ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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ズッ友

 「俺がガネーシャだ。」

 

 「俺がカロンだ。」

 

 「俺が!ガネーシャだ。」

 

 「俺が!カロンだ。」

 

 「俺がっっ!!ガネーシャだっっ!!」

 

 「俺がっっ!!カロンだっっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 「………………………………。」

 

 「………………………………。」

 

 「なあ、普通にしゃべってもいいか?」

 

 「ああ、構わんよ。」

 

 ◇◇◇

 

 「ふむ、このたびの闇派閥討伐はご苦労だった。ステータス開錠薬で開けてみたところ相手はレベル5だったことが判明した。前々から敵幹部なのではないのかと目されていた男だ。まだ、証拠を集めているところだがおそらく時間の問題だろう。目撃情報が十分集まり次第なんらかの罰則が与えられる。オラリオ追放は確実だから安心してほしい。民衆の王(ガネーシャ)としてお礼を伝えさせていただきたい。」

 

 「ふむ、ところで報奨金的なのは出るのか?」

 

 「ハッハッハッ。謝辞より実益か。実に子供達らしい。報奨金をもちろんだそう。俺は気分がいい。」

 

 「ガネーシャ、報奨金を気分で出してはいけないぞ?ファミリアの金は子供達の努力の結晶だ。」

 

 「報奨金に関しては心配いらない。正規のものだ。しかしふむ、お前はつくづく………聞いていた通り何というか図々しい男だな。まさか初対面の神を真正面から堂々と呼び捨てるとは。」

 

 「なんかまずかったか?俺だって相手を選んでいるぞ。ガネーシャからはマブダチの波動を感じるんだ。『カロンとガネーシャはズッ友だょ。』的な。」

 

 「ふむ確かにフィーリングは大切だ。しかしだからそれがそのままお前達の同盟に加わる理由にはならん。」

 

 「知ってるよ。あんたら神は子供達の嘘がわかる。だからこそ嘘ではない心変わりが怖い。違うかガネーシャ?」

 

 「………その通りだ。お前はよく見ているのだな。今現在闇派閥で暗躍しているもの達の多くはかつては普通の冒険者だった。名を馳せたものも多い。その多くは正義を志し失望していった。お前は不思議な男だな。聞いてくれるか?」

 

 「聞いてほしければ報奨金を揃えてあとその仮面の理由も教えてくれないか?」

 

 「聞いていた通りつくづくマイペースな男だ。残念ながら仮面の理由は話すつもりはない。」

 

 「ふむ、交渉失敗か。それで話とは?」

 

 「ああ、簡単な理由だよ。時間の問題だ。神々と子供達は時間が違いすぎた。目的の達成に生き急ぐ子供達を我々が理解できなかった。子供達の生が短いことを知っていたにも関わらず。俺達は傲慢で不理解だった。俺達は物事を長いスパンで考え、子供達は自身の生で成し遂げることを望んだ。天界にも逸話があるのにな。」

 

 「逸話とは?」

 

 「何でもないような教訓の話さ。暇を持て余した神々が起こした戦争を命をかけて止めた名無しの神の逸話だよ。退屈を持て余す神々と平穏を望む神々の話だ。」

 

 「どういう内容か聞いても?」

 

 「天界に呆れた名無しの神が人々の強さと温かさに触れて、天界の争いを止める為に護りの空とぶ艦をこぎ奔走する英雄譚だ。俺達はいつだって正しい保証はないのについいつの間にか自分たちは誰より正しいと思い込み大切なものを忘れてしまう、という教訓だ。英雄は子供達に生きることの素晴らしさを教えられていたし、俺達はいつだって子供達に大切な感情を揺さぶられる。子供達を大切に思っていたのに気づいたらただの過保護になっていたり、同調するだけで正せる存在じゃあなくなっていたり。適度な距離感と自制心が必要だという教訓なのかもしれないな。ロキも愛読していたな。あいつも意外と乙女だハッハッハッ。」

 

 「ふむ、………俺の知っている国にも英雄譚があったぞ。」

 

 「ほう、教えてくれないか?ガネーシャ超気になる。」

 

 「戦いが止まない国で人々の安寧を守りつづける英雄の話だ。英雄は謎の爺に出会い強い力を手に入れる。」

 

 「ほう、それで?」

 

 「英雄は強くなりすぎて自身が人間であることを忘れてしまいそうになるが、いつだって家族の笑顔を思い浮かべて戦い最後には笑顔で帰ってくるんだ。」

 

 「………オラリオのファミリアもそうありたいものだな。」

 

 「俺の知っている国ではさ、爺が実は神様だったんじゃないかと長い間言われてたんだよ。でも実際に地上に下りた神々をみて『ああ、これはなんか違うな。』って。」

 

 「ハッハッハッ。そんな殊勝な神なぞ先に言ったお伽話の神くらいのものだぞ?俺達はお前の国を失望させてしまったのか。ハッハッハッ。」

 

 「まったくだな、案外俺達の話は繋がってたりしてな。」

 

 ◇◇◇

 

 

 

 「スマンがそろそろ帰るぞ。俺は団長だし仕事も残ってるからな。」

 

 「今日はとても楽しかった。ガネーシャ超興奮。友人としてまた遊びに来い!」

 

 「もちろんだよ、ガネーシャ。俺達はズッ友だろ?」

 

 「ああ、そうだな。俺達はズッ友だった。ハッハッハッ。」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「今日のガネーシャ様との会合はいかがだったでしたか?」

 

 「実り多い素晴らしいものだったよ。具体的には金が入り終生の友を得た。今日はとてもいい日だったよ。今現在トイレ掃除をしている新生トイレの女神の粗相を赦せそうなくらいにな。」


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