スパロボOG TENZAN物   作:PFDD

7 / 35
すまない……FGOの人理復元に集中して投稿が遅れて本当にすまない……
(尚CCCイベは途中で力尽きました。おのれキアラ)


人が罪と定義したもの

【新西暦186年 10月Z日】

 

 ふざけるなふざけるふざけるふざける

 ああ、意味不明なことをいの一番目に書いてしまった。それぐらい混乱している。素で対応してしまったこともそうだが、何で私が部隊を持たなきゃならないのだ。誰かの命を預かることだぞ、それをするのは前世では部下もまともに育てられなかった男だぞ。そんな余裕なんてあるわけないだろ。そんなことより、私がそんなことできるわけがない。

 くやしい、ちがうんだ、くるしい、死にたい、誰かころしてくれ

 いたいのはいやだ、苦しいのは嫌だ、どうして私ばかり。そうか、『テンザン・ナカジマ』でないからだ。多少の自由と誓ったのに、好き勝手なことをしてしまったからだ。小心者だから人に好かれようとしたからだ。そんなのではだめだ、人でなしにならないと。

 ああ、コールなんてかけるな。もう寝たい。無視したい。消えてしまいたい。

 

 

【新西暦186年 11月1日】

 

 先日の日記は、大分見苦しいことを書いてしまった。私にとってビアン・ゾルダークという存在はもはや恐怖の対象だ。何か恐ろしいことを仕向けてくるのだから、関わりたくない。あれだ、有能な同僚が他の社員と和気藹々としているのを、窓際から1人で見てる感覚が近い。恐ろしてくて、眩しいのだ。関わらざるを得ないが、避けたい存在だ。どうしてあんな男と関わりを持ってしまったのだ私は!

 だめだ、このままでは前回の二の舞いだ。本来のこの日記の意図に戻そう。

 

 明後日、ついにDCが表舞台に立つ。私の断頭台への段がまた1つ進んだのだ。そのことに、恐怖と、安心感と、期待が込み上がるが、まだ早いとも思い、気持ちを押さえ込もう。

 

 私は潜水艦に乗って南極の舞台へ向かっていた。正確には、南極近海に陣取り、余計な茶々が入らないようにする警護のようなものだ。内容や目的はこの前書いた日記とほぼおなじだったので、今日の分には書かないでおく。参加は主にアードラー副総帥麾下の者が多いが、やはりそれだけでは数が足りないのか、バン・バ・チェンなど他の幹部の指揮系統下の兵もいる。ちなみにリョウトはアイドネウス島にいる。

 今回のミッションで相手取ることが確定しているのはエアロゲイターだけであり、地球連邦軍、とりわけSRXチームやヒリュウ改部隊、ATXチームとは交戦を禁止されている。彼らは舞台を特等席で見る観客なので、場合によっては相手に知られることなくエスコートする必要がある。

 正直、それを守れる兵はどれだけいるのだろうか。ラストバタリオンやトロイエ隊クラスならともかく、私のようにそういう戦闘に備えているわけでもないパイロットたちにはキツイはずだ。この新西暦という世の中では、自衛隊のような専守防衛の概念は歴史の中でしか見当たらない。

 実際、私以外に任命された兵士は難色を示していた。当然だ、舞台の黒子になるのは吝かではないが、それで動く的になる羽目など、誰が好き好んでやるだろうか。

 そして、私はやはり愚かだった。後のことはこの任務の責任者に任せてしまえばいいのに、「どいつもこいつも雑魚だな、なら俺1人でやってやるっての。ボーナスステージだ」などと言って、全部自分だけでやると言ってしまったのだ。私としては、こんなことで人の命が失われる可能性があるのはバカげていると思った。それも折角ここまでがんばってきた直前で死んでしまったら、成仏だってできないだろうとも。

 だが想像力が足りなかった。『テンザン』の人柄を知っているアードラー麾下の人間ならともかく、他部隊の人間はただの煽りにしか聞こえなかったようだ。次から次にやってやる、という声が上がり、折角士気が下がっていた潜水艦内のボルテージが上がっていた。違う、私はこんなことは望んでいない。何故皆が出る形でなっているのだ、何故私が現場指揮を執るような形に祭り上げられるのだ。誰も得をしない。言い出しっぺ、だと誰かがいった。

 ふざけるな、そんなことする余裕はない。私は「なっさけねぇ奴らだなぁ、俺様に頼らなきゃいけねぇのかよ」と、下がってくれと願いながら言っても、実力は間違いなくこの部隊で一番だ、と同じアイドネウス島に配属されている兵に言われた。確かに私は現状、リオンのシミュレータではトップになっているが、そんな肩書、実戦/現実では意味をなさない。もし私がトップになるような人間ならば、他の兵も同等の時間をシミュレータに回せば、同等以上のことができるはずだ。私はただ、様々なゲームでひたすら遊んでリテラシーを増し、バーニングPTを廃人同然にプレイし続けただけなのに。

 そして潜水艦の艦長が「この場で私の次に階級が高いのは貴方ですよ、特務大尉」と言われてしまい、ついに断る材料を失ってしまった。本当に嫌だが、私は前線指揮を預かることとなった。

 私は、どうして人の命など背負う羽目になるのだ。こんな現実、早く終わらせたい。

 

 

【新西暦186年 11月3日】

 

 ついに、DCは宣戦布告した。もう逃げ切れないと、今も震える手を抑えながら思う。

 

 任務の方だが、案の定現れた異星人たちをできるだけ気づかれることなく落とすことになった。昨日はエアロゲイターを、今日はゲストの無人機を落とし、途中ヒリュウ改のPT部隊に見つかるというトラブルがあったが、何とか無事に終わった。

 部隊指揮を任されたが、私にそんな経験はない。主人公たちと戦うために、相手の指揮がこうだったら、と想定して勉強をしてはいるが、自分が指揮を執るとはまったく考えていなかったので、大雑把なものになってしまった。それでも何とか乗り越えることができた。というより、以前にSRXチームと戦った時同様、私のスタンドプレーを援護するようにだけ仕向けたので、事も無げに終わったとも言える。

 私の直接預かることとなった小隊は、私のリオンを含め4機。内水中戦仕様であるシーリオンが2機だ。キラーホエール内に搭載され、本作戦に導入されたのは、合計10機。拠点防衛の性質が強い作戦なのに導入数が少ないのは、この任務が隠密性の高いものだからだ。まぁ本丸にはあのグランゾンがいるから、遊撃性を高くするという意味合いが強いのだろう。

 ヒリュウ改のPTは3機小隊、隊長機と思われるゲシュペンストが赤いカラーリングだったことから、恐らくはあのカチーナ・タラスクの隊と考えられる。幸い見つかったのは私と部隊内のリオンだけだったこともあり、シーリオンは簡単に撤退、随伴の1機は私が殿になることで損傷無しで逃げることができた。

 私のリオンは既に黄色にペイントされている。だからか、向こうも私がリーダー機だと考えたのだろう、簡単に食いついてくれた。この時には既にゲストの無人機は全滅させていたので、そちらに意識を向ける必要はない。問題はグランゾンが動き始めるまでに逃げなければならないことだったが、そこは何とか、3機のアンテナを全て破壊することで成功した。あの部分ならば予備パーツがなくとも、最悪カメラアイの有視界戦闘、かつヒリュウ改のバックアップ下であれば問題ないはずだ。途中、地球連邦軍の輸送機からの通信が割り込んだこともあって、タイミングよく逃げることができた。

 ただ、あの通信の男の声、妙に威圧感が有り、かつ聞いたことがあるような気がした。正直悪寒が走った。一目散に逃げて正解だったかもしれない。

 ヒリュウ改からの追撃も回避してキラーホエールに戻ったころには、南極基地上空に現れていたフーレが、基地に陣取るグランゾンから放たれた重力塊に風穴を開けられるのが見えた。その後には、うっすらシルエットが見えていたシロガネが墜ち、私がヴァルシオンから味わった重力風が広がった。あれに恐れず立ち向かえるマサキ・アンドーの気が知れない。少なくとも私は、二度とゴメンだ。

 キラーホエールに帰還後は、他の兵から流され始める演説を一緒に聞こうと誘われたが、大げさに断った。チート機を使って勝ったビアンなど大嫌いだ、と『テンザン』らしい返答をしたはずだが、私としては今ビアンの声を聞くと発狂しそうになりそうで嫌だったからだ。

 今もこうして日課を終えて日記を書くことができているが、微かに聞こえる船内の喧噪が私の身内を掻き立て、正気を削った。ただでさえ部下の命を背負うという重役と、原作のパイロットたちと戦うという責め苦を終えた後なのに、前世の嫌な記憶を呼び起こしそうな今の状況は非常に辛い。けれど、選んだのは私だ。強くてニューゲーム、なんて都合のよい幻想を頂いた私の罰だ。周囲の人間の期待に応えられず逃げた自殺者には当然の報いだ。今も今世の親を困惑させ心配させる親不孝には残当な仕打ちだ。

 私に仲間はいない。真の友もいない。いなくて十分、いては困る。私の、『テンザン』の死に踏み台以外の意味を持たせてはならない。私は今度こそ、本当の意味で、孤独に死ぬのだ。

 

 

 

【新西暦186年 11月4日】

 

 ひとをころした

 

 わすれるな ぼくは ひとをころしたんだ 

 

 

 

【新西暦186年 11月7日】

 

甘かった。私は、自分の置かれた状況をまだ甘く見ていたのだ。私は曲がりなりにも、ディバイン・クルセイダーズの兵士なのだ。そして兵士とは戦争で相手を殺すのだ。

私はそのことを認識していたから、できるだけ戦う相手の生命を奪わないよう、できるだけ無力化していた。少なくとも今までの演習や戦闘は全てそうだ。だが、戦争は私個人でやるものではないし、私1人のワガママで現実が覆るものではない。

私は決起の日の後、連邦軍基地のあるウェーク島攻略に参加することとなった。各地で一斉に蜂起したDCだが、アイドネウス島に近い基地全てを決起前から掌握することはできていなかった。いや、そもそも連邦に対してのデモンストレーションの一環として、適当な基地をリオンで電撃的に落とすという工程が必要だったのかもしれない。このウェーク島基地も、その対象だったのだろう。

私は専属の整備班に頼み、今のリオンの運動性と航続距離を以前のテストタイプと同等以上に改良してもらった上で出撃した。今回は小隊を任されるということもなかったから、安心してスタンドプレーができるからだ。私は他の隊からは突出し、対空射撃の砲火が舞う基地に吶喊した。当然、迎撃機となるF-28メッサー戦闘機が上がってきた。私は勿論、戦闘機の脱出装置が働くよう、ウイングやバーニアを狙ったて落としていった。

目論見通りなら、バランスの崩れたメッサーは安全装置を起動し、パイロットを脱出させるはずだった。だが、ある機体が妙な粘りを見せ、脱出することなく、あろうことか私に向かってきた。破れかぶれの特攻か、単に安全装置が起動しないことによるパニックか、それは今はわからない。

だが、私は落とせると思った戦闘機が落ちず、尚煙を巻き上げながら向かってくることに、そしてキャノピーの奥に見えてしまったパイロットに恐怖し、その機体を胸部の機関銃で迎撃することを選んでしまった。

戦闘機は爆散した。爆発が起きるまでの瞬間、音速の弾がパイロットを膨れさせ、血肉と臓腑を飛散し、キャノピーにぶちまけたのを見てしまった。

 私は呆けてしまった。動きを止めてしまった。だが、対空砲火の銃火が左脚部を吹き飛ばす衝撃で目を覚まし、次いで、私を庇うために前に出たシュヴェールトが蜂の巣になるのを見て、また頭が真っ白になってしまった。

 

 今、書きながら、私は吐いている。こうなるとわかって、ゲロ袋を用意してよかった。

 

 私は多分、絶叫したのだと思う。笑いながら、叫んだと思う。せめて『テンザン』らしくあろうという意識があったおかげで、笑い声になった。けどその時の私は、体中の穴から汗や血、ふん尿、鼻水、涙を垂れ流していた。リオンを動かせたのは、日頃からシミュレータに篭っていたおかげだろう。

 気がつけば私は、戦闘の終わった基地の滑走路に機体を中座させていた。基地自体は他の部隊が制圧してくれたようで、私は、整備班に後から聞いた話では、ほぼ1機でメッサー部隊を墜落させ(勿論、コクピットを狙わずに)、SAMやMLPSを破壊したらしい。

それでも、私の努力は全部が全部、報われるということはなかった。当たりどころが悪くてそのまま機体が爆発したものもあれば、脱出した後、流れ弾で体が消し飛んだパイロットもいたらしい。一部のリオンには空戦の際、脱出したメッサーのパイロットがぶつかり、人型の血痕ができた機体もある。それは、私のリオンにもあった。

そしてヘルメットに溜まった吐瀉物を一旦出そうとコクピットから這い出た私が見たのは、下半身を私の機体に潰され、絶命しているはずなのに、今も上半身がピクピクと動いている歩兵だった。

私はそこで気絶したらしい。『テンザン』ならリアルなゲームだと笑っていた場面で、気絶したのだ。そんなこと、許されないのに。

そうだ、私は、私を許してはいけない。『テンザン』は笑って落とし、殺すのだ。私は殺したくない、けど殺そうとしなければいけない。そんなこと嫌だ。けどしなければ。だから許すな。人殺しは嫌だ。命を奪うのは嫌だ。誰かの命が私につきまとうことになるのが嫌だ。だから倒しても殺すな、落としても生かすようにしよう。けどこれからも、殺してしまうだろう。私が落とした相手を、味方がチャンスと思って殺してしまうかもしれない。そんなこと嫌だ。嫌だ!

私が許されるのは、踏み台としてまっとうする瞬間だ。死ぬことを許される時だ。だから、決して目を背けてはだめだ。どんなに吐いても、嫌でも、泣いても、『テンザン・ナカジマ』であるなら、目を背けるな。

だめだ、また正気を保てない。日課をこなしたはずなのに。

とにかく今は、睡眠薬で飲んで無理にでも寝よう。

悪夢を見た。私が殺した人たちに、ひたすら殺され続ける夢を見た。

忘れるな、忘れるな、私は人殺しだ。

 

 

 

 

 

 

「ちっ、テンザンめ。また戦果を上げおったな」

 

 深夜のアイドネウス島、その中にある自分の研究室の一角で、送られてきた戦果報告に目を通していたアードラー・コッホは苦々しげに舌打ちした。紙媒体のそれを適当な机に放り投げ、安楽椅子に深く腰掛ける。

 アードラーにとって、今のテンザン・ナカジマは目の上のタンコブだ。元々は自分が見出した機動兵器への異常適正を持った存在、即ちアドバンスド・チルドレンの1人としてスカウトし、EOTI機関/DCに着任させたまではいい。事前調査によると、中学生時代以降からは如何にもゲームに熱中し他者の迷惑を省みない自己中心的な性格であるとわかり、御しやすいと判断できた。実際に初見の印象もそうであった。

 だが、その印象が明らかに変わったのはリオンのシミュレータに乗り始めてだった。強すぎる。少なくともアードラーの持つ過去の研究データの中でも、これほどまでに人型機動兵器の性能を引き出す存在はいなかった。ならば今のデータでは、と解剖用に確保しておいた3人目のアドバンスド・チルドレンを廃人になるまで研究してみたが、関連性は見当たらなかった。この研究データは今の自分のテーマである『ゲイム・システム』には役に立ったが、求めた結果が得られなかったことに、苛立ちを覚えた。

 その間にも、テンザンは戦果を上げていった。極東基地のパーソナルトルーパー3機を同時に相手取り善戦、対PT戦情報を収集。次には北米ラングレー基地で特機・グルンガスト零式と対決、特機戦のデータを収集するばかりか、他の部署から呼び寄せていた博士2人が勝手に用意した試作兵装を用い、壊滅寸前まで追い詰めた。極めつけには、指揮官機タイプのガーリオンでDCの象徴にして切り札ともいえるヴァルシオンの攻勢を耐え抜き、改良したリオンに乗り換えれば、一歩も引かずに戦い、追い詰めてみせさえした。

 アードラーは確信した。これは自分の御しきれるものではない。確かに強力な駒は欲しいが、それは自分が管理または制御できるものだけだ。だからこそアードラーは管理のできなくなった『スクール』他様々な研究を切り捨て、研究職でありながら秘密結社のNo.2に就くことができたのだ。その長年の組織政治家としての勘が、テンザン・ナカジマを危険視している。即刻切り捨てろと告げている。アードラーの理性もそれに乗りたいが、既にテンザンはビアン総帥に気に入られてしまった。自分も行ったことがない、あの別宅にまで招かれたことから、その気に入りようが窺い知れるというものだ。

 もはや謀殺というのも難しい。ならばと、決起前にビアンから提示されたテンザン主導の独立部隊をそのまま認可し自分の手から手放すという案もあるが、政治勘から不安が残る。ではどうするか。その答えは、アードラー・コッホは知っている。

 

「いらんものはいらんもの同士でまとめて倉庫に置いとくのが一番じゃな」

 

 自身の研究者としてのライバルや反発する者と引っ付け、一纏めにし、飼い殺しにする。そうすれば、独立部隊を作るという面目が立つ上に、動けないような場所や状況を作れば管理はともかく、監視はし易い。いずれは自身の地位がより盤石になり、ビアンの中でも独立部隊の持つ位置が低くなれば、後はどうにでもできる。

 そうと決まれば善は急げ、と人員のピックアップをする。場所と、それに押し付けるものも頭の中に組み上がっている。これであればビアンも承諾せざるをえないものだ。当然だ、ビアンとてこのような状況だからこそ不要と判断し、だが処分するには面倒な代物だからだ。それが置いてある場所も拠点として割り当てれば一石二鳥といえるだろう。

 

「さて、まずはあの猿真似ユルゲンとその部下じゃな。あとはワシに歯向かう木っ端共に……まぁダミーとして真っ当なのも1人ぐらい入れてもよいか。資材は、まぁ、時々流すか多少融通できるようにすれば納得するじゃろう」

 

 今いる整備班と博士だけでも、聞いている限りでは重しと感じているようだ。ならばそれに更に厄介なのも加えればいい。後はパイロット、と考えたが、もう1人アドバンスド・チルドレンは勿体なく、かといって他のパイロットはどこも人手不足で回せるのがいない。なら来てるデータから、と情報端末から上がるデータを見ると、眉を顰めるものがあった。

 

「なんじゃこれは? ワシが特脳研時代に切り捨てたものではないか」

 

 あんな眉唾をまだマジメにやってる部署があるのか、とそこから上がるデータを眺めていると、カッ、と軽蔑の声が上がった。明らかに隠蔽された、でっち上げの情報だったからだ。おまけに出てきたデータもデタラメ、周辺情報を軽く探してもクサイ所だ。研究者として、このような不真面目なものは、アードラーとしても軽蔑に値するものだった。

 

「まぁじゃが、使い物にならんものはそれでよいか。精々足を引っ張ってくれればよい」

 

 だからこそ、今回のようなケースでは使い物になりそうだった。上がっていた2件のデータをピックアップし、リストに加えた。どれだけ汚かろうと、データはデータ。精々腐らんようにな、とアードラーは表示されたパイロットの画像データを見ながらほくそ笑んだ。

 画像データには、瓜二つの顔立ちをした少女たちの姿があった。見目麗しい少女だ。だがそれは、EOTI機関が創設された時期から一切更新されていなかった。そして、資料の提出元にはこう記載されていた。

『念動力者の身体および脳による特殊ネットワーク構築理論研究』と。




こうして1万字以下を保てるようにしたいです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。