ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
リューは悩んでいた。ひどく悩んでいた。
------新人との距離感が掴めない。
リューは以前から友人が少ないことを気にかけていた。今現在彼女にとって友人といえるのはリリルカだけだと彼女は考えていた。カロン?変人枠だ。友人枠には入れたくない。
------どうにかしないといけない。このままでは新人に示しがつかない。
彼女は良くも悪くも真面目だった。彼女はリリルカに相談することにした。
◇◇◇
「それでリリのところへきたというわけですか。」
「その通りです、リリルカさん。私は一体どうすればいいのでしょうか?」
「リリにもわかりかねます。恥ずかしながらリリも友人と思える方はリュー様以外に存在しません。アストレア様は主神様ですし。あ、でもタケミカヅチ様のところの千草様と命様とは少し仲良くなりました。相手がリリをどうお考えになっているかはわかりませんが………。」
「どうしましょうか?いっそのことカロンにも聞いてみますか?」
「カロン様に聞いたらいつものように明後日の方へ向かってしまうのでは?しかし顔は広いみたいですし………。」
「悩み所ですね。取り合えず聞いてみてから考えることにしましょうか。」
女性二人のなんだか悲しい会話だった。
◇◇◇
「というわけで、カロンはどうすればいいと思いますか?」
「別にどうもこうも、普通にすればいいだろう。俺がいつもお前達に対応してるみたいな感じだ。」
「それがわからないから私たちは恥を忍んで相談をしているのですが………。」
思わずジト目になるリュー。
「じゃあ何が問題なのか問題点をあげてみるか。お前らどう考えているんだ?」
「私は初対面の人間に距離をとってしまうことを自覚しています。」
「お前は初対面でなくとも距離をとるだろう。諦めろ。次。」
「リリは小さいので相手にナメられてしまうのではないでしょうか?」
「リリタウロスに変身しろ。次。」
「ちょっと待って下さい。問題を解決せずに放り投げてるだけじゃないですか!」
「そうです!リリも変身しろだなんてどうやって相手とコミュニケーションとれというんですか?喋れないし第一あの姿は極力見せたくありません。」
「贅沢な奴らだな、じゃあまずはリュー、お前は特訓するか?」
「特訓ですか?」
「お前俺でも触ったら殴って来るだろ。それを我慢する特訓と後は外で他人と話して来ればいい。ナンパでもしてこい。」
「ちょっっ。」
「次にリリルカ。お前が小さいのは仕方がない。サポーター講義でしっかり尊敬を勝ち取ればいい。体は小さくても器はでかいんだってあいつらにしめしてこい。」
「なるほど。それは一理ありますね。」
「待って下さい。何故私とリリルカさんの対応がこんなにも違うのか?私のこともちゃんと考えて下さい。」
「それは愛を囁く言葉か?」
「断じてありえません。それで何故ですか?」
「それは簡単だよ。リリルカは今まで周りに恵まれずに友人がいなかっただけだ。お前はコミュ障だ。」
「ひど過ぎます。あなたは私に何か恨みでもあるんですか?」
「現実を正確に分析しないと的確な対応ができんだろ。それでどうするんだ?特訓するか?」
「………特訓内容はどうするつもりですか?」
「俺がお前に触ってお前が我慢するのと外で他人としゃべったりする。実践あるのみだと思うが?」
「そんなもので大丈夫でしょうか?」
「他に何かあるか?お前もそろそろ脳筋は卒業したがいいぞ?」
「のうきっっ………。謝罪して下さい。」
「そういうのはしっかり考えて自分で案を出してからいうようにするんだな。」
◇◇◇
「あなたまた固くなりましたね。私の攻撃が全然通らない。」
「ダメージは受けてるぞ。凶狼と遊んでいるから固くなったのは否定しないが。ところでお前はいつになったら成長するんだ?もう結構な回数攻撃を喰らっているんだが………。」
「すみません。努力はしているつもりなのですが。」
「やれやれ、長い目で見るしかないか。」
◇◇◇
「やっぱり会話が固いんだよな。話しかける事自体は問題なさそうだが。もうそれでいいんじゃないか?」
「しかし、私は先輩として彼らに見本を見せなければ………。」
「別にそんなに真面目にする必要はないだろう。あいつらだってお前のことを少し頑固で融通の効かないおばさんくらいにしかおもわんだろ。」
「おばっっっ。訂正して下さい!私は若者だ!あなたは失礼過ぎる。」
「でもお前長寿なエルフだろ?」
「やめて下さい。そもそもあなたはアストレアファミリアでそれなりに時を共に過ごしたはずだ。あなただって今より若い私を見たことがあったでしょう。」
「そうだったか?気付いたときにはうるさいおばさんがいるなとしか………。」
「あなたは内心でそんなことを考えていたのですか。手酷く裏切られた気分だ。………もう一回触る訓練をしましょう。」
「おいおい、いくら我慢できるといっても痛みはしばらく残るんだぞ?このくらいで勘弁してくれないのか?」
「私は多大なストレスと屈辱を受けた。この程度で赦すのですからあなたには拒否権はない。」
◇◇◇
特訓が芳しくなかった私は珍しく独りで豊饒の女主人という店で管を巻いた。初見の店で私はヤケクソな心持ちで入店していた。
「なんですか、おばさんって。なんですか、コミュ障って。私だって、私だって、好きでこんな性格をしてるわけじゃあ………。」
「お客さん、どうしたんですか?そんなになるまで飲んで。綺麗な女性が無用心ですよ。」
「店員さん、聞いて下さい。皆が私を馬鹿にするんです。私がババアだって、私がコミュ障だって。私が友達が少ないからって。私だって、私だってぇ……。」
「涙を拭いてください。私はシルといいます。あなたは若くて綺麗ですしあなたと私は今普通におしゃべりしています。今度素面で来ていただいた時に私たちは仲良くお喋りできますよ。私たちはきっといい友人になれるはずです。」
補足として主人公のスキルは
ん?→あれ、もしかしてそうなのか?→もしかしてそうなのかも知れない。→そうだろうな。→そうにちがいない。と段階的に洗脳していくスキルです。当然長く一緒にいる人ほど危険です。本人の意思によっても効力が大きく左右されます。アストレアはこのスキルは主人公に伝えていません。