ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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連合構想

 「荒唐無稽だ、ありえない。馬鹿馬鹿し過ぎる。」

 

 「リュー、俺達はあの死の行軍を切り抜けたんだ。今更不可能なことがあると思うか?」

 

 「それとこれとは話がちがう。とてもじゃないが不可能だ。」

 

 彼の考えが何かと思えば、それは余りにも馬鹿げた話だった。

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 アストレア本拠地応接室。ソファーにて私と彼は向き合っていた。

 

 「俺達には何ができる?リュー。」

 

 「できることはあまりありません。私とあなたの二人だけだ。かつてのような治安維持活動は不可能でしょう。」

 

 「その通りだ。じゃあ俺達は最終的にどうすればいい?」

 

 「ファミリアを大きくすることでしょう。地道に勧誘活動を行うしかない。」

 

 「可能だと思うか?」

 

 「不可でしょうね。私たちは治安維持活動を行っていた。住民の感情はプラスでしょう。しかし全滅したことは大きなマイナスだ。私たちは敵がたくさんいていつまた襲われるかわからないと考えられているでしょう。信頼を回復するのは多大な時間がかかる。」

 

 「まああまり現実的ではないな。早くても向こう十年は悪いイメージがきえんだろうな。そこからフレイヤファミリアやロキファミリアのようなところに仕上げるのは時間がたりなすぎる。」

 

 「それではどうするんですか?」

 

 「巨大な連合を組む。アストレア連合ファミリアを作り上げて敵を数の暴力でオラリオからたたき出す。」

 

 「いやいやいや、何を言ってるんですか?そんなことできるはずがない。」

 

 馬鹿げている。

 

 「なぜだ?」

 

 「そんなことができるならどこかしらの連合ファミリアがすでに出来上がっているでしょう。」

 

 「ガネーシャは冒険者連合と言えないか?」

 

 「あそこは中立でしょう。」

 

 「つまりガネーシャのところには手を出さないという暗黙の了解ができているわけだ。オラリオの全部のファミリアが手を組んでいてガネーシャに手を出さないというのが連合内の決まりごとと考えればいい。」

 

 「それは詭弁だ。ガネーシャファミリアが手を出されないわけではない。」

 

 「論点がズレてるよリュー。俺達の目的はオラリオの街中で合法的に奴らをオラリオから追い出すことだ。ダンジョンで消すことじゃあない。そのためにオラリオの住人の意思を統一させるんだ。恩恵を剥奪したら奴らはたいしたことができない。」

 

 「しかしガネーシャ様であっても恩恵剥奪のような無体は不可能では?」

 

 「そうでもないよリュー。ガネーシャはやらないだけだ。あそこは懐が深い。良し悪しだがな。民衆の主は扇動も可能だ。オラリオの大半の市民が声を上げたら神であっても無視はできない。」

 

 「百歩譲ってそうだとしましょう。しかし我々が民衆を扇動するにしろ手段がないでしょう。」

 

 「つくればいいさ。」

 

 「どうやって?」

 

 「ガネーシャがなぜ民衆の主だと思う?」

 

 「なぜですか?」

 

 「ウラノスと懇意にしているからさ。ウラノスの祈祷がなけりゃ俺達は今頃ここにはいない。」

 

 「なるほど。それでは私たちもウラノス様とのツテを作るのですか?」

 

 「それは不可能だな。リュー、ウラノスと懇意にしてるとはどういうことだい?」

 

 「ダンジョンに関して強い発言力を持つということでしょうか?」

 

 「そう、言い換えればオラリオに必要なダンジョンの所持者だとも言える。ダンジョンを生業とするファミリアはガネーシャがいなくなると困るのさ。」

 

 「しかしガネーシャ様がいなくなっても他の神が代わりをするだけでは?」

 

 「保証はないだろう。ウラノスはガネーシャとどの程度の仲なのかな?ガネーシャがいなくても別に気にしないのか?天界に帰ってしまう程のことなのか?」

 

 「結局何が言いたいんですか?」

 

 「いなくては困る立ち位置を作るということさ。」

 

 「どうやって?」

 

 「例えばポーションを作れるのがディアンケヒトだけだったらディアンケヒトファミリアは今より強い力を得ている。ロキやガネーシャに守られて、ね。」

 

 「ふむ。」

 

 「俺達も俺達がいなくては立ち行かない何かを作り出す。人々が俺達をいなくては困るという程に。」

 

 「それが何かが問題なのでは?」

 

 「その通りだよ。」

 

 「それが思いつかないなら意味がないのでは?」

 

 「一つ考えていることがあるんだけどね。」

 

 「言ってみて下さい。」

 

 「高練度なサポーター部隊。冒険者の損耗率を劇的に下げる程の。」

 

 「絵空ごとです。そもそもサポーター部隊がどうやってオラリオに必要不可欠なものになるんですか?」

 

 「ロキだよ。」

 

 「ロキ様がどうしたんですか?」

 

 「フレイヤとは同盟をすでに結んでいる。ロキと同盟を結べれば二大巨頭の両方とつながる。」

 

 「なるほど。」

 

 「ロキは子供達を可愛がっている。子供達の命が助かるかもしれないとなれば興味を持たせることができる。ロキのところで高い評価を取れば少しずつでもオラリオに浸透させられる。サポーターの重要性が上がれば練度の高いサポーターの価値も上がる。サポーターの貸しだし業務だ。まあ正直いうとそこまでは難しいと思うが。取り合えずロキが釣れれば大当りだ。」

 

 「正直穴だらけだとは思いますが私には案がないのである程度は譲ります。しかし人員はどうするのですか?」

 

 「それが差し当たっての最大の問題だ。そこは一緒に考えてくれるか?」


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