ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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さようならみんな

 「リヴィラにも彼らのお墓を作るべきです。アストレアファミリアの急務は今はありません。」

 

 「しかしリヴィラではアストレアが墓参りできんだろう。オラリオに建造した墓だけで満足すべきだ。」

 

 「しかし彼らの魂はまだあそこにいるはずだ。少しでも近くに作るべきだ!」

 

 私は珍しく強固な主張をしていた。

 

 「ならばなんらかの供養のみを行おう。我等の主神が来れないのは彼女自身にとっても死者にとってもあまりに寂しいだろう。」

 

 「………わかりました。」

 

 ◇◇◇

 

 私達はリヴィラの町のあまり人の来ない丘に来ていた。新人五人も連れて来ていた。

 

 「彼らの魂は今も彷徨っているのでしょうか?それとも遠くへ行ってしまったのか?カロン、いつも屁理屈で私を納得させるその弁舌で私に何かの答を下さい。」

 

 「彼らは去っていってしまったよ。魂だけが縛られて遺るのは辛いだろう?タケミカヅチは死者の魂は巡るといっていたよ。」

 

 「彼らは次はどこで生まれるのですか?」

 

 「さあな、もう既にオラリオのどこかにいるのかもしれないし人間以外の可能性も高い。ダンジョンのモンスターでないと誰にも証明ができない。」

 

 「そんな、私に信じさせてください!いつものように!彼らがどこかで幸せに生きていると!」

 

 「リュー、強くあるべきだよ。お前は長い時間を生きるエルフだ。目をそらしごまかして自分に都合のいい事だけを信じていたら、お前はいつか掬われることのない地獄に堕ちるかも知れない、お前は冒険者としては強靭だが精神的には脆弱だ。」

 

 「そんなことは、そんなことはない!」

 

 「お前は………。とても残酷だがあの時もっと早くに決断すべきだった。」

 

 「そんな………。不可能だ!」

 

 「一回目はそれでも仕方ないよ。しかしそこで目を逸らし耳をふさいでしまったら………。次も救われない。何も変わらない結末が訪れる。お前は俺達より長く生きるから………。」

 

 「私は………。私はどうすべきだったんですか?」

 

 「生き残る人間と死にゆく人間を選別して死にゆくものを遺れる人間の贄にすることを選択するべきだった。」

 

 「私には………不可能です。私は選びたくない!あなたに死を命じたときですら身を引き裂かれる思いだったというのに!」

 

 「いつだってどこかで誰かは死ぬよ。俺だって冒険者だ。明日闇派閥に襲われて死なないとも限らない。強くあってくれ、リュー。」

 

 私がその時見た彼の目は、凪いだ海のように穏やかに見えた。しかしそれは普段とは違いとても寂しい青色をしていた。私の空色とは違い彼の色は海の色だ。私は胸を鷲掴みにされたような錯覚を覚えた。

 

 ◇◇◇

 

 

 

 「ッッテメエ、こんなところで何してやがる?」

 

 「野暮用だよ。もうじき帰るさ。」

 

 「アン、テメエ何でつっかかってきやがらねぇ?何考えてやがる?」

 

 「ただ遊ぶだけの元気がないだけだよ。すまん、凶狼。どうか許してくれ。」

 

 「………どういうことだ?説明しやがれ。」

 

 「ただの墓参りのようなものさ。あんまり騒ぐと彼らが怒るかもしれない。俺は前からしょっちゅう団長達には怒られてたからな。」

 

 「ッッ………おいテメエ、テメエは俺のサンドバッグだ。殴りがいがねぇから今回は見逃してやる。次に会うまでにさっさと元気を取り戻しやがれ!」

 

 「………ありがとう。」

 

 「………フン。」

 

 ◇◇◇

 

 

 

 「リリルカ、初めてあの五人はここまで来たと思うがどう思う?」

 

 「緊張して疲れてますね。それよりカロン様はそんなへこんだ状態でも聞きますか。」

 

 「戦力は俺とリューだからな。リューも当事者だし団長の俺がしっかりしないといかんだろう。今の精神状態じゃあリューも不覚を取りかねない。」

 

 「そうですね………。それにしてもそんなに頼れるところを見せつけてどうするんですか?誰かを口説くんですか?ここには魔物もどきとぼっちの脳筋しかいませんよ。新人はフレイヤ様のものですから手を出せませんよ?」

 

 「ここぞとばかりに攻撃して来るな。そんなに普段の扱いが悪いか?」

 

 「いえ、最近は少しおもしろくなってきました。完璧にあなたの悪影響です。」

 

 「意地の悪いところはおれのせいじゃあない。自前だろう?何でもかんでも人のせいにするなよな。」

 

 「いえいえそれこそまさにカロン様の影響です。」

 

 ◇◇◇

 

 ホームに帰った俺達、俺は一人でアストレアの私室を訪れた。

 

 「お帰りなさい。」

 

 「ああ、ただいま帰ったよ。何だか新婚みたいなやり取りだな。」

 

 「大丈夫?とても疲れているように見えるわ。いつもみたいに軽口を叩いてもまるわかりよ?」

 

 「そうか………。今まで考えないようにしてきたからな。正直堪えたよ。」

 

 「そう………お夕飯全員分用意しといたわ。」

 

 「ありがとう。しかし皆疲れているからな。関係のないリリルカや新人もレベル1だし肝心の俺達があまり頼りになれなかったからな。」

 

 「リューは大丈夫だった?」

 

 「大丈夫ではあるが………。難しいな。高潔に過ぎるよ。覚えてたら復讐に悩まされるし忘れたら次の死別に堪えられるかわからない………。どっちがよかったんだろうな?」

 

 「あなたは間違っていなかったわ。今は先送りにするしかない。次のお別れが来る、その時にリューが乗り超えられる事を信じるしか私達にはできない。」

 

 「そうなんだろうな。」


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