友奈とキスしかけてから数日後のこと、あの日のことをカズマさんに何があったのか聞いてみると、どうやらめぐみんからちょむすけの事を聞かされたらしい。めぐみんいわくちょむすけはただの猫ではないらしい。
カズマさん的にはてっきり愛の告白みたいなものかと思っていたらしいけど、そんなものではなく、あの時あんな大声を出したらしい。
まぁ、確かにちょむすけはただの猫ではないっていうのは僕も知っていたけど、一体こいつは何なんだろうか?
そんなことを思いながら、広間で武器の手入れをやっているとカズマさんは新聞を読みながらあることを呟いていた。
「冒険者格付けランキング、第三位ミツルギキョウヤ?おい、ふざけんな。何でアイツの名前がこんな上位に載って、俺の名前がないんだよ!」
冒険者格付けランキングなんてものがあるんだ。それにしてもここまで魔王軍幹部を撃退してきたはずなのに、カズマさんの名前がないのはちょっと気になるな。
「それは王都で活躍している冒険者のランキングだ。この街に引きこもってるカズマがのるわけ無い。ランキング入りしたかったら前線に出て活躍するしかないぞ」
「そうですよ。ダクネスの言うとおり有名になりたいというのであれば、共に戦場へ行きましょう。特に魔王軍幹部の所にでも」
ダクネスさんとめぐみんが二人してそんなことを言うけど、何かあったのかな?僕は銀に聞いてみた。
「二人共何かあったのか?」
「あぁ、多分この魔王軍幹部のことじゃない?」
「魔王軍幹部?」
「これのことだよ」
カズマさんは読んでいた新聞を僕に渡し、読んでみるとそこには……
「王都周辺の前線基地にて、魔王軍幹部が参戦し、戦況は一変。その魔王軍幹部は邪神・ウォルバク?邪神って言うけど神様みたいなものか?」
「ほんとうに迷惑よね。邪神とか勝手に神を自称しちゃって、この女神である私に挨拶くらいあってもいいのに、カズマ、カズマ、ちょっと行ってみない?」
アクアさんが珍しくやる気満々みたいだけど、このウォルバクって自称邪神なのか?
「行くわけ無いだろ。今まで魔王軍幹部と戦ってきたのはあくまで偶然みたいなものだったろ。誰が喜んで魔王軍幹部と戦うか」
「大丈夫です。魔王軍幹部と出会ったら、私の爆裂魔法で撃破してみせます。もしくは弟子に新たな試練として、ユミにやらせます」
「邪神相手なの?頑張ってみる」
いや、友海。やる気満々なのはいいけど、それはそれで心配なんだが……
僕らがその魔王軍幹部を討伐しに行くかどうか話していると、突然屋敷のノックが聞こえ、出てみるとそこにはゆんゆんがちょむすけをだいて、訪ねてきた。
「あのこの子を保護したから連れてきたんですが……」
ゆんゆんが保護してくれたちょむすけは近所の子供に捕まって、いじめられていたらしい。ただの猫ではないらしいけど、普通の猫より弱いってことなのか?
めぐみんはゆんゆんに新聞に書かれているウォルバクの記事を見せると、ゆんゆんも何故か驚いていた。
「め、めぐみんこれって……」
「騒がないでください。そこまで大したこと書かれていないじゃないですか」
「大したことあるよ。だって、この邪神ウォルバクって元は私達の里で封印されてた……」
何だか気になる言葉が聞こえてきたんだけど、紅魔の里で封印されていた?カズマさんもどうやらその言葉に気がついていた。
「今聞き捨てならないことを聞いたんだけど」
「紅魔の里に封印されていた?」
「気のせいですよ。カズマ、ウミ。ゆんゆんはたまに変なこと言うから、里でもハブられていたんです」
「変なこと言っていたのはめぐみんですよ。カズマさん、ウミさん、聞いてください。この邪神ウォルバクは私達の里で封印されていたんですが、何かのはずみで封印が解かれ、めぐみんがみんなに内緒で勝手に使い魔にしたんです」
「や、やめろぉ。紅魔族の恥を世間に広めるな!!何も知らないふりして邪神を倒して、知らないふりしてようと思ったのに………」
何だか色々とボロが出てきたぞ。ダクネスさんはダクネスさんでこめかみを押さえてるし……
「ダクネス。お前のつてで、ちょっとあの嘘を見抜く魔道具借りてきてくれないか?」
「あぁ、これ以上とんでもない事が出てきませんように………」
「待ってください。ユウナ、ユミ、私の弁護を……弁護をーーーー!!」
数時間後、ダクネスさんは嘘を見抜く魔道具を持ってきた。めぐみんはというとカズマさんにバインドで縛り上げられ、正座させられていた。
「これで包み隠さず話すことになるな。この邪神ウォルバクってのは何なんだ?ゆんゆんが言うには紅魔の里に封印されてたみたいだけど……」
「はい、ウォルバク。怠惰と暴虐を司る邪神です」
魔道具に反応はないということは邪神っていうのは本当みたいだな。それにしても神が魔王軍幹部っていうのはかなり厄介じゃないか?強さ的にはアクアさんと同じくらいだろうし、下手すれば大型のバーテックスと同じかもしくはあの世界に行ったときに戦ったあの超巨大なバーテックス、レクイエムと同じ強さだったらどうしよう
「めぐみん師匠。どうしてその邪神が師匠の故郷に封印されていたんですか?」
「それは、我々のご先祖がその昔邪神と激戦を繰り広げた末に、封印に成功しました。それからは紅魔の里で厳重に管理を……」
チリーン
魔道具が反応した。
「………誰かが、『何だか邪神が封印されている地ってかっこいいよな』と言い出し、勝手に拉致ってきたんです。おまけにそこを観光スポットに……」
「「おい」」
それを聞いた瞬間、僕とカズマさんが呟きを聞き、ゆんゆんまでもが目をそらしていた。
それから話を聞くと邪神の封印を解いたのは二人、一人はめぐみんが幼いころに、もう一人はこめっこちゃんが封印をといたらしい。
「ねぇ、めぐみん。何で姉妹して邪神の封印解いちゃってるの?」
ゆんゆんが目を真っ赤に輝かせながら、めぐみんに詰め寄っていた。確かに何で姉妹して封印を解くのだろうか?
「まぁ、私の時にはとあるお姉さんと出会ったんですが……ただ……ゆんゆん、あの時こめっこを助けたときの事を覚えていますか?」
「あのときのこと?覚えてるよ。私とめぐみんが初めて魔法を覚えたことだよね。それがどうしたんですか?」
「いえ、ただあの時もう一人いたような気がしたんですが………私の記憶違いでしょう」
めぐみんは何かしら気になることがあるみたいだけど、今は例の邪神が何者なのかだ。めぐみんとゆんゆんの話ではその邪神はちょむすけのことらしいけど、それじゃこの新聞に書かれている邪神は何者なんだ?アクアさんが言うように自称しているのか……
「カズマ、この邪神ウォルバクが何者なのかすごく気になるんです。それに何だか私が行かなければ行けないような気がして……お願いできませんか?」
めぐみんは不安そうにカズマさんに頼み込んでいた。カズマさんはというと少しめんどくさそうにしているが、すぐに
「しょうがねぇな」
東郷SIDE
「ねぇ、わっしー。ゆーゆから返事は?」
「………決心はついてるみたいだよ。そのっちから例の話が聞いてから、でもまだ……」
友奈ちゃんはまだ海くんに話してないみたいだった。何時迄も話せないでいたらどうなるのかは友奈ちゃんだってわかってるはずなのに……
「……迎えに行ってくるね~」
そのっちは立ち上がり、屋上へと向かおうとしていた。私も行くべきなのだけど……
「ねぇ、わっしー。カイくんに恨まれるかな~」
「………大丈夫よ。海くんはそのっちのことを恨んだりしないよ」
「でも………神託を聞くかぎり……私達の未来は………」
「…………未来の私達の子供がいるけど、もしかしたら別の未来から来た可能性もある………」
神託で聞かされた未来、それは希望の光はなく、絶望の闇しかない未来。
めぐみんが言うもう一人いたというのは、番外編で書こうと思っているとあるキャラのことです。
そして最後の東郷とそのっちの会話はもう段々と不安な未来しかないですね。