよ?それは嬉しいけど何だってそこまで言ってくれるんだ?アンタ確か高レベルだろ?」

 

 思わず俺は食いついてしまう。

 

 「ああ、ウチは一時期ツテもクソもない酷い状態だったからな。知らんか?アストレアの悪夢?今はファミリアを大きくするための時期なんだよ。」

 

 「ああ、そうか。アンタ大変な思いをしたんだな。」

 

 「過ぎた事だよ。しかしお前もぼっちだったんだな。」

 

 「ぼっち!?お前も!?」

 

 「まあお前がよければ俺達と一緒に潜ろうか。折角の縁だしな。」




お気に入り件数がすこしずつ増えていることを作者は地味に喜んでおります。この場を借りて読んでくれた方々と合わせてお礼申し上げます。

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