ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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ソーマ乗っ取り

 「………私は、どうするべきなのだろうか?」

 

 「知らんよ。」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 今日は前々より実行を望んでいたソーマとの会合だった。カロンは以前から三馬鹿を通じてソーマとの面通しを望んでいた。ちなみに三馬鹿は見返りとしてリューの指導を望んでいた。どうやらおかしな扉を開いてしまったみたいだ。俺はソーマ本拠地を団長のザニスに案内されていた。

 

 「こちらがソーマ様の私室だ。粗相をするんじゃないぞ!」

 

 ザニス。ソーマファミリアの団長だ。

 

 「心配いらん。話し合いに来ただけだ。」

 

 ザニスはちまたでカロンの変人の噂を聞いていた。彼は少し不安に思っていたが、同時にアストレアの悪夢にわずかに関わっていたためほんのすこしの罪悪感も存在していた。カロンのしつこい交渉も彼が根負けした理由だった。ザニスは不安ながらもカロンをソーマの元へ案内した。

 

 「手間をかけたな。リリルカは元気にしているぞ。」

 

 「俺達には関係ないことだ。」

 

 「ものの価値を知らん奴だな。」

 

 カロンは笑ってソーマの私室にノックをした。

 

 ◇◇◇

 

 「………私に一体何の用だ。」

 

 「俺はアストレアファミリア団長カロンだ。今日はソーマファミリアを乗っ取りに来た。」

 

 ソファーで向かい合う二人。カロンのあまりにあんまりな切りだし。ソーマは一瞬固まった。

 

 「………ファミリアの運営は子供達に任せてある。団長のザニスに言ってくれ。」

 

 「じゃああなたはこのファミリアの一体何なんだ?」

 

 「………私は。」

 

 言葉につまるソーマ。主神のはずだが彼らにそう言われるほどに何かをしたのか?

 

 「………私は主神だ。ソーマファミリアの。」

 

 「そうか。そして運営は子供達に任せているわけか。ザニスが首を縦に降ればこのファミリアは解散するわけだな。」

 

 「………そうなるな。」

 

 「あなたが始めたもののはずなのにか?」

 

 「………私はもう関係ない。」

 

 「いやいやそれは通らんだろう。今ここにいるのだから。関係ないなら天界にお帰りいただけるのか?あなたがわざわざここに居座りつづける意味はないだろう?」

 

 「………何が言いたい?」

 

 「このままではろくなことにならんという勧告だな。まあいわゆる余計なお世話か?それならせっかくだからファミリアを俺達にもらえないかという交渉だ。」

 

 「………続けてくれ。」

 

 「あなたは神酒を眷属に配っているな?その眷属は神酒ほしさにそこらで犯罪紛いのことを起こしている。まあ大半がまだ恐喝程度だが。しかし俺はあなたが刺されるのは時間の問題だと考えている。眷属からか他人からかは知らんが。そうなるくらいならファミリアを俺にくれないか?」

 

 「………なぜお前にやらねばならん。」

 

 「単純に俺が欲しいからだよ。俺にくれれば今までより良い形にして見せるぜ。自信は………ないとも言いきれない。」

 

 「………肝心なところがあやふやなのだな。」

 

 「まああんたらと違って無限に時間があるわけじゃないしな。」

 

 「………時間があれば可能と言いたいのか?」

 

 「俺が確約できるのは努力しつづけることくらいだな。」

 

 「………しかし子供達の言葉は薄っぺらい。すぐに嘘をつく。」

 

 「あなたが嘘を正せばよかっただろ?全部を他人のせいにするのはおかしいぞ。あなたが主神のファミリアなんだから。あなたは具体的に何かしたのか?」

 

 「しかし………。」

 

 「あなたはまさか自分には無理だとでも言いたいのか?眷属を子供達なんぞと呼んでいる癖に。子供達は親であるはずのあなたに失望しているんじゃないか?あなたが子供達に失望しているように。」

 

 「………そんなことが………あるのか?」

 

 「最近ここから引き抜いたウチのリリルカはあなたに幻滅していたと思うぞ。リリルカ自体極めて有能な人材だ。あなたは彼女を潰していた。あなたは自身が悪なのではないかと自問自答してみたほうがいいかもな。」

 

 「………私は悪だったとしてどうしたと言うのだ。」

 

 「どうもしないよ。こちらに実害が出ない限りは放っておくさ。まあ目に余るようならその限りでなくなるかも知れんが…………。だが自覚くらいはしておいた方がいい。悪にも悪の矜持があるべきだろう。そうでなければあなたは疫病のように排除されるだけの存在になるかもしれないな。」

 

 「………お前だったらうまくできるというのか?」

 

 「さあな?いつだって俺達にできることは頑張ることくらいだ。」

 

 「しかし………子供達の言葉は薄っぺらい。お前が私の神酒を飲んでまだ同じことを言えるのであれば考えてみよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まずいな。」

 

 「まままままままずいだと?なぜだ?」

 

 ひどく狼狽するソーマ。

 

 「ふむ、実は俺は下戸なんだ。酒の味なぞさっぱりわからん!」

 

 なぜか偉そうに胸を張るカロン。

 

 「しかし、幸福感が訪れていたりはしないのか?」

 

 「ああたぶんスキルのせいだろうな。俺のスキルは状態異常を遮断するからな。」

 

 「………そうか。それでお前はどうすべきだというのか?」

 

 「ああ、俺が奨めるのはウチのファミリアのリューとリリルカをセットで貸し出してファミリアを内部から自浄させていくことだな。俺達のこともあるから毎日は貸し出せないけど。」

 

 「仮にそれでお前は私たちに何を望む………?言葉の通りファミリアを明け渡すことか?」

 

 「いいや、差し当たっての俺達が望むのは強固な同盟だ。目標があるから俺達の立場を少し上のものにしていただきたい。あなた方が納得できるのであればいずれまた形を変える可能性も高い。取り敢えずあなたが今に納得していないのであれば試してみてからの見返りでも構わんぞ。あなたが納得行くようなら見返りをくれ。」

 

 「………それでいいのだろうか?私はそうすべきなのだろうか?」

 

 「知らんよ。俺が行っているのは提案であなたには拒否権がある。あなたは自分で考えるべきだな。」

 

 迷うソーマと突き放すカロン。

 

 「………しかし、私にはわからない。」

 

 「酒蔵にばかりこもっているからじゃないか?アル中なんだろ。しっかり自分で考える癖をつけるべきだ。とりあえずたまには眷属を誘って外でバーベキューでもしてみたらどうだ?」




ザニスが関わっていたのは、実行者の話を聞いていて止めなかったという設定です。小者です。

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