ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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壁を越えろ

 ーー壁を越えなければならない。

 

 私は強く決心していた。今現在の私のレベルは4、あの死の行軍において私だけはレベルが高かったためランクアップを果たせていなかった。

 

 ーー私は強くならないといけない、護りたい者を護るために!もう誰にも仲間を奪われないように!

 

 そろそろランクアップに必要な経験値は足りているだろう。私はあのあと必死に鍛練をした。あとはリスクを冒して壁を乗り越えるだけだ。

 

 ーーしかし仲間を危険には晒せない。どうするか?

 

 私は取り合えずいつも通りの日課の鍛練を行った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「なるほど、壁を乗り越える、か。」

 

 これはカロン。私は彼に相談を行っていた。

 

 「ええ、何かいいアイデアはないでしょうか?やはりいつものようにリスクを冒して深い階層に潜るしかないでしょうか?」

 

 「いいアイデアなんかないだろう。そんなのあったら皆使ってるぞ。」

 

 「しかし数が少ないファミリアですので仲間に無理をさせたくありません。一人で進める階層には限界がありますし私に付き合えそうなのはあなたくらいです。」

 

 「お前がぼっちじゃなかったら他のファミリアも誘えたのにな。」

 

 「私はぼっちではない!リリルカさんやシル等の友人がいます。断固訂正してください!」

 

 「でもなぁ………。お前以前に相談に乗ったときロキファミリアにまでエルフの友人を作りに行って失敗したろ。わざわざ俺がアイズと遊びに行くのに便乗してまでついて来たくせに。そんで結局は相手が高貴過ぎるとか言って。あれには相手も苦笑いだったぞ?何のために来たんだって。どうにかしろよ?」

 

 「あ、あれは当初に仲良くなろうと思った対象ではなかったからで………それに話をできる相手ならたくさんいます!」

 

 「そんとき冒険者同士のツテを作っときゃよかったのに。あのアマゾネスの姉妹とか団長とかとさ。結局アイズだってお前たいして話してなかったろ?ほんとにお前は何も得てないな。せめてアイズだけでも個人的に仲良くしてればずいぶん変わっただろうに。」

 

 「………過ぎたことを反省しても何も変わりません。」

 

 「お前は反省しないから何も変わらないんだよ!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 結局話し合いでは特にいいアイデアもでなかった。結局私はいつもよりハードにカロンと訓練を行うことにした。訓練を行うため私はホームの鍛練場に彼と二人で来ていた。

 

 「実戦だと思ってください。私はあなたを本気で倒すつもりだ。」

 

 私は向かう。私は彼とは比べものにならないほどスピードがある。今日は普段とは違い私は木刀を持ち彼は防具を身につけている。

 まずは私は木刀を彼にたたき付ける。彼は防御が間に合わずまともに一撃を喰らった。

 

 「相変わらず軽いな。リュー。あまいあまい。」

 

 「上等です。」

 

 私は気合いを入れ数回木刀で打ち据える。彼は最後の一撃に対応し腕を掴み私を投げる。私は背中から地面に落ちた。

 しかしレベル差によりたいしたダメージにはならない。腕をつかんだまま追撃を加えようとする彼を私は膂力を頼みに引きはがす。

 

 「あまいっ!」

 

 私は彼の腹部に蹴りを入れて離脱を図る。彼はその足を掴み私を踏み付けようとする。私はそれらを全てかわす。捕んでいる相手の手を逆の足で蹴り私は一旦距離を取る。離れる際に木刀で相手を薙ぎ彼はそれをまともに喰らう。

 

 「さすがに木刀での一撃は普段とは比べものにならんな。」

 

 「だったらあなたは笑いながら楽しそうに言わないで下さい。私はあなたといると常識を間違いそうになる。」

 

 私たちは軽口をたたき合い再度激突する。

 私は手数を頼みに連激を放つ。さすがにレベル差があるため彼は対処できずにまともに喰らう。まだ笑っている。大概異常者だ。しかしベートさんも笑うのをやめさせられないと聞く。

 

 ーーその余裕を消して笑えなくしてあげます。

 

 私は少しずつ楽しくなりさらにギアをあげる。不思議だ。彼と軽口を叩きながら戦うのはいつも気分が高揚する。彼と戦うとステータスの伸びもよい。しかもいくら叩いても平気な顔をして立ち上がって来る。癖になりそうで怖い。

 

 ーーいや、手遅れか?

 

 そんなことを考えながら戦いを続ける。彼の喉を木刀で突く。当然まともな人間なら死ぬ可能性が高いため決して真似をしてはいけない。絶対にいけない。断じてだ。作者は暴力に反対です。

 彼は突きを首を逸らしてかわそうとするも喰らってしまう。

 

 ーーしかし、つくづくふざけたスキルですね………。

 

 普通であるなら今の一撃は決着のつく一撃だ。特に同等以下のレベルであれば。しかし彼はそれでも笑って立ち上がる。実に不死身(アンデッド)だ。私はなおも突っ掛かり彼の懐に入る。彼を木刀で4発突く。突きは肝臓付近、右肩、胃付近、さらに心臓部、そしてつかみ掛かろうとした彼に反応し去り際に頭部をないで離れる。これも普通なら死んでしかるべき強烈なる連激。しかしまだ笑っている。

 

 「本当にふざけた男ですね。あなたどうなってるんですか?まさか本当に死なないんですか?」

 

 「お前らを遺して死ぬつもりはないなぁ。」

 

 私とかれの戦いは続いていった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「ハァ、ハァ、ハァ………。本当にどうなってるんですか?これだけ打ちつづけたのにまだ立ち上がるとか。」

 

 「うーんやっぱりスキルが相当強力だと言うしかないなぁ。でも俺ももうかなりきついぞ。」

 

 「最後にもう少しだけつき合って下さい。あなたを倒しきれないのは矜持に差し障る。」

 

 「ああ、かかってこい。」

 

 私は最後とばかりに全力で突進する。

 しかし、私も疲れていた。私は途中で足を縺れさせ転倒しながら彼にぶつかっていった。

 

 「おい………大丈夫そうだな。」

 

 「ええ、何ら問題ありません。」

 

 ムニュっ。

 

 

 

 

 

 ムニュっ?

 

 ………前言を撤回します。問題あります。大ありです。むしろ問題しかありません。彼も珍しく困惑して固まっています。これどうすんだみたいな目でこちらを見ています。ベタな展開ですが何か?

 

 「「………………………………。」」

 

 「………ふむ、なかなかにやわらかいものだな。お前はスレンダーで筋肉質だと思っていたんだが。」

 

 「イッ………。」

 

 「イッ………?」

 

 「イッ………。」

 

 「イッ………?」

 

 「イヤァァァァァァァ!!!!」

 

 ドゴオォォォォォォン。

 

 

 

 

 

 

 凄まじい音がしてカロンは本拠地の壁を突き破った。壁を越えろとは断じて物理的な意味ではない………。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 「ねぇ何があったの?私には教えてくれないの?私だってあなたたちの話を聞いてあなたたちの気持ちを軽くするくらいはできるわ。」

 

 「落ち着いて下さいアストレア様。私たちは別に何もなかった。」

 

 「これが落ち着けるわけないじゃない。二人よ、二人ともよ。二人ともランクアップするなんてあなたたち一体どんな恐ろしい敵と戦ったの?」

 




黒いスキルはありえないほど有能。仲間の鼓舞にも使えます。さらには自身の鼓舞にさえも。実はリリルカが原作から変貌を遂げたのも主人公が傍で松岡○造風の応援(洗脳)をしていたせいです。
そしてギャグで壁を越える二人。

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