ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
こんにちは、皆様。リリはリリです。
リリはつい先日リュー様にお手伝いをする約束をしてしまいました。
リュー様のお手伝いをするためには、前もった十分な根回しが必要です。たくさんの方々を説得する必要があります。さて、それでは行ってみましょうか?
◇◇◇
「こんにちは、ガネーシャ様。お久しぶりです。」
「俺が、ガネーシャだっっ!!ああ、良く来たな。何か用か?」
ここはガネーシャファミリアです。まずはカロン様と親交のある民衆の王様からいってみましょうか。
「近々カロン様の結婚式を執り行います。つきましてはガネーシャ様には是非御出席していただきたく存じます。」
「うん?そうなのか?しかし俺は何も聞いてないぞ?この間カロンが遊びに来たが?」
「ええ。本人には話していません。」
「どういうことだ?」
「そのままの意味です。カロン様には内緒で式を行います。」
「ええ!?それは大丈夫なのか?」
「大丈夫です!カロン様はマイペースな男です。このままでしたら現状に満足していつまでもこのままです。ガネーシャ様が今のご生活がお幸せなのでしたらその幸せをカロン様にも味わってもらおうということです。リリを信じてお任せください!」
「む………。しかし………。」
「大丈夫です。最終的に問題ないなら経過は問わないのはカロン様のこれまでの手口です。それが自分に返ってくるだけです。」
「む………。」
◇◇◇
「お久しぶりです、アポロン様。」
「お久しぶりだ、リリルカ様。今日は何の用だ?」
「本日はカロン様の結婚式を執り行う通達に参りました。」
「ま、待て!カロン君の結婚式ということは相手はまさかリュー様ではないのか?」
「ええ、そのとおりです。」
「断じて認められない!リュー様は俺達の希望の光だ!」
「………アポロン様、良くお考えください。この話が通ればどうなるかを。」
「なに!どういうことだ?」
「この話が通ればリュー様は人妻です。アポロン様は人妻という響きに何か思うところはございませんか?」
「なに!?人妻!?人妻だと………!?」
「週刊リューが週刊人妻リューになるのですよ?そのことについてどうお考えですか?」
「人妻………………今から急いで来週の週刊リューのタイトルと記事の差し替えを行わなければな。」
「ご理解していただけたようですね。」
◇◇◇
「ベル様、お久しぶりです。」
「ええ、お久しぶりです、リリさん。」
「本日はカロン様の結婚式を行う通達に参りました。」
「ついにですか!わかりました。是非出席します。」
「つきましてはカロン様にはご内密にお願いします。」
「ええ?なんでですか?」
「カロン様に内密で勝手に式を行うからです。」
「ええ!?大丈夫なんですか?」
「ベル様、よくお考えください。ベル様はヘスティア様とご結婚なされていますね?その時はどうでしたか?」
「どうって………。」
「ベル様がダンジョンから帰ってきたら勝手にヘスティア様とベル様の式を挙げられてましたね?あれの発案者はカロン様です。カロン様がヘスティア様に手伝いを頼まれて行ったものです。ベル様は押しに弱いから勝手に結婚式を挙げてしまえば文句など言えないと。本人が行ったことがそのまま本人に返って行くだけです。何か問題は?」
「………。」
「問題ないようですね?」
説得完了です。
◇◇◇
さて、1番説得が面倒な相手です。
頑張り所ですね。ここは連合のトイレです。
「こんにちは、誰か様。お久しぶりです。」
「お久しぶりです、リリルカ様。何かご用ですか?」
「本日はカロン様の結婚式を通達に参りました。」
「ええ!?待ってください!カロンの結婚式ということは相手は………。」
「ええ。ご想像の通りです。」
「大丈夫なのですか!?そんなことして怒られないのですか!?」
「ここまで好き放題したから今更でしょう?」
「た、確かにそうかもしれないがこれはやり過ぎなのでは?」
「この表をご覧ください。」
「それはなんだい!?」
「拙作の評価です。」
「評価!?」
「今のところ拙作はありがたいことにそれなりの評価をいただいております。これはそれなりに拙作に共感できるところがあるということでもあります。」
「ええ!?」
「大丈夫ですよ、誰か様。いざとなったら謝り倒してしまえばいいんです!」
「ええ!?そんな無茶苦茶な!それで解決するのかい?」
「ええ!大丈夫です。リリにお任せください。御協力いただけますね?」
「え、えぇ?う、うん。」
根回し完了です。思ったより簡単でしたね。
◇◇◇
こんにちは、皆様。リリはリリです。連合の統括役です。
人様の上に立たせていただくのですからこの程度の交渉でしたら朝飯前です。
ここはリリのお部屋で今現在中にはリュー様が控えてらっしゃいます。
「リリルカ様、どうなりましたか?」
リュー様です。様付けしてほしくないんですがね。
「仕込みは上々です。後は明日を待つばかりです。それとリュー様、リリを様付けしないでください。」
「リリルカさんには日頃散々にお世話になっています!」
「それでもです。リリはリュー様のことを頼りになる姉のように思ってるんですよ?立場もリュー様の方が上ですし、リュー様にそう呼ばれてしまったらリリは立つ瀬がありません。」
「しかし私はリリルカさんになんらかのお礼をしないと………そうだ、是非私のお料理を………」
「ストップです、リュー様。そういえばそのことをウッカリ忘れていました。リュー様は今後一切お料理をしないでください!」
「ええ!?なぜですか?」
「なぜもなにもありません!リュー様はご自分のお料理で失神したことをお忘れなのですか!リュー様がお料理なさったらカロン様は手段を選ばずに逃げますよ!別に逃がしても構わない程度の想いなのですか!その程度の想いでリリにここまでさせたのですか!?」
「い、いえ。そうです、私も幸せになるのです!」
「そうです。それでしたら金輪際料理は一切しないでください!」
「………少しだけなら………」
「ダメです!リュー様のお料理は兵器です!絶望を具現化した何かです!不幸を招く呪いの何かです!リュー様がお料理をなさり続けたら幸せはリュー様の下に永遠に来ませんよ!」
「わ、わかりました。」
こんにちは、皆様。リリはリリです。この程度の交渉は朝飯前です。
さすがに毎朝リュー様のお料理を食べさせられるのは地獄ですからね。
これでうまくいくと思いますが………思いたいですが………カロン様の馬鹿げたしぶとさのことを考えると油断はできません。もう一つ決定的な何かが欲しいところです。
「そうですね………リュー様、いっそのこと逆に考えましょうか。」
「逆、ですか?」
「ええ。カロン様はリュー様の料理を恐れています。交渉の基本、利点で釣るです。カロン様がこの話をお認めになるならば、リュー様は二度と料理をしない、そういう交渉です。」
リュー様の料理を二度と食べずに済むという利点でこの話を押し通すのです。
「し、しかし、それでは毎日のお料理は誰がつくるのですか?」
「カロン様は普通に料理できますよ?連合ができる前は料理当番は交代制だったのをお忘れですか?」
「………そういえばそうでした。私はあの男に嫁力で負けているというのか?」
ガックリ落ち込みうなだれるリュー様。
「別に男女どちらが料理を担当しようがそんなものは個人の自由です!それでも御納得いただけないのであれば、やはりここでも逆の発想ですよ、リュー様。カロン様の嫁に行くのではなく、カロン様を嫁にもらうと考えればいいのです!」
「そんな………私は嫁ではなく婿だったというのか………。」
◇◇◇
俺はカロン、一般人カロン。
今日はなぜだか朝から寒気がとまらない。なぜだろう?春だというのに風邪でも引いてしまったんだろうか?
明日から新しい仕事だ。早いが今日はもう休むことにしよう。
仕事初日から体調不良で遅刻とかダメだろう?
明日も何かいいことあるかな?
俺は明日のことを楽しみにして眠りについた。