うずまきウシオ転生伝   作:zaregoto

6 / 20
端篇
EX1 うずまきウシオとうちはオビト


 火影の顔岩のすぐそばにある演習場。鳥の囀りが聞こえる。そんな中、森の一部で爆煙が起こった。黄色の髪の毛をした忍が、火遁の術に襲われていたのだ。

 

 忍は、それをかわすために一回転して後方に飛んだ。その時、腰の辺りにつけている二つの鈴が音を鳴らす。忍は、警戒を怠らず先ほど自分がいた場所を睨んでいた。

 

「・・・!!」

 

 その時、その方向からまたもや火遁の術が飛んできたのである。忍は一度驚きの表情をしたが、冷静にその術をかわしていく。火花が飛び散るが、それもかわしていく。その最中、その飛んできた方向へと手裏剣を投げつけた。

 

 手裏剣は森の奥の闇へと消える。闇雲に投げたわけではない。忍は標的を確実に認識していた。標的とされている人物は、いきなり飛んできた手裏剣に驚き、自分が乗っていた木の枝から落っこちてしまった。 

 

「う、うわぁあ!」

 

 そのまま地面に尻餅をついてしまう。何が起こっているのかと、目線をあげると目の前の木の枝に立っている忍を見つけた。その忍は腰に手を当てたまま口を開いた。

 

「ここまでだね、オビト」

 

「くっそぉぉ・・・」

 

 しかし、悔しがるオビトと呼ばれた少年は、ニヤリと笑った。その時、後方に待機していた仲間が、トラップの線を、クナイで切断した。すると、大きな丸太がどこからか現れたのである。

 

「ハッ・・・!!」

 

 忍が気付いたときには、すでにオビトが煙だまを自身のいる場所に投げつけたあとだった。そのすぐあとに、忍が立っている場所まで大きな丸太が飛んできていた。忍は、それが届く前に後方へと飛んだ。

 

 いい作戦だよ。

 

 忍はそう思いながら後方にある木に、張り付いた。

 

 すでにそのときには、オビトとその仲間は合流しており、仲間の方は忍の場所をすでに分かっているようだった。

 

「オビト、二時の方向」

 

「おう!」

 

 仲間にそう言われたオビトは、素早く印組をする。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

 豪火球の術が迫る。しかし忍は、冷静に自らが持つ特注のクナイを、投げた。そしてそのすぐあと、大きな爆発が起きたのである。

 

「・・・・・・」

 

 オビトともう一人の忍は、その方向を眺める。そして、二人で顔を見合わせた。

 

「や、やった。・・・ん!?」

 

 しかし、二人の背後から聞いたことのある鈴の音が響いた。二人はすぐに後ろを振り向く。

 

「うん。もう少しだったね」

 

 そこには、先ほど術をくらったはずの忍が立っていたのである。

 

「そ、そんな。先生いつの間に・・・」

 

 二人は驚きの表情を浮かべ、肩を落とした。

 

「ちぇっ、また失敗かよ・・・」

 

 オビトは落胆の表情を浮かべながらそう言った。

 

 成長したね、二人とも。それに、チームワークをよく分かっている。

 

 この二人、そしているはずのもう一人の上司であり、その班の隊長でもある波風ミナトそう思った。

 

「さて、後は・・・。ん?」

 

 カキンッ!

 

 突然飛んできた手裏剣を、クナイで弾いた。

 

 このタイミングで・・・。

 

「カ、カカシ!」

 

 オビトたちは二人でそう言った。手裏剣の飛んできた方向から、伏兵が現れたのだ。ミナトは現れた忍の攻撃を、クナイで受ける。そして、忍の背中を土台にして1回転しながら距離をとった。

 

「先生、今日こそ勝たせてもらいます」

 

 このタイミングで姿を現したということは、最初の二人がやられるのを待っていたということか?作戦?

 

「ここまで姿を隠していたのは、作戦のひとつかい?」

 

「いえ、先生相手に、二人を守りながら戦うのはキツいんで!」

 

 だから二人がやられるのを待っていたか。

 

 刀とクナイで鍔競り合う。それぞれの目は、それぞれの目を一点に見ていた。その時、カカシは起爆札のついたクナイを投げた。それは後方の木へと突き刺さり、爆発する。ミナトは距離を取りながらそれをかわした。

 

「・・・な?!」

 

 かわして、地面に着地しようとしたが、地面には複数の起爆札が張り巡らされていた。

 

「喝!」

 

 カカシはその起爆札を爆発させる。しかしミナトは自身のマーキングされたクナイで、木の太い枝へと飛んだ。

 

「・・・・・・」

 

 爆煙が残る地面を眺めながら、次にどのような手で来るかを探っていると複数の手裏剣が飛んできた。ミナトは、それを冷静に弾き返す。カキンカキンカキンと、一つ一つを的確に。しかしそのせいか、背後に忍び寄る存在には気づけなかった。その対象は、手裏剣を投げているはずだからだ。

 

 カカシはミナトの背後へと回り、そのまま蹴りを繰り出した。

 

「何っ?!」

 

 ミナトは腕でその攻撃を受ける。

 

 それを気にもせず、カカシはすぐに次の攻撃を放った。クナイでミナトの右腕に傷をつけた。

 

 それを見逃すはずもなく、すぐに回し蹴りをミナトの顔辺りへと打つカカシ。その攻撃を躱そうと、ミナトは体を後ろへそらした。カカシはそれを見逃すことはなく、2つある鈴を奪おうとした。が。

 

「うわっ・・・!?」

 

 叶うことはなく、躱したミナトはすぐに攻撃に転じた。カカシは後ろへと飛ぶことで、その攻撃から逃れた。

 

「やるね。けどそれじゃ俺に勝てないよ?」

 

「まだまだ!」

 

 ポフンッ!!

 

 煙とともに消えてしまったカカシ。ミナトは驚いた表情を浮かべながら、口を開いた。

 

「影分身?!」

 

 そして、その一部始終をミナトの頭上にある木の上から、本物のカカシが伺っていた。

 

 カカシは、その場で印組をする。

 

「未完成だが、これで!」

 

 丑、卯、申。3つの印を素早く組み、右手に雷遁のチャクラを纏わせる。

 

 チッチッチッチ。まるで鳥が鳴くようなそれを眺め、覚悟を決めた。

 

「決める!」

 

「言ったろ?俺に勝てないって」

 

「えっ・・・」

 

 突如、背後に人の気配を感じた。始めに視線を、次に首を回し、次の行動に移そうとしたが、クナイを首筋に当てられていたため、それは叶わなかった。

 

「カカシ、君の負けだよ」

 

 ミナトが背後からクナイをカカシの首筋に当てていたのだ。それを確認したカカシは、徐々に雷遁のチャクラを弱めていった。

 

「そんな・・・、なんて速さなんだ・・・。・・・はッ?!」

 

 カカシはこれまでの行動を思い返し、この状況に至ってしまった要因に気付いた。

 

 始めの攻撃である。その攻撃をいなされたあの時、ミナトはカカシの背中に、飛雷神のマーキングを施していたのだった。

 

「あの時・・・くッ!!」

 

 要因に気づけたことで、より一層の悔しさがこみ上げてくる。カカシは歯を食いしばり、眉をひそめた。

 

 ミナトは首筋のクナイを外し、その場から立ち上がる。

 

 実力はすでに上忍クラス。アレを仕掛けていなかったら勝負は分からなかった。だが、今の君は・・・・・・。

 

 手を握りしめ、悔しがるカカシを見下ろしながらミナトは少しだけ悲しそうな表情で、そう思っていた。

 

「クソッ・・・。もう少し、だったのに」

 

「もう少し、か」

 

 風がそよぎ、ミナトの腰元にある2つの鈴が音を鳴らす。ミナトは遠くを見つめながら、小さくつぶやいた。

 

--------------------

 

「3人とも、よく動けていたね。それにカカシ、よく当てたね」

 

 ミナトたちは修行を終え、今までの行動を評していた。ミナトは自分の右腕を見ながら、カカシにそう伝えた。

 

「うんうん!先生相手にすごいよ、カカシ!」

 

 同じ班員であるカカシの功績を、リンは自分の事のように喜んでいた。

 

「たった一撃でしょ・・・。褒められるようなことでもないよ」

 

 カカシは先程のこともあってか、少しだけ暗い表情だ。

 

 その二人の後ろで、オビトが苛ついた顔でそれを見ていた。

 

「お、俺だってーー!!」

 

 オビトがそう叫んだや否や、頭に衝撃が落ちた。

 

「うっ!」

 

 少しだけ呻くオビト。

 

「ナイスタイミング、ってとこ?」

 

「母さん、そんなことしたらお弁当崩れちゃうよ」

 

 現在この場にいる四人以外の人間の声が、オビトの耳に入ってきた。

 

 オビトは怪訝そうな表情で、恐る恐るその声の方を向いた。

 

「あぁっ!」

 

「クシナさん!それに、ウシオくん!」

 

 ミナトの家族である、ランチボックスを持ったクシナとウシオがいたのである。

 

 その二人の姿を見つけると、リンはすぐに反応し口を開いた。そして小走りでクシナの方へと寄っていった。

 

「みんな頑張ってる?」

 

 クシナがそう言うと、ミナトは近づきながら言った。

 

「あぁ!丁度休憩に入ろうと思っていたところだよ」

 

「よかった」

 

 クシナはオビトの頭からランチボックスを離した。

 

「はい、お昼。ご注文のクシナスペシャルね!」

 

 そう言って、そばにいたリンにそのランチボックスを渡した。

 

「やった!私、クシナさんのご飯だーいすきっ!」

 

 笑顔でそう言うリンを一瞬真顔で見たクシナだったが、すぐに表情が変わった。

 

「あーーーん!可愛いやつ可愛いやつ!リンはホントに良い子!!」

 

 クシナはリンを抱き寄せ、頬ずりしながら、満面の笑みでそう言った。リンは頬を赤らめながら受ける。

 

「けっ」

 

 オビトはそれを見ながらあからさまにそう言った。クシナはそれを見逃さず、すぐに反応する。

 

「あぁん?お弁当を持ってきてあげたクシナ様に対して、ずーいぶんな態度じゃないの?」

 

 睨み寄りながら言うクシナ。オビトもすぐに反論するが。

 

「別に頼んでねーよ!腹も減ってねーし!!」

 

 グゥゥゥウゥ。

 

 体は正直で、態度とは裏腹に、オビトの腹部は悲鳴をあげた。本当にナイスタイミングだ。

 

「うぅ」

 

 バツの悪そうな顔のオビト。

 

「はぁ・・・。強がるのもいいけど、取り敢えずご飯食べなさい。腹が減っては戦は出来ぬ、でしょ?」

 

 ため息を付きながら、そう言うクシナだったがオビトはまだやり合う気でいるようだった。

 

 見かねたウシオが口を開く。

 

「兄ちゃんがいらないなら、俺が食べちゃうぞー。あ、でもそーか。次の修行でも腹が減ってたとかで、また言い訳するつもりだろー?」

 

「な、何をぅ?!てめぇウシオ!どーいう意味だコノヤロー!」

 

 オビトはクシナに向けそうだった敵意をウシオへと向けて、ランチボックスの方へと走っていった。

 

「どーいう意味もないでしょ。ウシオの言うとおりだよ」

 

「てめぇカカシまで!いよーし!飯食い終わったら、かかってこいお前ら!二人まとめて相手してやる」

 

「だってよウシオ。すぐにオビトを片付けて、二人で組手でもしようか?久しぶりにウシオとやりたいな」

 

「そうですねカカシさん。僕も少しは強くなりましたよ!この前だって父さんに勝てそうだったんですから」

 

 オビトを無視しつつ、お弁当を頬張ろうとする二人。

 

「てめぇら!いい加減にしやがれ!今からでもいいんだぞ!」

 

 その時、オビトの後ろに忍び寄る影が。それが見えている他4人は、少しだけ落胆の表情を浮かべた。

 

「ふんっ!」

 

 ゴツンッ!

 

 忍び寄る影、クシナがオビトの頭にゲンコツを食らわせたのである。オビトは、苦悶の表情とともに、悲鳴を漏らした。

 

「くぁぁぁ!!」

 

「まったく!自分より下の子の挑発に乗るんじゃないの!だからそういう所が、ガキなんだってばね!」

 

 頭を抑え、少しだけ涙目になりながらもオビトは反論する。

 

「出たよ出た出た!こういうことがあるとすぐに拳を出す!だから嫌なんだよ!この、暴力女!」

 

「あぁん?誰が暴力女だ!」

 

 その二人のやり取りを呆れながら見る4人。

 

「また始まった」

 

 リンがそうつぶやく。見かねて、ミナトも口を開いた。

 

「もう食べてよっか」

 

 呆れつつも、お弁当を頬張る4人。ウシオもそんな二人を見て口を開いた。

 

「オビト兄ちゃんも兄ちゃんだけど、母さんも母さんだよ。まったく、似たもの同士・・・」

 

「あ、ウシオ?やめといた方が」

 

「えっ?」

 

 大抵こういう時は、喧嘩に集中し、周りのことなんか気にならなくなるのだが、クシナは違う。逆に、神経が尖る。故に、このつぶやきが聞こえていないはずもなく。

 

「ウシオぉ?なんか言った?」

 

「いえ!何でもありませんっ!お母さま!」

 

 鬼のような形相をコチラに向けるクシナに、敬礼をしながら訂正するウシオ。なら良いとでも言うように、クシナは笑顔で反応し、オビトの方に向き直った。

 

「ダメだよウシオ!こういうときは取り敢えず、下を向いてやり過ごさなきゃ。あとがどうなるか」

 

 それを見たミナトが苦笑いを浮かべながら、小声でウシオに耳打ちするが。

 

「アーナーター?何か言った??」

 

「いえ!何でもありません!クシナさま!」

 

 まぁ、要するに、似たもの家族というわけだ。

 

--------------------

 

「兄ちゃん、手裏剣の投げ方少しだけ傾けた方がいいんじゃないか?」

 

「ん?あぁ、なるほど。こういうことか」

 

「そうそう」

 

 4人での修行を終え、オビトとリン、そしてウシオとクシナ以外が帰宅していた。

 

 すでに日も傾き始めている。その中でオビトとウシオは二人で技の探求に勤しんでいた。リンとクシナはそれを少し遠くから見つめる。

 

 ミナトとカカシは三代目に呼ばれていった。何かあったのだろう。と、リンは考えていた。

 

「もう夕方ね」

 

「そうですね」

 

 クシナが空になったランチボックスを抱えながら言い、リンがそれに反応した。

 

「リンは大丈夫なの?親御さんは・・・」

 

「私はまだ大丈夫です。今日だって任務が早く終わってなかったら、まだ帰れてないですから」

 

「まぁ、そうね」

 

 先程まで行われていた修行は、里外任務が予想より早く終わってしまったため、急遽行われたものだったのだ。

 

「それにしても、仲がいいわねぇ」

 

「ええ」

 

 優しい物腰で、二人を見つめながら言うクシナ。そして笑顔でそれに応えるリン。

 

「ミナトの班に、みんながいて、本当に良かったと思うの」

 

「え?急にどうしたんですか?」

 

 徐ろにそう言ったクシナに、リンは少しだけ驚きながら聞いた。

 

「遠くを走るカカシ。ウシオには手の届かない場所にあの子はいる。そうやって、未来を切り開いてくれる」

 

 瞳を閉じながら言うクシナ。そして続ける。

 

「後ろを歩くリンは、ウシオの背中を押しながら、未来を歩かせてあげて。もちろんリンが劣っているとかそういうんじゃなくて、サポートというか」

 

 リンの頭を撫でながら言う。

 

「オビトは、アイツは、ウシオの隣で一緒になって走ってくれる。合わせてるんじゃなくて、競い合いながら。でも3人ともウシオの側にもいてくれる。そういう、優しさがある」

 

 リンから手を離し、目を開いて前方にいる二人を見つめた。

 

「もしウシオに兄弟がいたら、こんな感じなのかなってね。そう思ったの。だから、本当に安心できる。だから、良かったなぁって、ね」

 

 同じように、前方の二人を見ながらリンも言う。

 

「クシナさん。ウシオくんは、私達にとって、未来なんです。だからこそってわけじゃないけど、あの子からは未来を感じるんです。あの子はオビトとカカシの強さを持ってるから」

 

「リンの強さもね・・・。でも、そうね。未来、かぁ」

 

 二人から目線を外し、赤みがかった空を見上げてクシナは言った。

 

「私達にとっては、あなた達3人も未来よ。まだ戦争中だけど、いつかきっと終わる。その時先頭を歩いてるのは、きっとあなた達だから。だから、そのために頑張るわけよ、私も、ミナトも。だから、良かったなぁってね」

 

「クシナさん・・・」

 

「だから、絶対、死んじゃだめよ。これは、約束。だめだと思ったら逃げなさい。逃げる勇気を持ちなさい。生きる勇気を失わないで。死んじゃったら元も子もないから、ね」

 

 空から、瞳を落とし、そう言うクシナの顔は少しだけ寂しげだった。

 

--------------------

 

「だはぁっ!だめだー!」

 

 そう口から吐き出し、ウシオはその場に大の字になって寝転んだ。

 

「あー?もう音を上げるのかよ、だらしねぇなぁ」

 

 手裏剣のコントロールは、指先の繊細さが重要だった。カカシなんかはすごく上手いが、俺も、隣で今音を上げたウシオも、まぁ苦手だった。

 

「だって、飛んでる手裏剣に、別の手裏剣当てるなんて芸当、できるわけ無いだろ」

 

「まあな。だけど安心しろ。この俺の写輪眼が開眼すれば、そんなこと容易い!」

  

 オビトはサムアップのポーズから親指を自分の目に当てながら言った。

 

「ずーっとそれ言ってるじゃんオビト兄ちゃん。いつになったら開眼するのさ」

 

「いつか必ず開眼する。そして、ものスゲー忍になって、そして、俺はうちはで初めての火影になる!」

 

 そう言うオビトを細めになりながら見つめるウシオ。それに気付いたオビトが少しだけ恥ずかしそうな表情で言った。

 

「あ、あんだよ」

 

「だってさー」

 

「あ?」

 

 ウシオは立ち上がって宣言した。

 

「俺が火影になるんだから、兄ちゃんはだめだよ!」

 

「あぁ?!火影になるのは俺だぞ!」

 

「はぁ?俺だね、俺がなるね。俺は伸びしろしかないもん。火影になって、世界を変えてやるんだ」

 

「なんだと?!」

 

「なんだよー!」

 

 言い争いが始まる。いつものことだ。

 

「だったら勝負だな!どっちが早く火影になるか!」

 

「そうだね。勝負。わかった!」

 

 二人とも、未来を歩く。同じスピードで、ゆっくりだがそれでも大丈夫なはずだ。この二人を阻める者なんて誰もいない。

 

「兄ちゃん!いいこと思いついた」

 

「あ?なんだよ」

 

 演習場にある自分の背ほどある丸太。先程まであそこを目指して手裏剣を投げていた。ウシオはそこを目指して、指差していた。

 

「あそこに俺たちの目標を彫ろう!」

 

 そうウシオは言うと、すぐに走っていった。

 

「あ、おい!ウシオ」

 

 それを追いかけるオビト。

 

 先に着いたウシオは懐からクナイを取り出し、丸太に彫る。

 

 火影になる。

 

 その後に続いて、うずまきウシオと彫った。

 

「早いんだよウシオは」

 

「ほら!あとは兄ちゃん!」

 

 そう言うと、ウシオはクナイをオビトに差し出す。

 

「まったく・・・」

 

 受け取ったオビトは、彫られた名前の隣に自分の名前を彫る。

 

「これでよし、と。これでいいか?」

 

「うん!これでいい!」

 

 オビトはクナイをウシオに返し、二人で出来上がったものを見る。少しだけ気恥ずかしかった。

 

「もし、これから、自分の目標に、不安なんかを感じたら、ここに来て、これを見るんだ。そうすればきっとそんなもんどうにでもなる!どう?」

 

「そう、だな。いいじゃねーか!」

 

 オビトはニカッと笑った。釣られてウシオも笑う。

 

「そろそろ、帰るか。もう暗いからな。それに、あそこにいるお前の母ちゃん煩いからな」

 

「そーだね。帰ろう!」

 

 二人はベンチにいる二人のもとへと歩く。刻んだ目標を背に、覚悟を胸に刻み、歩く。

 

 

 

 

 




お久しぶりです。zaregotoです。
今回のお話は、本来幼年篇と少年篇の間に差し込むつもりで書いていました。
しかし、話がまとまらず、ずっと予約投稿として放置していました。
それがこの前間違って投稿されてしまい、今の今まで気づかずにいた次第です。
お恥ずかしい限りです。

これから、本編の方も投稿していこうと思いますので、読んでいただけると幸いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。