ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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誰か式ギルガメッシュ

 「全くビックリしたわよ。急に魔力を奪うんだもの。」

 「済まない。緊急だったからさ。」

 

 凛とした佇まい、凛。ただのダジャレ。今回の凛はキャラが元に戻っていた。

 ………前回の凛は何だったのか?そう、ウッカリである!

 

 凛が自分のキャラをウッカリど忘れしたためあのようなことになっていたのである!

 さらに付け加えると拙作はあやふやで、凛のキャラもあやふやなのである!

 ウッカリであやふやなのである!

 

 ………凛のせいにしてごめんなさい。

 

 ◇◇◇

 

 「それでリリルカ、イリヤから得た情報というのは?」

 「まずこの戦いのシステムは円蔵山の地下にあります。円蔵山に巨大な空洞が存在すると。ただし、真上にキャスターとアサシンが陣取っているために、敵の強襲を警戒する必要があります。」

 

 カロンの目的は盤面返し。あまりにも狸。

 大聖杯だって、二百年も稼動したら疲労で壊れるかもしれないだろ?

 

 「なるほど。先にそちらに交渉に向かってみるか。戦力はあるだけあればいい。士郎の件を先に片付けてからだな。」

 「ええ。リリもそれを進言します。次に、イリヤ様は聖杯の器らしいです。」

 「そうなのか!?となると景品を破壊するという手段はありえんな。」

 「ええ。」

 

 戦争の景品を破壊する………それはつまりイリヤを破壊するということになるからだ。

 リリルカは続ける。

 

 「今回の戦争はカロン様がどうやら相当なイレギュラーらしいです。」

 「どういうことだ?」

 「イリヤ様は聖杯の器として造られた人造人間(ホムンクルス)らしいです。どうやら七騎の英霊を取り込むことで聖杯として完成するらしいのですが………」

 「そうか!俺が英霊じゃないのか!」

 「ええ。その通りです。そしてさらに未だに一騎分召喚されていません。」

 「じゃあ新しく召喚しないほうがいいのか?」

 「うーん、しかし現有戦力はカロン様とバーサーカー。イリヤ様の聖杯問題についても解決の目処が立ちつつあります。」

 「それはどういう手段だ?」

 「英霊達の魂は小聖杯たるイリヤ様の器に納められます。しかし当のイリヤ様がこの世界にいらっしゃらなければ、英霊達の魂はそのままイリヤ様をスルーして大聖杯を通り、英霊の座へと還って行きます。」

 「大聖杯?小聖杯?」

 「カロン様はアホなのでそこまで理解する必要はございません。まあつまり、イリヤ様を連れてベル様の魔法で世界(作品)を移動してしまえば問題は解決するということです。今現在はこちらの座標の特定を急いでいます。」

 「なるほど………それで未召喚に関してはどう考える?」

 「難しいですね。結局は英霊の召喚ではなく、帰還が問題です。そしてそもそもカロン様が存在するためどうやっても七騎揃いません。しかしバーサーカーの魂は重い。イリヤ様は英霊が帰還する度に人としての機能を失って行く………。」

 

 リリルカは思案を巡らせる。

 さすがの頭脳チートでもギル様の存在は知らない。

 

 現状はランサー、ライダー、アサシン、バーサーカー、キャスターの五騎。

 そしてバーサーカーの魂は二騎分。ゆえに合計六騎分しか揃わないとリリルカは考えている。

 しかし実際は三騎分のギル様がいらっしゃるために九騎分。

 

 そしてセイバーもしくはアーチャーを士郎が召喚してしまったらリリルカは七騎分だと考える。

 つまり最後に一騎残れば六騎分、自害せよで七騎分。

 実際はギル様がいるために十騎分。

 

 「………難しいですね。皆様の万全な生還を考えれば召喚、万一の全滅を考えればスルー。イリヤ様のお身体のことも考えれば少しでも英霊の脱落の可能性を減らすために戦力の充実よりですかね。英霊が全滅すればイリヤ様は聖杯になってしまいますが、英霊の全滅とはそのままカロン様や凛様の全滅でもあります。それに凛様はおそらく結局は呼び出したがると思います。」

 「なるほど。ところで凛達にもイリヤのこと話すか?凛には大聖杯に向かう理由を何とする?」

 「理由についてはリリがなんとでもごまかします。さいわいこちらの手札には聖杯について最も詳しいイリヤ様がいらっしゃるので、彼女を言いくるめればどうにでもなります。生者のカロン様がいらっしゃることも併せて何か大聖杯に異変が起こっているとでも伝えておけばいいでしょう。イリヤ様の出生に関してはあまりたくさんの人間に知らしめたくはないでしょう………。」

 「それもそうか。………ところで話は変わるが各陣営の情報はどうなっている?」

 「ええ。それももちろんイリヤ様からいただいています。」

 

 リリルカは脳内で情報を纏めてカロンに提出する。

 

 「まず不在なのがセイバーとアーチャー。ランサーは所在不明でライダーは間桐。バーサーカーは今ここにいてアサシンとキャスターは円蔵山です。」

 「ランサーは教会じゃないかと睨んでるぞ?」

 「なるほど。根拠がおありなのですね。しかしもちろんカロン様に言うまでもありませんが、油断は禁物です。とりあえずバーサーカーという札は非常に大きいですね。ならば円蔵山にも対抗できる可能性が高い。円蔵山訪問の際に罠に嵌められてもどうにでもできるとイリヤ様はおっしゃってます。」

 「うーん、なるほど。これで方針は定まったな。士郎は召喚。そして円蔵山のサーヴァントの訪問を行い、場合によっては戦闘。その後に大聖杯の調査という名の細工を行う。リリルカも手伝いをしてくれるか?」

 「ええ。お任せ下さい。」

 「その前に桜との交渉もあるかもしれない。桜と上手く交渉するためには、士郎から桜の情報を得る必要もある。そこもお前任せだ。つくづくリリルカには馬鹿げた量の仕事を押し付けて申し訳なく思ってるよ。」

 

 桜の情報に関していえば、凛よりも士郎が身近であり、さらに凛からの情報は身内の情や願望が絡んで歪んでいる可能性が高いとカロンとリリルカは判断していた。

 リリルカは笑う。

 

 「お任せ下さい。カロン様のお役に立つのがリリの何よりの喜びです。」

 「俺は本当にいい娘を持ったよ。」

 「イリヤ様もいい娘です。是非可愛がって差し上げてください。」

 「ああ。今日はそろそろ遅い時間だし、休むことにするよ。」

 

 ◇◇◇

 

 ーーーーーードゴオオォォォンッッ!!

 

 突如大きな音が鳴り響く。

 

 「庭からだ!」

 

 カロンは声を上げ、全員で衛宮邸の庭へと向かう。

 そこには夜中にも関わらず、塀の上に尊大に腕を組み眩ゆく黄金に輝く一人の男がいる!

 

 カロンは叫ぶ。

 

 「お前は一体何者だ!そしてなぜ不法侵入にも関わらずそんなに腕を組んで偉そうにしていられる!?何の目的だ!?」

 

 黄金の男は酷薄に嗤う。

 

 「貴様、この我を知らんというか?この蒙昧めが!うん?良く考えたら貴様別の世界(作品)の男だったな。ならば知らなくて当然なのか?」

 

 そう、俺達私達のギル様である。

 ギル様は顎に手を当てて考え込む。

 

 「まあよい!一度だけ教えてやろう!仰げよ?我の名はギルガメッシュ!時の果てまで我の庭よ!」

 

 ーーギルガメッシュ!太古の英雄王!

 

 カロンは思案する。なぜカロンが知っているのかは則ち拙作のノリである。

 

 「なるほど。ここもあなたの庭だから、不法侵入ではないとそういうわけなのだな?時の果てまでとかそんなに庭が広かったとしたら、庭掃除とか庭木の剪定とかが大変なのではないか?」

 

 カロンは慎重に言葉を選ぶ。

 

 「庭掃除も庭木の剪定も我ではなく庭師の仕事よ!」

 「そんなに庭師がたくさんいるのか?大金持ちなのか。うらやましい。」

 「ふん。知性を持つ生きとし生けるものすべて我の庭師よ!世のすべての財は我のものよ!」

 「それはうらやましい。俺は地位はあるが金がまるで貯まらないんだ。是非とも金を貯める秘訣を教えてくれないか?」

 「ふむ………それは………って少し待て!我は世間話をしに来たのではない!我が話そうと目論んでいたことから大幅にズレているではないか!言霊、げに恐ろしいスキルよ。思わず貴様のペースに乗せられてしまったわ!」

 「何か話があったのか?」

 「うむ。」

 

 黄金の男は頷くと語りはじめる。

 

 「何、大したことではない。貴様は別の世界から来た英雄だな?我は千里眼で今回の戦いの顛末を見ていた。というよりもむしろ見ようとしていた。そしたらまさかの初日の夜に大詰めだ。このまま行けば明日には大団円ではないか!貴様達はどれだけ生き急いでいると言うのだ!?危なく我の知らないうちに聖杯戦争が終結するところだったではないか!挙げ句の果てには我が現世に留まっている理由であるところのセイバーの未召喚。さすがの我もビックリして慌てて飛び出して来たというわけよ。」

 

 黄金の男はさらに語る。

 

 「このまま行けば我がスルーされたまま元の世界に帰還されるのは明白!それは許さん!どれだけやりたい放題する気なのだ!セイバーもアーチャーも未召喚であるのなら、せめて我を超えて帰還するがいい!それがこのお粗末な聖杯戦争のせめてもの幕切れだ!我は円蔵山の地下にて待とう!」

 

 そう告げると黄金の男は去って行った。

 

 ◇◇◇

 

 俺とリリルカは話し合う。

 

 「カロン様、完全に予定外の敵ですね。あの強大な力、バーサーカーでも抵抗できるか。せめてやはりセイバーの助力は必要です。」

 「まあそうなるな。くそ!あいつがラスボスということか!?」

 「イリヤ様にお聞きしたところ、彼女も知らないサーヴァントとのことです。すべてのクラス

のサーヴァントは明かされていますし、どういうことでしょうか?」

 「わからん。いずれにしろ明日大聖杯の下にたどり着いてあいつを倒す必要があるということか………。」

 「別にあの男をスルーしてしまってベル様の到着を待つというのは?ベル様が到着すれば袋だたきに出来ますよ?」

 「それはあいつがあまりにも可愛そうだろう。これだけカッコつけて出て来たのに延々と待ちぼうけとか。それに大聖杯を壊してしまわないといつまでもマスター達の安全が保証されないだろ?学校の結界が発動してしまうかもしれないし。早く帰らないとリューのご機嫌取りも大変だし。」

 「そうなんですよねぇ。それに敵の宝具が大量殲滅系の可能性もありますし。」

 

 溜息をつくリリルカ。

 

 夜中に全身金ぴかの変質者が現れたと思ったらまさかの太古の英雄王(ギルガメッシュ)。しかもスルーは許されない。

 カロン達は英雄王に勝てるのか?桜の心臓にいらっしゃるお爺様はどうするのか?凛のウッカリは治るのか?セイバーちゃんの出番や如何に?様々な疑問を残して………続く




こんばんわ。変な作者です。
この度、並行して本作品の主人公の闇派閥ルートを書き上げました。
完結させられそうな目処が着きましたので、表で短編として投稿いたします。
本作品とは全く作風が違ったものになりますが、気になる方は是非よろしくお願いします。
本日23時に表で週一程度のペースで投稿いたします。毎週日曜予定です。
十万字前後になることを予定しております。
タイトルは、闇派閥が正義を貫くのは間違っているだろうか、となります。

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