ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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闇の再来

 「おいおい、どうするよ?悪鬼のヤローやられちまったぜ?」

 

 「マジかよ、どういうことだ?相手はレベル3と4だったはずだぜ?両方同時に相手しても負けるとは思ってなかったが?」

 

 「しかもレベル3の不死身の方にやられたみたいだぜ?なんでも凶狼もいたとか。今は4にあがったって話を聞いたが。」

 

 「マジかよ。どうすんだよ?あいつらに勝てる奴誰かいんのか?」

 

 「やっぱほっとくべきじゃないか?今は以前ほど目障りなわけでもないし。」

 

 「だが悪鬼のヤローにすでに払った一千万ヴァリスどうするよ?」

 

 「仕方ねぇだろ。すでに払っちまったもんは。それより相手はもうレベル4と5だぜ?前にもまして手が出せねぇよ。」

 

 「私がやってやろうか?」

 

 赤い髪の女性が声をかける。彼女はレン。レベル5だ。バトルものではインフレが起こるのは当たり前なのだ。異論は認めない。

 

 「マジかよ。アンタがでてくれるってことは相方もでてくれんのか?」

 

 「ええ、ただやるからにはこちらにもなんらかの見返りがないとね。」

 

 「何が欲しい?」

 

 「そうね、あんたら私の下僕になりなさい。私たちはオラリオで活動拠点が欲しいわ。」

 

 そう、ここはダンジョン内のリヴィラの街。彼らは悪鬼から情報が漏れる可能性を考え一時的に退避してきていた。

 

 「下僕だと、ふざけんじゃねぇぞ?」

 

 「だったらどうするのかしら?」

 

 レンはバスカルという男性と二人組の冒険者。焔の死神(デスゴッドオブフレイム)を名乗るレベル5の冒険者二人の組み合わせだ。誰か(作者)の語彙の貧弱さと、鎌及びに焔の魔法を使うのが丸わかりである。

 インフレーションにも程があるが、彼女たちはオラリオで残虐な行為を数多く行っていたためオラリオにいられなくなっていた。

 

 「チッ、わかったよ。」

 

 彼女を恐れ承諾する彼ら。

 

 「あら、わかりましたの間違いじゃないかしら?」

 

 「………アンタラが首尾良く仕留めたんならな。」

 

 彼女達は強い。ハンニバルは他者を信用していないためいつもぼっちだったが彼女たちは二人組だ。

 誰か(作者)は早くもバトル描写のことを考え憂鬱になるのだった。

 

 ◇◇◇

 

 「闇派閥が姿を消しただと?」

 

 ここはガネーシャファミリア。カロンはガネーシャと向かい合っていた。

 

 「ああ、ハンニバルを尋問して得た情報を元に奴らの拠点に向かってはみたもののもぬけの殻だった。お前達は奴らに狙われている可能性が高い。俺はお前が心配だ。是非とも気をつけてほしい。」

 

 「そうか、情報を感謝する。お前のおかげで俺達は警戒することができる。」

 

 「俺はマブダチのお前に死んでほしくない。無理するんじゃないぞ。俺達も何かの手伝いがしたいがあいにくすぐに怪物祭だ。」

 

 「無理なんてしないさ。お前の気持ちには感謝している。俺もマブダチや家族を残して死にたくないからな。」

 

 「信じているぞ。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 アストレア本拠地。応接室で俺達は採るべき行動を話し合っていた。

 

 「そういうわけで方針を決めることにする。どう考える?」

 

 「闇派閥が姿を消したのでしょう。まずは奴らがどこ行ったか考えませんか?」

 

 これはリュー。

 

 「俺達は、どうするべきだろうか?」

 

 これはオーウェン。

 

 「もともとお前らは無理いって来てもらってるからな。一時的にフレイヤの元へ帰すつもりだ。闇の居場所がわかるまで。」

 

 カロンの発言。

 

 「でも私たちはサポーター講習が終わっていないわ。まだリリルカさんに習いたいことがいっぱいあるのに!」

 

 イースの発言だ。

 

 「ならフレイヤ本拠地から通って来るといい。俺達はお前らの味方だしお前らは俺達のファミリアだ。差し当たっては奴らの居場所について一緒に考えてほしい。」

 

 カロンがそう発言する。

 

 「どこでも補給は必要だ。リヴィラの近くが怪しいだろう。」

 

 いきなり核心を突くウルド。

 

 「可能性は高い。オラリオの中にいないならな。あるいは俺達の知らない居住区が存在するか………。」

 

 せっかくの正解を台なしにするカロン。しかし彼が悪いのではない。

 

 「いずれにしろ本拠地でしばらく様子見をするべきじゃないかしら。」

 

 アストレアがそう発言をする。

 

 「ううーん様子見といってもほとぼりが覚めた頃また戻って来るだけだろ?」

 

 カロン。

 

 「ではどう対策をとりますか?」

 

 エルザの発言だ。

 

 「………俺の考えではオラリオ近辺では即座にフレイヤファミリアが出てこれるから何かするなら奴らはダンジョン内でなにかをしかけて来るだろう。固まって行動するべきかも知れない。リューと俺が組めばレベル5までは問題ないだろう。とすれば………」

 

 カロンが答える。

 

 「6以上かあるいは複数人ですね。」

 

 リューだ。

 

 「まあそうなるな。しかし奴らがいつ諦めるか明確でないうえ稼ぎも必要だから俺達は固まって潜ることにしよう。お前ら五人のことはとりあえずフレイヤ様に聞いてみる。ついでになんかしゃべるか、アイン?」

 

 「俺はアンタラの無事を願っているよ。」

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 勢いだけで書き始めるんじゃなかった。なんだよ焔の死神って!?イメージできねぇよ!ルビも怪しいし!

 後悔していた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 あれから十日後。カロン達はリヴィラの街にいた。

 

 「これまではまだ奴らとの遭遇はありませんね。」

 

 「ああ、そうだな。俺達の警戒が見当違いだったのか?」

 

 「警戒しておいて損はありません。リリは数ヶ月は様子を見るべきだと思います。」

 

 「そうですね。それにここは奴らが潜伏している可能性が高い街です。」

 

 「やはりそうなるか。どうしたもんかな。」

 

 「静かにしてください!」

 

 ◇◇◇

 

 「おい、アストレアのやつらがここに来ているぞ。」

 

 「チャンスじゃねぇか。」

 

 「誰かあいつらを呼んでこい。俺は見張りをする。」

 

 ◇◇◇

 

 「静かにしてください!」

 

 「突然どうしたリュー?」

 

 「おそらく何者かが近くにいます。さっきより頻繁に不審な物音がします。」

 

 「それは確かか?どれくらい前からだ。」

 

 「おそらく30分前ほどです。確信を持てたのは今です。」

 

 「さて、そいつらはどう動くのか?とりあえず予定を変更して上へ逃げ帰るか。」

 

 カロン達は即座に闇派閥の可能性が高いと判断する。

 

 「賛成です。相手の戦力が不明です。街が戦場になる可能性も高い。まずは情報を持ち帰り他のファミリアと連携を取るべきです。」

 

 即座に方針を決めきびすを返す三人。彼らは地上へと向かって行った。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 「いきなりお熱いお出迎えだなぁ。俺以外なら消し炭だったかも知れないぜ?赤いゴキブリと茶色いゴキブリ、二名様を監獄にお出迎え、ってか?」

 

 ここはダンジョン11階層広さのある大部屋。リリルカはすでに逃走済みだ。道中で話し合った結果、リリルカがガネーシャの憲兵を呼び二人が足止めをすることにしていた。このまま逃げたらここを凌いでもまた狙われる可能性は高い。これ以上上では相手が援軍を呼ぶ可能性を考えて断念する可能性もある。苦肉の決断だった。

 

 「不死身か。俺の魔法を喰らってほとんど無傷とは二ツ名は本物と言うことか。厄介な奴だ。」

 

 茶髪の細身の男が答える。男の名前はバスカルだ。

 

 「チャバネゴキブリがほえるじゃねぇか。今日は害虫二匹の命日だよ。お前らは揃っておだぶつさ。女の尻に隠れてることしかできない貧弱ボーヤ。お前の炎はちょうどいい加減だよ。些か以上にぬるいな。」

 

 「バスカル、アンタ言われてるよ。クックック。ほら行くよ!」

 

 鎌を持った女、名前はレンだ。レンの言葉とともに戦端は開かれる。

 

 ◇◇◇

 

 「赤いゴキブリがぴょこぴょこと威勢がいいなぁ!お前鎌なんざもって格好つけているつもりか?そういやカマキリはゴキブリの近親だったなぁ!気持ちワリイ。おら、どうしたそんなもんか?お前らリヴィラに隠れてたんだろ?まさにこそこそと害虫の生態まんまじゃねぇか?笑わせて殺すつもりか?」

 

 カロンはいつものように挑発しながら考えを巡らせていく。

 

 ーーコイツはやべぇな。後ろの茶髪は魔法特化か?前線に出てきやがらねぇ。こいつを盾にして射線を消すべきかそれとも分断するべきか?リューの攻撃もたいして応える様子はねぇ。まずレベル5以上。しかしそんなにぽんぽんいるもんなのか?

 

 レンは鎌を武器に立体的な機動で襲いかかる。通常の大きさより少し大きい分銅付きの鎖鎌だ。普通の切りかかりに時折鎖を掴んでの鎌の投擲を織り交ぜて来る。カロンはリューを狙う彼女の対処に苦戦していた。後ろの茶髪の防御も考えなければいけない。反撃すると防御に間に合わない。

 

 ーーなるほど、なんらかのスキルか。発動状況はわからんが私の力を削ぐものか?わずかに動きに違和感を感じる。しかも固さが尋常じゃねぇ。レベル4にはありえんだろう。しかもなんでわらってやがる?まさかスキルの発動に必要なのか?

 

 レンは少し相対しただけでハンニバルが敗北した理由を悟る。

 

 ーー固い。しかも速さを見てもレベル5以上の可能性大。まさか6まであるのか?どうする、このまま戦いつづけていいのか?しかしカロンの指示を待つべきだ。用心の為のポーションはそこそこ数がある。カロンの様子をみるかぎりアレを相手でもしばらくもたせるだろう。

 

 リューは指示を待つことに決めカロンを盾にして戦う。

 

 ーー即詠唱の魔法は効き目が薄い。しかもうまく射線にレンを巻き込みやがる。ありえんだろう!レンは三次元の動きをしているというのに!素手での戦闘でレンをうまく引きずり込みやがって!なんて厄介なヤローだ。どうする、接近戦に参加するべきか、あるいはでかいのを打つために詠唱をするべきか?

 

 これはバスカル、四者四様の交錯する思惑。

 

 レンは空中から捻りを加えて鎌を振り落とす。カロンはそれを盾で受ける。リューは敵の一瞬の硬直に攻撃を加えようとする。しかしバスカルが炎で攻撃を加えリューは回避へと移行する。そこへレンが殺到し鎖を持ち鎌を投げる。鎌をカロンが間一髪つかみ取るがバスカルの炎がカロンに直撃する。リューは鎌を握られたレンに攻撃をしかける。レンは空いた手でリューの腕をつかみ取り投げ飛ばす。リューは投げられる際レンに置き土産とばかりに蹴りを入れる。体勢が悪くあまりダメージを与えられない。レンはステータスに頼り無理矢理鎌を手元に引き寄せる。

 敵は再度襲い掛かる。壁を蹴り横からリューを狙うレン。リューの前にカロンは立ち、レンの攻撃を盾で受ける。バスカルが横から魔法を撃とうとするがレンは腕をカロンに捕まれバスカルはカロンを狙えない。リューを狙うも軽やかにかわすリュー。レンはカロンとのステータス差で捕まれた腕を力尽くで振りほどく。去り際にレンは蹴りを放つもカロンに悠々防がれる。リューはバスカルに再度炎を放たれかわしつづける。そこへレンが詰め寄りリューは挟みうたれる。リューの危機に割り込むカロン。炎を軽々防ぐ。リューはレンと切り結び力負けしたリューははじき飛ばされる。

 

 

 ーーダメだ、敵は私たち二人よりおそらく強い。カロンはいつまでもたせられる?

 

 早くも弱気が顔を出すリュー。しかし戦場を敏感に感じ取るカロンの怒号が響き渡る。

 

 「リュー、びびんなよ。お前は誰の後ろにいるんだ?お前は俺のタフさを知らないのか?」

 

 「ああそうでした。そういえばそうでしたねカロン。あなたは固いだけが取り柄のどM騎士(ナイト)だ。あなたの背中は安心感がある。私は負けない!」

 

 「おいおい、私たちの間違いだろ?それに別に俺はマゾヒストじゃあねぇぞ?そして俺達は正義のファミリアの遺された希望だ。正義の味方が負けるはずがねぇだろ?」

 

 「あなたは性格的に正義とは言いがたい。」

 

 黒いスキルは緊張を解き放ち二人にハイパフォーマンスを約束する。

 

 一カ所に固まっているカロンとリューに襲い掛かるレンとバスカル。バスカルは炎を放ちレンは空中よりほぼ同時に襲い掛かる。バスカルの炎を盾で受けそのまま盾で空中のレンを殴りつけるカロン。レンはそれを軽々と受け止め盾を片手で掴みカロンを鎌で切り付ける。カロンは鎌を空いた手で血を流しながら受け止め、リューは横から短刀で頭部に切り付ける。紙一重でレンは直撃をさけ、頭部から微量の血を流す。追撃を行うリュー目掛けて炎が打たれカロンは盾でそれを受け止める。

 

 ーー思った以上に厄介な奴らだ。連携ができてやがる。しかし私たちの方がステータスが上。いまのままでは奴らも良くて千日手。時間稼ぎが狙いか?あるいはなんらかの手段が?どうする、バスカルを前に出して混戦にするかあるいは一対一を二つにすべきか?今のままではあまりバスカルをうまく使えてるとはいえねぇ、バスカルの炎が攻撃としてうまく成立していない。

 

 「焦ってる焦ってる。奴ら焦ってるぜ?食事を求めてこそこそと出てきたのに相手が予想以上に強大だったため逃げ出す台所の害虫みたいだな。お前らどうすんだよ?闇派閥は戦力の逐次投入が愚策だってこともしらねぇんだな。いっそ憐れだぜ。」

 

 カロンは挑発を行う。

 

 「仕方ねぇ、バスカル前に出ろ。一対一に分断する。お前がこの盾持ちの相手をしろ。」

 

 「チッ、しょうがねぇか。」

 

 ◇◇◇

 

 戦局は移行する。カロンはリュー一人にレンを任せるのは少し厳しいと考えていた。相手がレベルがいくつにしろ少なくともリューよりは格上。レンよりはおそらく後衛兼業であるバスカルの方が与しやすいはずだ。

 

 ーーしかし俺にはスピードがない。どうする奴らの作戦に乗るべきか………いや………。

 

 「リュー、混戦にする。ニ対ニで戦う。回避を優先し茶色い害虫を先に叩け!」

 

 指示を出す。一対一では耐久寄せでないリューに時間稼ぎはむかないと判断してのことだった。しかも相手は格上で敗北の恐れは大きい。

 

 レンはなお考える。

 

 ーー混戦か。疾風の奴を最初に落としたかったがそうはいかねぇか。どうする?もともと私たちの最善の連携は先ほどまでの戦いかただ。混戦になっては意味がねぇ、か?あるいは先ほどまでの戦いは、不死身に射線をうまく遮られてバスカルの実力を十全に活かせていたとはいかねぇ。戦い方が上手い。こいつ得体のしれねぇスキルといいつくづく厄介なヤローだ。

 

 リューが短刀でバスカルに突っ掛かる。バスカルはそれを剣で受ける。そこをレンが横槍を入れようとし当然カロンが盾で受け止める。盾と鎌でつばぜりあうふたり。レンはカロンを力ずくではじき飛ばす。リューは状況を認識し即座にカロンの側に回る。レンは退避したリューに追撃を加えられない。

 

 ーーここは11階層。助けを呼べたとしてもまだずいぶん時間があるはずだ。運よく近くに誰かがいない限りは。しかしこの盾ヤロー本当にかてぇ。一体どうなってやがる?しかもさっきからずっとニヤついてやがる。何なんだ一体。

 

 カロンの黒い毒は相手の精神状況に応じて効き目が変わる。精神の強いレンでもゆっくりと毒は回っていく。カロンは相手のわずかな迷いを読み取りハッタリをかますことにする。

 

 「おい、カマキリ女。お前大丈夫かね?俺達には直に援軍が来る当てがあるぜ?俺達の仲間に転移系の魔法を持っている奴がいるからな。お前らつくづく救い様がねぇ馬鹿共だな。」

 

 ーー転移系の魔法?聞いたこともねぇ。ハッタリに決まってる。しかし奴らの戦い方は時間稼ぎを想定してのもの。しかも何が楽しいのかこいつずっとわらっていやがる。何を考えてやがる、クソが!

 

 「リュー、ゴキブリ共はどう逃げるか考えてやがるようだぜ?全くうっとおしいったらねぇな。さっさと片付けてホームに帰って飯でも食うか。どぶにしか住めないゴキブリ共の相手をいつまでもするのは時間が勿体ねぇしな。飯も冷めちまう。」

 

 「その通りですね、カロン。早く帰らないとウチの穀潰神がお腹をすかせて泣いてしまいます。」

 

 「お前も言うようになったな。」

 

 戦闘は自然と互いのフォローができる距離での一対一へと移行していた。カロンがレンを抑えリューがバスカルと戦う形だ。彼らの思惑は一致した。

 

 ーー疾風をさっさと片付けてぇがこいつがそれをゆるさねぇ。それならバスカルに疾風を任せるか?

 

 しかしレンは知らない。リューにバスカルを倒す目算があることを。

 

 「これで二本目のハイポーションか。零細ファミリアには手痛い出費だなぁ。」

 

 緊張感無くぼやくカロン。相変わらず笑いつづけている。頭から血を流したままで。

 レンはカロン目掛けて攻撃を加える。鎌できりつけ回転しそのまま分銅を相手の腕に巻付ける。しかしカロンは鎖を引っ張り相手の懐に入ると襟を掴む。レンは前倒しに投げられる。

 

 「ちっ、何なんだテメエは!なんだその技は!」

 

 ダメージはない。しかし倒されつづけることになると体力の消耗も馬鹿にならない。レンは持久戦の泥沼に引きずりこまれつつあった。

 

 ◇◇◇

 

 「女の尻に隠れる臆病者が必死ですね。前に立てたんですね。カッコイイとでも思っているんですか?ゴキブリは何をしてもゴキブリですよ?」

 

 リューはもろにカロンの影響を受けていた。わらいながら挑発する。しかし実力は伯仲しながらもバスカルの方がわずかに上。具体的にはリューがスピードが少し上でバスカルはその他はだいたい上の能力を持っていた。まともに戦えばリューの敗北の可能性は高い。リューは策を練っていた。

 バスカルは剣で切り付け、それをリューは傷を負いながらもかわす。致命傷は決して喰らわない。リューは速度を頼みにバスカルの攻撃をかわしつづける。バスカルは至近から魔法を放とうとリューの腕を掴むがタケミカヅチ直伝の技でバスカルを床に投げ落とす。追撃するリュー、間一髪距離をとるバスカル。再びバスカルは火炎をリュー目掛けて放ち出す。

 カロンもリューの策略を理解していた。

 

 ーーあの程度の即詠唱魔法で専門の後衛を勤めるとは思えません。前衛の戦いができるにも関わらず後衛にいたということはでかい切り札を持ち、それが同系統の炎である確率は高い。相手は前衛も可能なおそらくレベル5、並行詠唱が使える可能性は大だ。ならば相手が並行詠唱を行ってきたならば私の風の魔法で返り討ちが可能だ。そうならない時はもう一度カロンと合流して戦いながら今一度策を練る!

 

 リューは速度を落とせない。相手は同格の実力者。速度を落とせば炎が背中を追って来る。しかし速度を出しつづければいずれはガス欠になる。

 我慢勝負だ!私にはいつも身近に我慢強い馬鹿がいる!!

 

 「たいしたことないですね。この程度でむかってくるなどゴキブリはやはり知能が足りませんね。」

 

 リューは相手の上段からの切り下ろしを短刀で逸らしながら不敵にわらうーーー。

 

 ◇◇◇

 

 ーーちっ、どうする。バスカルの奴案外とてこずってやがる。切り札を切るべきか?

 

 二人の切り札は並行詠唱。レンの重力魔法で足止めを行いバスカルの魔法で消し炭にするというものだ。

 

 ーーしかしこの盾ヤローが前面に出てきやがったらどの程度のダメージが通るか怪しい。疾風の速さを見る限り逃げに徹されればそもそもの魔法をかわされかねない。そうすりゃ魔力残量的にこちらの状況は悪くなる。このまま別れて単体で使わせるべきか?どうする?バスカルは疾風を倒しきれるか?今のままの状況ならこっちが有利………なハズ。こいつはなぜ笑ってるんだ?

 

 考えがまとまらない。カロンが考えている合間にも挑発をして来るからだ。長期戦の疲労とカロンの挑発、さらに黒白のスキルはカロンをどこまでもサポートする。

 

 「おいおい、襲い掛かって来たからには自信があったんじゃねーのか?この程度か?蚊に刺された程度にしかきかねぇぜ?」

 

 嘘つけ。血だらけじゃねぇか!内心で毒づきなおも攻撃を続ける。相手はもう三本ハイポーションを使用していた。

 しかし決め手がない。相手はあと何本回復薬を持っている?いつになったら余裕を消せる?私の攻撃がぬるいはずがないだろう!

 

 レンは焦れる。相手は持久戦をなんとも思っていない。こちらにダメージはたいして通っていないがすでに幾度となく投げられている。

 

 カロンは止めどなくわらいレンは精神を揺さぶられる。

 

 「バスカル、さっさとそっちを終わらせやがれ!」

 

 ついにレンの忍耐がきれる………。

 

 ◇◇◇

 

 バスカルはその言葉に反応し詠唱を始める。

 

 「来たれ煉獄の焔。この地に生きるもの灰塵なす紅を顕現させよ。」

 

 恥ずかしい詠唱である。作者は後々後悔しないだろうかと考えつつも状況は進む。 

 

 「今は遠き森の空。無窮にーーー」

 

 ーー同時に並行詠唱だと!?………魔力の高まりを感じる。ハッタリじゃねぇ!!

 

 バスカルは焦る。今更詠唱を止められない。暴発は確実だ。二人は切り結びながら詠唱を続ける。

 

 ーー何を考えてやがる?何故同時に並行詠唱なんだ?まさか俺の魔法を切り返す切り札か?

 

 その通りである。馬鹿である。アレだけ炎の魔法を使っておかしな二ツ名をつけられているのに何故切り札がばれないと思ったのか?

 

 「なきがらは弔いとともにーー

 

 「星火の加護をーー

 

 幾度も切り結びながらついに詠唱が完了してしまう。バスカルは考えが纏まっていない!

 

 ーーどうする、このままうっちまっていいのか?

 

 焦り、さらに精神を黒い鎖に侵されたバスカルは、苦肉の策でカロン目掛けて魔法を打ち放つ。

 

 「ギガントフレイムッッッ!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「おいおい、あいつ馬鹿だぜ。こんなに近くで戦っているのに俺達目掛けて魔法を打ちやがった。オタクの相棒頭大丈夫か?」

 

 迫り来る炎の波を見ながらカロンはなおもわらう。指を頭の横でクルクル回して挑発する。

 

 「あの馬鹿何してくれやがる。」

 

 焦るレンにわらうカロン。カロンはさらに恐ろしいことを言い出した。

 

 「リューっっ、お前の風はこっちに打ち込め!勝機だ!この女を確実に片付ける。」

 

 わらうカロンにわらいかえすリュー。レンは心の底から恐怖を感じる。いつの間にかレンは腕を捕まれている!

 

 「ルミノスウィンド!!」

 

 ーーこいつらイカレてやがる。なんとか逃げっー。

 

 黒い鎖は魂へ浸透している。レンは逃げようとして足を突如絡めとられたと錯覚する。

 

 「おいおい、今更逃げられるわけねぇだろうがよ?離すわけねぇだろう?死が二人を分かつまでさ。」

 

 死を幻視しさらに固まるレン。わけがわからずもなおわらい挑発するカロン。

 カロンはなぜか突如固まったレンを平然と魔法の盾にする。

 

 「お、おい、テメエやめろ。は、離せ、離しやがれ!!」

 

 迫り来る火炎旋風、呆気にとられるバスカル。リューはこの隙にバスカルの両脚の腱を切り落とす。

 

 焦るレンをしり目に襲い掛かる熱波。レンは自身の弱気により黒い鎖のさらなる侵食を許す。レンはすでに死に捕われている。

 

 「ぬわあぁぁぁぁぁっ。」

 

 パパスをオマージュする叫びとともにレンは焼き尽くされた。

 

 ◇◇◇

 

 「ふぅ、うまく勝てましたね。」

 

 「ああ、こいつらが馬鹿じゃなかったら危なかったな。」

 

 両脚の腱を切り落とされたバスカルは二人掛かりで袋だたきにされ、燃やされたレンは作者の気分的なもので奇跡的に生きていた。しかし相変わらずカロンは口が悪い。死体蹴りを平気で行う。

 

 「よし、さっさとガネーシャに引き渡すか。懸賞をかけられてたら結構いい金になると思うぞ。」

 

 「そうですね。お金が入ったらそれでフレイヤ様に預けた五人や他の親しい方々も集めて祝杯を挙げましょう。」

 

 「悪くないアイデアだ。なんだそろそろ脳筋は卒業か?」

 

 「いつまでもそうは呼ばせませんよ。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「なんだリリルカ、思ったより速かったな。」

 

 「部分変化のおかげです。」

 

 「なるほど。であんたらはガネーシャの憲兵か。こいつらまかしていいかな?」

 

 「ああ、後は俺達にまかしてくれていい。ところでこの女の方はひどい火傷だが………?」

 

 「いやこいつら結構強くてな。多分二人ともレベル5か6だ。手加減する余裕がなかった。あんたらも気をつけてくれ。」

 

 「ああ、わかった。ホームに戻って面相の確認を行う。賞金がかかっているようなら後日連絡をするのでガネーシャホームまで取りに来てくれ。」

 

 「ああ。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「来週は怪物祭だな。全員で見に行くか?」

 

 「フレイヤ様のところの方々は五人で行くとおっしゃられてました。」

 

 「そうか。じゃあ俺とお前とリューとアストレアとヘスティアの五人で行くか?ガネーシャは確認にもう少しかかりそうだと言ってたし。怪物祭の準備で忙しかったんだろうな。」

 

 「悪くないです。リリも今から楽しみです。」




設定的に 
レン(6間近)
バスカル(5の中堅)
リュー(5になってすぐ)
カロン(4になってすぐ)
こんな感じです。

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