ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
思い立ったが吉日紹介
連合・・・主人公達が立ち上げた組織。現大団長はベル・クラネルで副団長はアスフィ・アル・アンドロメダ。仲間を護ることを最上の目的としている。様々な専門技能を持つ存在が密接に協力することによって、オラリオに多大な貢献をしている。初めは小さな組織だったが、眷属を護るサポーター部隊というウリによって、力を持たないが眷属を可愛がっている神々がたくさん参入したために瞬く間に巨大な存在となった。弱者でも力を合わせれば何者かになれるという教訓なのだろうか?なのだとしたらこんな拙作で教訓を伝えようとした作者はおこがましいを通り越している気がする。作者には是非、恥という言葉を辞書で引いて調べてみてほしい。
誰か・・・?一体誰なんだ!?
◆◆◆
「フレイヤ様がお待ちだ。」
◇◇◇
「久しぶりね。ステータスを消されたと聞いていたけれど元気そうじゃない。」
「ああ、体には別状はないよ。」
ここはバベルの塔最上階、テーブルでお茶を出される俺。向かい合うはフレイヤ。
部屋の入口に立ち警護する猛者。
俺は今日久々にフレイヤに会いに来ていた。
彼らは俺達の同盟者で、定期的に会合を行う必要がある。
しかしそれはリリルカやミーシェの仕事で、俺は今日は個人的に会いに来ていた。恩神にいつまでも顔を見せないのは不義理だろ?
「………あなたまたさらに魂の色が美しくなっているわね。」
「そうなのか?」
フレイヤはいつものように俺を物欲しそうに見ている。
別に魂の色などどうでも構わないのだが?
「うちのファミリアに………」
「行かないぞ?」
睨み合う俺とフレイヤ、いつものやり取り。いくら恩神でも聞けない頼みはある。
なんだか悔しそうなフレイヤ。最近はフレイヤよりイシュタルの方が落ち着いている気がするな?
「………はぁ。わかってるわよ。わかってはいるのよ。あなたが来ないことくらい。」
「今の俺はステータスがないから魅了がきくぞ?」
どうせばれてるだろうから言うけどなぜ魅了しないんだろう?
フレイヤはとても悔しそう。
「………あなたの魂はどうしようもなく美しいわ。人の持つあらゆる感情がない交ぜになった灰色。人と関わることで醸される様々な矛盾を内包した色。あなたは神聖な人間であるにも関わらず邪悪な人間。人の持つ多面性の具現の色。どこも同じ灰色のように見えても見る方の気分次第で万華鏡のように表情を変える無類の色。他人と関わることで培われる色だから無理に私のところに置いても美しさが損なわれるだけだわ。あなたは私にとって決して手に入らない水面に写った朧月なの。」
「そうなのか?」
フレイヤはドレスの裾を噛んでいる。そんなに悔しいのか?
「ええ。」
「あげれるものだったらあげたいがさすがに魂はなぁ。」
魂が抜かれたらどうなるんだ?
「………はぁ。こんなに美しいんだったらさっさと引き抜いておくべきだったわ。」
「俺にはその美しさとやらはわからんぞ?」
「まあそうでしょうね。」
フレイヤは神酒を飲んでいる。神連中はだいたい好物だ。
………ソーマはつくづく自分の能力の使い道を間違えていたんだな。神連中に神酒をあげればこんなに喜んでくれるのに。そうすれば他のファミリアから自分の眷属に便宜が図ってもらえたはずなのに。
フレイヤは続けて話す。
「私は美の女神よ。美の女神が嫉妬に狂いそうになるほどの美しさと言ったらわかるかしら?」
「さあ?」
「…………まああなただしね。」
テーブルに突っ伏して俺を睨むフレイヤ。そんなことを言われてもなぁ。
テーブルでごろごろするフレイヤ。………酔ってるのか?そんなキャラだったか?
「はぁ。」
俺を見て何か少し考えるフレイヤ、どうしたんだ?
「まああなただしね。別にいいかしら。細かいことをいつまでも根に持つ人間でもなさそうだし。本当のことを教えとこうかしら?」
「本当のこと?」
何か嘘ついてたのか?
「最初の同盟のことよ。あなたは以前私は木っ端と会ったりはしないと言ったわね。そのとおりよ。私は最初あなたと会う意味も同盟を結ぶ意味もなかったわ。」
「確かにそうだな。」
「あなたに興味はなかったわ。以前見たあなたのところの副団長の魂が少しだけ綺麗だったからあなたの面会を許したわ。あなたは死のうが生きようがどちらでも構わなかった。あなた一人なら会うこともなかった。」
「………そうか。」
思うところがないわけではないが納得できる理由だ。
「あなたのことはどうでもよかったのよ。でも実際に面会して驚いたわ。魂の色が変わっていた。」
………魂の色とはそんなにころころ変わるものなのか?
「美しかったわ。とても。あなたに興味を持って動向を追いかけた。そうしたら驚いたわ。あなたの魂は変幻自在。頻繁に変化する黒白の濃淡。私は衝撃を受けたわ。」
「どういうことだ?」
「あなたの魂は私にとっては初めて出会ったもの。頻繁に変化するその魂は私にはこう言っているように思えたわ。自分の魂の価値は自分で決める、と。私は私が付けたあなたの魂の価値が無意味だと真正面から言われている気がして驚いたの。そしてその気高いありようすら美しい。」
「それで?」
「あなたの魂は会う度により美しくなっているように私には思えたわ。私は夢中になって追いかけた。あなたの魂はあなたが思うままに行動しているときが何よりも美しかったわ。私はあなたが欲しかったけど無理矢理手元に置いてもくすんでしまうだけ。無価値だと思っていたものが価値の高いものだった上に、それそのものからお前には見る目がなくお前が決めた価値は無意味だと言われたのよ。私のプライドはボロボロよ。悔しかったわ。………ねぇ、特別に寵愛するから私のところに………」
「行かない。」
「………そうよね。」
なおもテーブルでごろごろするフレイヤ、くしゃくしゃになるテーブルクロス。
………なんか入口に立つ猛者が顔を赤くしてそわそわしてる気がする。まあ確かにフレイヤ少しかわいいけどさ。猛者は自分のキャラを考えてほしい。
「………リリルカ様に根回しすればもらえるのかしら?」
「………まさかお前までリリルカを様付けしているのか?」
「あなたがもらえるのならそれくらいはしても構わないわ。」
………まさかリリルカ俺を売ったりしないよな?確かにしょっちゅう迷惑かけているけどさ?
「………ッリリルカは俺の味方だ。」
「なんで少しつっかえたのかしら?」
ニヤニヤするフレイヤ、少し焦る俺、顔を赤くしてソワソワする猛者。猛者はだからキャラを考えろと!
「………俺を無理に手元においても美しさが損なわれるだけだと言ってなかったか?」
「あら、正当な交渉ならあなたは嫌でも納得するでしょう?」
これはまずい。俺に不利だ。………逃げるか?
「………俺はそろそろ用事がある。」
「嘘おっしゃい。どうせ今逃げてもリリルカ様のところに行くだけよ?」
「………リリルカは俺を売ったりしない!」
「あら?リリルカ様を魅了してしまえばいいんじゃないかしら?」
リリルカの元へ行く気か?リリルカには手出しはさせない。
俺は覚悟を決める。しかし笑うフレイヤ。
「もちろん冗談よ。私がこんなことを言ったのはあなたの魂の色が見たかっただけ。あなたの美しい魂はその自在な色の中でも特に家族や仲間を護る時に一際美しい輝きを放つわ。今あなたの魂はリリルカ様を護ろうとしてとても強く美しい灰色に輝いたわ。はぁ、つくづく惜しいわ。」
ため息をつくフレイヤ。あることが気になる俺、皆も気にならないか?
「………フレイヤ、お前自然にリリルカを様付けしているがまさかお前まで実は普段からリリルカを様付けしていたりするのか?」