SNEG=それなんてエロゲ?

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俺の家の前に黒ローブに鎌持った不審者がいたからぶちのめしたら中身が銀髪美少女だったとかSNEG

「ふあ」

 欠伸を一つかみ殺し、冷蔵庫を開ける。

 牛乳を取り出すと直接口をつけ、中身を飲み干していく。

「…………あ~」

 空っぽになった牛乳パックを潰しながらゴミ箱へと放り投げ、柱にかけられた時計を見やる。

「九時半か…………」

 明日を考えるならば寝る支度をすべきなのだろうが、実のところ先ほどまで仮眠していたのでそれほど眠気は無かった。

 自室に戻れば、寝落ちしたまま中断されたやりかけのゲーム。

「明日は…………六時半起きとして、ならあと二時間は遊べるな」

 ならば早速プレイしようとコントローラーを持ち。

「…………あっ」

 何時ものようにコーラ片手にゲームでもしようと座って、コーラを切らしていることに気づく。

「冷蔵庫も…………無かったよな」

 買い置き分の最後の一本も寝る前に飲み干した記憶がある。

 と、なれば。

「…………我慢するか、それとも行くべきか」

 

 無いと発狂するほど熱望しているわけでも無いが、どこか手持無沙汰、というか物足りない感じはするのも事実であり。

 数秒、悩み。

 

「よし、買いに行くか」

 

 幸い近くのコンビニまで徒歩数分だ。大した距離でも無い。

 それに起きたばかりで少し体を動かしたい気分でもあるので、軽い運動と考えれば良い。

「そうと決まれば早速行くか」

 Tシャツとスウェットパンツとかなりラフな部屋着のままだが、まあ別にパジャマというわけでも無いし、それほど問題無いだろう。

 財布だけ片手に持って、玄関へと向かう。

 玄関は真っ暗になっており、スイッチをカチカチと押してみても何の反応も無い。

「あちゃ…………電球切れてるのか?」

 仕方ない、明日買いに行くか、と内心で思いながら靴に履き替え、いざ扉を開こう…………として。

 

「ん…………?」

 

 玄関のすりガラスの向こう。

 暗い玄関だからこそ、気づく。

 

「…………影?」

 

 まっ黒な影がガラスに映ったり消えたりしていた。

 

「…………泥棒か?」

 

 玄関の前をうろちょろしているらしい影を見て、そう考えるのも当然の帰結だろう。

 一瞬どうするか、考えて。

 

 ガラスから影が消えた瞬間、つまり。

 

 ――――扉の前に影が立っている瞬間、かちゃり、と鍵を開けると同時に玄関の戸を蹴り開ける。

 

 がちゃぁぁぁん、と派手な音と共に玄関が開く。

 その勢いに押され、影が大きく吹き飛び。

 

「っ」

「…………は?」

 

 尻もちをついた影の正体を見て、思わず目を丸くする。

 

 やたら黒が強調されたボロボロのローブを被っていた。

 傍に転がるのは…………なんだろう、鎌?

 あと仮面を被っていた、髑髏の。

 

「……………………コスプレ?」

 

 死神という言葉を絵に描いたような恰好だが、現代日本においてそんなものどう見たってコスプレでしか無かった。

「強盗か?」

 問いかけ、というより独り言。呟きながら足を延ばし。

 どん、と座り込むコスプレ野郎の肩を蹴り飛ばせば、そのまま勢いをつけて倒れていく。

 さらに畳みかけるように、鎌が転がっているほうの手…………右手の手首辺り(ローブにかくれてよく分からないが)を踏みつけ。

 

「なんだお前」

 

 被っている髑髏の仮面を剥がそうと手を伸ばすと、残っていた左手が必死になってそれを押さえつけようとしてくる。ばたばたともがくその姿は、どこか小動物チックで、こいつ本当に泥棒か? なんて疑問が湧き出てくるが。

「取りあえず、その面見せろよ」

 ぐい、と思い切り引っ張ってやればぱちん、と仮面を留めていた紐のようなものが切れて。

 

 ――――ふわり、と月夜に銀色が舞った。

 

「………………………………っ」

 

 絶句する。

 

 仮面が外れる勢いで、ばさぁ、と被っていたフードが取れ。

 中から現れたのは首元に銀糸の髪を流した、絵から飛び出してきたかのような美しい少女だった。

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 

 互いに言葉も出ない。

 色々と疑問が多すぎて、何から言えばいいのか迷ってしまい。

 

「……………………あ」

 

 黙する自身へと、少女が、口を開く。

 

「アナタ、死相がでてマスよ」

 

 何言ってんだこいつ。

 

 全ての疑問がその瞬間だけは吹き飛んだ。

 

 

 

 * * *

 

 

「あ、あの、ワタシ、こう見えて死神なのデスよ」

 

 色々言いたいことはあったが、全て置いておいて、まずどうしてうちの前に居たのか、という質問に対する第一声はそれだった。

「…………死神?」

「デスよ…………と言っても、まだ候補なんデスけど」

 えへへ、とはにかむその姿はとてもとても目の保養なのではあるが、どうにも素直に萌えれないのは、言動が残念過ぎるせいだろうか。

「それでそのデスよさんは」

「ちょっと待ってくださいデス! デスよさんってなんデスか?!」

 デスよ、デスよ、ばかり言ってるので、思わず呼んでしまった名前に、デスよさん(仮)が激しく反応する。

「ほら、死神とDEATHをかけて」

「全然上手くないデスよ!」

 何だか疲れたようにため息を吐くデスよさん(仮)だったが、気を取り直して、と言った様子で表情を変えて。

「ワタシのことはユウと呼んでくださいデス」

「ふむ、ユウ(仮)ね」

「(仮)いらないデスよ、ていうか口に出してかっこかり、とか言わないで欲しいデス」

「分かった分かった、ユウね、それでそのユウちゃんが何でうちの玄関前でたむろしてたの」

「今度はちゃんづけデスか…………そうデスか」

 少しだけ落ち込んだように見えるユウちゃん。女の子というのはすぐに落ち込んだり怒ったりと、琴線が良く分らないから困る。

 アナタのせいデスよ、とか脳内でユウちゃんが怒ったような気がするが、気のせいだろう。

 

「実は――――」

 

 少し重苦しそうに、ユウちゃんが口を開く。

 そこから語られた言葉を要約すると。

 

 天界、と呼ばれる場所がこの世界の上(概念的)にあって。

 そこでは天使と呼ばれる存在が日々、人間他地球上の生命体の管理を行っており。

 その中でも死者の魂を回収することを許されたエリートな天使が死神と呼ばれる。

 そしてユウちゃんはその死神…………の候補生であり。

 

「死神のなるための最後の試験として地上…………つまりこの辺りに降りてきて、魂を回収することができたら合格。んで、そのために死にそうな人間探してたら俺がいた、と?」

「ハイ…………そうなのデスよ」

 

 正座させられて足が痺れたのか、何度となく足を動かしているが、こっちはそれどころではない。

「面と向かってお前死ぬぞって言われたのはさすがに初めてだわ」

「イエ、死ぬぞ、というか、もう寿命尽きてマスよ」

「……………………ん?」

 

 今何かおかしなことを。

 

「だから、すでにアナタ、寿命が尽きてマスよ」

「どうして二回言った?!」

 一回なら聞き間違いで済んだのに。

「イエ、純然たる事実デスから。というか、なんで生きてるのデスか」

「美少女に存在を否定された」

「そういう概念的な話じゃないんデスが」

 少しだけ困ったような表情のユウちゃんが、少し考えた様子を見せ、口を開く。

 

「人間は、生まれた時から寿命が決まっているのデスよ。それは神様が定めた絶対の運命デス、寿命が尽きた人間は原因はどうあれ、確実に死にマス…………死ぬ…………はず、デス?」

 

 目の前で生きている人間がいるため、自分の言葉に自信が持てなくなったのか、首を傾げる。

 

「と、とにかく、死神はその人間の寿命を見ることができるのデスよ! そうでないとお仕事になりませんから。ワタシが見た限りでは、アナタ、数日中に必ず死にマス!」

 

 ずびし、という効果音が付きそうなくらい勢い良く自身を指差す。

 

「デスのでそれまでここにいさせてくださいデスよ!」

 

 そしてたたみ掛けるかのように。

 

「ど、土下座…………だと…………」

 

 ネタとかでならともかく、マジ土下座とか人生で初めての経験だった。

 

「……………………」

 

 なんというかこう。美少女に正座させて、足痺れさせて、もじもじしてるのを見て内心で笑って、最終的には土下座させるって、一体自分はどんな大悪党なのだろうか。

 それはさておき、真面目に考えてみる。

 

 自宅は広い。普通に一戸建て住宅なのだが、両親が海外出張で居ない今、住んでいるのは自身だけだ。

 目の前の少女を見る。言動が痛々しい、というかここまでの死神云々の話などほとんど信じちゃ居ないが、それはさておき美少女である。

 

 もう一度言う、美少女である。

 

 それもちょっと現実じゃ見ないくらい、本当に空想の中から抜け出してきたかのようなレベルの美少女っぷりである。

 

 その美少女ちゃんが。

 

 独り暮らしの自身の家に、棲ませて欲しいと、言っているわけで。

 

 つまり、同居?!

 

「良いよ」

 

 この間僅か0.5秒である。

 

「本当デスか?! ありがとうございますデスよ!」

 

 笑みを浮かべるユウちゃんに、頬が緩む。

 

 どう言い繕っても、下心に負けた回答だった。

 

 それにして。

 

 先ほど出会ったばかりの少女と、いきなり一つ屋根の下で暮らすことになるとか。

 

「それなんてエロゲ?」

 

 我が事ながら、思わず呟いた。

 

 

 

 

 

――――続かない。

 




仕事中にふと思いついたネタ。
書くだけ書いて満足したので、もう続かない(気が向いたら続く)。


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