ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
闇派閥の二人組に勝利したカロン達は、その二日後に祝勝会を開いていた。祝勝会はカロンの交渉という名の洗脳によりソーマファミリアにて行われ、ソーマの眷属やソーマ神も強引に参加させられた。
「せっかくだ。ホレいい肉買ってきたんだから楽しめ。」
「………お前は図々しいのだな。昨日の今日で私の聞いてない理由で押しかけて………。」
話すソーマとカロン。ソーマはどうせ自分の眷属達はたいして来ないだろうと考えていた。
ーー思ったよりたくさんいる。私の眷属はこんなにたくさんいたのか………。
思った以上の数の眷属達に戸惑いを隠せないソーマ。強引なカロンの手腕。ある程度の数の人間はリリルカのようにソーマ脱退を願い変化を望んでいた。
「ほれ、ソーマ神。あんたの子供達だ。話してくるといい。」
ソーマはどうしたらいいかわからない。
「………私は彼らにどう接すればいいのかわからない。私は隅にいる………。」
「あんたリューと比べても比べものにならないくらいコミュ障だな。仕方ないな。後で俺が隅で話し相手になってやるよ。」
以前より馴れ馴れしいカロン。
「………私は場違いだろう。私はここにいてもいいのか?」
「もちろんだ。後で頼みたいこともある。」
◇◇◇
ソーマの眷属は困惑していた。いきなりソーマ神にホームの広間に呼ばれて謎の祝勝会を行うことになったのだ。会計の出所も不明で知らない人物もいる。三馬鹿だけは何か嫌に嬉しそうな顔をしている。特にファミリアの団長ザニスの困惑は大きかった。
ーーこれは………祝勝会?先のハンニバル討伐のものか?しかしアレから期間も経つししかも何故ウチのファミリアで行うのだ?意味がわからん。ソーマも何故許可を出したのだ?やはり変人をホームに入れたのは間違いだったのか?しかし会計によるとファミリアの金は減っていない。アストレアの奴らが金を出したのか?討伐祝勝会だからか?
混乱するザニス。思考がまとまらない。
「今日はソーマの皆もよく来てくれた。我々は闇派閥討伐と、アストレア・ソーマ両ファミリアの友誼を祝って懇親会を執り行う。今日の資金は我々アストレアファミリアから出ている。皆も是非楽しんで欲しい。」
ーーハァ?聞いてねぇぞ。ソーマも何故なんにも言わない?どういうことだ?
カロンの唐突な言葉に狼狽するザニス。ザニスは声を出す。
「おい、どういうことだ?我々は聞いていないぞ?いつから我等ソーマファミリアとアストレアファミリアが友誼を通じたと言うのだ。そしてこの懇親会も俺は聞いていない。一体何の話をしているんだ!」
「ふむ、おかしいな。カヌゥ達は聞いていたみたいだが?」
すっとぼけるカロン。
「俺は聞いてない!眷属のほとんども聞いてない!何しやがるんだ?」
「そうか。しかしソーマ神には話を通したぞ。お前らを呼んできたのはソーマだろう?それに今回の資金は俺達持ちだ。あまり気にするな。」
「ふざけたことを………貴様は一体何がしたいんだ!」
わけが分からずに激昂するザニス。
「だから祝勝会と懇親会だって。闇派閥の討伐が成功したしお前らとも懇意になれたしめでたいだろう?」
いきなりわけのわからない情報をぶっこまれるザニス。彼を除く眷属は遠巻きに見て、三馬鹿はすでに食事を始めている。
ーー闇派閥討伐はハンニバルのことか?それと俺達が懇意になったっていつの話だ?まさかソーマはすでに取り込まれているのか?
ソーマは隅でもそもそと食事をしている。それを見た他の眷属も徐々に食事をしはじめた。
「おい、待て!俺は認めてないぞ!」
「なんでもお前に話を通さんといかんのか?俺はソーマに話を通せばいいのかとてっきり考えていた。今から片付けるのも面倒だしたまには別にいいだろ?皆も気にせず食ってくれ。」
そうだ。その肝心のソーマがまさかの支持するスタンスである。もうすでにほとんどのものが食事を始めている。
ーー強引に止めるべきか?しかし主神の援護は期待できず眷属のほとんどは食事を始めている。何なんだ?何がしたいんだ?
「お前ら何故食事を始めてるんだ?」
「だってソーマ様も………。」
「だってもクソもねぇ、いますぐやめろ。」
ザニスを見る眷属達。ザニスを支持するものとそうでないもの。場は徐々に冷えていく。
そこでソーマは覚悟を決めて前に出る。
「………今回の懇親会は私が子供達のために企画した。私は主神であってもその程度の権限もないと言うならば、私はここにいる意味はない………。」
ーーそれは脅迫か?天界に帰還するという。クソッ!
その言葉にザニスは敗北を悟る。ザニスはソーマが地上に居座る理由が無いことを理解している。
ーーダメだ、ソーマは完璧に丸め込まれてやがる!
◇◇◇
ソーマは眷属の子供達を見ていた。苦しみながらも変化を
ーー神酒を前にする表情とまるでちがう………。あの男の言った通り酒は生活の一部で趣味に過ぎないということか………。どれだけ美味だったとしても人生のすべてをかけるべきではないという意味なのだろうか?私の神酒では子供達から下卑た笑いしか引き出せなかった………。ちょうどいいとやってきたあの男の勢いだけの提案は、私に予想していなかったものを
それでは私が今度は頼みを聞くべきだな。
ソーマは覚悟を決めて前に出るーーー
◇◇◇
アストレア本拠地団長室。祝いの次の日に呼び出されたファミリア主軸の二人リリルカとリュー。
「リリルカ、リュー、お前らにはソーマへの定期的な出向を命じる。」
「リリは初耳ですよ!?」
「カロン、私も寝耳に水です。」
「スマンな。前にソーマファミリアを訪問したときにソーマ神にお前らを貸し出す提案をしてしまったんだ。闇派閥騒動ですっかり忘れていた。」
「「カロン(様)………。」」
呆れて冷たい目を向ける二人。
「まあ連合構想の第一歩だ。お前らの働き次第でソーマが同盟を結んでくれるはずだ。リリルカはソーマファミリアに思うところがあるだろうがリューとセットの貸出をする。我慢してくれ。」
「何故リリを一緒に?」
「リューは真面目そうで喧嘩っ早いからな。数字にも弱いし。お前はアストレアファミリアの頭脳と良心ここにあり、とそういうことだ。」
蛇足
「ソーマ神よ。もしもあなたが祝いの席で感じるものがあるならばあなたの思うままに行動してほしい。」