ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
ー私はこの星のありとあらゆる生命を見守り続けてきましたー
◇◇◇
始めまして、皆様。私は今上空より新たにこの地に繁栄しつつある連合という組織の視察に来ています。
これは私のお仕事のようなものです。
お前は誰だ?ふふん、私を知らないのですか?
私の名前はオオトリ、名前からどのような存在かご想像がおつきになる方も多いのではないでしょうか?
そう、私はかの偉大な漫画の神様が創造なされた、生命を司るっぽい火の属性を持っているであろうお鳥様の見た目をしたナニカの親戚的な存在のような雰囲気なのです!インテリジェントデザイン論の神様のような存在だと説明すればわかりやすいでしょうか?
私は不死にて永く生命の繁栄を見続けてきました。命は力強く巡ります。
私にとっては生きとし生けるもの全て、私の子供のようなものです。
私は今日は新たに繁栄している連合という組織の視察に来ていました。
上空をいつまでも羽ばたくのは疲れるので、連合の屋上で羽を休めていました。
◇◇◇
俺はカロン、ただのカロン。
俺は今日は仕事だった。仕事が終わって帰り道、夜の空をまばゆく煌めく物体が飛んでいるのを見てしまった!ついに見てしまったんだ!
………まさかUFOか!?胸の高鳴りが止まらない!オラ、ワクワクすっぞ!
俺は奴を追いかけてひたすら走る!
未確認飛行物体は連合の屋上の方へと飛んでいくのを俺は見ていた。
………宇宙人との戦いは近い!
◇◇◇
俺は連合にたどり着き、屋上へと向かう。
俺はそっと屋上のドアを開けて様子を見る。
屋上の一角に、眩しく光る何物かが存在する!うーん、UFOだけでなく宇宙人自体も眩しく輝いているということなのだろうか?
俺は音を立てないように、相手に気付かれないように後ろからそっと近づく。まだ気付かれていない。まだだ、焦るな俺!まだもう少し、もう少しだ!後ちょっと………今だ!
◇◇◇
ーー何事ですか!?
私の後ろから何者かが組み付いて来ます!完璧に油断していました。まさか何者かに姿を見られていたとは!?私を捕まえようとしているということは、さては私の不老不死の血が目的なのでしょう。私の血を目当てに襲ってくる相手なんか今までいくらでもいました。今回もあしらってくれましょう!くらえっ!!
「あちっ!!」
体温を上げたら、相手は驚いて離れました。青い目の大男です。私を捕まえようなどと百年早いわ!
ふむ、見たところステータスもないただの人間のようですね。相手はジリジリ近づいてきます。ならば少しお灸を据えてあげましょうか?
相手は飛び掛かってきます。
ーー喰らいなさい!鳳皇火焔旋風!
「ぐおっ!あちちっ!!」
鳳皇火焔旋風、その名の通り、羽から出した炎の風で相手を燃やす必殺技です!
相手は顔を歪めながらもこちらへと向かってきます。
ふむ、これを耐えるとはなかなかやりますね。ならばこれはどうですか!
ーー不死超炎渦潮!
「ぐ、ぐあああっっ!!くそっ、負けない!」
不死超炎渦潮、やはりその名の通り、先程よりも強い炎で風の渦を作り、相手を燃やす必殺技です!
ふむ、私としたことがただの人間に少し大人気なかったようですね。これぐらいで許してあげましょうか?
「カロン、大丈夫ですか!!」
「リュー!?どうしてここに?」
「あなたは頻繁に一人で勝手にふらふらとどこかに行ったりしますからね。私だけ一人で置いていかれるのが寂しいというわけでは絶対にありませんが、リリルカさんに相談したら私の為に発信器というものを開発してくれたんです!あなたの靴にこっそりしこんであります。まあそれはともかく………」
「発信器!?ちょっと待てい!!」
「カロン!今はそんな場合ではありません!」
………発信器?それってストーカーなのでは?
それはともかく屋上のドアを開けて新しい人間があらわれます。彼女は私をにくい敵を見る目で見ています。
ふむ、彼女は大男より少しやりそうですね?まあ少し遊んであげましょうか?
ーー喰らいなさい!フェニック………
「遅いですね。」
!?何が??
………見えなかった。気付いたら相手の姿はなく、私の首が絞められています。こ、これはまずいです。首を絞められて落とされてしまいます。
「カロン、捕まえました。何か変な鳥ですね。少し熱いです。」
へ、変な!?生命を司る私を変なもの扱い!?それより少し熱いって………今の私の体温は1000℃を超えているはずなのですが?普通は火だるまになってしかるべきなのですが?
「鳥か。ならば鳥型宇宙人か。新しいな。」
「いえ、確かに眩しいですが多分ただの鳥ですよ?せっかくですし私の超得意なお料理の腕の見せ所です!家で捌いてあげましょう!今日の晩御飯はから揚げです!」
………から揚げ?私は死んでも再び火の中やマグマからであれば甦れますが………油はまだ試したことがありません。………仮に甦れても体が油でギトギトでしょうし、どうせまた捕まるのが関の山です。
「………いや、ならば俺がやるよ。………リュー、お前はもう料理を得意だと言い張るのはやめた方がいいと思うぞ?」
【ま、待ってください!】
「「しゃべった!?」」
【わ、私は死ぬわけにはいかないのです!生き血を差し上げますので、どうか見逃してください!】
「うーん、しかし生きるためには食べる必用があるんだが………お前だけ特別扱いするのもおかしいだろ?第一お前の生き血をもらったとして、何になるんだ?」
大男がしゃべります。大男は何か考えています。
【私の生き血を飲めば不老不死になれます。それを差し上げますからどうか………】
「ふむ、つまりお前はそんな立派な見た目にも関わらずゾンビウィルス的なものを持っているということか?」
【ゾゾゾゾンビウィルス!?超越存在の私になんてことを言うのですか!?】
「しかし超越存在と言ってもオラリオにはそこら中に神がたくさんいるぞ?まだ野良猫の方が珍しいくらいだろ?」
【………まあ確かにそれはその通りですが。それよりどうか見逃していただけませんでしょうか?】
「カロン、どうしますか?」
女性がしゃべります。彼女の口ぶりからすると、どうやら私の命は大男が握っているみたいです。
「そうだなあ………こいつ知性が高いみたいだし確かに食べるのも憚れるんだよなぁ………ゾンビウィルス持ちらしいし。」
だからゾンビウィルスではないと………それで助かるならもうゾンビでもいいような気がしてきました。
「そういえば連合にはペットがいないんだよな。ベートは外部の人間だし、リリルカもあまりに有能過ぎてマスコットとは掛け離れてきたし。」
ぺぺぺペット!?生命を司る私がペット!?
「巨大な組織にはそれを象徴するマスコットが必用だしな。よし、それじゃあ今日からお前の名前はペスだ。」
◇◇◇
「でですね、ペス。アポロン連中がまた変な問題を起こしたんですよ。それでまた私の休みが減ってしまったんです。」
【………………】
◇◇◇
ー私はこの星のありとあらゆる生命を見続けてきましたー
お前は誰だ?ふふん、私の名前はペスです。
「プークスクスクス。よう、ペス。元気そうだな。」
………彼の名前はHACHIMAN、私と同じように超越存在です。ちょっとした顔見知りです。
今は夜半で、私は誰もいない時間にこっそり鳥かごを抜け出して羽を伸ばしています。
【………うるさいですね。】
「新しい家の住み心地はどうだ?」
私の新しい住家は、連合内の副団長室のペスという表札の書かれた鳥かごになってしまいました。
………いつでも逃げられるのですが、命を見逃してもらいましたし、副団長のアスフィさんという方の苦労話を一方的に聞かされてしまって………なんか不憫で逃げる気がなくなってしまいました。彼女には私が喋れることを伝えていないはずなのですが………彼女はよほど苦労なされているのでしょう。私にしょっちゅう愚痴をおっしゃります。
………アスフィさんの話を聞いてしまった時点で私はペスとして生きることが決まりました。私の新しい仕事はアスフィさんの息抜きとして苦労話を聞いてさしあげることです。
HACHIMANはしょっちゅう私を冷やかしにやって来ます。
「それにしても不老不死で生命を司るお前をゾンビ扱いって!!」
HACHIMANは笑い転げています。腹立つ。
私の住家にはゾンビウィルスを持っているから扱い注意の警告が書かれています。腹立つ。
【いいんですよ!私の仕事は生命を見続けることです!私は新しい命の偵察をしてるんです!】
「無理wwww」
ムカつく!
【さっさと寝ろ!】
「はいはい、じゃあお休みペス。」
ムカつく!
◇◇◇
ー私はペス。私は連合のマスコット兼ペットとして、永く副団長の苦労話をお聞きして心労を慮り続けてきましたー
………私が見守らなくとも、生命は力強く生き続けています。アスフィさんは私を大切にしてくださいますし、なんか段々と私はペットのペスでも問題ない気がしてきました。
………それはともかく、大男につけてある発信器云々は結局どうなったんでしょうか?
カロンに発信器はついたままです。
それと日本では許可なく野鳥を捕獲したりしたらダメ、絶対!