この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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94 エリス降臨

『おい、本当にここで待っていれば俺の持ち主候補が現れるんだな』

 

「まぁカズマさんの作戦通りならいいけど……」

 

僕らはある場所の最後方にいた。それにしても物凄い人集りだ。まさかミスコンでここまで人が集まるなんて……

 

「ウミ、心配するなって、アイギスが望んでる持ち主はこのイベントできっと見つかるからさ」

 

と言いつつ、カズマさんはレンタルしてきたらしい魔導カメラと望遠レンズを構えながらそんなことを言っていた。まさかと思うけど目的忘れてないよね

 

「というかウミ、お前は無理に付き合うことないんだぞ。折角祭りの最終日なんだから友奈といちゃつけばいいのに」

 

「そうしたいのはやまやまなんだけど、一度頼まれたことを途中で辞めるのは嫌だから……それに友奈も何だか悩んでるみたいで……」

 

「悩んでるんだったら、相談くらい乗ってやれよ。きっとユウナの奴もそれを望んでるぜ」

 

「そうですよね。アイギスの持ち主を見つけたら話してみます」

 

そんなことを話していると、ようやくミス女神エリスコンテストが始まるのであった。始まると同時に物凄い歓声が上がっていた。特に男性陣から……そして僕の隣にいるカズマさんとアイギスも……

 

「スレンダー過ぎてちょっとな……顔は好みだけど……」

 

『いやいや、キツめの性格をしていると見た。おまけにあれは着痩せするタイプだ』

 

「きつい性格でスレンダーなら良かったんだけど、着痩せするタイプか……それだったら水着コンテストとか入れといたほうが良かったな」

 

『マジかよ。何でそんな大事な審査を入れないんだよ。バカじゃねぇの!?』

 

「おい、次の子、ナイスバストの持ち主だとよ」

 

『お前、ちゃんとそのカメラで納めろよ。出来上がった写真くれるなら逃げようとしないからな』

 

何だろう?カズマさんとアイギス。本来の目的忘れてないか?いや、興味が無いわけじゃないけど……目的を忘れてほしくない。

 

「ん?おい、ウミ」

 

「カズマさん、アイギス。ちゃんと目的覚えてますよね」

 

「いや、忘れてないけど、見ろよ。ステージを……」

 

「ステージ?」

 

僕はステージの方を見ると何故か友海、牡丹、須美、そのっち、あとは昔屋敷に侵入したロリサキュバスが何でミスコンに参加してるんだ?

 

『登場したのは可愛らしい女の子たちです。お名前と職業は?』

 

『上里友海です。職業は勇者です』

 

『と、東郷牡丹です。勇者やってます』

 

『鷲尾須美です。二人と同じ勇者です』

 

『乃木園子です。勇者だよ~』

 

『えっと、名前は秘密です。職業は喫茶店の従業員です』

 

『勇者職が四人も!?それに友海ちゃんはもしかしてこの街にいるウエサト……』

 

『はい、上里海の娘です。パパ~ママ~見てる~』

 

友海が元気よく手を振る中、僕は地面に手をついて……

 

「あいつら、何をやってるんだ?」

 

「まさかと思うけど、見に来たけどちょっとした手違いで参加したとかじゃないのか?」

 

『おいおい、元気っ子に、年齢の割には一部がふくよかが二人に、のほほんとしている子、おまけにあんな小さい子が際どい格好を……将来が楽しみだな』

 

「因みに聞くけど、お前、ロリコンじゃないよな。アイギス」

 

『悪いが範囲外だ。まぁ将来的には……』

 

「手を出したら壊すからな」

 

僕はアイギスに軽く脅しをかける中、友海たちの出番が終わった。まぁ友海たちが優勝したらそれはそれで嬉しいけど……

 

『さて、お次はこの街ではかなり有名人のこの方です』

 

『どうも上里ひなたです。職業は巫女やってます』

 

『の、乃木若葉だ……職業は……』

 

あんたら何で出てるんだよ。というか二人の格好、巫女服だし……

 

「カズマさん、帰っていいかな?もうみてられないというか……若葉さんがミスコンに出ている時点でショックなんだけど……」

 

「いや、アレは多分だけどヒナタの口車に乗せられて出場したんだよ。あんまり落ち込むな」

 

『おいおい、あの堅物そうな子が見せる恥じらいの顔……素晴らしいじゃないか。それにあっちはお淑やかそうでいいな……俺の持ち主には最適だけど前衛職じゃないみたいだし、そこが残念だ』

 

何故だかアイギスが羨ましいと思った。こういう身内の恥を素直に楽しめられたら……

 

「ねぇ、君たち、何をしてるの?」

 

すると冷たい声が聞こえ、僕らが声が聞こえた方を見ると飲み物を買ってきたクリスさんが冷たい視線で僕らのことを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ助手くんとアイギスが似たような趣向しているのはしょうがないとして、ウミさん、落ち込むんじゃなくって素直に褒めてあげたらいいんじゃないんですか?」

 

「まぁ、そうですけど……」

 

クリスさんの言うとおり、褒めてあげるのが一番なのに何で落ち込んでいたんだろうか?

 

「家族が頑張ってるんですから、終わったらちゃんと褒めてあげてくださいね」

 

家族……そっか友海はもちろんとしてひなたお姉ちゃんはご先祖だけど年が近くて姉的な存在になっていたから、どう反応すれば分からなかったんだ

 

『それにしてももう終わりか。あのララティーナちゃんは良かったな。でも何だか俺の役割が意味の無いようになりそうだな』

 

クリスさんの話を聞いているときに、ダクネスさんがステージに上ったのだけど、もう色々と大変だった。カズマさんもアイギスも悪乗りしてたし、あとダクネスさんのあとに出てきたサキュバスの店員さんの中にバニルさんが混じって、みんなの悪感情を食べるために参加していたりと、色々と賑わっていた。あとは優勝者の発表だけだった。

 

「アイギスが気にいるやつはいなかったか……」

 

「いや、一人だけいますよ。カズマさん」

 

僕はクリスさんの方を見て言うと、アイギスは笑っていた。

 

『おいおい、あんなぺったんこで男みたいなやつを俺が気に入るとでも?』

 

「あぁ、なるほどな」

 

カズマさんも僕が何が言いたいのか理解した。クリスさんなら……いやもしかしたら……

 

「お願いできませんか?エリスさん」

 

「………仕方ないですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミスコンもとうとう優勝者発表の時間になった。僕らは間に合わなかったと思っていたが……

 

『あの……飛び入りですみません』

 

その人がステージに上った瞬間会場中の人々が静まり返っていた。

 

『え、あ…‥へ……いや、』

 

アナウンサーもその人を見て戸惑っていた。それはそうだ。まさかこのミス女神エリスコンテストにあの人が参加するのだから……

 

『えっと、お名前聞いてもいいですか?』

 

『名はエリスと申します』

 

その瞬間、会場中に歓声が響いた。熱狂的な叫びを上げる人や恍惚とした表情でエリスを見上げるもの。手を合わせ深く祈りを捧げるものや、嗚咽し跪いて涙を溢れさせている人。これが女神パワーか……

 

『あ、ああああありがとうございます!お答え頂きありがとうございます!あの、実はあと二つほど質問があるのですが…』

 

『その二つは秘密です』

 

イタズラを仕掛けるみたいな表情で片目を瞑り、人差し指をピッと立てた。その瞬間会場中の空気が震えるような歓声が響くのであった。

そしてアイギスも自分のご主人様にふさわしいと言い始めるが、会場がエリスさんの登場で偉いことになり始めていた。

 

「おい、やばいぞ」

 

「これは止めないと……アイギス。エリスさんをご主人様だと思っているなら、守ってやれよな」

 

『おう、任せろ』

 

僕らは会場の人々からエリスさんを助けるために動くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴動が起きたミスコンは一応エリスさんの優勝で幕を閉じた。アイギスはエリスさんの所に戻り、今回の件は何とか終わるを遂げるのであったが……祭りの次の日、僕らは首謀者としてダクネスさんに叱られるのであった。とはいえ特に暴動に参加した人たちは怪我もなく良かったけど……

 

「何だか疲れました」

 

僕の部屋にエリスさんが疲れた顔をしていた。まぁアレだけの暴動が起きて追いかけられたのだから疲れるだろうな

 

「まぁそれにしても優勝おめでとうございます。エリスさん」

 

「えっ、いやいやまぁありがとうございます」

 

「それにしてもちょっと気になったのが、会場中があんなに魅了されたのに、何で僕は最初に会ったときから魅了とかされないんでしょうか?」

 

そこら辺がちょっと気になったけど、本当にどうしてだろうな?するとエリスさんが笑顔で答えてくれた。

 

「それはですね。貴方にとっては私よりもずっと魅力的な人と出会ったからですよ。ウミさん」

 

それってつまり……友奈のことだよな

 

「そっか、そうなのかな?」

 

「そうですよ。だから………ウミさん。彼女が思う未来にならないようにしてくださいね」

 

エリスさんはちょっと悲しそうにそう言うのであった。そして僕はこの時、あんな未来になるとは思ってはいなかった。

 




何だか駆け足気味ですみません。次回から9巻の内容になりますが、そこから最終章になります

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