ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
あらすじ
いきなりなにもかもを無視して大聖杯を壊しに行こうとするカロン達に
◇◇◇
「おはようございます、先輩!あれ?遠坂先輩………?」
爽やかな朝。我様御来場の翌日の衛宮邸。
彼女の名前は間桐 桜。凛の実の妹であり、間桐家に養子にだされていた。そして衛宮 士郎の通い妻でもある。
「おはよう、桜。」
士郎が返事をする。
桜は困惑していた。
ーー何で先輩の家に姉さんが?そしてあの外国人の大男と半裸の巨人は………サーヴァント!?この仲睦まじい二人の少女は誰?
外国人の大男はカロンで、半裸の巨人はバーサーカー。仲睦まじい二人の少女はリリルカとイリヤである。
ちなみに朝に弱い凛とカロンは主従揃って寝ぼけている。
「コーヒーでも飲むか。」
「ええ、そうね。」
揃ってコーヒーを堪能する遠坂主従。彼らはすでにリリルカ任せである。
リリルカは一歩前へと出る。
「始めまして、リリはリリルカ・アーデと申します。間桐 桜様ですね?本日はあなた様にリリからお話がございます。」
「お話………ですか?」
「ええ。大切なお話です。二人きりが望ましいのであちらのお部屋へと行きましょう。」
「え、えぇ!?」
ズルズルと桜はリリルカに連れられていく。桜とリリルカは襖の向こうへと消える。
後に残され食卓で朝食を堪能する一堂。
「おっはよーっ!!おねぇちゃん来たよーー!およ!?今日何か人数多くない!?」
◇◇◇
ここは座敷、正座して向かい合うは桜とリリルカ。
「桜様、正直な話し合いを所望致します。」
「正直な………話し合いですか?」
「ええ。単刀直入に行きましょう。まず始めに桜様は魔術師でいらっしゃいますね?」
リリルカは問う。桜は戸惑う。
「なるほど、話しづらいのですね。ならばこちらから情報を開示致しましょう。まずは当方には凛様から情報が入っております。」
「っっ………!」
凛からの情報、それはつまり桜が魔術師であることがばれていることが確定的。
桜は思い人である士郎には知られたくなかった。士郎にばれているのかと、桜は戸惑う。
「さらに情報を開示致しましょう。士郎様は魔術師で、今現在聖杯戦争に巻き込まれています。」
桜の体が震える。士郎は大丈夫なのか?桜は兄にサーヴァントを預けていて戦いの趨勢を知らない。
「そしてさらなる情報の開示です。うまくやれば、今日中に戦いが終結する算段がついています。そしてそれには桜様のご協力が不可欠です。士郎様と凛様の安全のために、ご協力いただけませんでしょうか?」
相変わらずリリルカの交渉はえげつない。
情報を開示すれば利点として士郎と凛の身の安全がより確実に提供できる。それは桜が心より望むもの。則ち弱点。
昨日士郎から桜の情報を得た際に、リリルカは士郎の話から桜の人となりを見抜いていた。そして、リリルカは桜の顔色から自身の推測が当たっていることを確信する。
大魔王リリルカの慧眼は、さほど多くない情報からでも相手の弱点を丸裸にするのである。
しかし本当にえげつないのか?
少なくともリリルカ達は桜に確実に望むものを提供する努力を行っている。
結局は、そこに誠意があるかが問題なのかも知れない。
リリルカと桜の目線は交差する。
桜は思案する。
相手はどの程度信用できるのか?お爺様の干渉は?先輩は好きだけど抜けてるところがある、では目の前にいる若い女性は?兄さんはどうするのか?相手はどの程度情報を得ている?相手の戦力は………先の大男と巨人か?
リリルカは優しく笑う。
「大丈夫ですよ?桜様。リリ達の背後には守護神がついています。何よりも強大な守護神です。桜様も凛様も士郎様も、必ず護られます。」
リリルカは視線を微動だに逸らさない。
そのあまりにも堂々たる姿を見た桜は覚悟を決めるーー
◇◇◇
「士郎!サーヴァントを召喚するわよ!今から召喚の呪文を教えるから覚えなさい!」
「あ、ああ。」
◇◇◇
ここは衛宮邸の一室、向かい合うはカロンとリリルカ。
「カロン様、情報が入りました。桜様のサーヴァントは、現状彼女の兄である慎二様が保有なさっています。現在学校に結界を張っているそうです。」
「続きを。」
「ええ。結界に関しては上手くいけばなんら問題ありません。発動に時間がかかるため、今日中に問題を片付けてしまえばいいのです。ライダーを相手取るのはただの時間の無駄でしかないので、下手に刺激せずに慎二様にはこのままお一人で学校で勝手にハッスルしていただいてライダーはスルーしてしまいましょう。」
「そうだな。」
「後は内々の話で、桜様の心臓には悪疽が宿っているとのことです。」
「それは………。」
カロンは思案する。
カロンにとって桜は情報を開示したからには戦力でなくともすでに仲間内である。何とかして助ける道を模索する。カロンの脳裏に浮かぶは士郎の心臓を再生した凛。
「………確か凛が心臓再生を行ってたはずだ。それはつまり、お前の交渉能力で、優秀な魔術師とやらに渡りをつければどうにかなる可能性が高いということだと思うが………。」
「いくつかの手段はすでに思いついています。」
「そうなのか?」
「ええ。桜様の悪疽は生きているとのことです。決してこちらがどうにかする算段が付いていることを気取られてはなりません。一番確実なのは、ベル様を待って問題解決の鬼才であるHACHIMAN様にお願いしてしまうことですね。彼には連合参入の際の貸しがあります。それは後回しにしてとりあえずは戦いの終結が先です。」
お爺様、知らないうちにレベル15を敵に回す。
「まあそれが確実か。他に情報は?」
「そうですねぇ。戦いに関しては特には。まあライダーが手に入りませんでしたので士郎様の召喚なさる英霊の価値が上がったなくらいにしか。ああそうです。士郎様といえば、戦いとは関係ないところですが、昨日桜様の情報を得るために少しお話をさせていただいた際に、彼の精神の歪みに気づきました。」
「歪み?」
「ええ。一種のトラウマや脅迫概念ですね。」
「どうするんだ?」
「餅は餅屋です。原因はその際に突き止めてありますし、最後まで責任の持てないリリ達が深く関わるべきではありません。さいわいにも彼には藤村様と桜様という家族がいらっしゃいます。心の傷には家族のフォローが一番です。彼女たちが医学の知識を持つ人間と連携して時間をかけて癒して行くのが最もよい方法だと考えます。彼女達には内々にアドバイスとして伝えてあります。後は彼女達がどうしていくのか決めるべきことです。」
「なるほどな。」
「まあこんなところですね。それではリリは凛様の魔力節約のために霧消しますね。次は、円蔵山勢力との交渉で必要になるようでしたらお呼びください。」
「ああ。」
◇◇◇
ここは衛宮邸の縁側。
ここではついに、皆のセイバーちゃんの降臨の儀が行われようとしていた。
「士郎、覚えたわね?召喚するわよ!」
「ああ!」
?何か忘れている気が?
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ………
士郎を中心に魔力が渦を巻く。
巻き上がる砂塵。収束するは魔力。顕現する力の象徴。
「寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲行末………
「ちょ、待っ、先輩、それ、違っ、それ落語!」
「シロウ!何言ってるの!?」
アレ?ああ、そうか。士郎は呪文を勘違いしてる凛に習ったからこんなことになったのか!
桜とイリヤは当然大慌て。
「南無妙法蓮華経、南無阿弥陀仏、テクマク○ヤコンテクマク○ヤコン、ラ○パスラ○パスルルルルルーッ破ぁぁーーッッ!」
士郎は腰を落とし両手を前へと突き出す。
魔力は収束していく。唖然とする桜とイリヤ。
ーードガアアァァァンッッ!!
煙りが上がり砂埃が舞う。
「よくやったわ、士郎!間違いなく最高のカードを引き寄せたわ!」
そろそろ誰かは怒られる気がする………。
本当に、ごめんなさい。
◇◇◇
やがて煙りが晴れる。そこにいたのは金砂のーー
「うん?ここどこだ?何で私はここにいるんだ?」
「アポロン!!」
「「「「誰!?」」」」
まさかのアポロンッッ!アルトリアちゃんまでクビッッ!
まさにやりたい放題!
本編主人公の一人アルトリアちゃんクビッッ………!
さらにアンリミテッドのエミヤもクビで、ヘブンズフィールのメデューサ、登場せずっっ………!!
これが果たしてやりたい放題以外のなんだというのか!?こんなわけのわからないものを誰かはFateだと言い張るのか!?
ーーなぜアポロンが?
カロンはアポロンを見る。リューのTシャツにリューの鉢巻き、そして手にはリューの団扇とサイリウム………
ーーまさか、サイリウムを持っていたからセイバー判定されたとでもいうのか?団扇が盾でサイリウムが剣だと?どういうつもりだ?なぜアポロンなのだ?
「?私はさっきまでこっそりリュー様の後を追っかけていたはずなのだが?」
桜ちゃんのお爺様による不法侵入及びに不法占拠問題にはものすごい雑に解決の目処が立ったのだがまさかのセイバー、アポロン。こんな神材で誰かは一体どうやってギル様を倒すと言うのか?リューはレベル7にも関わらずストーカーに気付かなかったのか?士郎の体内のアヴァロンはどうするのか?リューに再び出番はくるのか?謎が謎を呼び………続く