ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか   作:サントン

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別タイトル、カロン包囲網


長い時間を共にして

 ここはリリルカさんの部屋、私の名前はリュー・リオン。ちょっとだけ強いただの普通のエルフです。

 ちょっとだけではない?そんなもの誤差の範囲です。

 

 私は今日リリルカさんに何としても手伝ってもらうために訪れていました。

 具体的な内容は………恥ずかしいので秘密です。察してください。

 

 「カロンにまた逃げられました。リリルカさん、どうやったら上手くいくでしょうか?」

 

 リリルカさんの部屋で椅子に座り向かい合う私たち、私はどうすればいいのか?

 私は以前から頻繁に深謀遠慮に長ける彼女に知恵を拝借しに来ていました。

 

 「リリは中立だとカロン様に言ってしまいましたが………」

 

 「お願いです!何としても手伝って下さい!何なら今度からリリルカ様と呼んでも構いません!」

 

 私は必死にリリルカさんに頼み込む。

 矜持?誇り?高潔さ?まとめてゴミ箱に突っ込みました。それらが今まで私の役に立ってくれた試しはありません。そんなつまらないものより幸せな私の人生です!なんならついでにステータスもゴミ箱に突っ込みましょうか?

 

 「一つ取っておきの隠し玉がありますが………しかしリリは中立なのですが………。」

 

 「リリルカ様!」

 

 「………やめて下さいリュー様。リリはリリです。仕方ありませんね。カロン様にはリリの入れ知恵だと絶対に言わないでくださいよ?」

 

 リリルカさんから後光が差して見える。………これは私は自費で彼女の銅像をオラリオに建設するべきなのではないでしょうか?

 

 「なんかリュー様がおかしなことを考えているように思えますね。まあ構いませんか。ちなみにこの方法はリュー様にも多少の覚悟がいりますよ?」

 

 私は唾を飲み込む。

 しぶといカロンを倒すその方法とは一体?

 

 「どのようなものなのですか?」

 

 「覚悟はおありですか?」

 

 「もちろんです!」

 

 「ならばお話しましょう。カロン様は頻繁に手段を選ばない邪道や搦め手を行ってきました。邪道には邪道です。それは相手が邪道で向かってきても王道の切り札たるちゃぶ台返しが使えないということです。」

 

 リリルカさんは不敵に黒く嗤う。さすがの貫禄だ。

 なるほど、これが大魔王たるゆえんか。

 

 「それでどのようなものですか?」

 

 私は思わず彼女に詰め寄ってしまう。

 

 「それは………」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 暖かな春、陽気に包まれるオラリオの町並み。

 俺は魔神カロン。ふむ、無理があるな。

 俺は一般人カロン。俺は今日は上機嫌だ。鼻歌を口ずさみオラリオの町並みを歩く俺。今日はきちんとした格好をしている。

 

 オラリオは今日も賑やかだ。

 ………今日はかつての仲間の墓にも寄っていくか。報告することがある。

 花を買い墓参りをする俺、ここに来るといつも寂しくなるな。

 

 今日の俺には向かうところがある。俺は途中でHACHIMANとすれ違う。

 彼はいつものどろりとした目を俺に向ける。

 うん?気のせいかいつも以上に濁っているようにも思える。

 

 「爆発しろクソリア充が!」

 

 ふむ、なんだろう、突然?彼式の挨拶のようなものだろうか?

 

 

 

 ◇◇◇

 

 俺の足取りは軽やかだ。そう、今日は新たな職場である孤児院に初出勤する日なのだ!

 新たな職場は古ぼけた廃教会を改装して使用している。

 

 俺は墓参りでかつての仲間にも報告して職場に向かっていた。

 

 さて、新しい職場ではどのようなことが俺を待っているのだろううな?

 

 俺は教会にたどり着く。俺は教会の扉に手をかける。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「待っていました。」

 

 なにが起こってるんだ!?

 目の前の状況が理解できずに俺は固まる。

 何なんだこれは?どういうことだ?一体なにが起こってるんだ?

 おおお落ち着け、俺。まずは状況の理解だだだ。まずはしんこここきゅうだだ。

 

 まずは目の前にはリュー、花嫁衣装を着ている。リューの結婚式なのか!?初耳だぞ!?

 何故今日ここなのだ!?俺の仕事は一体どこに行ったんだ!?

 周りには椅子に腰掛けるたくさんの人々。それなりの広さの部屋にところ狭しと詰め込まれる人々。ベルにガネーシャにフレイヤにロキに………とにかく俺の知っている限りの人間がいる。モンスターファミリアの連中やHACHIMANまでもいる。あいつさっき道端で会ったばかりのはずだがいつのまに!?

 彼らはキチンと正装をしている。

 

 ………俺は今日は新たな職場に来ているはずなのだが?ということはまさか彼らが孤児ということ………はありえんな。

 

 「時間通りですね。」

 

 リューが俺に微笑む。とても綺麗だ………じゃなくて!

 ………思いつくのは一つしかない。しかしまさか………。

 

 「リュー、これは一体何事だ!?」

 

 「何を言ってるんですか?今日は私たちの結婚式ではないですか?」

 

 マジかよ………マジで言ってるのか?

 そんな俺に構わず続けるリュー。

 

 「さあ、こちらに来てください。」

 

 「ま、待てよ。どういうことなんだ!?」

 

 「どうもこうもありませんよ?今日は私たちの結婚式です。」

 

 「………俺は聞いた覚えがないぞ?」

 

 「前回の連合の会議で決まってましたよ?会議に出席しないからこういうことになるんです。」

 

 「嘘つけ!会議の決定事項が俺達の結婚式とかどういうことだよ!?」

 

 大団長を辞任しても最高幹部に俺の席は残っている。

 ………俺は外せと言ったのだがな?

 

 そしてそこへ割り込むリリルカ。

 

 「確かに会議で決まっていました。リュー様の言う通りです。リリが証人です。今日はリリが仲人を務めさせていただきます。」

 

 「リリルカ!お前リューの手伝いしたな!中立だって言ってただろう!」

 

 「はて、何のことでしょうか?リリにはわかりません。証拠を見せてください。」

 

 すっとぼけるリリルカ。

 ならばずらっと大量に座っているこの参列者は何なんだ!誰が呼んだんだ!白々しい。

 前へと出るリュー。

 

 「諦めて下さい、参列者は皆さん交渉と根回しで私の味方です。あなたにもう逃げ道はありません。」

 

 「なんでだよ!?なんでここまでするんだ!?」

 

 余裕の笑みを浮かべるリュー、見苦しい俺。

 

 「何をわかりきったことを言ってるんですか?私達は長く共にやってきたファミリアです。いまさら本当の家族になったところでたいして変わりはないでしょう?」

 

 「大ありだよ!マジかよ………。マジでいってるのか!?」

 

 目茶苦茶言ってる………。この拙作でも一、ニを争う超理論だ。

 ………指輪理論と合わせてワンツーフィニッシュなのだから結局はリューが1番の超理論の使い手だったな………。

 

 「マジです。あなたがそう望むのでしたら私はもう料理はしませんし他にもだいたいの要求は呑む覚悟があります。その代わりにこの話は通してもらいましょう。」

 

 息を呑む俺、見守る参列者。目の前には力を持たない俺相手に覚悟を決めた超絶強者。マジかよ………。

 俺はどうすればいいんだ?諦めるしかないのか?

 

 「………なあ、聞かせてくれ。お前は俺が好きだから結婚するのか?」

 

 悪足掻く俺。会話から何とか切り抜ける道を見つけられないだろうか?

 

 「いままであなたと長く時間を共にしたという事実が私にとって喜びでしかないのだから、私は心の底からあなたを愛しています。私にはその確信があります。」

 

 「そうか………。」

 

 これは無理だな。全力で詰めに来ている。これをひっくり返すには俺はいままで手段を選ばな過ぎた。手段を選ばない俺がリュー達のやり方を汚いと言っても通らないだろう。

 駄々をこねても通らないだろうし真実皆リューの味方なのだろう。形勢は甚だ不利だ。多勢に無勢すぎる。

 

 そこへリリルカのとどめの指示が飛ぶ。

 

 「今です、リュー様!あのしぶとい馬鹿(カロン様)はもはや瀕死です!確実に引導を渡してやって下さい!」

 

 「もちろんです!リリルカさん!さあカロン、この大勢の前でまさか私に恥をかかせたりしませんよね!?」

 

 慈悲はない、か。詰んでしまったか。

 上を見上げると荘厳なステンドグラス。モチーフは美しい聖母。改装されたこの教会は確かに式を挙げるには格好の場所だな。

 

 そうか、だから孤児院の場所がこの教会なのか。だからリリルカは以前俺に新しい仕事として孤児院の院長の方を奨めたのか。リリルカが万一の切り札として取っておいたのか。やられた。もう逃げ道はないな。

 

 どうせだったら墓参りの時についでに結婚報告もすればよかったな………。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 俺はカロン、既婚者カロン。なんかころころ俺の肩書が変わるな。

 ちょうど今回で百話だ。句切がいいしおそらくこれでもう話はおしまいなのだろう。

 あれ?やっぱり百三話だった。三話もオーバーしてしまったな。まあ細かいことはいいか。

 ぶっちゃけ予定より三話増えてしまいました。

 ………もしも編の三話を除いて百話ということでダメだろうか?

 

 ………しかし誰かは案外気分屋でこれは根本的に自己満足SSだ。誰かは書いてみてとても楽しかったと言っている。まあでなければここまで続かんだろうしな。

 とりあえず一つ話を完結させることが目的だったためのチラ裏投稿らしい。評価や感想が付かなくてモチベーションを落としてエタらせることを嫌ったという理由らしい。………チラ裏は素晴らしいぞ?

 本当はもっと早く切り上げるつもりだったが、途中からどんどん楽しくなってしまったらしい。その結果の三十万字超だそうだ。

 

 

 誰かはここまで付き合っていただいた皆様にとても感謝しています、と言っているそうだ。

 

 もしかしたら勘違いさせてしまったかもしれないから念のために追記しておくと評価がついた記念編というのは実は嘘らしい。いつだって書きたいから書いていたらしい。書くための理由が欲しかったそうだ。

 嘘ついて本当にごめんなさい。誠に反省しています。

 

 さすがにもうこれ以上の話はないと思うが………思いたいが。またいつかもしかしたらパッションとか胡散臭いことを言って書きたくなるかもしれない。………新婚生活編とか書き出したらさすがの俺でも怒るぞ?

 ………それにこれ以上チラ裏を不法占拠するつもりか?まさか新世界(チラ裏)の神になるとか言い出さんだろうな!?Lに逮捕されるぞ!?

 これ以上は思い付かない可能性が極めて高いが………しかしもうこれ以上超展開を駆使するのはやめてほしい。心臓に悪い。

 

 本当に………ウキウキして新しい職場に行ったら俺の結婚式だったとかどういうことだよ!?




「やったな!リリルカ!お揃いだ。ついにオラリオにお前の銅像も立ったな!」

「やめて下さい!しかもなんでちびのリリの銅像が大男のカロン様の銅像よりも圧倒的に大きいのですか!?」

HACHIMAN
「それは」

アステリオス
「俺達も」

ベート
「金を出したからだ!」

ミーシェ
「あたしは全財産をはたきました。」
                        今度こそ終わりだといいな

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