ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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誰か式ギルガメッシュその2

 「クッヒャッヒャッヒャッヒャッ!どうだ~僕のライダーの血界はあと三日もすれば完璧な形で発動する!完璧だ!そうすりゃもう僕に敵なんていないぜえぇ~!」

 「………シンジ、もう戦争終わります。

 「アン?声が小さくて聞こえないよ!ヒャッヒャッヒャッ、これで遠坂に思い知らせてやるんだ!」

 

 ◇◇◇

あらすじ

 ワカメに出番をプレゼント

 

 「………来たか。」

 

 腕を組み振り返る英雄王ギルガメッシュ、対するはカロン。

 今ここでは、最終決戦が始まろうとしていた。

 

 「行くぞ!」

 「来い!」

 

 豪華な黄金の鎧を身に纏う英雄王、対するは魔力で作られた重厚な鎧と分厚い盾を持つカロン、カロンはリューを召喚する。

 

 「守護神の眷属(ガーディアンズファミリア)!」

 

 カロンの宝具、凛の魔力を吸いリューが象どられる。

 英雄王はバビロンから剣を取り出す。シンプルな造りされど気品と美しさを併せ持つ片手剣、原罪(メロダック)

 リューは両手に持つ小太刀で連続の刺突を行う。

 

 「フン、まあまあ素早いではないか?………しかし甘いっ!」

 

 刺突を原罪で踊るように捌き、英雄王は体勢を崩したリューを蹴り飛ばす。さらにバビロンからの刀剣の追撃。

 

 「リュー!」

 「大丈夫です!」

 

 リューは刀剣を避け、背中を追う刀剣から退避する。

 カロンは刀剣の投射の合間に割り込む。リューはカロンの背中に隠れ、英雄王は大男の背中にいるはずのリューの姿を見失う。

 

 「む!?」

 

 盾を持ちカロンは英雄王に詰め寄る。カロンを追うリューは、カロンの背中を蹴り英雄王の上から攻撃を加える。二人の必殺。リューの速度は視認しづらく、上方は人間の意識外になりやすい。

 しかし英雄王は見逃さない。見逃すわけがない。我がそんなに温いわけがなかろう?

 切り付けを受け止め、力ではじき飛ばす。

 カロンは考える。

 

 ーーリリルカはどうする?敵は明らかに強大、幸運なのは敵の刀剣投射が盾持ちの俺にとってはたいして脅威にならないということ。上手く連携をとれば打倒可能か?しかし奴は空間から様々な武器を投射して来る。間違いなく切り札も隠しているだろう。凛の魔力はどれだけ持つ?リューが消されても再度の魔力での編み込みは?あの黄金の鎧を通る攻撃はどのくらいの強さが?

 

 「フッハッハッハッハ!喰らえぇぇ!」

 

 なおも射出される刀剣、リューの体をかすめ、魔力を漏出させる。

 カロンとリューは共に近づき再び重なる。

 やはり英雄王へと近付く。

 

 「くっくっくっ、どれ、少し遊んでやろうか?ハンデをやろう。こんなショボいSSで本気を出すのもつまらん。乖離剣は使わないで置いてやろう!」

 

 英雄王はバビロンから新たな剣を取り出す。

 右手にカラドボルグの原典と左手にハルペーの原典まさかの鎌と刀剣の二刀流。

 

 近づいたカロンとリュー相手に英雄王は獰猛に牙を向く。

 

 「フッハッハッハッハ。こんなものか?」

 

 まさかの技量、英雄王は右のカラドボルグでリューの二本の小太刀をはじき、カロンの鎧も盾も貫通させて左のハルペーでカロンを切り裂く。

 

 「グッ………。」

 

 ハルペーは不死殺し。かつて不死身の二つ名を持っていたカロンに絶大な痛みを与える。しかしカロンは決して表情を変えない。ここで弱点だとばれたら勝ち目がない!

 痛みを必死に堪えて、カロンは思案する。

 

 ーー馬鹿な!?両手持ちで小回りの利くリューの二刀流の小太刀を大剣で捌くだと!?仮にも英雄王か………。攻略法は………。リューに痛みを覚悟してもらうしかないか?

 

 リューはカロンを盾にする。これまではずっとそうしてきた。

 しかしそれは、今この場で本当に最も効率的な戦いなのか?

 リューがカロンを盾にすると英雄王にとっては二人が同じ方向から攻めて来ることになる。

 英雄王には対処しやすい。

 リューがカロンの背中から攻撃するのはカロンの防御に絶大な安定感があるからだ。しかし。

 リューは考える。

 

 ーー魔力の塊でしかない私は攻撃を受けても本体自体はなんら痛痒を感じません。痛みを感じるのは今ここにいる私の意識だけです。今のままでは勝ち目がない。凛は私を何回作り出せる?真に相手を撃破するならカロンの背後でなく、挟み撃ちが最も有効。カロンの負担も減らせる!それは私が捨て札として使いうるから取り得る戦術!

 

 ーーほう、

 

 戦いは形を変える。

 生物の視界は三百六十度ではなく、人間の視界は百八十度も厳しい。

 自身の安全を考慮しないリューの分身体、速度に特長を持つ。

 英雄王にとってはカロンの攻撃は一切気にする必要はない。しかし。

 カロンは共闘の才能を持つ。

 この戦いで俺がリューに出来ること?リューの攻撃を通すフォローをすることだろ?

 

 カロンの戦いは変幻自在、英雄王に肉薄し五感の一つの視線を遮る動きをする。

 カロンは大男だ。

 視線を体で遮ることも出来るし手でも遮れるし生物は思わず動くものを目で追ってしまうものだ。

 気にする必要が無くても気にせざるを得なくしてやるよ?

 

 ーーなるほど、これは面倒でもあるな。

 

 カロンは英雄王の近くで英雄王の正面から頭部を中心に素手で攻撃を行う。

 リューは英雄王の死角から英雄王の鎧の隙間を中心に小太刀で攻撃を行う。

 英雄王はカロンを極力見ずにリューの攻撃に集中する。

 しかしリューを目で追ってもリューはカロンの背中に隠れ、カロンの動きにほんの一瞬気を取られた次の瞬間にはカロンの背後にいない!

 

 そして英雄王はここまで挟撃で纏われてしまってはバビロンを展開するのが難しい。

 

 ーーさて、いつまで遊んでやるかな?

 

 英雄王は目前を煩わしく動くカロンに剣で攻撃を仕掛ける。

 カロンの防御の技量は高い!英雄王の剣は例外なく名剣であり、絶大な切れ味を誇る。

 真っ当に受けたら間違いなく斬られる。必ず斜めにすらして受ける。

 

 英雄王の攻撃の隙にリューは後ろから小太刀で鎧の隙間を突く。

 ほんのわずかな隙間。肘部で間接の稼動を可能にするために作られた本当に僅かな隙間、英雄王は僅かに傷を負う。

 

 英雄王は振り返らずに剣を逆手に返して背後のリューに攻撃を加える。

 鼻を掠める剣、あまりにも滑らかにリューの鼻が裂かれる。

 

 ーーさすがに英雄、驚くほど技量が高い。私を見なくても大体の位置を掴んで来る。そしてあの武器の切れ味。私が捨て札だとしても玉砕覚悟の攻撃程度では捌かれて首を落とされて終わりだ。しかもカロンにも無理をさせている。

 

 ーー強いな。うーん?やはり武器が狂暴過ぎるのもある。しかし敵の左手の技量は右手よりは劣る、か。それでも自在に剣を出し入れして頻繁に二刀と一刀を切り替えている。判別が付きづらいな。二刀が可能なのに一刀を混ぜる理由、撹乱か?あるいは必殺としての両手での切り下ろしか?二刀より一刀の方が必殺として警戒するべきか?いずれにせよ下手な受け方したらそれだけで詰んでしまう。相手の攻撃を警戒すると思いきった動きが出来ない。しかし俺は生身だしあまり無理できないなぁ。………凛に無理させるか。

 

 「守護神の眷属!」

 

 二人目召喚。リリルカ。

 リリルカは即座に状況の把握を済ませる。

 

 ーーお強いですね。お二人の挟み撃ちを捌ききるのは。リリには技量はなく、リリが出来ることは限られています。

 

 リリルカはそっと英雄王の意識から逃げていく。

 

 ーー新たに召喚した人間は………戦いに参入せずか。現状では我が有利といったところか。

 

 英雄王は二人を捌きながら、リリルカを決して見逃さない。

 カロンも思考する。 

 

 ーーリリルカには高い指揮能力がある。それはすなわちそのまま高い戦術眼を持つこと。指示を出さずに好きに動かした方がよい。

 

 リューはさらに速度を上げている。その場に影を残して縦横無尽、頻繁に視界に写りこむカロンの動きに視線が誘導される英雄王は追いきれない!

 英雄王は考える。

 

 ーーこの盾持ちの防御は異様とも言えるほどに固い。しかし攻撃に関していえば全くと言えるほどにダメージを負わない。この素早い女の攻撃に関していえば………僅かとはいえ傷を負う。盾持ちは相当にしぶとそうだ。一長一短、盾持ちを追えば粘られる間に女に攻撃を喰らう。女を追えば大男と上手く連携を取られ、はぐらかされる。とりあえず、流れに沿うか。

 

 戦いは続く。

 英雄王の技量は高く、リューは思いきった攻撃は出来ない。英雄王はリューの攻撃に僅かに傷付き、カロンとリューは持久戦の土俵には巻き込めていることに僅かに安堵している。しかしリューは一撃を受けたら高確率で致命で、相手はほぼ確実に凶悪な隠し玉を控えている。魔力体といっても凛の魔力に限界はある。

 

 リューは左の小太刀で英雄王を切り付ける。英雄王はリューの方を振り向き、右手に持つ片手剣で攻撃を仕掛ける。しかし英雄王の斜めの切り下ろしをリューは体勢を低くして避け、そのまま近づいて来るカロンとやはり重なる。英雄王はさらに左手の剣でカロンに縦の切り下ろし、しかしやはりカロンは盾を僅かに斜めにしただけで上手く英雄王の切り下ろしを滑らせる。

 

 ーーちっ、右か。

 

 英雄王の切り下ろしの間にリューはすでにカロンの背後にいない。英雄王は気配を頼りに右の片手剣でリューを切り付ける。しかしリューはその場で後方への宙返りをして避け、置き土産に浅い傷を英雄王の右腕に付ける。

 

 カロンの腕が英雄王の頭部目掛けて伸びる。英雄王は左手の剣をしまい、剣は今は右手の一本のみ。英雄王は魔剣グラムの原典で腕を落とそうとする。危険を感じ取り全力で受けに回るカロン。隙と見たリューは英雄王の背後から首を獲りにかかる。しかし軽々首を動かし英雄王は避ける。そのまま滑らかな動きで振り返りリューに斬りかかる英雄王。これまでで最もキレのある動き。リューは避けきれない。

 

 ーー首を落とされる。

 

 ーーリリルカ………済まない。

 

 ーーちっ!やはりそういう使い方か。

 

 ーー家族は助け合うものです。リリは痛みに恐ろしく強い、カロン様の娘ですよ?

 

 リリルカは最初から最も効果的な身を呈する使い道を模索する。

 英雄王の剣撃にリリルカは迷わずに体を割り込ませる。リューが落とされたら、どちらにしろすぐにリリルカも落とされるのは明白である。護りしか出来ないカロンもそうなれば当然時間の問題だ。カロンだけは何としても落とさせるわけにはいかない。

 しかし分身体とはいえ意識が存在するため痛みが無いわけではない!

 

 そして相手の行動を予想していたはずの英雄王は読み違える。

 まさかこのような小娘が、そんな痛みが極めて大きい受け方を覚悟していただと!?

 

 グラムの一撃にリリルカは決して目を逸らさない。人体でも硬い骨をリリルカは上手く縦に噛ませる、英雄王の剣撃はわずかに軌道を変え、速度を落とし、退避するリューは辛うじて致命を免れる。

 リューの首はリリルカの体に護られ、リューの眼前には英雄王の腕、この日最も近づいた、隙だらけの、伸び切った利き腕!なればここしかないだろう!!

 

 「ああああああああっっっ!!!」

 

 リューは雄叫びを上げある限りの力を込めて黄金の鎧の右腕の隙間に小太刀を突き立てる!さらに二本目!えぐり込む!!

 

 「グガガガアアァァァッッッッッ!!!」

 

 会心の二撃!!英雄王の右腕は使い物にならない!

 英雄王は左手にグラムを持ち替えてリューの首を落とす。

 

 「ちぃっ!遊びが過ぎたわ!」

 

 英雄王は動く左腕を上げる。

 

 「天の鎖よ!」

 

 バビロンズゲートから天の鎖(エルキドゥ)がカロンへと躍るように襲い来る。

 鎖はカロンの手に絡み、足に絡み、カロンは体を縛られる。

 カロンには最低とはいえ神性がついていて、そうでなくとも鎖を引きちぎれる程の力を持たない。

 

 「フン、まあそれなりに愉しめたわ。」

 

 英雄王はバビロンから刀剣を出してカロン目掛けて射出する。

 

 ◇◇◇

 

 「ふむ。三人か。クックックッ。それにしてもまさか一度も教会を訪れずに戦争を終結させようとするとはな。」

 「っ!あんた!」

 

 場面は変わり、ここは洞窟大広間。

 

 「言峰!」

 「凛、あの男は聖杯を壊すつもりだぞ。お前はそれを許すのか?お前には何故令呪が存在するのだ?」

 

 出ました!皆大好き麻婆神父!

 

 「何言ってるの!?」

 「事実だ。お前は悲願を捨てることになるぞ?」

 

 今ここには凛と士郎とイリヤ。

 バーサーカーは槍のアニキと仲良くお遊び中。

 

 「あいつは私のサーヴァントよ!裏切るわけないじゃない!」

 「しかし奴は生身の人間だ。そもそも生身の人間が生身の人間を一方的な契約で下僕として扱うこと自体がおかしいと思わんか?不当に令呪を振りかざすお前をあの男は不愉快に思っていたかも知れないと思わんか?」

 「黙りなさい!」

 「フム、やはり向かって来るか。久々に稽古をつけてやろう。」

 

 士郎とイリヤは叫ぶ。

 

 「遠坂!俺も手伝うよ!」

 「凛!そんな奴バーサーカーに任せてしまえば良くない?」

 「大丈夫よ。この外道神父に少しお灸を据えてやるわ!」

 「フム、ずいぶんな口を利くようになったものだな。それはそうとして、バーサーカーの相手はさすがに勘弁してくれ。」

 

 ◇◇◇

 

 「グッ!!」

 「フーム、なかなか声を上げんな。」

 

 鎖に縛られるカロンは手加減をされたバビロンから投げられた刀剣を喰らう。

 刀剣は腹部に刺さり、カロンは血を流す。

 

 「強き魂よ。この期に及んでなお笑うか。しかし面白いものだ。お前は希少な他の世界(作品)の男だ。我のコレクションにくわえてやろう。」

 

 拙作のギル様は男までコレクションしようとする。変態?

 

 「お断りだな。リューが家で待ってるんだよ。」

 「フム、少し惜しくもあるが。」

 

 英雄王は左手を上げる、その刹那。

 

 「うおおぉぉぉぉっ!!」

 「なにっ!?」

 

 利き手の使えない英雄王は相手の攻撃を受けそこねる。

 一瞬の隙に天の鎖はたわみ、カロンは鎖から必死で逃げる。

 

 「貴様、何故そこにいる!?」

 

 ◇◇◇

 

 「はああっっ!!」

 「フン、甘い!」

 

 凛の攻撃を受け流す言峰。

 誰かは中国拳法を全く知らず、どのような攻撃が存在するのか知らないために技名が全く出てこなかった。

 凛はさらに攻撃を加え、言峰は受ける。言峰は反撃し、凛は防御の上から吹き飛ばされる。

 

 「クンフーが足りん!」

 

 言峰は攻撃し、凛はやはり防御する。

 凛は考える。

 

 ーーいつまでも攻撃と防御の字しか出てこないなら、読者様が読んでてイライラするだけだわ。何かそれらしい技名とかないのかしら?言峰を一撃で吹き飛ばせるような………。

 

 ◇◇◇

 

 「アポロン!!」

 「貴様!何者だ!?なんだそれは!何故貴様の剣はこの我よりも眩しくキラキラ光っているのだ!」

 「フッ、これは俺の宝具でサイリウムというのだ!」

 

 まさかのアポロンっっ!!宝具はサイリウムっっ!!

 

 「アポロン!何故?」

 「フッ、知れたことよ!君が死んでしまえばリュー様は人妻ではなくなってしまうだろう?うん?そしたらリュー様は未亡人になるのか。未亡人………未亡人か………。未亡人………。」

 「なんにせよ助かった!」

 「貴様!何故ここに入ってこられるのだ!?異世界の生物しか入ってこられないように設定したはずなのに!?ええい!天の鎖よ!」

 「むっ!?」

 

 天の鎖はアポロンをグルグルに縛り付ける。

 

 「ウム、コレはコレで悪くない。」

 「なんだと!?気持ちの悪い奴め!ええい、天の鎖よ!あの大男も一緒に縛り付けるのだ!」

 

 しかし天の鎖は微動だにしない。アポロンにグルグル。

 

 「ええい!?なぜいうことをきかんのだ!?」

 

 やはり動かずにアポロンをグルグルにしている。

 

 突然ではあるが、物事にはメカニズムというものが存在する。

 太陽は東から上り、生き物は日々食事を欲し、夜になると子供は眠くなる。

 

 天の鎖は神を縛る鎖である。

 もともと頑丈な鎖であるのだが、特に神性を持つものに強力な効果を発揮する。

 一体そこにはどのようなメカニズムが働いているのだろうか?

 

 誰かは以前から考えていた。

 アニメの鎖の動きはまるで意思を持っているようだと。

 ふむ、どのような意思を持っているのだろう?

 

 なぜ神を縛るのが得意なのだろう?

 考えた。考えて、考えた。

 

 あるときに天啓が舞い降りてきた。

 

 天の鎖の実態とは神々の束縛の強い恋人的な存在なのではなかろうか、と。

 

 そう、拙作の天の鎖は神々を束縛するのが大好きなのである。

 故にどMのアポロンとは相思相愛!熟年カップル的な相性!

 主の命令そっちのけ!

 

 カロンの神性は最低ランクであり、アポロンは現役の神である。天の鎖の好みのタイプがどちらなのはもちろん言うまでもない。

 

 そして唖然とする英雄王、隙を見たカロンは凛から魔力を奪い今一度リューを呼び出す。

 リューは即座に自分の仕事を理解する。

 

 「「はああああっっっ!!」」

 

 二人は駆ける、途中に刺さっているバビロンより投射された英雄王の剣を取る。

 

 「クッ!!」

 

 英雄王は対応しようとするが、右手が潰されている!左右から来る剣を左手一本で対応?無理だ!

 

 ーーならばせめて脅威度の高い女の方の攻撃だけは防ぐ!

 

 「お前にもう札が無いなら負けだよ。」

 「貴様ああぁぁぁぁ!!黙れええぇぇぇ!!」

 

 カロンは言霊で英雄王を揺さぶろうとする。しかし相手は黄金の魂、どのような状況でも揺さぶることはほとんど不可能。しかし。

 

 「ええ、あなたの負けですよ?」

 

 リューまでもが揺さぶりにかかる。

 揺さぶるリューの手には二本の剣、リューは両手で武器を扱う能力に優れている。

 さて、左手一本で三本の剣の攻撃を果たして防げるのでしょうか?

 いくら精神が強くても、技量が高くとも、不可能なものは不可能である。

 

 英雄王はリューの右での一撃は弾くが、左の片手剣に鎧の上から貫かれる。英雄王の鎧は堅牢だが、リューの持つ剣はバビロンから投げられた絶世の名剣デュランダルの原典!さらに突き刺さんとするカロンの一撃!剣は名剣で両手持ちだが攻撃力がゴミのために刺さらない!

 

 リューとカロンの剣はリューの剣だけ英雄王の体を貫く。

 

 「グウウッッ!」

 

 英雄王の腹部には絶世の名剣が深々と刺さっている。

 英雄王は自身の腹部を見て、カロンを見る。

 

 「我の負けか。」

 

 ギル様あっさり敗北、やはり戦闘描写の嫌いな誰か。

 英雄王は笑う。英雄王は辺りを見る。大聖杯に視線を送る。

 

 「ふむ、貴様らは確かそれを壊しに来たんだったな?」

 

 そういうと刀剣をバビロンズゲートから大聖杯に放つ。崩れ落ちる大聖杯。

 

 「聖杯の中の汚れも我が共に黄泉へと持っていこう。行け。」

 「何故だ?というより中の汚れとは何のことだ?」

 「なあ、今の我は本当に英雄王だと思うか?」

 「どういうことだ?今度はどんな超理論だ!?というより中の汚れについて教えてくれ!」

 「我は死後、ずっと一人だ。我には寄り添う民が居なくなって久しい。民無き王が道化以外のなんだというのだ?」

 「何が言いたいんだ!?中の汚れて何なんだ?」

 「我は待っていたんだよ。ずっと。確かに我は若くして死んだ。しかし我は次の代の王の戴冠式が行われても王でいないといけないのか?我には年寄りとして新しい世代の成長を愉しむ権利は無いのか?我は全てを見通す千里眼で古今東西あらゆるSSを見てきた。」

 「SS!?それ別にわざわざ千里眼で見なくてもスマホとかで見ればよくないか!?」

 「我はどのSSでもそのほとんどが悪役か傲慢な人間かラスボスかギャグキャラだった。たとえ善人だったとしても、中の人が別人だったりな。そこは本当は我が善人だったとかではいかんのか?であるならば、チラシの裏にでも一つくらいは我がただの善良なおじいちゃんとして去るSSがあってもよかろう。我はきっとずっとそれを待ってたんだよ。教会でイケニエにされていた子供達もとっくの昔に解放して入院させてある。言峰もキチンと叱っておいた。ゆえに魔力不足で乖離剣は使わないのではなく使えなかったのだ。つい見栄を張ってしまった。」

 「善良なおじいちゃん!?イケニエ!?乖離剣!?中の人!?そもそもお前が悪役で無いなら俺達は何のために戦ったんだ!?」

 「………なればこそ我が敗れるのは必然だったか。孫は今年も遊びに来てくれるかのう?」

 

 そうして英雄王は去って行った。言いたいことだけを言って、たくさんの謎を残して。

 中の汚れて何なんだ!?

 

 ◇◇◇

 

 「オーイ、倒したぞ~。」

 

 カロンは大広間へと戻る。そこの空気は暗かった。

 

 「どうしたんだ?どうしてこの男は倒れてるんだ?」

 

 聖杯の泥によりかつて命をつなぎ止めた言峰神父、聖杯がなくなり心臓を失っていた。

 

 「………死んでいるのか。」

 「ええ。突然倒れたわ。せっかくスーパーウルトラハイパー(エクスカリバー)デラックスメガ頂肘をくらわせようと思ったのに。」

 「そうか。さすがにそのルビは無理が有りすぎないか?せめて約束された勝利の肘(エクスカリバー)とかの方がいいんじゃないか?」

 「どうでもいいじゃない。ところで戦いはどうだったの?」

 「ああ。勝ったけど敵に大聖杯を壊されちゃったよ。」

 「そう。」

 「怒らないのか?」

 「私はあんたを信じてるわ。私もウッカリ機械を壊すことはよくあるし、壊れたものは仕方ないでしょ?私も先週某大手企業に職場見学に行ったんだけど、おいてあったスーパーコンピューターとかを触ってウッカリ壊しちゃったし。」

 「スーパーコンピューター!?大層な名称だけどマスター、それ大丈夫なのか!?」

 「知らないわ。まあその時にいた責任者の人は泡ふいて倒れてたけど。たかだかコンピューターの一台くらいで大の大人が情けないわよね。」

 「………今聖杯から最後に知識が流れてきたが、それ多分大聖杯どころの話じゃ無いと思うぞ?………多分お前も、その企業の損失額を聞いたら泣いて気絶すると思うぞ?………マスター、いよいよもって魔術なんてやめて、日本経済に少しでもお詫びが出来るように必死に勉強したほうがいいぞ?」

 

 ◇◇◇

 

 「カロンさん、やっと見つけました!」

 「ベルか。待ってたよ。帰りの人員は若干増えてしまうが許してくれ。」

 「ええ!?」

 

 帰りはイリヤと彼女のメイド、葛木夫妻も一緒である。

 イリヤはギルガメッシュが消滅したことにより少し影響を受けていたが、そこまで大きな問題ではなかった。

 

 「はあ、なんかリューに怒られそうな気がするな。じゃあな、凛。」

 「ええ。気が向いたらまた遊びに来なさいよね!」

 

 カロン達はそういって出発する。

 

 ◇◇◇

 

 「シンジ、さようならです。

 「えっ!?おい、ライダー!何でお前の体どんどん透明になっているんだよ!?せっかく血界の基点を万全に仕掛けてこれから遠坂を見返そうって時にさ!」

 「さようなら、シンジ。私はあなたが大嫌いだった。

 「えっ!?おい!最後くらい綺麗にしめろよ!なんでお前普段ボソボソしゃべる癖にそこだけはっきりしゃべってんだよ!?」

 

 ◇◇◇

 

 ここは時限の狭間、俺は帰り道にあることに気づいてしまう。

 ………面倒だな。非常に面倒だ。

 

 「凛にウッカリを移されたかな?ウッカリアポロン連れて帰るの忘れてた。」




アポロン『ふっ、別にあいつを倒してしまっても構わんのだろう?』

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