ガーディアンが行く場所 オレは臆病な君を守り続ける   作:孤独なバカ

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帰るべき場所

目が覚めると知らない場所だった。

あれだけずっと頭が痛かったのに楽になり、身体が少しだけ軽くなっていた。

ウインドウを開くと2023年12月24日6時00分と書かれていた。

そこで気付いた。

あぁ。生き残ってしまったんだなと。

オレは立ち上がり、ため息をつく。そして入れておいた転移結晶をオブジェクト化して一言

「転移 タフト」

オレは転移結晶を使い、11層主街区にとんだ。

 

オレは重い身体を引きずって、水路へと向かう。

昨日のニコラス戦、オレと、キリトが対面したときあの集団の中にサチがいなかった。

オレはキリトに向かってこれが終わったらサチに会いに行くって言っちゃったしな。

あそこにいたらサチとの約束が守れないしオレが会いにいくにはこの手しかなかった。

そしてオレはサチがあそこでずっと待っていると感づいていた。なぜだか分からないがオレは待っていると予測をたてていた。

懐かしいな。

オレはこの階層にくるのはもう何ヶ月ぶりだろうか。下位層プレイヤーが多くいる中オレはこの階層を歩く。

そしてオレは目的の場所にたどり着いた。

しかしそこには誰もいなかった。

昼間でも真っ暗だったそこには誰もいなかった。

オレは誰もいないところに座る。

今の時刻を確認すると6時30分。

とりあえずフレンドリストを操作する。

キリト、アスナ、アルゴ、ケイタ、サチ、エギル、クライン全員が生きていた。

とりあえず安堵の息を一度つく。

オレはただ何もせずに待っている。オレは未遂とはいえ攻略組プレイヤーを殺そうとした人間だ。

よくて攻略組の追放、悪くて黒鉄宮送りだろう。

だからその前にサチとケイタにはあっておきたかった。

最後に本当の気持ちを知りたかった。

ケイタとサチはオレの本当の気持ちを。

オレがあのパーティーに介入しなかったらダッカー、ザザマル、テツオは死ななくてよかったはずだ。

どんだけの怨みを抱えているのか分からない。だからあいつらに殺されるなら本望だった。

上からはクリスマスなのでカップル連れが歩いている。

孤独がオレの身を襲う。

そういえば、オレが最後にサチと話したのはいつだったかな?

ずっとサチが隣にいた時を思い出す。

最初にあった時はすごく臆病な印象だった。

冒険している時も臆病で、しかも泣き虫で、怖がりで

でも、どこか強くて、暖かい。

そういえば、別れる前は寝るときオレに抱きついてきてたよな。

あのメンバーで一番思い出があるのはサチだった。ずっとメンバーだったキリトやアスナよりも思い出に残っている。あの時一番近くで、一番一緒にいたからだろうか。

そういえば、なんでサチはあのタイミングで共有タグの設定なんかしたんだろう。

オレは少しアイテムウインドウを操作する。するとまだサチとの共有タグが残っていた。

オレは操作し一つずつアイテムを見ていく。

ほとんどポーションや回復結晶ばっかりだった。どうやら最近も使っているのか。最近ショップで売り出されたアイテムまでしまってあった。

その一つを取り出し一本を飲む。

レモンジュースに苦味のある味がしている。容器を放り投げる。

そしてカンカンという足音が聞こえこっちに歩いてくる。

そしてオレの前でそれは止まった。

「なんでここにいるの?そんなカッコで寒いでしょう。」

半年ぶりの声が聞こえる。そしてオレは苦笑してしまう。

「お前が呼んでおいて、その反応はないだろう。」

「みんな探していたよ。急にギルドハウスからいなくなったから。」

「前にお前も同じことしてただろ。」

オレはあの時のことを思い出す。

「ギルドのみんなに心配かけて、まぁオレのはたちが悪いけどな。」

半年も音信不通で最後はキリト達にも剣を向けたんだ。

「まぁ、言いたいことは沢山あると思うけど、それはじっくり聞くから、一言だけいいか?」

すると、サチははじめてあった時のように目を涙を貯めたようにして頷いた。

「久しぶり、サチ。」

オレが言うとサチはオレに抱きつき泣き出した。

「バカ、ユニバースのバカ。」

サチの一言、一言に重みを感じる。

冷たかった心に暖かいものを感じた。ふんわりじわじわと曖昧にだか、確かにその暖かさは消えなかった。

涙がオレに当たるたび罪悪感にかられる。

オレはこんなことはじめてだったので何もできないままだった。

ただ罵倒されているのにうれしくて、泣かせてしまったことに後悔してそして、すごく泣きたくなってきた。

「ゴメン。」

オレはサチの体を抱きしめた。

「ゴメン。」

目から涙が出てくる。

泣くなんて何年振りだろうか。ばあちゃんが亡くなっていらいだから十年振りくらいだろう。たった一人でいてもしんどくてもつらくても泣けなかった。

「ゴメン、守るって約束したのに。ダッカーをザザマルをテツオをみんなを死なせてしまった。」

オレはサチを力いっぱい抱きしめる。たぶんハラスメントコードがサチには発動してると思うが気にしなかった。

「つらかったのはキミなのにオレは自分のことでせいいっぱいで。」

吐き気や嗚咽が漏れる。

「それで、オレは」

「いいの。」

サチは泣きながらオレに軽く、お姉さんらしく言う。普段のサチとは全然印象が違った。

「私はキミが生きていたらそれだけで。」

その一言でオレはすべてが報われたような気がした。オレは泣きながらサチに泣きつくた。何十分いや何時間泣いただろうか。久しぶりに流した涙は苦しくてどこか心地よいものだった。

 

オレとサチしばらく二人で他愛のない話をした後オレは思い出したくないことを思い出してしまう。

「そういえばオレ部屋から転移結晶で脱出したから今ごろ大騒ぎになっていると思う。」

オレがそう言うとサチにかなり怒られるはめになった。するとため息をつきメッセージを送ってからサチが歩きだした。

オレはその後についていく。

すると転移ゲートで19層、ラーベルグに転移する。

確かかなりの地価が安いことで有名でゴーストタウン街全体はゴーストタウンだったはずだった。

しばらく歩くと三人の人影が見えてくる。

黒の人影と白と赤の服を着た細剣使い、そして、オレがキリト達を託した棍使いが立っていた。

「っ!!」

オレは竦んでしまう。今すぐ逃げ出したくなった。

「大丈夫だよ。」

サチはぎゅっと手を握ってくる。

「大丈夫だから。」

オレは握り返される手に包まれる。オレはそれに押され少しずつだか近づく。

「ユニバース。お前サチに会いにいけとは言ったけど、まさか転移結晶を使ってまで抜け出すとは思わなかったぞ。」

「約束したから仕方ねぇだろう。」

「全く、心配したんだよ。」

「心配してくれていたのか?」

「あたりまえでしょう。」

「アスナ落ち着いて。ユニバースはそ、その」

「悪い。心配してくれる人があっちにはいなかったから、慣れてないんだよ。」

「あっ。ご、ごめんなさい。」

素直に謝るアスナに苦笑してしまう。

「いいよ。オレの方がひどいことしてたし。今更言っても遅いけど気が動転してたとはいえ、今まで避けていて、そして剣を向けてゴメン。後、ダッカーをザザマルをテツオをみんなを死なせてしまってゴメン。」

頭を下げる。

「ユニバースさん。」

ケイタがオレの肩を叩く。

「謝るのはこっちの方です。僕らが攻略組プレイヤーの事を甘く見ていたのが元々の原因なんです。」

「でも、」

「それに僕にも原因があるから。」

ケイタがオレの方を見る。

「それに、僕はサチが生きていただけでも。それだったら。」

ケイタがサチのことを押し出し

「こいつのことよろしくお願いします。こいつのことを一番分かっているのはたぶん君だと思うから。」

ケイタが照れくさそうにサチを前に出す。

「ちょっとケイタ。」

「あぁ、任された。」

オレは笑って答える。

「ちょっとユニバースも。」

「そのかわり、ケイタも生きろよ。そうしないとこいつの一生のトラウマになりかねないぞ。」

「あぁ、僕もザザマルたちの分も生きるさ。」

「まぁ、オレの処分が決められてからになると思うけどな。」

ため息をつく。

「そのことならヒースクリフから伝言もらっているわ。半年間の休養ですって。」

「休養?謹慎じゃなくて?」

「あぁ、落ち着いたら戦線に復帰してほしいって言っていた。多分この後はキミがいないと攻略が困難になるだろうってな。多分精神的にも、肉体的にも疲れていてあのちゃんとした行動ができなかったって思われているらしいぜ。」

「多分前者が本音だろうな。まぁ復帰するかは半年後決めるよ。さすがに疲れた。」

オレはもう当分の間は狩りをしたくなかった。多分これ以上狩りに出てたら、死ぬ可能性が高かった。

さすがに心配してくれる人がいるのなら死にたくはない。生きて現実世界で笑ってオフ会をしたかった。

「ケイタ、後半年最前線頼めるか。オレは22層のログハウスでも買ってゆっくり休むから。後敬語もいい。前にも言ったけどオレの方が年下だし。」

「分かった。でも、サチはどうすんですか?」

「それはサチが決めることだろ。オレがどうこう言える立場じゃねぇよ。」

ため息をつく。

「……キリト、アスナ、ケイタ、私ユニバースについて行っていい?」

サチが遠慮がちに言う。するとみんなが頷いた。

「うん。もちろん。サチさんずっとユニバース君を心配してたんだし。」

「アスナもだけどな。」

「キリト君もでしょう。」

ワイワイ話している。オレは何も変わってないと思った。

「ユニバース。これ。」

サチから送られたのはギルド申請届けだった。オレは承認ボタンを押しギルド欄に久しぶりにオレの名前が載る。懐かしい気持ちでいっぱいだった。

「おかえり。ユニバース君。」

アスナ、キリト、ケイタ、サチがこっちを見る。

オレが今帰るべき場所。

ずっとオレが求めていたことがそこにはあった。

「あぁ、ただいまみんな。」


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